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カテゴリー: 社会

刷新!改革新長(京都市長選挙の記録)

カテゴリー:社会

著者 中村 和雄、 出版 京都市政を刷新する会
 2008年春(2月17日)、京都市長選挙でわずか951票差で惜敗した中村和雄弁護士の選挙戦を振り返った小冊子です。ずいぶん前に贈られてきてたのですが、そのうち読もうと思ってツンドクしているうちに、今日に至りました。読み始めると、さすがに京都人はすごいと感嘆しましたので、ここに紹介します。
 951票差というのは、中村候補15万7521票、当選した門川候補15万8472票というのです。本当に、ごくごくわずかの差でした。京都市内の11の行政区のうち、4つの行政区で中村候補が勝っています。政党として中村候補を推薦したのは共産党だけです。いくら京都で共産党が強いといっても、共産党対残る全政党という構図で勝てるはずがないのに、なぜ、ここまで大接戦、僅差に持ち込んだのか、とても興味があります。
 中村弁護士が候補者活動を始めたのは、前年(2007年)5月のことです。それから、市民にはまったく無名の新人が名前を売り込んでいくのですから、大変な苦労があったことだろうと思います。
 京都弁護士会400人のなかの4割160人が中村弁護士を支持してくれたそうです。過半数に達しなかったのは残念です。弁護士の世界も変革は容易ではないのですね。
 中村候補の大健闘は、京都市政における同和行政のあまりにひどい不正の横行に対する広範な市民の怒りを前提としたものでした。京都市の職員が不公正な同和行政がらみで次々と不祥事を起こして逮捕されたりして、その実態が明るみに出て行ったことがありました。
9ヶ月間のあいだ、弁護士としての活動をほとんどしなかったようですが、中村弁護士は「とても充実した楽しい日々でした」と語っています。
 生放送のテレビ討論はやりがいがあった。まさに反対尋問の応用だった。このように語っているのは、さすがに候補者として大きく有権者を惹き付けた中村弁護士ならではの感想です。
 私も若いとき、たった一度だけですが、NHKの朝のテレビで生放送の番組に出演したことがあります。前泊して渋谷にあるNHKスタジオで出たのですが、全国に流されるというのですから、それはそれは緊張しました。
 中村弁護士は、論戦で相手候補を圧倒したので、それで勝負があったはずだけど、政治の世界では正義が必ずしもすぐには勝たない、時間がかかることもあると述べていますが、本当にそのとおりですね。でも、最近の南アメリカの動きを見ていますと、少し時間がかかっても、いずれ近いうちに日本もきっと大きく刷新、本当に変革(チェンジ)するのだと私も確信しています。
 政策・宣伝の分野に関わった人たちの座談会に目が留まりました。チラシづくりの工夫が語られています。
 一番大事にしたのは、単純に一般市場に通用するカッコイイ物を作ろうということ。見たときのストーリー性とか、単純なカッコ良さ。
 そして、中村候補がブログを自分で毎日更新したことが一番よかった。町中を「おーい中村君」と呼びかけるテープで流してまわった。
宣伝、そして、インターネットの活用がますます大切だと思いました。中身は同じでも、装いを刷新したら、さらに大きく影響力は広がっていくのです。
  
(2008年9月刊。

さよなら紛争

カテゴリー:社会

著者 伊勢崎 賢治、 出版 河出書房新社
 この本を読むと、日本の平和憲法こそ、今の日本が世界に誇りうる最大の宝物だということがよくよく分かります。なにしろ、世界の紛争最前線をくぐり抜けてきた人の体験を踏まえての提言ですから、ずっしりと腹にくるほどの重みがあります。
 日本の憲法は、欧米諸国でかなり研究されている。これが世界平和の鍵だという意識で、まじめに研究している人がいる。だから、これを広告戦略として打ち出していけば、もっと大きなムーブメントに成長していくはずだ。ところが、日本国内では、なんと平和憲法(9条)を捨てようという方向に動いている。そうなんです。なんという愚かなことでしょうか。
 日本がテロリストからまだ攻撃されていないのは、憲法9条があるから。日本は中立である。戦争はしない。そう言いきっている国の人間を警戒する理由は何もない。それは、ソニーとかホンダ、ニッサンというような日本製品への信頼と重なり合ってできている信頼感なのだ。なるほど、なるほど、まったくそのとおりですよね。
著者は建築家を表して早稲田大学の建築学科に進学しました。しかし、そこで失望して、海外へ転身したのです。インドで住民組織のリーダーとなったらインド政府からマークされ、国外退去命令を受けてしまいます。
 そして、日本に帰って、国際協力NGOに就職し、派遣された先がアフリカのシエラレオネでした。ここは世界最貧国でありながら、激しい内戦のまっただなか。そこでは少年兵が最も残酷な蛮行を働いていました。司令官も15歳の少年。勇敢に戦えば、15歳でも司令官になって、大人を指揮することになる。面白半分で人を殺し、残酷さを競い合う。始末に負えない。
 4年間、シエラレオネでがんばったあと、著者は次に東ティモールに派遣され、県知事に任命されます。その指揮下に、1500人の国連平和組織軍がいて、平和維持のために4年間がんばったのです。すごいですね。
 そして、さらに元いたシエラレオネに再び派遣されます。そこでは、アメリカ主導によって「平和」がもたらされた。アメリカは、さんざん人々を虐殺してきたRUFを免罪し、そのリーダーを副大統領に迎え入れた。
 著者は、そのシエラレオネで武装解除にあたります。もちろん、まったくの丸腰です。
 よくぞこんなに勇気ある日本人がいたものです。そして、その日本人が日本国憲法9条の大切さをとくとくと説いているのです。じっくり静かに胸に手を当てながら味わうべき言葉です。
紛争が絶えない世界だからこそ、武器を捨てようと日本は呼び掛けるべきなのだ。それは、決して「平和ボケ」ではなく、真に勇気のある言葉なのである。
 素晴らしい本です。なんだか、臆病な私まで勇気が湧いてきた気がしました。
 
(2009年4月刊。1200円+税)

がんは患者に聞け!

カテゴリー:社会

著者 吉田 健城、 出版 徳間書店
 有名人16人のがん闘病記録ですので、読ませます。
 山田邦子(乳がん)、鈴木宗男(胃がん)、市田忠義(大腸がん)、仙谷由人(胃がん)など、それぞれの人たちのがんの壮絶なたたかいの記録でもあります。
 また、読んでいるうちに、勇気も湧いてくる本です。
女優の洞口依子さんという人は、私の全然知らない人ですが、子宮頸がんになって、子宮を広く摘出し、後遺症に悩まされました。そんな彼女が心の支えとしたのが、書くこと、でした。
 朝日新聞の夕刊にコラムを書き、それを単行本にした。書いているうちに、それまで見えていなかった自分が見えてきた。自分に起きたことを短い文にまとめる作業は、客観的に自分を見つめ直す作業だ。病気になってから起きたことを、あれこれ思索しているうちに、そのときどきの自分と病気とのかかわりも見えてくるので、書けば書くほど病気との付き合い方も分かってくる。文章を書くことで、最近、ようやく病気との距離感がつかめるようになった気がする。それで、ちょっと自信もついてきた。なるほど、そういうこともあるのですね。
テレビの政治討論会に出演することも多い共産党の市田忠義氏(書記局長)は、大腸がんの手術後の後遺症として、生放送の討論会の最中にひどい便意に襲われました。民法の番組のときにはコマーシャルタイムにトイレにかけこみ、事なきを得ました。しかし、NHKのときには、コマーシャルタイムがありません。ついに、途中でトイレに駆け込んだのです。それでも、ディレクターがアングルを工夫してくれ、さらに、藤井裕久議員が優しく教えてくれたそうですがんという病気を根絶できる薬はまだ見つかっていませんが、早くだれか見つけてほしいものです。
 
 ツテツの木のすぐそばに今年もツバメ水仙が朱色のスマートな花を咲かせてくれました。1月から咲き始める水仙の最後を飾ります。花弁が細くて、すらっとしていて、ツバメが空を飛びまわる姿を連想させる花です。
 アマリリスの朱色の花も咲いています。もう雑草に埋もれてしまったのかとさびしい気がしていましたが、ことしも元気に咲いてくれました。手植えした植物が見事な花を咲かせてくれるのはうれしいものです。
(2009年1月刊。1700円+税)

古典への招待(下巻)

カテゴリー:社会

著者 不破 哲三、 出版 新日本出版社
 大学生のころ、必死になってマルクスやレーニンの書いた本を読んでいました。もちろん、私ひとりではなく、周囲の学生もかなり読んでいて、読まない学生のほうが肩身の狭い思いをしていました。マルクスの哲学の本はかなり難解で、何回読んでもよく分からないところがありましたが、それでも物事を表面的に眺めるのではなくて、その本質をつかんで考える上では、とても勉強になりました。
 この本は、そんな気持ちを取り戻したくて、久しぶりに読んだというわけです。今回もまた、なるほど、そういうことだったのか、と何度も目を開かされる思いをしました。良く分からないところも多かったのですが、著者が今日的視点からの解説をしてくれていますので、分かるところも多々ありました。
 ヘーゲルは、現実的なものはすべて合理的であり、合理的なものはすべて現実的である、と言った。これは、あわてて読むと、今存在しているものがすべて理性にかなったもので、現存している体制のすべてを賛美する哲学のように聞こえる。
 しかし、ヘーゲル哲学は、そんな単純なものではない。「現実性」というのは、ただ現に存在しているというだけでは足りない。どんな事物も、それが合理的であるときに、はじめて必然的な現実となる。いま存在しているものでも、現実の諸条件に合わず、合理性を失ったときには、非現実に転化する。そのときには、現状維持ではなく、現状を変革する革命が現実的なものになる。ここにヘーゲルの命題の真意がある。つまり、現実的なものはすべて合理的であるという命題は、すべて現存しているものは滅亡するにあたいするという命題に解消する。
 うむむ、なんという逆転解釈でしょうか……。
 世界は、出来上がっている諸事物の複合体としてではなく、諸過程の複合体としてとらえられねばならず、そこでは見かけのうえで固定的な諸事物も、われわれの頭脳にあるそれら諸事物の思想上の映像、つまり概念におとらず、生成と消滅のたえまない変化のうちにあり、この変化のうちで、見かけのうえでは偶然的なすべてのものごとにあっても、また、あらゆる一時的な後退が生じても、結局は、一つの前進的発展が貫かれているという偉大な根本思想がある。
 自分が社会によって生み出されながら、経済的基礎との関連を忘れ去り、独立した力としてふるまうこと、エンゲルスはこの見かけ上の独立性を、上部構造に属する社会的意識形態の共通の特徴としてとらえ、これをイデオロギーと呼んだ。国家は上部構造の全体のなかでも、経済的基礎にもっとも接近した位置にある存在である。
 国家の見かけ上の独立性、そのイデオロギー的性格は、国家の機能の一部を専門的に担う職業的政治家や法律家の登場とともに、いよいよ強固なものとなる。これらの人々のところでは、政治や法律と支配階級の要求など、経済的事実との関係は、意識的に断ち切られる。
 上部構造は、国家などの社会組織やさまざまな社会的意識形体からなるが、これらは全体として、究極的には、経済的関係によって規定される。しかし、経済関係に規定されているという関係は、目に見える形で表面に表れているものではなく、その思想や観念の領域が物質的過程から離れるほど、あいだにいくつもの中間項が介在し、よりこみいった関連性は隠れてしまう。
 イデオロギーと経済的関係との関連は、イデオロギーの諸形態の当事者たちには意識されず、忘れ去られる。自分が独立した歴史と論理を持つ、独立した思想領域だと思い込むからこそ、イデオロギーはイデオロギーとして、社会的機能を果たす。
 今の日本をよくよくとらえ直して見るときの思考にも大変役に立つ本だと思いました。
 
(2009年4月刊。1700円+税)

ルポ 労働と戦争

カテゴリー:社会

著者 島本 慈子、 出版 岩波新書
 日本は、憲法9条で軍隊を否定しながら、自衛隊という軍事力をもっている。この現実のねじれは、「専守防衛」というキーワードで正当化されている。これは、9条が消えたら「専守防衛」というキーワードも消え、日本が外国で兵器を使うこともありうるということだ。
 日本の自衛隊が、2006年度までに調達したクラスター爆弾は、23%はアメリカ製で、残る77%は国産だ。つまり、この日本の中で日本の労働者がクラスター爆弾をつくっている。そうなんですね。毎日毎日、人殺しの役にしかたたない爆弾をつくっている人が日本にもいるわけなんですね。
 戦闘の無人化が何を意味するかというと、銃後の責任が重くなるということだ。アメリカ軍の基地を拒む感情は今も根強い沖縄だが、アメリカ軍基地で働きたいという若者が増えている。民間の人材派遣会社が、会社によっては何百人という規模で、派遣社員をアメリカ軍基地内の諸機関へと送りこんでいる。
 2007年度、沖縄でのアメリカ軍基地の従業員募集に際して、341人の採用に対して8448人が応募した。同じように、沖縄以外の本土でも、884人の求人に対して3425人が応募している。
 アメリカ軍基地で働く雇用形態はさまざまだ。雇用主は日本政府で、使用者はアメリカ軍という雇用形態が一番多い。全国で2万5000人、神奈川と沖縄が9000人、東京が3000人弱。こんなに基地で働いている日本人がいるのですね……
 一人ひとりの仕事が細分化されているため、従業員はアメリカ軍の殺戮に加担しているという意識は持っていない。うーん、これも考えさせられます。
 憲法9条があり、武器輸出3原則のある現時点の日本では、軍需部門の肥大した大企業は存在しない。防衛省への納入額トップの三菱重工でさえ、防衛部分の売り上げは全体の20%にも満たない。
 日本国内の防衛産業全体に従事しているものは6万人。軍事大国アメリカの場合は、軍需関連の仕事をしている民間労働者は360万人。フランスでは、軍需関連の労働者は100万人。いやあ、これ以上、軍需産業が肥大化しないように、私たちは不断の監視が必要ですね。
 この一見平和を謳歌している日本で、人殺し兵器を作る人が6万人もいるなんて、ぞっとします。ほかに仕事がないため、アメリカ軍基地で働くのを希望する若者が増えているという指摘にも心身が震え、凍る気持ちです。
 アメリカでは、貧困から抜け出そうとして軍隊に入り、イラクなどに送られて、毎日毎日、人が殺され、人を殺す現場にいて、平常心を奪われて精神を病む若者が急増しているとのことです。日本も、平和憲法とりわけ9条を守り、そんなアメリカのような国にならないようにしたいものだとつくづく思います。
 火曜日、日比谷公園の中を歩くと、真っ赤な大きなバラがたくさん咲いていて、若い人たちがケータイで写真を撮っていました。黄色いバラも爽やかな感じですね。赤いバラのそばに白いバラもありました。初夏というより、夏本番という気温で、汗ばむほどでした。札幌から来た弁護士はようやく桜が咲き始めたと言っていました。
(2008年11月刊。740円+税)

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