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カテゴリー: 社会

自民崩壊の300日

カテゴリー:社会

著者 読売新聞政治部、 出版 新潮社
 私は戦後ながく続いた自民党政治が消え去ったことを心から喜んでいます。金権腐敗、汚職まみれの大型公共土木工事優先で福祉切り捨て、そして憲法改正とアメリカ追随。こんな自民党政治のイメージに、うんざりしていました。どうして日本人はもっと怒らないのだろうかと不思議でなりませんでした。
 その自民党政治に終止符を打った今回の総選挙は、民主党政権への期待というより、国民の積年の怒りがついに形になってあらわれたものと考えています。
 この本は、自民党政権が崩壊していった300日間をたどっています。別に目新しいことが書かれているわけではありませんが、ともかく、同じ日本人であることにこちらが恥ずかしくなるような人物が日本国の首相でありつづけたこと、そんな政治はやっぱり長続きしないことが改めてよく分かる本です。
 麻生政権の後半は、麻生太郎首相の「盟友」を自称する面々が、次々と麻生のもとを離れていく展開となった。ある者は自滅し、そしてある者は麻生に失望して……。
 麻生が権力の座に近づきはじめたころから、急速に麻生の「側近」然とする取り巻きが増え始めた。もともと自民党内でも弱小派しか率いることのできなかった麻生が、急に人望を集めたわけではない。幸運なめぐり合わせで麻生が首相のイスに座ることができたのは、党内で敵の多かった麻生を見捨てず、支えてきた古くからの友人の存在があったから。しかし、麻生は彼らの助言よりも、にわかに麻生にすり寄って甘言をささやく「盟友」の言葉を信じ、政局判断を誤り、決断の機会を逃していった。麻生は、宰相としての日々を「どす黒い孤独に耐える日々」だと言ったが、麻生を利用することばかり考える「側近」が麻生政権を蝕み、麻生をいよいよ孤立させていった。
 そうなんですよね。私は今回の自民党政権打倒の最大の功労者は、麻生首相その人だと考えています。なぜなら、麻生政権誕生と同時に解散・総選挙が行われていたら、今回のような民主党圧勝という選挙結果になったはずはないからです。麻生首相が、もう少しテコ入れしたら、もう少し支持を回復できると解散を先送りしていってくれたことが、結果として重大な判断の誤りにつながったと思うのです。
 自民党の役割について、加藤紘一元幹事長は、冷戦時代の東アジアで共産勢力の拡張を防ぐ西側の橋頭堡としての役割があったが、冷戦終結とともにその使命は終わったと分析している。
 KY首相。空気が読めない。漢字が読めない。解散も読めない。経済も読めない。国民感情も読めない。
 本当に最低最悪の首相でしたが、政権交代の促進役として偉大な功績があります。なにより、日本国民に投票によって政治が変わることを実感させてくれたことの意義は、特筆すべきだと思います。
 
(2009年10月刊。1400円+税)

暴走族だった僕が大統領シェフになるまで

カテゴリー:社会

著者 山本 秀正、 出版 新潮社
 すごいですね、28歳の日本人青年シェフが、アメリカの大統領就任式のあとのパーティーの総料理長だったというのです。場所は、かのザ・リッツ・カールトンなのでした。
 そしてこの青年は、高校生のころ暴走族にいて、大学はたちまち中退していたのでした。ところが、サーフィンをあきらめて料理の世界に入り、イタリアにわたって料理学校で学ぶうちに料理の道に開眼したのでした。
 それは、幼いころから親の影響で本物の料理を味わっていたからでしょうね。赤坂の交差点にあるマックは、いつも混んでいますが、あんなところで幼いころに舌が麻痺してしまったら、とても繊細な料理人にはなれないように思います。やっぱり、素材の味を生かす料理を大切にしてほしいものです。
 アメリカは料理を大切にしない国だと私も思います。最近は久しくアメリカに行っていませんが、ともかく料理はダメな国です。楽しみがありません。分厚いステーキに塩をふりかけて食べたら最高。そんな国ではないのでしょうか。
 その点、フランスは何度行っても小さなレストランまで、本当に食事を大切にしていることがよく分かります。素材を大切にし、また、調理法、とりわけソースに手間をかけています。食べる楽しみがあります。そして、時間をかけてじっくり食事を堪能するのです。ですから、著者も、外国で料理人として修業するなら、アメリカではなくてヨーロッパでしたらいいと勧めています。同感です。
 私はイタリアには行ったことはありません(いえ、実は北イタリアのティラーノ、そしてコモとミラノ市には、この夏、行ってきました。でも、それはスイスの延長なのです)ので、イタリア料理のことはよく分かりませんが、イタリアンもいいようですね。ピザだけではないのです。
 著者は最近、東京にオープンしたマンダリンオリエンタル東京の初代総料理長でした。
 日本人シェフの奮闘記を読むのは、私の楽しみな読書ジャンルのひとつです。もちろん、そこの店に一度は行って、紹介されている料理を味わってみたいものだと夢見ているのです。ごちそうさまでした。
 月曜日、日比谷公園の中を歩きました。銀杏の木が見事に色づいていました。菊花展もあっていて、花壇に真紅の薔薇の花が咲いています。秋も深まり、冬の気配を感じます。
(2009年9月刊。1300円+税)

すし屋の常識・非常識

カテゴリー:社会

著者 重金 敦之、 出版 朝日新書
 私は、自慢話ではありませんが、いわゆる回転寿司の店には一度も入ったことがありません。それは私にとって、マックやケンタの店に入ったことがないのと同じことです。つまり、お仕着せの店というか、人工着色、人工味付けのものは食べたくないということに尽きます。
 京都に、タケノコの専門料亭があるそうです。刺身、焼き物など、タケノコ尽くしだそうです。といっても、刺身がまったくの「ナマモノ」かというとそうではなく、ちゃんと湯がいてあるそうです。そうですよね。その料亭の女将によると、どんなに朝早く掘り起こしたタケノコでも、生のままだとちっとも美味しくないというのです。やっぱり、少しだけでも人の手が加わって美味しくなるのです。
 ノドグロ(アカムツ)も寿司ダネになっているそうです。残念ながら私はまだ食べたことはありません。少し脂身が強すぎて、やはり干物にしたくらいがちょうどいいということでした。負け惜しみになりますが、私も一度くらいは食べてから、そんな解説をしてみたいものです。
 築地市場でのミナミマグロの値段は、過去5年より4~5割も高くなっている。マグロは、江戸時代には下品な食べ物だった。さつまいも、カボチャと並んで大変に下品なもので、ちょっとした町人は、食べるのを恥ずかしいと思っていた。うへーっ、そ、そんな馬鹿な、と思わず言ってしまいました。
 私は、寿司を手づかみで食べることはありません。通はハシを使わないと聞いてはいますが、なんでもハシをつかって食べるのを常としている私は、当然のようにハシを使います。なにしろ、スパゲッティだってハシがあればハシで食べるんです…。
 寿司屋にハシ置きのないところがあります。手づかみで食べてくれというわけです。でも、なかなか手づかみでというわけにはいきませんよね。とくに女性だったら、なおさらのことではないでしょうか。
 こんな寿司店の本を読むと、すぐにでも寿司をつまんで食べたくなってしまいます。
 
(2009年2月刊。760円+税)

日本でいちばん大切にしたい会社

カテゴリー:社会

著者 坂本 光司、 出版 あさ出版
 景気の悪い会社の経営者がする5つのいいわけは、次のとおりである。
①景気や政策が悪い
②業種・業態が悪い
③規模が小さい
④ロケーションが悪い
⑤大企業・大型店が悪い
 そして、社員やその家族、下請け企業や顧客などの幸福に対する思いが総じて弱く、低い。
 会社に所属している社員と、その社員を一生懸命に支えている家族を幸せにすること。これが、社会の公器である会社が果たすべき第一の使命である。お客様を感動させるような商品をつくったり、サービスを提供したりしなければいけない当の社員が、自分の所属する会社に対する不平や不満・不信の気持ちに満ち満ちているようでは、ニコニコ顔でサービスを提供することはできない。なーるほど、ですね。トヨタ、ニッサン、そしてキャノンで働く社員はどうでしょうか……。偽装請負、派遣の社員を含めると、どうなんですか。社員は不満だらけ、不安にみちみちていることでしょう。
 お客様がいなければ創ればいい。創ることが、会社の本当の使命なのだ。
 経営で一番大切なのは継続である。会社を継続させること。これが、企業の社会的使命である。会社にも寿命があるのですね。天下の三井も、今や見る影もありません。目先の利得ばかりを追って来たからではないでしょうか。
 粉の飛ばないチョーク(ダストレスチョーク)をつくる日本理科化学工業(川崎市)は、従業員50人のうち7割が障がい者である。しかし、この会社は次々に面白い新商品を生み出し、経営的にも十分な採算がとれている。
 ここでは、創意工夫を繰り返していきながら、知的障がい者を採用し続け、それが50年になる。採用基準は、自分の身の回りのことができること、返事ができること、一生懸命に仕事をし、周りに迷惑をかけないこと。
 こんな会社があるなんて、ちっとも知りませんでした。このような会社は大切です。みんなで守り育てたいものですよね。
 長野県に創業(1958年)以来48年間、連続して増収増益という記録を持つ会社がある。寒天をつくる会社で、国内市場の80%、世界でも15%のシェアを占めている。寒天メーカーの世界的トップ企業である。そして、48年間、社員を雇い、社員の給料とボーナスを上げ続けてきたことを誇りにしている。この会社は、無理な成長を追わず、敵をつくらないということをモットーとしている。
 いろんな会社があり、それぞれに工夫しているわけですが、その基本はどこも人間を大切にしているということです。
 そこで働く従業員をまず大切にするから、すべては出発するのですね。とてもいい本でした。日本経団連という大企業本位の金権政治をすすめる総本山の元締めであるキャノンやトヨタ、そしてニッサンの経営者にぜひ読ませたいものです。自分たちの金もうけと株主本位だけでは、会社と日本の将来はないのですよ。
 
(2009年10月刊。1400円+税)

同和と銀行

カテゴリー:社会

著者 森 功、 出版 講談社
 同和問題を食い物にする解同(部落解放同盟)と暴力団、そして、それとまったく癒着した銀行のみにくい姿が赤裸々に暴露されている本です。そのすさまじいばかりのおぞましさに身震いしてしまいます。
 この本に登場する主要人物は、部落解放同盟大阪府連合会飛鳥支部長であり、三菱東京UFJ銀行の課長です。
 解同飛鳥支部の小西邦彦支部長は、暴力団三代目山口組金田組の構成員でもありました。
「小西枠は5億。小西案件はいっさい3階の役員室に持ち込んだらあかん」
小西との取引について、三菱UFJ銀行では、支店の決裁ですべて終わらせ、本店に取引案件を持ち込むような真似をするな。このように指示されていた。
 同和対策事業特別措置法が1969年に施行されて以降、2002年に法が失効するまで、15兆円もの事業費がつぎこまれた。ゼネコンにとって莫大な利権である。だから、同和団体の実力者に取り入ろうと懸命になった。
 小西邦彦は、税務当局にも強かった。それには、国税当局と部落解放同盟の間には「7項目の確立事項」があった。密約である。この密約では、同和事業については、課税対象としないと明記されている。この密約を取り交わした大阪国税局長は、のちに大蔵事務次官にまでのぼりつめた高木文雄である。
 いやはや、同和事業でどんなにインチキがなされても、税務署は一切手を出さないという密約があっただなんて、法治国家日本の看板が泣きますね。しかも、その人が大蔵省トップに上り詰めていたなんて、どうなってんでしょうね。日本の官僚システムは……。
 さらに小西邦彦は、警察とも癒着していました。東淀川警察署では、幹部が着任すると小西に必ず挨拶に来ていたし、小西が歓送迎会を開いた。去っていく前任者のポケットに「封筒」を突っ込む。小西は警察官の再就職の面倒もよく見ていた。
 小西は、西條秀樹の結婚披露宴の主賓として招かれていた。芸能界にも顔が広かったのですね。山口組の田岡組長もそうでしたよね。
 暴力追放とか差別をなくそうという掛け声がうわべだけだということが良く分かる本でした。
 秋も深まりました。熊野古道では全山が紅葉していました。遠くの山にイーデス・ハンソン氏の居宅を眺めました。かなりの高さにあるので、日常生活には不便かなと余計な心配をしてしまいました。それはともかく、我が家の庭のスモークツリーの紅葉も見事なものです。鮮やかな赤色です。緋色というのでしょうか。
 隣のエンゼルストランペットの黄色の花とよく似合っています。
 球根の植え替えをすすめていますが、水仙がどんどん伸びています。
 
(200年月刊。円+税)

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