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カテゴリー: 社会

安倍政権論

カテゴリー:社会

著者:渡辺 治、出版社:旬報社
 自民党の52年前の結党以来、政権についた22人の首相のなかで安倍首相は初めて改憲実行を口にした。そのほかの首相の大半は、自分の在任中は改憲しないと約束して政権を運営した。自民党は、結党以来、憲法改正を掲げていたにもかかわらず・・・。
 安倍政権の半年の外交は、安倍本来の反中国、反北朝鮮、日米同盟路線で動いた。桜井よし子たちは、中国とは干戈を交えることも辞さない覚悟が必要だ、中国は日清戦争のリターンマッチを策している、このままでは日本が中国の属国になる、こんなことを言って安倍をけしかけた。
 うむむ、ひどい。これはまさしくひどい排外主義、ひとりよがりの認識です。桜井よし子たちが、こんな愚劣なことを主張していたとは知りませんでした。
 アメリカのラムズフェルド国防長官は、日本の自衛隊はボーイスカウトだと高言した。イラクのサマワにいた自衛隊は、ゲリラの掃討に参加できなかったばかりか、他国の軍隊に守ってもらう有り様だった。
 小泉前首相は、テロ対策特措法、イラク特措法を制定し、国際貢献や人道復興支援を口実にして強引に海外派兵した。これによって日米同盟は明らかに新しい段階に突入した。しかしなお、大きな限界がそこにあった。憲法9条を残したままの派兵では、武力行使はできない。アメリカと組んで、世界の警察官として「ならず者国家」の鎮圧に派兵するという軍事大国化を実現するという目標からすると、小泉は9条の大きな壁を改めて自覚させられた。
 小泉政権は外交上もう一つの大きな限界を抱えた。小泉首相の靖国神社参拝によって日中と日韓関係が悪化し、財界が切望する東アジアの外交的リーダーシップを握るという目標から大きく後退した。
 というのも、今や中国に進出している日本企業は既に3万社にのぼる。日本企業は、国内生産優先という発想を捨て、東アジアの最適地で生産するという方針を固めている。日本経団連も、その方向を確認した。
 それにもかかわらず、安倍晋三は『美しい国へ』のなかで、次のように強調したのです。
 間違っていけないのは、われわれはアジアの一員であるというそういう過度な思い入れは、むしろ政策的には、致命的な間違いを引き起こしかねない危険な火種でもある。
 このように安倍のナショナリズムには、アジアとくに中国との連帯、そして反欧米という視点がない。なるほど、これではアジアの一員としての日本の前途はないとしか言いようがありませんよね。
 安倍は、従来から、一国の政治力の背後には軍事力があるということを高言してはばからなかった。つまり、自国の国益を軍事的力によって確保・拡大することを積極的に承認していた。安倍は、強い日本、頼れる日本を掲げた。世界とアジアのための日米同盟を強化させ、日米双方が「ともに汗をかく」体制を確立する、と。「ともに汗をかく」とは、アメリカが求めている「血を流す同盟」を品よく言いかえたものである。
 ホント、怖い同盟です。安倍首相が憲法改正理由としてあげるのは次の三つ。
 一つ目は、現行憲法はニューディーラーと呼ばれた左翼傾向の強いGHQ内部の軍人た
ち─  しかも憲法には素人だった ─  が、短期間で書き上げ、それを日本に押しつけた
ものであること、国家の基本法である以上、やはりその制定過程にはこだわらざるをえない。
 二つ目は、昭和から平成へ、20世紀から21世紀へと、憲法ができて60年たって、9条を筆頭に、明らかに時代にそぐわなくなっている。これは日本にとって新しい時代への飛躍の足かせとなりかねない。
 三つ目は、新しい時代にふさわしい新しい憲法をわれわれの手でつくるという創造的精神によってこそ、われわれは未来を切り拓いていくことができるから。
 えーっ、これって、いかに薄っぺらな理由ですよね。侵略戦争をすすめて、敗戦してもまだ十分に反省しているとは言えなかった当時の日本支配層に業を煮やして連合軍が世界の民主主義国家の到達点を「押しつけ」、日本国民がそれを大歓迎して定着したのです。安倍首相は祖父岸信介の血筋をそのまま受け継いでいます。
 しかし、安倍首相の祖先にはもう一人いますよね。そうです。佐藤栄作です。
 核兵器をつくらず、持たず、持ち込まずという非核三原則を堅持する決意を再三表明したことにより、佐藤栄作は1974年、ノーベル平和賞を受けた。ところが安倍首相はこの佐藤栄作にはまったくふれることがありません。本当に危険な戦後生まれの首相です。
(2007年7月刊。1500円+税)

千夜千冊、虎の巻

カテゴリー:社会

著者:松岡正剛、出版社:求龍堂
 この「弁護士会の読書」がはじまって何年になるのでしょうか。私が弁護士会で書評をのせはじめたのは、9.11があった年ですから2001年4月のことです。はじめのうちは恐る恐るでしたから、今のように年に365冊というわけではなく、200冊ほどだったのではないかと思います。1年に読んだ本は当時のほうが多かったのですが、書評としては当時のほうがボリュームは小さく、今のほうがたっぷりしています。今は長すぎるので、もっと短くしてほしいという声がありますが、どうなのでしょうか。このところ年間に読む単行本は500冊ほどですので、だいたい7割程度をここで紹介していることになります。私の場合には、書評というより抜粋という感じなので、本を読んだ気になってしまうという反応はうれしいことでもあります。赤エンピツで傍線を引いたところを紹介し、簡単な感想を記すということでやっています。1冊40〜50分ほどかかります。すべて手書きです。モノカキを自負する私にとっての文章訓練にもなっています。模倣は上達の常道だと信じてやっているのです。
 ところで、この本の著者が紹介する1000冊は、ちょっと私とは断然レベルが違う(高い)という感じです。1000冊のうち、私が読んだ本はせいぜい1割もあるでしょうか。うひゃあー、上には上がいるもんだと、つい思ってしまいました。この本自体は、若い女性編集者との対談ですから、読みやすくなっています。でも、紹介されている本はかなり高度です。
 本は、なんでも入る「ドラえもんのポケット」のようなリセプタクル、なんでも乗せられるヴィークルである。
 本は、どんな情報も知識も食べ尽くすどん欲な怪物であり、どんな出来事も意外性も入れられる無限の容器であり、どんな遠い場所にも連れていってくれる魔法の絨毯なのである。ある日、突然、渦中に飛びこんで読みふけることができる。これが読書の戦慄であり、危険であり、また法悦である。
 本は、無理に読む必要はない。気が向けば読む。できるだけ好きなものを読む。それでいい。それが原則。読書は食事なのだ。読書の基本は楽しみ。読書は交際でもある。
 本は、二度読んだほうがいい。そこに読書の醍醐味がいくらでもひそんでいる。2度目は速く読める。
 電車や喫茶店のなかで本がよく読めるのは、他人が一定いる密度環境が箱ごと一定の音響とリズムで走っているためだ。
 たしかに、私の読書は基本的に電車と飛行機のなかです。車内アナウンスはまったく耳に入らないのですが、面白い内容の世間話がそばであっていると、耳がそちらにひきずられ、目のほうが働かなくなってしまいます。その点、飛行機のなかは、そういうことはまずなく、読書に集中できます。
 読書は、リラックスするときも、忙しいときも、疲れきっているときも、すべてがチャンスである。
 私にとって読書は、忙しいときが一番です。一番、よく頭に入ってきます。昼寝したあとなんて、まるでダメです。気がゆるみ過ぎだからです。
 もちろん、本をたくさん読めばいいなんて、私も思っていません。でも、数多くの本を読むと、それこそヒットする確率は高いのです。至福のときを何度も味わうことができます。やっぱり読書は貴重な宝物です。
(2007年6月刊。1680円)

選挙「裏」物語

カテゴリー:社会

著者:井上和子、出版社:双葉社
 公共事業は土建業界のためにある。そして選挙のときに働いてくれた謝礼として大きなハコ物がつくられる。しかし、そこで使われるのは税金だ。公共事業が少なくなると、それに見返りを求めていた人々が選挙運動に熱心ではなくなった。
 選挙は、公共事業を獲得するための選挙が中心になっていた。高速道路などの土木分野にものすごく予算が回されるので、この方面の業界だけは潤っていた。
 国が損したって構わない。オレたちが潤えば、別にそれでいいんだ。
 でも、これではいけない。税金のかたまりである公共事業をエサにして票を集めるというあざとい選挙スタイルは通用しなくなりつつある。
 著者の考えに賛成します。今回の参院選にあらわれているように、自民党ぶっつぶせを叫んで登場した小泉前首相のおかげで、自民党の支持基盤がかなり崩れつつあるのも事実です。それでも、公共事業という巨額の利権にむらがるゼネコンと暴力団、そしてそれを支えながら甘い汁を吸い続けている政治家たちが、相変わらず大きな顔をしている状況は、まだまだ変わっていないように思います。
 筑後平野に新幹線工事がすすんでいます。一見のどかな広大な田圃のなかを延々とコンクリートむき出しの無骨な高架線路が貫いています。寒々とさせる光景です。日本の国土の荒廃を象徴させるものだと感じます。九州新幹線って、黒字になる可能性なんて初めからないのではありませんか。少なくとも私はそう思います。莫大な赤字路線をつくり、税金で穴埋めしていくことになるのは必至です。大型公共事業を中心とする政治を今のまま続けていいことは、何もありません。
 民主党の候補者は、汗水流して下積みの苦労をしていない人が少なくないので、目に見えない心配りや目立たない苦労への理解が足りないケースが多い。このような公募で当選した民主党の政治家のなかには、自民党の公募で落ちたから、仕方なく来たという無節操なタイプがいる。
 もちろん、無節操ではありますが、自民党と民主党とに本質的な違いがないことの反映だというほうが、より正確ではないでしょうか。ただし、参院選のあと、自民党が大敗したことをふまえて民主党は自民党との違いを浮きたたせようと必死です。それが憲法改正に反対する方向であることを私は心から願っています。
 猛暑の毎日です。だから、なのでしょうか。セミの鳴き声がパタリと止んで、勢いがなくなってしまいました。まだツクツク法師は聞かれません。庭に淡いピンク色の芙蓉の花が咲いています。酔芙蓉はまだです。午前中は真白の花なのに、午後から赤味がさしはじめ、夕方にはピンク色になって、酔った状態に変わります。
(2007年6月刊。1400円+税)

グーグル革命の衝撃

カテゴリー:社会

著者:NHK取材班、出版社:NHK出版
 今どきインターネットで検索できないというのも情けない話ですが、残念ながら私は自分では出来ません。いつも秘書にやってもらいます。検索しといてね、と声をかけるだけですみますから、ことは簡単です。でも、現役を引退したときはどうしましょう。そのときには、きっぱりインターネットの世界と縁を切るしかなさそうです。負け惜しみになりますが、あまり未練はありません。
 グーグルは社員が1万2000人。売上高が106億ドル。前年比73%増。時価総額は18兆円。アメリカの1ヶ月間の検索回数は69億回。
 グーグルへの就職希望は月に10万件を超え、人気絶大。グーグルは全米でもっとも働きやすい職場となっている。社内にはスポーツジムがあり、ソフトボールやテニスも自由にできる。食事やクリーニング・マッサージまで、すべてが無料となっている。グーグルで働く日本人も少なくない。
 グーグルには、世界中、25ヶ所に45万台のコンピューターがある。世界中のネット上のホームページは150億以上。300億をこえるという推計もある。
 検索件数は1998年に1日1万件だったのが、1日あたり1800万件になった。
 グーグルの収入の中心は、検索連動型広告「グーグル・アドワーズ」である。
 2000年末に検索件数は1日1億件をこえ、2001年にグーグルは黒字となった。それからは、年々、売上げが倍増していった。
 2005年のネット広告の市場規模は125億ドル(1兆5千億円)で、その4割6千億円が検索連動型広告である。これは、わずか5年で60倍になった。これをターゲット広告ともいう。
 グーグルは、広告の個人化を着実にすすめている。たとえば、次のようになる。
 飛行機でシカゴに着いて、ケータイをオンにする。すると、ケータイの音声が次のように告げる。シカゴに着きました。今はランチタイムです。ピザ屋が左手にあり、ハンバーガー屋は右手にあります。きのうはハンバーガーでしたね。
 ひゃあ、怖いですね。恐ろしいことですよ。ここまで管理されては、たまりません。目の前にいる美人に声もかけられないじゃないですか。これではまるで管理社会ですよ。
 グーグルが先進国で唯一攻略できていない市場。それが日本だ。
 うへーっ、そうなんですか。ヤフー65%、グーグル35%だというんです。そこで、グーグルは日本のすすんだケータイの活用を考えているとのことです。
 最後に、グーグルは知ではない、という小宮山・東大総長の話を紹介します。
 インターネットをつかって情報を簡単に入手できる便利さには落とし穴がある。情報収集にかけた膨大な手間と時間は、ムダなように見えて、決してムダではない。その作業を通じて頭の中で多様な情報が関連づけられ、構造化され、それがヒラメキを生み出す基盤となってきた。インターネットで入手した、構造化されていない大量の情報は、「思いつき」を生み出すかもしれないが、ヒラメキを生み出すことはきわめて稀だ。頭のなかに、いかに優れた知の構造をつくり出すことができるか、それが常識を疑うたしかな力を獲得するカギなのだ。
 うむむ、そうなんですよね。この指摘はあたっていると私も思います。ですから私はネット検索できなくても生きていく自信はあるのです。ホント、です。
 コピペという言葉、知ってますか?コピー・アンド・ペーストの略語です。既成の記事をコピーして、そのまま自分の文章に貼りつけていくことです。一昔前のノリとハサミですね。グーグル脳は怖いですよ。多くの若者が、グーグル漬けの状態になっています。これでは、日本と世界の本当の明るい未来はありません。ねっ、そう思うでしょ?

伝説の社員になれ

カテゴリー:社会

著者:土井英司、出版社:草思社
 ビジネス書を1万冊も読んだというのです。あれれ、ビジネス書って、そんなに面白いものなのかしらん、私は懐疑的になりました。
 最低限の利益を出すには、人件費は売上げの3割におさえるのが経営の原則だ。つまり、今もらっている給料の3倍の売上げをあげて、ようやく給料にみあう働きをしていることになる。
 必要なことは、出世したり、高い給料を追い求めることではない。一生を通じて自分がケアをし、それによって自分も成長できる、そんな対象を見つけること。
 どんなことでも9年間続けたら成功できる。そして、成功するためには、その代償として何を捨てなければならないのか、それも考慮する必要がある。
 一流の人と出会い、つきあうことの利点は、情報をもらえる、何かトクがあるということではない。この人には絶対かなわないと実感できることだ。一流の人にふれると、彼らに勝てるとしたら、自分のどの部分だろうと考えるきっかけにする。
 一流の人にふれる利点は、素直に負けを認められること。
 私も新人弁護士のとき、先輩弁護士のあまりのすごさに圧倒されてしまいました。とてもかなわないと思いました。今でも、それは同じです。ともかく、口八丁、手八丁なのです。いやあ、これはかなわない。そう思ってしまいました。でも、どこか、私もできるところがあると思い、生まれ故郷にUターンしたのです。
 継続するための一番の方法は、それを習慣にしてしまうこと。
 一日の生活を単純化しています。夜12時に寝て、朝は7時に起きる。それは絶対に崩さない。朝はフランス語の書きとりをし、土曜日はフランス語会話教室に通う。夜はテレビを見ず、ひたすら活字を読むか、書きものをする。これで30年以上、やってきました。ようやく、世の中が少しずつ見えてきました。
 いろいろ参考になる言葉が紹介されていました。
(2007年4月刊。1200円+税)

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