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カテゴリー: 社会

在日米軍最前線

カテゴリー:社会

著者  斉藤 光政  、 新人物文庫 
 日本とアメリカによる3年かかりの壮大なガラガラポンの果てに姿を現したのは、アメリカ軍によるさらなる基地強化、つまり日本列島の前線化にほかならなかった。それは、戦略展開拠点ニッポンの現実だった。
 「世界の警察」を自認し、世界中のどこにでも即時に出撃することを前提としているアメリカ軍は150万人の大兵力を世界の5つの地域に分けて展開している。この統合軍で最大規模を誇るのが、ハワイに司令部を置く太平洋軍だ。
 太平洋軍の総兵力は30万人。在日アメリカ軍は、陸軍2千人、海軍5千人、空軍1万4千人、海兵隊1万8千人の計3万9千人。このほか、太平洋艦隊第7艦隊1万2千人がいるので、太平洋軍の6分の1、5万人が日本列島を拠点に活動している。
 私は、近く(5月末に)青森の三沢に出かける予定です。この三沢にはアメリカ軍の第35戦闘航空団が常駐しています。
 三沢基地には、戦闘機F16Cファイティングファルコン40機が配備されている。この航空団は、敵防空網の制圧と制空権の確保が目的であり、全軍の露払いを使命とする。
 三沢基地には、「ゾウのおり」と形容される巨大な円形アンテナと、14基の大型パラボラアンテナが林立するパラボラアンテナのうち4基は秘密通信傍受システム「エシュロン」に使われていて、軍事スパイ網の要となっている。
 アメリカは、青森県を「友好的で、アメリカ軍基地に対する抵抗感が強くなく、機密保持に適した場所」とみている。三沢基地には、アメリカ軍がF16を2個飛行隊かかえ、自衛隊がF2を2個飛行隊かかえる。つまり、80機の攻撃飛行隊が集結する。こんな基地は世界でもまれだ。このように三沢基地は、対地攻撃に特化した一大拠点になろうとしている。
1960年代、三沢のアメリカ軍基地では、1年間に2000発以上の核模擬弾を消費していた。三沢は「核漬け」の状態にあった。1961年9月から1963年8月までの2年間に、6機ものF100戦闘爆撃機が訓練ルートで墜落した。これらの事故の多くは公にされることはなかった。
 核攻撃任務を与えられていたのは三沢基地だけではない。埼玉県の入間、福岡県の板付、愛知県の小牧、沖縄県の嘉手納も同じである。
 嘉手納の核貯蔵庫から、三沢、入間、小牧、板付に核弾頭が搬出されていた。嘉手納には、予備もふくめて最低200個、通常400個ほどの核弾頭が配備されていた。今、これがゼロだとはとうてい思えませんが・・・・それはともかく、日本がアメリカ軍の最前線基地になっているなんて、とんでもないことです。
 ところが、多くの日本人は今なお、アメリカ軍が日本を守るために日本にある基地を構えているかのように錯覚しています。アメリカが日本を守ってくれるなんて、ありえないことです。むしろ、アメリカの戦争に日本が巻き込まれてしまう危険のほうがよほど大きいと思います。
 そんなことを実感させてくれる絶好のレポートです。小さな文庫本ですが、内容はずっくりと重たいものです。どうか、ぜひ読んでみてください。
 
(2010年3月刊。667円+税)

ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘

カテゴリー:社会

著者:水木悦子、赤塚りえ子、手塚るみ子、出版社:文藝春秋
 タイトルを見ただけで何の本か、誰のことか分かった人は偉いですよ。私も、これらの娘さんのお父さんたちのマンガには子どものころ(大学生まで)大変お世話になりました。 ゲゲゲの鬼太郎って、初めのうちはすごく不気味なマンガでしたね。だって、墓場を舞台として、妖怪たちがゾロゾロ出てくるのですから・・・。天才バカボンにはまいりました。イヤミがシェーッと言って飛び上がるのは、大学生のとき、みんなでよく真似をしました。大学の寮で、みんなで回し読みしていたのです。『ガロ』なんかも人気でした。白土三平の「カムイ伝」も良かったです。百姓一揆が初めて具体的にイメージできました。そして、「火の鳥」など、手塚治虫には弁護士になってからも「ブラック・ジャック」など愛読しました。
 娘たちにかかると、偉大なマンガ家も顔色なし、です。案外、娘たちは父親のマンガは読まずに、他人のマンガを読みふけっていて、オヤジたちは、それを気にしていたというのも面白い事実です。
 赤塚不二夫の娘は、高校2年生のとき、パパの彼女と一緒に海外旅行に行ったことがあるといいます。さすがに、それを母親には隠していました。あるとき、それをバラしたら、母親は猛烈に怒って、「不二夫さん!」と電話で怒鳴った。赤塚不二夫は、このときちょうど、NHKの取材を受けていた・・・。あらあら、なんとしたことでしょう。かなりハチャメチャな生活だったようですね。
 「ブラック・ジャック」にでてくるピノコは、手塚の娘がモデル。ちょうど、小学生のときだった。
 水木は、人見知りだし、友だちも多くないし、お酒は飲めず、付きあいはよくない。会社でも家庭でも安心できないとダメ。
 父の偉大さは子どもにはなかなか見えてこないものなんだ。改めてそう思ったことでした。そして、久しぶりにマンガを心いくまで味わいました。それぞれのマンガも挿入されていて、とても楽しい本です。笑いながら、共感しながら、感嘆しつつ車中で一心に読みふけりました。なつかしくも楽しいひとときを過ごせました。ありがとうございます。
(2010年3月刊。1429円+税)

山田洋次を観る

カテゴリー:社会

著者 吉村 英夫、 出版 リベルタ出版
 日本の大学生も、まだまだ捨てたもんじゃないなと安心できる思いのする本です。
 山田洋次監督のつくった映画を大学の教室で見て、教授からその解説を聞き、さらに学生同士でディスカッションできる。なんてすばらしい授業でしょう。羨ましい限りです。この学生たちはみな幸せです。
 この本には、授業に出た学生の感想文が紹介されていますが、それがまた実によく出来ています。なんといっても感受性が鋭いのです。感嘆、感心、感激というしかありません。その学生たちの前に、本物の山田洋次監督が登場し、対話形式による公演が展開します。
 山田監督のつっこみが実に鋭い。学生たちがオタオタするのも無理はありません。うーん、私だったらなんて答えるかなあ……。自信ないなあ、と、つい頭を抱えてしまったことでした。
 映画『男はつらいよ』は、観客を教化するという姿勢をもたない。人間は善なる存在であり、人と人とはつながっており、家族の絆が人間社会の原点であり、仲間たちがいつくしみ信じあうところから、心休まる世の中は生まれてくるという作者の心情がにじみ出ている。
 映画は、もちろん楽しむために観る。音楽は楽しむために聴く。小説は楽しむために読む。これは当たり前のこと。でも、どういうふうに楽しいかという問題がある。楽しみの質の問題がある。そして、人を楽しませるには、すごい才能と努力と修練がいる。
 『男はつらいよ』の第1作で、さくらが兄に対して結婚したいと言ったときの渥美清のシーン。最初は10秒だったのを、2秒のばすためだけで大騒ぎして撮影した。
 この2秒にこめられたさまざまな思い。ああ、妹が俺に許可を求めている、俺が妹にいったい何をしたのだろうという、そんな寅の後悔と悲しみと、もう一つは喜び、ああ、妹がこんあ幸せな顔をしている、ああ、よかったんだ、そんな内面の葛藤をこの12秒の画面で表現した。
 映画は、そんな想像力を観客に伝える芸術なのである。
 うむむ、たしかに、寅の顔はすごく微妙な表情です。なんとも言えません……。
 大学生の反応が生き生きと伝わってくる本です。それ自体に感動します。良い映画は、10年とか20年たっても、感動があせて消えてしまうことはないのですよね。
 私が『男はつらいよ』第一作を観たのは1969年5月のことでした。五月祭のとき、大教室で観たのです。大爆笑でした。1年近くの大闘争後、まだ殺伐とした雰囲気の色濃い大学で、清涼感あふれるさわやかな風が吹き抜けていきました。
良い本です。一気に読みました。
 
(2010年1月刊。2200円+税)

ゲゲゲの女房

カテゴリー:社会

著者:武良布枝、出版社:実業之日本社
 「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげるの奥様による自伝です。NHKで連続テレビ小説になっているそうですが、私はテレビは見ませんので、そちらは分かりません。
 しみじみとした、いい本です。人生の悲哀を感じさせます。人生は、終わり良ければ、すべて良し。この言葉は奥様のつぶやきです。なんだかホッとさせられますね。
 「少年マガジン」にデビューしたとき43歳、猛烈に忙しくなったのが44歳、それから必死で走り続けて50歳をすぎ、心と体がついに悲鳴をあげた。
 水木しげるは睡眠をとても大切にしてきたようです。それでも、モーレツ時代は、さすがにそうもいかなかったようですが・・・。
 少し前まで、お金になる仕事がほしいとずっと思い続けてきたけれど、ここまで忙しい事態は想像していなかった。成功しても、水木の体がボロボロになってしまったのでは、幸せとはいえない。
 睡眠時間は、すべての健康の基本である。いつもふらふらの寝不足ではいけない。
 水木しげるは、心配する奥様に対してこう答えた。
 オレも眠りたい。ノンキな暮らしがしたい。でも、また貧乏をするかと思うと、怖くて、仕事を断ったりすることは、とても出来ない。締め切りに追われる生活も苦しいが、貧乏に追われる生活は、もっと苦しい。それに、いまが人生の実りの時期なのかもしれない。だから、後にひいてはダメなんだ。
うむむ、力を感じます。すごい言葉ですよね。
 人気商売なので波はあり、1981年(昭和56年)ころ、仕事が急に落ち込んで、連載は一本になってしまった・・・。
 うむむ、そういうこともあったのですか。
 精魂込めてマンガを描き続ける水木の後ろ姿に奥様は、心底から感動しました。
 ひたすらカリカリと音を立てて描く後ろ姿から、目を離せなくなることが、しばしばあった。背中から立ちのぼる不思議な空気、オーラみたいなものに吸い寄せられるような気がした。この人の努力はホンモノだ。
 すごい奥様の言葉です。奥様も偉いですよね。
 貧乏な生活でした。質屋に次々に身のまわりの品を入れて借金し、そんな生活をしながら、ひたすら売れない漫画を描き続け、それを奥様が支えたのでした。ひたすら真面目に努力を重ね、ついに報われたわけですが、それに至るまでの過程が実に明るく、むしろあっけらかんと書きすすめられていて、心に深い余韻を残しています。
 境港にあるという「水木しげるロード」に一度行ってみたいと思いました。
(2009年9月刊。1200円+税)

介護の値段

カテゴリー:社会

著者 結城康博 、 出版 毎日新聞社
 国を守るためと称して軍事予算は惜しみなく使われています。新型戦車、ヘリコプター空母、アメリカ軍のための空中そして海上給油、思いやり予算などなど・・・。ところが、国を構成しているはずの国民生活のほうはちっとも守られていない気がしてなりません。
 病院に入院しても、20日以内に退院させられる。入院費の負担額は毎月18~25万円もかかる。個室に入ったら35~50万円になる。リハビリのための入院だったら、3~5ヶ月で転院させられる。なぜなら、病院が減収するから。中小病院は相次いで倒産している。
65歳以上は2900万人。75歳以上の後期高齢者は1300万人いる。一人暮らしの高齢者は433万人、うち男性117万人、女性316万人。在宅介護の対象者は男性28%、女性72%で、3割以上が70歳以上。
 高齢者のなかには特養ホームで個室を好む人は多いが、4人部屋を好む人も少なくない。個室だと夜になると、不安になったり新しくなって徘徊してしまう人がいる。有料老人ホームの入居金は数百万~1000万円。そして、1ヶ月に都内では25万円、その他の県で20万円ほど必要となる。
誰だって、みんな老人になっていくわけです。老後が安心して過ごせない日本って、困りますよね。こんな国を愛せなんて押しつけられたら反発する人が出てくるのも当然です。
 介護施設にもっと国は投資すべきだと思います。いえ、私が還暦を過ぎたから叫んでいるというのではありませんよ。ほら、あなただって、もういいとしになったでしょ……。
(2009年12月刊。1000円+税)

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