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カテゴリー: 社会

肥料争奪戦の時代

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 ダン・イ―ガン 、 出版 原書房
 三大肥料要素のリンについて深刻な状況にあることを初めて知りました。
 リンは植物の生長に欠かせないし、人類にとっても必要不可欠。
リンは、人間が食べたものを筋肉を動かす化学エネルギーへ変換してくれる。人間の骨も歯もリンから出来ている。リンは人間のDNAにも含まれている。いや、リンこそDNAそのものと言ってよい。
 リンは生命の輪を完成させる根本的な結び目だ。貴重な資源であるリンの埋蔵量が減少しているのに、人類は無駄に消費したうえ、事態をますます悪化させている。
 世界のリン埋蔵量の8割近くがモロッコなどの西サハラ地域に偏在している。
 リンは悪魔の元素と呼ばれる。1815年6月、ナポレオンが敗退したワーテルローの戦場で何千もの兵士が亡くなった。戦場では死んだ兵士からの略奪が横行していた。着ていたもの、ポケットに入っていたもの、人間の頭髪(かつら製造業者へ)、歯(義歯をつくる歯医者)、そして遺体は肥料となってイングランドの農業振興に役立たされた。知りませんでした。
 1950年代のアメリカで、洗剤にリンが使われた。泡立ちが良いというので主婦から大歓迎された。ところが、河川も海も、いつまでも消えない泡に悩まされることになった。しかも、緑藻が水面にはびこり、湖は死んでしまった。
 1990年代に入って、アメリカの洗剤業界は自主的に家庭用洗剤からリンを取り除いた。
 しかし、牧畜場から排出される汚水のなかにリンは含まれている。シカゴの五大湖は3000万人もの人々にとって飲料水の水源である。そこの汚染が止まらない。
 農場主が何十年にもわたって肥料を大量にまき続けた時代のリンが、農地の土壌に大量に蓄積されている。この農地から、過剰なリンがしみ出していくことになる。
 人糞のなかにもリンが含まれている。なのでトイレの流水からリン・窒素・カリウムを取り出し、安全な肥料に変換する技術の開発が進められている。
 地球の温暖化も心配ですが、リンをめぐる環境悪化からも目を離せないことがよく分かりました。知らない、恐い話がたくさんありました。
(2023年7月刊。2800円+税)

仁義ある戦い

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 杉山 大二朗 、 出版 忘羊社
 アフガニスタンで中村哲医師が殺害されたのは、もう4年前のことになります(2019年12月4日)。
 福岡県飯塚市の生まれである著者は、ペシャワール会の現地派遣ワーカーとして数年間、中村哲医師の下で働いていました。その様子が著者によるマンガも添えられていて、とてもよく分かります。
 現地のワーカーとして、事務作業にも従事していますが、日本人スタッフのまかない料理づくりのところはとくに興味を惹きました。日本人はアフガニスタンに行っても日本料理を食べたいのですよね。よく分かります。重労働のうえ、安全確保のため、町に出てウロウロするなんてことも許されないのですから、せめて美味しい日本食を食べたいですよね…。
 中村医師は、カレーが大好きで、カツカレーが好物だそうです。貧しい九大医学部生のときの食事以来のようです。
 それにしてもよく出来たマンガが途中にはさまれています。誰かプロに依頼したのではないのか、そう思わせるほど素晴らしい出来事のマンガなので、状況がよく理解できました。
 ハンセン病の患者であり、ペシャワール会の守衛もしていたサタール氏についてのマンガは出色です。これだけでも、この本を読んだ甲斐があります。
 患者は日本人スタッフの舌に合うような「まかない料理」をつくるよう中村医師に指示されました。でも、問題は食材の確保です。食材がなければ、どうにもなりません。
 著者は、小学生のころから、自分で釣った魚を三枚におろしてさばけたというのです。偉いものです。そして、世界中を放浪したときにも各地の料理を見よう見まねでつくったのでした。いやあ、たいしたものです。その腕をペシャワール会の現地スタッフとしてアフガニスタンで思い切り生かしたのでした。
 ジャララバード(アフガニスタン)にあった日本人舎舎のキッチンでヘッドライトの灯りで料理している著者の写真があります。チャーハンでもつくっているのでしょうか…。
 あちらでは、インスタントラーメンは、病人しか食べることが許されない貴重品だったのです。
 著者が手がけたまかない料理もマンガで紹介されています。白菜を手に入れて漬物をつくったというのです。すごいですね、塩と昆布を使います。
 豚肉はタブーなので、豚肉以外のもので代用する豚汁もどきというものもあります。鶏肉や羊肉は高くて、牛肉のほうが安上がりなのです。
 鯉の南蛮漬けもつくりましたが、日本人スタッフには好評でも、アフガニスタン人スタッフには不評でした。やはり、人の好みは生来のものがありますよね。
 アフガニスタンはイスラムの国なので禁酒。日本人スタッフはこっそり飲むこともなかったようです。酒を飲まなくても平気になったと著者は書いています。日本に帰国したら、浴びるように飲んだそうですが…。
 それにしても中村医師はよく働いたようですね。毎日、毎晩、1時間以上もミーティングをしていたそうです。いやあ、これはすごいことです。よくも倒れませんでしたね。疲れますよね、ミーティングって…。中村医師は後継者はいるかとの質問に対して、「用水路そのものが後継者だ」と答えたとのこと。
 日本政府は今、世界各地に武器を輸出しようとしています。自民党と公明党の政権が戦争でもうけようとしているのです。
 私は中村医師そしてペシャワール会のような、地道な用水路づくりこそ日本のやるべきことだと改めて思いました。
 武器をつくって輸出して、軍需産業はもうかり、そのおこぼれを自民・公明の政治家たちはもらえるのかもしれません。でも、それって平和のためではありません。戦争で私腹を肥やそうとしているだけではありませんか…。ホント、腹が立ちます。
 いい本でした。お疲れさまでした。
(2023年5月刊。1700円+税)

引き裂かれた海

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 吉崎 健 、 出版 論創社
 福岡高裁が開門を命じ、その判決は確定したのに、国がその判決を無視して、結局、開門しなくてよいという判決を別にもらって、こちらも確定したという、日本の裁判史上、初めての奇想天外な出来事が起きました。
 現在、諫早湾干拓は開門されないまま、深刻な漁業被害が今も続いています。そして、国は漁業被害と干拓事業との因果関係を肯定も否定もせず、ずっとずっと不明だとして、開門しないことを前提とする協議を求めているのです。
 国って、冷たい権力そのものなんだと実感させられる話なんです。
 諫早湾干拓は2008年3月に完成し、4月から営農が始まった。672ヘクタールの広大な干拓農地で、現在35経営体が営農している。当初41事業体でスタートして、13事業体が撤退した。
 諫早湾を閉め切った「ギロチン」は、1997年4月なので、すでに26年たっている。
 ギロチンのあと、有明海では赤潮が頻発し、タイラギ漁が不振となり、養殖アサリもたびたび死滅した。「ギロチン」のとき、漁業が続けられなくなる8漁協には202億の補僓金が、その外側の4漁協には41億円が支払われた。
 干拓の目的は当初は稲作のための耕地づくりだった。でも、全国的に減反政策が進むなかで、ここだけ稲作のためというのはおかしい(ありえない)ので、途中から「畑作」に変わった。つまり、もともとが「食糧増産」という目的ではないのです。
 ところが、ここに2530億円もの事業費(税金)が投下されました。ともかく、大型公共事業をしたかったというホンネを元長崎県知事(高田勇)が吐露しています。全国各地ですすめられている新幹線の延伸、リニア新幹線そして地方の飛行場の新増設と同じです。ゼネコンの仕事づくりなのです。「国民の利便」は、あとから取ってつけた口実でしかありません。
 そして、農水官僚の「天下り」先の確保でもあり、大手の受注企業に次々に「天下り」していきました。ひどいものです。許せません。そのとき、事業は「官製談合」が常態化しました。
 福岡高裁(岩本宰裁判長)は、「抜本的解決のために話し合い解決をするよう」文書で勧誘しました。ところが、国は問答無用として、話し合いのテーブルにつきませんでした。沖縄の辺野古基地建設をめぐる国の態度とまったく同じです。ひどいものです。ひどすぎます。
 国はゼネコン優遇、自分たちの「天下り先」の確保しか念頭になく、有明海がどうなろうと知ったことではないという無責任な態度に終始しているのです。こんな国のあり方は是正されるべきです。司法がそれをしないとき、いったい国民はどうしたらよいのでしょうか…。
(2023年9月刊。1800円+税)
 日曜日、朝から仏検(準1級)のペーパーテストを受けました。午後1時に終わったときは、へとへと、まさしく疲労困憊でした。この1ヶ月ほど、朝と晩、いつものNHKラジオとCDの勉強に加えて、過去に受験した問題冊子をひっぱり出して復習しました。この5年とか10年ではありません。もう30回近く受験しているので、2往復はできません。
 頭をすっかりフランス語仕様に仕立てて臨んだつもりですが、いやはや難しいのです。つくづく自分は語学の才能がないと悲観してしまいました。単語は覚えられないし、仏作文もつまづきばかりです。自己採点したら71点でした。120点満点で6割が合格ラインですから、今年は危いです。さて、どうなりますか…。
 帰宅して、庭いじりで気分転換を図りました。チューリップの球根を60個ほど植えつけたのです。

ルポ・国際ロマンス詐欺

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 水谷 竹秀 、 出版 小学館新書
 会ったこともないのに、メールの文章だけで結婚しようと思い、相手の言いなりになって、大金を次から次に送金していく人が後を絶ちません。会ったことがないといっても、ネット上で相手のハンサムな顔は見れますし、声も聞けるのです。といっても、「国際」というからには、日本語に変換したものです。ところが、それが、みーんなニセモノ。怖いですよね、ここまでネットで社会は「すすんで」いるのですね…。「顔」も「声」も変換できて、いかにも本物らしく対応するのです。
そして、信じ込むほうにも、いささか問題があります。ちょっと怪しいなと思いつつ、夢心地に浸っていたい気分から、その疑問を自ら打ち消してしまうのです。騙される人の特徴は、寂しさや失望感をかかえ、心に隙間のある人。
 自分は不幸であるというイメージをもち、悲観的にとらえている人、ある程度教養があり、異文化に関心をもっている人。損を現実化させたくない心理が働く。
 素直で、真面目な、いわゆる「いい人」が多い。自分が善意だから、相手も善意だと思い込んでしまう。
でも、結局のところ、騙される人が悪いのではない。騙す人間が悪い。これは私も弁護士としてまったく同感です。
この本では、騙す人間の正体を探るため、著者はアフリカのナイジェリアにまで行ってきました。そこで出会った騙す悪人の正体は…。
 なんとなんと、ナイジェリアの大学生たちが、お金欲しさに「ロマンス詐欺」をやっているというのです。ナイジェリアの若者たちは、10人のうち8人までもがサイバー犯罪に関わっている。彼らは深刻な犯罪をしているとは考えていない。彼・彼女らを「ヤフーボーイ」とか「ヤフーガール」と呼ぶ。
 貧困だけが理由ではないようですが、貧困が主要な要因であることは間違いありません。それにしても、「国際ロマンス詐欺」がアフリカの大学生のアルバイトの舞台になっているとは驚きました。世の中は狭いものです。なにはともあれ、ネットだけでのつながりというのは、映画をみているようなものなんです。目の前のスクリーン(大画面)に見とれているうちに、吉永小百合と結婚できるなんてことが絶対にありえないのを、いつのまにかありうると錯覚して大金を投げ捨ててしまうというものです。ちょっと例え話に品がありませんでしたね、失礼しました。
(2023年8月刊。1100円)

台湾侵攻に巻き込まれる日本

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 半田 滋 、 出版 あけび書房
 「北朝鮮や中国が攻めてきたら、どうする!」
 この不安と焦燥に駆られた人々が5年間に43兆円もの超巨大軍事予算を精神的に支えています。これまで軍事費は年に5兆円を上回っただけでも大問題だったのに、今や年間7兆円を軽く上回る軍事予算です。
 「北朝鮮がミサイルを発射した」と言ってJアラートを発令し、恐怖をあおり立てる政府広報。同じことを韓国がやっても、報道すらされません。北朝鮮のロケット(「ミサイル」の正体)は宇宙空間を飛んでいるのです。「日本の上空」ではありません。「ミサイル対策」と称して、学校や役所で机の下に潜り込む訓練をしていますが、戦前の防火(消火)バケツリレーと同じく、単なる気休めでしかありません。意味のないことはやめるべきです。政府は、それよりイスラエルに軍事行動の停止を求めるべきです。
 自民・公明の岸田政権はアメリカの兵器を「爆買い」し続けています。トマホークなんてスピードが遅いので、もはやアメリカ軍は使っていないとのこと。そして、オスプレイは多くのアメリカ兵を殺してしまった「未亡人製造機」と言われるほどの欠陥機。それを今度は佐賀空港に配備するのです。本当に許せません。
 「戦争が始まったら、シェルターに逃げて…」
 地下のシェルターに逃げ込めて一時的に助かったとしても、地上に誰もいなかったら、どうやって生活していくというのですか…。食料がいつまでもあるはずはありませんよ。
 宮古島に住む全住民を避難させるのに必要な飛行機は363機、船は109隻。そんな大量の飛行機と船が確保できるはずはありません。同じく、沖縄県民146万人を九州に避難させるとのこと。うまく運べたとしても(ありえませんが)、いったい九州のどこにこれだけの人を収容するというのでしょうか…。
 日本政府は、公式見解では台湾を独立国としてみていません。なので、台湾は日本と「密接な関係にある他国」とは言えません。
 アメリカは大量の半導体を必要としている。台湾のメーカー(TSMC)は、世界の半導体シェアの6割を占めている(高性能のものに限れば9割)。だから、台湾を確保しておかないと、アメリカという国自体が存続できない。
 中国は既に空母を2隻保有し、戦闘機も2000機もっている。無人の岩があるだけの尖閣諸島をめぐって武力侵攻するのは、中国の国益に合わない。
 アメリカとアメリカ軍を守るため、日本は集団的自衛権を行使する。つまり、日本を守るためではなく、外国(アメリカ)を守るため、日本人青年の血を流させようということ。
 日本がアメリカから「爆買い」するトマホーク400発を保有したとしても、中国は巡航ミサイルをすでに2200発も保有している。こんな格差があるのだから、「抑止力」が働くはずもない。
 アメリカからオスプレイ17機を購入する代金は3000億円。日本全体の司法予算はそれとほぼ同じの3300億円。しかも年々少しずつ減っている。裁判官の人数は増えていないどころか、減っている。思わず涙が出てしまいます。
 大軍拡予算がすすめられるなかで日本の軍需産業(「死の商人」たち)は喜びに奮いたっている。三菱重工業は誘導弾の新規開発に奔走している。まさしく、金もうけのためなら、何事も身を惜しみませんという姿勢です。
 自民党・公明党の脅しとウソに負けないようにしましょう。それにしても先日の参院選(補選)の投票率の低いこと…。6割以上の人が投票所に行っていません。これでは日本は救われません。
 著者の本は、いつ読んでも具体的な状況が的確に紹介されていて、大変勉強になります。
 一読を強くおすすめします。
(2023年10月刊。1980円)

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