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カテゴリー: 社会

闇バイト

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 廣末 登 、 出版 祥伝社新書
 「高額案件、即金、仕事」
 「案件次第で日給3万円~50万円可能」
 こんなネット上のコトバにつられて申し込んでしまう若者が後を絶ちません。申し込むと、免許証を写メして、メールで送らされる。個人情報が丸ごと先方に渡ってしまう。やめたいと言うと、「今さら何を言うのか。キミは立派な犯罪者だ。キミの個人情報は承知しているから、まずはネットにさらして、詐欺犯人と公表するかな。それとも警察に通報するかな」と脅される。
 さらに、こんな甘言のささやきもある。
 「持つ者から、持たない私たちが少しいただくだけですよ。あの人たちは数百万円のおカネを寄付しても、何も困りませんよ。これは資本の公平な分配だと思えばいいんです」
 今、こうやってお金に困った若者が闇バイトの世界に足を踏み入れる。警察に検挙された少年の7割が「受け子」で、受け子の5人に1人は少年。
 きのうまではフツーの青少年だったのに、自宅から一歩も出ないまま特殊詐欺グループの一員になってしまう可能性(危険性)がある。この契約の先に待っているのは、社会的破滅に続く、あと戻りできない一方通行の道だ。
 闇バイトの人員を募るのはSNSが多い。特殊詐欺では、かけ子は20%、受け子は10%の報酬がもらえることになっているが、実際に手にできるという保障は何もない。
闇バイトの末端要因である受け子と出し子(UD)は消耗品。
電話をかける「かけ子」は言葉巧みな演技が求められるので、熟練工だ。電話をかけるのはマンションの一室(「ルーム」と呼ぶ)。ここはタコ部屋。「かけ子」は外出禁止、朝の8時から夕方5時まで、電話をかけまくるのが仕事。500万円を被害者から騙し取るのに成功すると、20%の100万円の報酬がもらえる。2~3ヶ月で、ルームは移動する。
闇名簿は高く売買されている。詳しい名簿は1件1万円することもある。使い古された名簿だと、1件300円とか500円とか、安い。金持ち、押し入ったらお金のありそうな人(家)の名簿がつくられ、売買されている。デイサービスや家政婦派遣の情報も売買されている。
 自治体のもっている情報、たとえば税金をいくら納めているとか、そんな情報が売買されている。リフォーム申込者の名簿もよく使われる。
 闇バイトは、一時のおカネを選ぶのか、一生の破滅を選ぶのか、という選択。闇バイトをやったら、破滅するのみ、必ず後悔する。
 特殊詐欺で逮捕されて起訴されると、たいてい実刑となり、刑務所か少年院に入れられる。次に失うものがない「無敵の人」になってしまって、フツーの市民生活を送るのが、とても難しい状況に置かれる。ただ、処罰を厳しくすればよいという考え方は、あまりに安易で、ますます新たな被害者を増やすことになる可能性(危険性)がある。
 闇バイトの危険性、そこに引きずり込もうとするテクニックを知ることができました。
(2023年8月刊。930円+税)

僕の好きな先生

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 宮崎 亮 、 出版 朝日新聞出版
 「維新」は大阪の教育をメチャクチャにしてしまいました。その結果、大阪の学校の教員を志望する人が激減し、途中退職者も続出しています。
維新は学校を「商品」製造工場のように錯覚し、成績主義・競争主義で教師と先生を追い立てています。学校を学力成績の点数で評価するなんて、根本的な間違いです。聞くだけで、「アホちゃうか」と関西弁でこきおろしたくなります。
 松井一郎大阪市長(当時)が、コロナ禍がひどい状況で「小中学校は自宅オンライン学習を基本とする」と、突然に言い出して、大阪全市の学校が一大パニックに陥りました。
 松井市長の思いつき、いつものパフォーマンスでした。学校を所管する教育委員会の意見も十分聞かないまま記者会見したのです。まったく無責任きわまりありません。
 これに対して、現職の小学校校長であった久保敬(たかし)氏が大阪市の教育行政を批判する文書を松井市長に送ったのです。現職の校長が市長を批判する文書を送付した。これは大きなニュースになりました。その結果、自宅オンライン学習は撤回されたのです。ところが、久保さんに対しては「文書訓告」処分が下されました。ひどい話です。
久保校長の教え子にお笑いコンビ「かまいたち」の濱家隆一がいました。久保校長の退職お祝い会に濱家は5分間のメッセージ動画を送ったそうです。そこでは、30年も前の小学校の担任との出来事を昨日のことのように濱家は紹介しました。そして、濱家は小学生のときにもらっていた「学級便り」も全部保管していたのです。それほど記憶に残る担任(教師)でした。
濱家は、「学級便り」のなかで、将来の夢は「マンガ家、まんざい師」と書いていました。これは実現したのですね。すばらしいことです。
「細かいことをバーッて思い出せるのは、本当に楽しかった人やと思いますね。久保先生からは、まわりの友だちを思いやることを教わりました。みんなで目標に向かって一致団結することとか、まわりの人と調和するとかっていうのは、ほんまに久保先生から学んだことです」
先日、大阪で久保先生の話をじかに聞くことができました。腹話術も少しする久保先生は、なるほど教師人生に全力で打ち込んだというオーラを感じました。こんな教師にめぐりあえた子どもたちは本当に幸せです。
子どもを大切にする教師をもっともっと大切にしなければいけないと、つくづく思いました。維新や自民党のような、表面的な成績だけしか目を向けない教育なんて最悪です。
久保先生の話を聞いて、すぐに会場で売られていたこの本を買い求め、帰りの新幹線の中で完読しました。
(2023年9月刊。1760円)

日本維新の会の「政治とカネ」

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版 日本機関紙出版センター
 これまで日本にもたくさんの政党が生まれては消えていきましたが、維新の会ほど厚顔無恥というコトバがぴったりくる政党は珍しいと私は思います。大阪万博とカジノ(IR)誘致です。夢洲(ゆめしま)で来年盛大に開催されるはずの万博は工事が遅れに遅れ、パビリオン建設が具体化している国はいくつもない有り様です。維新の会は税金を全然使わないと公言していたのに、工事費は当初の1.9倍にふくれあがり莫大な税金が投入されつつあります。今からでも中止したほうが、よほど安上がりになるというのが衆目の一致するところです。
 カジノ(IR)のほうもデタラメです。誰がいったいカジノをするのか、それでもうかるのは誰なのか…。カジノなんて有害あって一利なしです。
 この本は「身を切る改革」と言っている維新の会が、実は、自分の身は切らないどころか、税金をうまく私物化していることを鋭く暴いています。読みすすめるほどに、維新の会のえげつなさに呆(あき)れかえってしまいます。
 維新の会は政党助成金を平気で受けとっています。それも27億円近い税金(2015年)を受けとっているのです。しかも、政党助成金を受けとって「使い果たす」ためなら、トンネル・ペーパー団体まででっち上げてしまいます。
 政党助成金が維新の会の財政(収入)に占めるのは80%をこえています。
 政党交付金は、年度末に残金があれば、国庫に返還することになっています。ところが、年度末に残金が出そうだというとき、維新の会は「基金」をつくって貯めこみ、国庫に返還していません。「身を切る改革」は、自分自身については実行しないのです。
 国会議員に交付される「文書返信交通費滞在費」についても、維新は残ったお金を身内に寄付して国庫へ返還していません。
 維新の会も自民党と同じく、政治資金パーティーを開催します。維新の会は総額1億円ほどの収入を計上しています。1口2万円のパーティー券(会費)を企業が何十口も購入するのです。パーティーに参加しなくてもよいのです。つまりは隠れた企業献金です。維新の会は、これの改革は言いません。自分を告発してしまうからです。
 なんとひどい、えげつない政党でしょうか…。腹の立つ本です。でも、目をそらしてはいけません。
(2023年7月刊。1300円+税)

原発は大丈夫と言う人々

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 樋口 英明 、 出版 旬報社
 南海トラフ巨大地震が来たら原発(原子力発電所)が大丈夫なわけはありません。
 著者は、原発が他の一般的な技術施設とはまったく異なることを繰り返し強調しています。
一般の施設なら、何かトラブルが起きたとしたら、そこで運転を止めてしまえば、いずれ安全な方向に向かって落ち着いてしまう。しかし、原発では絶対に放っておいてはいけない。常に人が原発を管理して、水と電気を送り続けなければならない。停電してもメルトダウン、配管が切れて断水してもメルトダウンになってしまう。メルトダウンになったら、莫大な放射能が拡散し、やがて日本に住むところがなくなってしまいます。もはや手の打ちようがありません。
原発の技術は、根本的に他の技術とは異なっている。3.11福島原発事故のとき、1号機から3号機までで、広島型原爆の170倍もの「死の圧」が大気中にまき散らされた。
原発を推進している勢力は、「硬い岩盤の上に原発は建っている」と主張し、大々的に宣伝している。しかし、これは明らかなウソ。日本全国にある50基以上の原子炉のうち半分の原発はたしかに岩盤の上に建っている。ところが、残る半数は岩盤の上には建っていない。つまり、弱い地盤の上に原発はあるのです。
四国にある伊方(いがた)原発について、四国電力は「南海トラフ地震が発生したとしても、そのとき181ガルをこえる地震は来ないから安心して下さい」と強調している。
ところが、伊方原発の基準値振動である650ガルをこえる振動を記録した地震は30回以上も起きているのが現実。
日本の原発は、そもそも耐震性がきわめて低い。その原発が老朽化したら、さらに危険性が増してしまう。
日本は日本海の沿岸に50基以上の原発を並べている。たとえ原子炉に敵弾が命中しなくても、配電や配管がやられたら、手の打ちようがない。日本の防衛省は、テロリストが日本の原発を攻撃することはないと考えているようだが、客観的にみて、ありえないストーリー展開になっている。日本は、戦争開始を宣言したら、その時点で原発をやられてしまい、日本の敗戦は確定してしまう。
著者は元裁判官。熊本地裁玉名支部にいたこともあります。福井地裁の裁判長のとき、原発の安全性に疑問を抱き、操業差止の決定を下しました。
165頁という手頃な本ですから、ぜひ一度、あなたも手にとって読んでみてください。
(2023年9月刊。1300円+税)

北岳・山小屋物語

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  樋口 明雄 、 出版  ヤマケイ文庫
 残念なことに私は本格的な登山をしたことがありません。日本アルプスを縦走したという話を聞くと、大変だったろうなと同情をこめて感嘆の声をあげるばかりです。
 本州の山と言えば、奥鬼怒(きぬ)の三斗小屋温泉に登り、そこで4泊5日、煙草屋旅館で合宿したことは今も忘れることができません。私の大学生活の最大のハイライトです。そして翌年の6月に尾瀬沼を歩きました。それ以来、尾瀬沼に行ったことはありません。最近、三斗小屋温泉から登山した人(60代)が強風のため低体温症になって死亡したというニュースに接しました。山は怖いですよね。
 九州では、阿蘇を縦走しましたが、完走したのかは定かではありません。
 南アルプスの北岳(きただけ)には、いくつも山小屋があるようです。著者はそれらの山小屋の管理人を訪ね、山小屋事情を明らかにしています。
 まずは、白根御池(しらねおいけ)小屋です。管理人は吾妻潤一郎。この山小屋がオープンしているのは、6月から11月まで。山小屋で働くアルバイトの確保が難しくなっている。応募する若者が少ない。面接したとき「通り一遍な答え」しかしない(できない)若者は現場では、まず使えない。
 ありふれたフォーマットの言葉でしか自分を表現できない若者は、仕事でもフォーマット通りにしか働かない。つまり、応用が利かない。
 応募してくる若者とは電話で話すだけで、その口調と話しぶりで、だいたいのスキルが分かる。多くの若者はプロ意識をもとうとしない。遊び感覚の延長線上にあるから、率先して働いたり、手伝ったりしない。働くことから何かを学んだり、経験として自分の血肉にしようという意識がなく、ただそこで時間を過ごすという意識だけ…。
 料理がちゃんと出来る若者は、だいたい何をやらせても上手。他で器用な子も、すぐに料理を覚える。料理は、視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚という五感のすべてを駆使して行われる。材料を選別し、何をどう組み合わせ、どうやって作るかという想像力を働かせ、さらに包丁を使って切ったり、混ぜあわせたり、こねたりなど、手先と指先の細やかな働きを必要とし、火を使って茹(ゆ)でる、炒(いた)める、そして盛りつけるというプロセスにおいて、脳は休むことなくフル稼働する。
 私は残念ながら料理できません。ひたすら食べる側です。
山小屋で働き始めた若者は、最初のころは基本を守るし、行動も慎重なので、あまり失敗ではない。ところが、慣れてきたことにミスが目立つようになる。
 予約しているのに来ない客は個人に多い。団体客は旅行会社を通しているから、キャンセルが少ない。
 山小屋の仕事でも体力の温存は重要。むやみに夜更かしすると体調を崩して風邪をひいたりする。ひとりでもスタッフが抜けると、山小屋にとっては貴重な力を喪って、痛い。
 山小屋のスタッフで一番に起きは午前3時半。朝食の炊飯を担当する人が地下のプロパンを開けて、スイッチを入れる。食堂を開けるのは午前4時半ころ。早寝早起きが登山の基本。お昼の弁当を予約している人は、朝食時にフロントで受け取り、次々に出発していく。午前5時半には客の全員が出発し、山小屋ではスタッフが掃除を始める。
 いやはや、すごいんですね…。そして、山小屋の管理人は遭難事故の連絡が入ったら、救助に向かう義務があるのです。これは大変ですよね。
 山小屋のスタッフにとって、眠ることも仕事のうち。睡眠不足は自分に不利になるばかり。そして、入浴時間は、きっかり30分。まあ、私も風呂を毎日に欠かせませんが、30分で出ています…。
遭難救出に行くときは最低2名が必要で、できたらもう1名の連絡係を連れていく。
山では水分補給が足りず、脱水症になる人が多い。体重1キロにつき、1時間で5ミリリットルの水分が必要。体重60キロなら、1時間に300ミリリットルの水分を補給する必要がある。
山小屋のトイレの屎尿(しにょう)はバキュームポンプを差し込んで吸い出し、タンクに密閉してヘリコプターでふもとまで搬送して処理する。うむむ、これは大変な仕事ですね…。
山梨県警の管内では、2022年の1年間に遭難事故として155件の発生があり、19人が死亡した。いやあ、これって多いですよね…。
 登山客が増えると、いい人もいるけれど、悪い人も目立ってくる。万引きする人だっている。トイレを汚して平気で出発する人もいる。まあ、登山客が全員、善人ということは、やはりありえないことでしょうね。
 そして、山小屋は世代交代の時期を迎えている。まあ、そうでしょうね。下界でも、みんな後継者の確保に苦労しているんですからね。
 スマホに頼りきりの登山者が、バッテリー切れでスマホが使えなくなって遭難寸前ということも起きているとのこと。スマホに頼れないときのバックアップが山でも必要だということです。
 山小屋で働く人々の苦労が少し分かった気がしました。
(2023年8月刊。1210円+税)

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