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カテゴリー: 社会

平和憲法で戦争をさせない

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 寺井 一弘 ・ 伊藤 真 、 出版 自費出版
 昨年(2022)年2月にロシアがウクライナに侵攻して始まった戦争は、いつになったら終わるのか、不安な日々が続いています。
 そんな人々の不安につけこんで、自民・公明の政権は相変わらずアメリカの言いなりに高額な兵器を買わされ続け、日本もアメリカに続けとばかりに戦争する国になりつつあります。怖いのは、少なくない日本人がそれに慣らされ、モノ言わぬ人々になってしまっていることです。それが裁判所(裁判官)の意識も包み込み、出る杭は打たれるとばかりに、政権の言いなりに判決を書き続けています。司法が行政の歯止めの役割を果たそうとしていません。
 「そんなこと、オレたちばかりに押しつけるなよ…」という、弱々しい告白がもれ聞こえてきます。でも、あきらめずに、安保法制法は憲法違反だという裁判を意気高くすすめているグループがいます。私も、そのグループに加わり、微力を尽くしています。
 この70頁ほどの小冊子は、そんな安保法制違憲訴訟を引っぱっている二人のリーダーによるものです。さすがは憲法伝導士を自称するだけあって、格調高い内容です。
 まずもって驚かされるのは、戦前の明治憲法をつくった伊藤博文が立憲主義の本質を理解していたということです。君主の権力を制限し、国民の権利を守ることが憲法の目的だと、伊藤博文が言っているのです。自民党の政治家にぜひ読んでほしいところですよね…。
 ただ、残念なことに、「個人の尊重」は理解していなかったようです。だって、女性の参政権は認めていない時代ですから、当然の限界なのでしょう…。
 明治憲法は天皇が強かったわけですが、実のところは、天皇を通じて国民を自由に操(あやつ)る実質的な権力者が天皇の裏にうごめいていたのです。
 明治憲法では、親権天皇、軍隊、宗教が三位一体の構造をなしていた。これに対して、戦後の日本国憲法は、象徴天皇制、9条による戦争放棄、政教分離を規定した。
 今の日本国憲法を「押しつけ憲法」というのは事実にも反しますが、このコトバは1954年の自由党の憲法調査会で初め登場したもの。
日本国憲法は、国連憲章ができたあと、それも人類がヒロシマ・ナガサキで原爆(核兵器)を使ったあとに制定されたもの。このことを忘れてはいけない。
 日本は、今日までの戦後77年間、戦争することなく、少なくともこれまでは無用な軍備拡張競争に乗ることなく、ただ一人として国民・市民が戦争で死なず、そして自衛官が戦死することもなく今日があるのです。
抑止力の本質は、戦争する意思と能力があることを相手に示して威嚇すること。
 日本が敵基地攻撃能力を持ち、「やられる前にやれ」といって攻撃したら、「敵国」は必ず反撃してくる。ミサイル攻撃の応酬になってしまう。どちらも共倒れ、廃墟になってしまうまで続くことになりかねない。
 戦争が始まったら、なかなか終息しない。なので、戦争にならないようにするしかない。そのためには、私たちはもっともっと声を大きく強く平和を求めて叫ぶべきなのです。
(2023年5月刊。カンパ)

武蔵野、狭山丘陵

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 高橋 美保 、 出版 現代写真研究所出版局
 蔦(ツタ)が締め付け、蜘蛛(クモ)が舞う。クヌギが朽ち、湧水が浸みる。これはオビにあるフレーズです。写真で、その情景が見事に切り取られています。
 狭山丘陵は武蔵野台地の西北にあって、古多摩川の削り残した残丘。周囲は約30キロ、高さは最高で200メートルほど、平均海抜100メートルの台地。長年の風雨に浸食され、細かい山襞(やまひだ)や斜面から滲(にじ)み出る雨水と湧水によって、谷戸が点在し、複雑な地形になっている。内部には、人工的につくられた二つの湖があり、水源涵養林として、周囲に深い緑を残している。
 太古は原生林だったが、徐々に人間が伐採して、コナラ、クヌギ、クリなどの人工林として育ってきた。湿地にはカエルの卵塊があり、またヘビ(ヒバカリ)も生息している。
 コナラの大木をカズラが巻きついている。クモは見事にラケットの形をした巣をかけている。
 カモもアオサギも湿地あたりでエサを探している。
 狭山丘陵の荒廃の原因は、台風が強力になり、夏冬の変動の振れ幅が増大しているように、気候変動の影響が過酷になっていることにある。
 コロナ禍によって狭山丘陵に立ち入る人が減ったため、荒廃がすすむ一方で、動植物が人目に触れないところで自由を満喫して競争している。
 湿地のカエルが増え、ササ林のクモも一時、急増したが、最近はまったく見かけなくなった。このように増減は不安だ。
 集中豪雨や強風で倒木が増えると、雑木林がまばらになる。一時的に地衣類が増えたとしても、日照が良くなると、湿地が乾燥して草原部分が増加する。
 そんな狭山丘陵という自然の移り変わりが見事な画像として切り取られている写真集です。目の保養にもなりました。
(2023年2月刊。2700円+税)

武器としての国際人権

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 藤田 早苗 、 出版 集英社新書
 久しぶりに目を洗ってすっきりする思いのした本です。
 生まれてきた人間すべてに対して、その人が能力を発揮できるように、政府はそれを助ける義務がある。その助けを政府に要求する権利が人権。人権の実現には、政府が義務を遂行する必要がある。その義務は次の三つ。
①人がすることを尊重し、不当に制限しないこと(尊重義務)
②人を虐待から守ること(保護義務)
③人が能力を発揮できる条件を整えること(充足義務)
 人権は、すべての人が持っているとされる権利で、あらゆる人間の尊厳を重視して、自分の仲間であってもなくても同等に扱われるべきというもの。
日本では、この意識が希薄だ。弱者があわれまれる「かわいそうな状態」にとどまっている限りは同情される。しかし、自らを弱者に追い込んだ社会の問題を指摘し、権利を主張すると、それは否定的に受けとられ、「わがまま」「身の程知らず」と批判されることが多い。
日本政府は国連の勧告を受け入れず、無視した。あげくに国連への任意拠出金を支払わなかった。
 日本の相対的貧困率は、アメリカに次いで2番目に高い。日本の生活保護の捕捉率は2割。残る8割、数百万人が生活保護からもれている。
イギリスでは同居している夫婦間と、16歳未満の子どもに対して以外に扶養義務はない。
 つまり、日本のように生活保護の支給にあたっての「親族への照会」というのはないのです。しかも、日本では生活保護の支給がどんどん切り下げられています。軍事予算のほうはアメリカの言いなりになって不要不急でムダづかいばかりしているのに…。
従軍「慰安婦」は、かつては中学校の教科書に記述されていましたが、今ではすっかり姿を消してしまいました。ひどいです…。
日本のメディアの独立性は脅かされています。高市大臣(自民党)の「ねつ造」発言も、いつのまにかウヤムヤになって終わってしまいそうです。許せません。
 そして、日本の投票率が低いことの要因の一つとして、マスコミの選挙報道の少なさがあります。たとえば維新の「嘘」はそのまま垂れ流しても、その真実、たとえばカジノ誘致、保健所の大幅な削減、首長の退職金「ゼロ」(実は増額)はほとんど報道されません。
 日本の女性警官は8%。イギリスは30%。
「夫婦別姓」の選択肢がないのは、世界で日本だけ。江戸時代まで、日本も夫婦別姓だったのに…。統一協会の影響力から自民党(右派)は脱却できないままなのです。
 日本の女性医師は21%で、OECD加盟国37国の中で最下位。アメリカですら34%なのに…。
マスコミは国連のルールを知らないまま、日本政府の言いなりに、それを垂れ流している。外国人の人権をないがしろにする国(日本)が、女性や障害のある人生活困窮者、性的マイノリティなどの社会的弱者の人権を尊重するだろうか…。
 この本の冒頭で、イギリスにはコンビニはないし、町の店は夕方6時には閉店するし、宅配の最終便は夕方5時。それでも社会はまわっていることが紹介されています。おかげでイギリスには過労死はありません。「カローシ」は国際語になったといっても、日本特有の現象です。
 フランスでは、頻繁にストライキがあって地下鉄やバスが止まり、ゴミ収集もない。みんな不便。でもストライキは労働者の権利だから、我慢する。
日本も多少の迷惑をかけても要求して行動していいんだという国にしたいものです。
(2023年3月刊。1100円+税)

先制攻撃できる自衛隊

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 半田 滋 、 出版 あけび書房
 3月初め、福岡で講演会があったとき、著者のサインをもらいました。著者の話は、いつも明快なうえに、豊富な映像をともなっていますから、視覚的にもよく分かります。いえ、よく分かって楽しいのではありません。すごく腹が立つのです。方言で言うと、「腹かいた気分」になります。もちろん、著者に対して腹を立てているのではありません。話を聞いて、自民・公明政権のやっている軍事予算「爆買い」路線に対して、です。
たとえば、日本はF35Bを42機もアメリカから買うことになっています。ところが、このF35というのは、とんだ欠陥機であり、「未完成の機体」なのです。開発以来、20年もたっているのに、完成していないというのですから、ひどいものです。そして、アメリカでも日本でも重大(死亡)事故を何回も引き起こしています。そんな欠陥機を日本はアメリカのトランプ大統領の口車に乗せられ、アメリカ軍事産業を助ける目的で「爆買い」した(している)のです。もう、やめて…。
北朝鮮がロケットを打ち上げたといっても、日本政府とマスコミは「ミサイルが打ち上げられた」としか報道しない。
 でも、ロケットとミサイルは、まったく同じ技術。日本政府とマスコミはそれが分かったうえで、国民に対してロケット打ち上げとは言わずにミサイルと呼んで、その怖さをことさら言い立てて恐怖心をあおり、利用しようとしているのです。
 今や日本の防衛予算は5兆円を軽く突破。なにしろ5年間で43兆円も支出するというのです。アメリカの軍事産業は、それによって大いに懐を肥やします。日本はアメリカの「死の商人」を肥え太らせるばかりです。
そして、日本に駐留するアメリカ兵士の生活まで面倒見てやっています。アメリカ人技術者40人が、青森県の三沢基地に滞在することになるので、国はアメリカに代わって30億円もの生活費を負担するというのです。アメリカ人兵士Ⅰ人あたりでは年間7500万円もの巨額を日本政府は負担します。「なぜ、アメリカ人技術者の生活費まで負担するのか?」と問いかけると、「彼らはアメリカ本土での生活を捨てて、日本のために働くのだから」という回答。
 ええっ、嘘では。こんなこと、アメリカ人以外にはしていませんよ。
 日本を守ると言いながら、中味としては、軍事予算を増やしてアメリカと日本の軍事産業を喜ばせています。
 安保法制法が成立してから何年もたつのに、幸いというべきか、実施されたことはありません。
軍事予算の一部、ほんの一部でも教育予算にまわせば、大学の入学金や授業料をゼロにすることは簡単なんです。日本の「国」ではなく、「国民」を守る政治に切り替える必要がありますよね。
(2020年12月刊。1500円+税)

君のクイズ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 小川 哲 、 出版 朝日新聞出版
 私はテレビを見ませんし、ましてやクイズ番組なんて関心もありません。でも、その裏側がどうなっているのかは関心があるので、つい手にとって読んでみました。
 著者は、先日『地図と拳』で直木賞を受賞しています。そっちは戦前の満州が舞台で、歴史をよく調べてストーリー構想もすごいと驚嘆しました。こちらは、歴史ではなく、クイズ番組の仕組みと、その優勝者たちの心理がよく調べて、本物そっくりに描かれています。あとがきに友人のクイズプレイヤー2人に助言してもらったと書かれています。
この本では、ぶっつけ本番のクイズ番組で優勝するのは、なんと問題文が読み上げられる前に「正解」を回答したという大学生です。どうやら、問題文を読み上げる人の口元を見て、そこから連想ゲームのようにして問題文を推測し、正解を回答したというのです。ありえない・・・と思いました。もちろん、「ヤラセ」じゃないかと疑いますよね。でも、最近のクイズ番組では、ヤラセがあったという話は聞かないというのです。
クイズとは、覚えた知識の量を競うものではなく、クイズに正解する能力を競うもの。クイズには、さまざまな形式がある、早押しクイズ、ペーパークイズ、ボードクイズ・・・。
 Q.日本で最も高い山は富士山。では大阪市港区にある、日本で最も低い山は?
 A.正解は「日和山」
 リスクを負うことも必要だ。展開によっては、まだ五分五分でも、他より先に押さなければいけない。『恥ずかしい』という感情は、クイズに勝つためには余計だ。そんな感情は捨てたほうがいい。クイズの強さとは、相手に先んじて正答を積み上げる強さだ。
早押しクイズでは、答えが分かってから押していると、相手に解答権をとられてしまう。「わかりそう」と思ったら打つ。ランプが点(つ)いて、答えを口にするまでの短い時間で、「分かりそう」だった解答を考える。いやはや、とんだ厚かましさだ。
数列に例えるなら、「クイズの強さ」とは、さまざまな数列の可能性を見つけられる知識と、リスクを計算しながらベストのタイミングで解答ボタンを押す技量と、計算の速さと正確さ、これらの総合値だ。
世界は知っていることと、知らないことの二つで構成されている。クイズに正解したからと言って、答えに関する事象をすべて知っているわけではない。まったく、そのとおりです。
(2023年3月刊。1400円+税)

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