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カテゴリー: 社会

貧困都政

カテゴリー:社会

著者   永尾 俊彦 、  出版  岩波書店
 
 この本を読むと、こんな男に日本の表玄関である東京を任せていることに怒りというより、恥ずかしさに身をよじります。実に呆れた人間です。
 週に3日の出勤で年俸2908万円という超高給とりです。あとの4日は小説を書いたり、映画をつくったり、スポーツを楽しんだりの日々です。公費での海外出張が15回、これで合計2億4350万円つかいました。公費での飲食は7年間で155回、1615万円です。なにしろ1回の高級料亭の接待(9人)で、37万円もつかいます。まるで殿様気分です。
 東京にオリンピックを招致しようというので、IOC総会で着たスーツは1着26万円(もちろん私費なら何も問題ありません。せこいことに税金でまかなったのです)。北京オリンピック開会式に出席するときのホテル代は1泊24万円のスイートルーム。
 都知事という公職について、週3日しか登庁せずに贅沢ざんまいです。
東京オリンピック招致のための150億円(正確には125億円)の費用は、もちろん実現しませんでしたから、全部ムダになりました。このとき、電通に26億円も渡ったそうですから、一部の大企業からは神様のようにありがたがられるのも道理です。
 なぜ、東京オリンピックか? 石原慎太郎は次のように語った。
「周りの国に勝手なことを言われ、何かむしゃくしゃしているときに、面白いことねぇか、お祭一丁やろうじゃないか、オリンピックだぞ、ということでドンと花火を打ち上げればいいじゃないか、気分も浮き浮きして」(2006年3月の記者会見)
 なんという軽さでしょう。大金持ちが自分のお金を浪費するのなら、私は何も言いません。しかし、税金をこんな発想でつかっていいものですか・・・・? 
 東京都の財政規模は年12兆円。これは韓国の14兆円、ノルウェーの12兆円、サウジアラビアの11兆円に匹敵する。その大東京で、1999年には26人、2008年に43人もの餓死者が出ている。そして、年々、少しずつ増えている。
 都の生活保護世帯も、1999年の9万世帯、12万人から、2008年の15万世帯、20万人へ激増している。また、2000年から都営住宅は新設されていない。都有地を売却したところに家賃月300万円という高級マンションが建っている。
都内の特別養護老人ホームの待機者は4万人をこえる。
老人福祉費は1999年度は、2442億円で歳出総額に占める割合は3,8%、これは全国2番目だった。ところが、2007年度には1966億円に減って、2,8%となり、全国最下位に転落した。
 老人医療費の助成を廃止し、地下鉄やバスの無料シルバーパスも有料化された。なんと冷たい都政でしょうか・・・・。東京都にお金がないわけではないのです。オリンピック招致につかうお金はあっても、福祉にまわすお金はないというだけです。そんなのおかしいでしょう。政治は弱者のためにあるはずですよ。お金持ちは政治に頼らなくても自分で自分を守れるのですからね。
こんな都知事をもてはやすマスコミは、ジャーナリズムの自殺行為としか言いようがありません。毎日の新聞に石原慎太郎が記者会見で言った無内容で、ひどい偏見にみちた言葉がもっともらしく報道されるのを読むたびに、私は腹が立ってしかたありません。
(2010年2月刊。1600円+税)

「偽りの二大政党」

カテゴリー:社会

著者  中西 輝政・篠原 文也、    出版 PHP研究所
 
 保守派の論客として名高い著者の対談集です。賛同できないところも多々あるのですが、そのとおりだと思うところも多いので、以下、あくまでも我田引水で紹介します。
 みんなの党の躍進も、「平成政治の大崩落」と呼ぶ“改革”現象の一つ。
マスコミの責任は大きい。国民全体がメディアに踊らされている。マスコミに踊らされて、有権者がフラストレーションの「はけ口」を探し求め、政権運営能力がない政党に分不相応な力を与えることで政党政治の基本構造を動揺させ、ついには日本の屋台骨まで崩落させてしまう。
 消費税10%にしても、民主党と自民党の両方が同じ主張をしている。年金、社会福祉政策についても、この両党はカレーライスとライスカレー程度の差しかない。
 民主党と自民党に本質的な違いしかなく、かつての自民党内の派閥の違い程度の「相違」しかないことは、昔も今も明白です。ところが、マスコミは両党を別のことを主張している政党かのような無理を押し通しています。カレーライスとライスカレーに違いなんてないのですからね。マスコミもごまかしてはいけません。
 小沢一郎の選挙手法は、どこまでも昔の自民党のやり方だ。上半身では民主党を装いながら、下半身では古い自民党のDNAを引き継いでいる。
 小選挙区制は、空気に流させやすい日本人には向かない選挙制度だ。もし政治の安定を望むのなら、小選挙区制をやめる勇気をもつべきだ。
国民のフラストレーションは議会政治の否定という議論が出てくるまでにたまっている。国会に雑多な勢力があるのは、現実の日本社会を反映した、政治にとって自然なこと。中選挙区制時代のほうが、民意が忠実に反映されて、国民の選挙結果に対する満足度も高かった。人々は、社会勢力が政治の議席数に忠実に反映されているとき、日本の民主主義が機能していると感じる。
 政治交代からわずか1年あまりで、これほど「無能」「偽善」「腐敗」をワンセットで披瀝したような党は、とうてい政権の主体になりえない。
 民主党は、いまだに政党ではなく、「選挙互助会」にすぎない。普天間飛行場の問題であれほど迷走したのも、党内に非武装中立派から、憲法改正派、そのなかには核武装派まで抱えて政策の収拾が難しかったからだ。民主党は政党の体をなしていない。民主党は選挙への執着が党員を結びつける「唯一の紐帯」になっている。
 なぜ民主党に網領がないのか。それは、政治理念や基本政策について詰めた議論をすると、党がまとまらないからだ。
 有権者のメディアでの信頼度は7割あるが、情報の信頼性は新聞が優る。ただ、影響を受けるのは、逆にテレビの影響が大きい。面白さではテレビに負けても、思考を促す奥行きの深さということになると、テレビは新聞にかなわない。
 テレビだけ見ていても、いわば洗脳されているようなもので、世の中の真相は分からないですよね。とくに福島原発事故の報道はひどいものです。テレビを見てても、さっぱり事態の真相は分かりませんよね。
 小選挙区制をやめ、みんな比例代表制にしてしまったら、日本の国会ももう少しまともに議論するようになると私は思いますし、期待しています。
 今回の東日本大震災によって民主党政権は自民党を取り込もうと必死です。似た者同士し、もともと派閥ほどの違いしかありませんので、「大連立」はありうるのでしょうね。それにしても、少数政党の言論もきちんと保障してほしいものです。国民のなかに「雑多な」意見が現にあるのですから、二大政党制は根本的におかしいと思います。
(2011年1月刊。1500円+税)

すごい裁判官、検察官、ベスト30

カテゴリー:社会

かなざわいっけい著 2008年発行
著者は競馬ブックの記者であるが、本業が暇な平日の時間帯を利用して、あしげく東京地裁の法廷傍聴に通っているのだそうな。傍聴回数は3000回に及び、自ら「傍聴官かなざわいっけい」と名乗っているのだそうな。
本書は、そんな傍聴官が印象に残る「すごい裁判官」、「すごい検察官」、「すごい弁護士」を綴った人物風土記である。例えば、被告人のトドメを刺す鬼裁判官、「フェ」から先が言えない純情検察官、厚かましいが美形の巨乳弁護士・・・エトセトラ
こんな軽めの本もいいかなと思って読んでみたが、最後の法廷傍聴記は少し感じ入った。法曹が、それぞれの背負っている立場を超えて、真実を追究する姿の描写はなかなかのもの。詳細はここでは明らかにしませんので、各自がご一読を。

「ふたつの嘘」

カテゴリー:社会

著者  諸永 祐司 、  出版  講談社 
 
 毎日新聞記者(西山太吉氏)が外務省の機密電信文を入手し、それをもとに国会で社会党の議員が政府を追及した。沖縄返還をめぐって、日本政府がアメリカと重大な密約を結んでいたことを暴露する内容だった。ところが、やがて問題すりかえられた。西山記者が入手した情報が外務省の女性事務官との男女関係によるそそのかしにもとづくものだったことにマスコミが焦点をあて、本当の問題点だった政府間の密約問題が話題にのぼらなくなった。このときのマスコミって、無責任報道の典型ですよね。
作家の村上春樹の受賞スピーチが紹介されています。モノカキのはしくれとして、私はなるほどそのとおりだと思いました。
小説家は上手な嘘をつくことを職としている。ただし、小説家のつく嘘は、嘘をつくことが道義的に非難されない。むしろ、巧妙な大きな嘘をつけばつくほど、小説家は人々から賛辞を送られ、高い評価を受ける。小説家は、うまい嘘、つまり本当のように見える虚構を創り出すことによって真実を別の場所に引っ張り出し、その姿に別の光を当てることができる。
なるほど、なるほど。まさにスピーチのとおりです。
西山記者は毎日新聞を辞め、北九州で隠遁生活を過ごす。妻との離婚の危機、そして、息子たちとの葛藤。さらには競艇への乗めりこみ。うつうつとした生活がずっと続きます。
ところが、ついにアメリカ公文書館で密約を掘り起こした日本の学者がいて、それが日本マスコミで大々的に報道されました。それを受けるかのように、日本の裁判所が密約の開示を政府に命じる判決を下したのです。ついに、西山記者の主張が裁判所でも認められた一瞬でした。すごいですね。苦節40年近くを経て、いったん不当におとしめられた職業人が不死鳥のごとくよみがえったのです・・・・。
 それにしても、こんな大切なことで日本国民を裏切る政府なんて許せないことですよね。いつだってアメリカ政府言いなりの菅政権に対しては、いいかげんにしてよ、あんたも若いころはアンチ・アメリカを叫んでいたんじゃないのと言って、お尻ペンペンしてやりたくなりました。
(2010年12月刊。1800円+税)
 震災後に続いている福島原発の深刻な事態について、政府は本当のことを国民に知らせていないのではないかと言われています。真実を知らせると国民がパニックを起こして収拾つかなくなるという考えにもとづくものです。でも、真相が隠されていると国民が疑う状況では、かえって無用のパニックが発生しかねません。政府は「直ちに健康被害は出ない」「落ち着いて行動してください」と言うだけではなく出来る限り正確な情報を国民に知らせるべきではないでしょうか。そうなることによって、かえって政府発表への依頼性が増し、国民は冷静に対応できると思います。
 それにしても大震災発生後2週間たっても原発災害の異常事態が続くのはあまりのことです。政府は日本の科学者・技術力のすべてをそそぎ込んで安全を確保してください。お願いします。
 我が家のチューリップが咲きはじめました。きのう数えたら15本のチューリップが咲かせています。なぜか赤い花ばかりです。チューリップ畑を眺めて、原発による不安の心を少しだけ落ち着かせています。

無縁社会の正体

カテゴリー:社会

著者  橘木 俊詔、   出版  PHP研究所
 この著者の本は、いつものことながら、とても実証的で大変勉強になります。
日本の自殺者は毎年3万人を超えているが、自殺者の多い40歳代から60歳代では、男性の自殺者数は女性の3倍になっている。自殺の理由は健康問題と経済問題の2つで79%つまり8割を占めている。
 戦前の日本では単身者は5~6%と、非常に少なかった。ところが2010年に31.2%となり、これから2030年には37.4%になると見込まれている。3分の1以上、4割に近い単独世帯である。これは、結婚しない単身者の増加と老後に一人で住む人の増加による。
 貧困大国・日本はあながち誇張ではない。そして、貧困者をふくむ低所得高齢者の所得は年金しかないのが現実だ。
 年金給付額をアップせよというと反対論が起きる。自立の精神にもとづいて、老後の生活に備えて自己資金を十分に蓄えておくべきだという考え方である。しかし現実には、これらの高齢者の多くは、若・中年期の所得が低かったうえ、それほど贅沢な消費をしていなくとも、貯蓄にまわせる分が少なかったので貯蓄額が低かったのであって、本人だけの責任ではない。
 そうなんですよね。自己責任という前に、社会がきちんと機会を与えていなかった、否むしろ、その機会を奪っていたという現実を直視すべきではないでしょうか。自己責任論は政治の責任をあいまいにしてしまいます。
 日本の貧困は、母子家庭における深刻さが目立つ。高齢単身者は、全貧困者のうち5分の1を占めている。貧困に苦しむ高齢者(とくに単身者)は、生活保護制度に対してほとんど期待できないのが現実である。資産調査が厳しいし、申請書類が複雑だし、恥の感情から申請をためらう。
戦前までの日本は、国民皆婚時代と呼ばれるほど、ほとんどの人が結婚した。しかし、1970年代半ばから婚姻率が7~8%と低下しはじめ、現代では5%にまでなっている。生涯に一度も結婚しない人(生涯未婚率)は戦前までは2%以下だった。ところが、1990年代に入ると5%をこえ、ここ15年のうちに5.5%から16.0%へと3倍も増えた。
お見合い結婚は、50年前には結婚全体の半数以上を占めていた。今では、1割にもみたない。結婚にあたって仲人を立てる人が激減し、1994年に63.9%だったのが、2005年には1.3%でしかない。結婚は、当事者同士だけのものとなっている。
私の住む町にも一人暮らしは多く、同じ団地内には数多くの人が一人で生活しています。老後を安心して生活できる社会環境にない日本って、本当に残念です。そして、その解決には消費税を増税するしかないという議論があまりにも多すぎます。消費税を増税しても法人税減税の穴埋めにつかってきた事実があるわけですから、ごまかしはやめてほしいと思います。いろいろ考えさせてくれる本でした。
 
(2010年2月刊。1600円+税)

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