法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 社会

原発労働

カテゴリー:社会

著者   日本弁護士連合会 、 出版   岩波ブックレット
 原子力発電所で長く働いてきた労働者の証言が紹介されています。
 ひとつの検査工事に50人の作業員が必要だとすれば、一次下請業者が5,6人いて、残りの作業員は二次以下の下請業者の社員。東電からは作業員の日給が一人10万円出ていても、一次下請の作業員で日給2万5000円以下、一番下の作業員で1万円から1万2000円ほど。
 問題は社会保険。一次下請業者は社会保険を完備していても、二次以下下請業者は入っていないほうが多い。
 以前は、原発作業員の一日の実労働時間は3時間ほどだった。午前中に1時間、午後に2時間。このように、原発作業員は実労働時間が少ない割にお金になる仕事だ。だから原発で働いた人が他の普通の職場で働くのはかなり大変なことになる。
東京電力の社員は現場にはたまに見に来たり、検査のときに立ち会う程度。一次下請の東芝とか日立の社員が現場で指示を出す。
 放射線管理区域に入る人は放射線に関する教育を受ける。3時間の講習を受けたあと、テストがある。しかし、このテストで落ちる人はほとんどいない。
 3月11日の事故直後は、緊急事態なので資格も何も問われなかった。やっと4月になって正常化した。復旧作業は、東電の正社員ではなく、下請の作業員がしている。本当は東電の正社員にやってもらった方がいい。
 遠くで準備して、みんなで一斉に作業現場に出ていって、ヒット・アンド・アウェイで帰ってくる。全面マスクをしての作業は2時間くらいしかできない。照明がないから、暗くなると作業ができない。
 作業員に高年齢者が増えている、50代が圧倒的に多い。30代と20代はいない。
 東電の社員、元請(一次)の社員などは制服を着ているから一日でわかる。しかし、二次以下の下請けの作業員になると、自前の作業着なので、どこの会社の従業員なのか分からない。
 福島原発で働く7千人近い労働者のうち、事故後4ヵ月で6人は被曝量が250ミリシーベルトをこえ、111人は100ミリシーベルトをこえた。また、未検査の人も多い。
福島第一原発について政府が収束宣言して以来、なんとなく溶けた核燃料棒は心配ないムードになっていますが、本当は何も分かっていないというのが実態です。そんな危険な作業現場で働いている作業員の健康はとても心配です。かといって、そんな危険な現場で働く人たちがいるからこそ、その後は今のところ大惨事を招来していないのだと思います。
 そういう原発労働のすさまじい実態を告発してくれるブックレットです。ワンコインで読めますので、どうぞお読みください。
(2012年1月刊。500円+税)

「仮面の騎士」橋下徹

カテゴリー:社会

著者  大坂の地方自治を考える会 、 出版   講談社
 独裁者で何が悪いんだと開き直る弁護士がいます。同じ弁護士として悲しい現実です。そして、それを天まで持ち上げるマスコミには呆れてしまいます。小泉劇場と同じです、暴言を叩くのではなく、視聴率が稼げるからとそれをもてはやす営利本位の報道姿勢には怒りすら覚えます。
 この本は橋下大阪府知事(現在は大阪市長)の仮面をひきはがしています。
 書評で他人(ひと)の悪口なんか書きたくないのですが、公人とあれば、しかもマスコミだけでなく、今や多くの政党がすりよっている状況を見れば、この本を紹介せざるをえません。
 破たんする大阪の救世主として輝く橋下知事は、専横で空疎なパフォーマーにすぎなかった。そんな「仮面の騎士」の野望に騙され続けては、大阪、ひいては日本社会は、ますます崩壊の一途をたどるだろう。ヒトラーの例を出すまでもなく、「わかりやすさ」に与えられた独善的独裁者の仕掛けた「罠」に陥るわけにはいかない。
 世間の思惑の裏をかいて、意外な発言によって、さらにより以上の注目と支持を集める。これがマスコミを最大限に利用した橋下流の大衆操作の真骨頂である。
 構想の中身をはっきり示さない。制度設計は、あとから役人がすればより、この手法こそ橋下知事の得意技である。
橋下弁護士は商工ローン「シティズ」の顧問弁護士を8年間していた。かの悪名高いシティズの顧問をしていたなんて・・・。
 年収3億円を投げ打って大阪府知事に転身した。ええっ、弁護士として年収3億円だったのですか・・・。どうやってこんな大金を稼いでいたのでしょうか。まだ30代だったはずなのに・・・。
 大阪府を大阪都にすれば、なぜすべてがうまくいくというのか、その根拠が示されていない。本当にそうですよね。法律を変えて府を都にしたら、地自体の所管をちょっといじれば大阪の経済が一挙に好転するなんて、ありえませんよね。
橋下本人もそのことをよく知って自覚してるだけに、その具体策は何も示さず、ひたすら空疎なスローガンを叫び、反対者を糾弾し続けた。
 橋下知事の周囲には、常に大手メディアの橋下番の記者たちが待ちかまえていた。橋下のようなポピュリストは、衝動的な施策を次々を打ち出し、民意をつかんでおかなければ政治生命を維持することができない。そして、選挙で勝ちさえすれば、すべての権力を掌握したものとして、独裁が許されるとする政治哲学にもとづいて行動する。
 財界は、橋下は危なっかしいけれど、自分たちの政策に近い限り使っておこうとする。橋下知事の下で、自殺者が7人も出た。橋下知事に直言する上司が皆無であることが最大の原因だ。逆らえば飛ばされる。歯向かえば、つぶされる。物言えば唇寒し・・・。
 二面性をもつ橋下知事。その知事に唯々諾々と従っている府庁幹部たち・・・。
 橋下知事は自己愛性人格障害の典型、気に入られた者は死ぬまで働かされる。憎まれれば、とことん放逐される。注目を浴びないところで、ひっそりと生きていくのが一番。府庁内には、うつ状態の自殺予備軍が多数いる。
 橋下知事の意向にそわない府職員の首切りを用意にしようとする条例を提案しようとしている。そして「民意」をたてに首長の思いどおりに教育行政までも牛耳ろうとしている。 こんなひどい男をマスコミが批判もせずにもてはやし、それによって反逆児と錯覚した若者たちが拍手喝采しているというのが現状です。一刻も早く、こんなまやかしから目を覚ましたいものです。
(2011年11月刊。1400円+税)

東電解体

カテゴリー:社会

著者  奥 村  宏 、 出版   東洋経済新報社
 あれだけの犯罪的大事件をひき起こしていながら、東電の会長は今も、そのまま居座ったままです。なんという厚かましさでしょう。人間(ひと)の心をとっくに失っているとしか思えません。この本も、その点を鋭く追及しています。
 東京電力は福島第一原発の事故で放射能を放出し、多くの人に危害を与えたにもかかわらず、なんらの刑事罰も課せられていない。問題になっているのは損害賠償だけ。人を傷つけてもカネさえ払えばすむ、というような国はどこにもない。
 法人に刑事責任はないのか? もちろん、企業犯罪は成立します。東電の歴代取締役が自己の得ている莫大な取締役報酬を返上したという話はどこにもありません。私は、東電の社員に給料を支払うなとは決して言いません。
 しかし、原発の危険を知ったうえで、それを故意に過小評価して無策・怠慢であり続けた歴代の取締役全員には厳しい責任が当然追及されるべきだと思います。今回の事故のあと東電の取締役が一人も刑務所に入らないというのは日本の検察そして司法の重大な汚点になるとさえ私は考えます。
東京電力は、民間企業としては世界一である。売上高5兆円、総資産13兆円。東京電力のトップが経団連の業議員会議長から副会長、そして会長へというコースをたどることがルール化されてきた。
 電力総連は、加盟組合230組合員数21万5千人。連合に加盟し、民主党を支持し、原発推進を方針としている。これって、労働組合の本来の姿なのでしょうか。せめて、今は脱原発を唱和してほしいものです。
日本航空(JAL)も倒産してその株券はタダの紙切れになってしまった。銀行も債権を放棄した。しかし、東京電力については、減資もしなければ、債権放棄もない。JALと違って、異例の優遇である。 
 国民の税金で損害賠償を肩代わりしてもらって、普通の会社として存続し続ける。そんなバカな・・・。国民の税金で救済されながら、銀行も株主も損をしないで、会社はそのまま存続する。これほど不思議な話はない。
 いったい会社とは何なのか、何のために存在するのか、東電の会長を思い浮かべながら、腹立たしさを抑えきれずに読み終えました。
(2011年11月刊。1600円+税)
 日曜日、天神で映画『サラの鍵』を見ました。本も良かったけれど、映画も素晴らしい出来でぐいぐい画面に引き込まれ、泣けて仕方がありませんでした。
 1942年7月パリで起きたユダヤ人強制連行事件を扱っています。『黄色い星の子どもたち』も同じ事件を扱っていました。
 弟を死なせてしまったという後悔がずっと尾を引いていきます。人間って簡単には過去から逃げきれないのですよね。忘れ去ってしまいたいけど忘れられない。そして、ときに過去は振り返る必要があります。
 映画を見終わって映画館から出ると、小雨がパラついていました。心のほこりが洗い流されたようなすがすがしさを感じました。
 この日は夜寝るとき、映画の場面を思い出し、つい涙がこぼれてしまいました。

福島原発の闇

カテゴリー:社会

著者   堀江 邦夫・水木しげる 、 出版   朝日新聞出版
 いま、福島第一原発のあと、内部では毎日3000人もの人々が強い放射線を浴びながら、懸命の復旧工事をしているわけですが、この本はその工事の様子をマンガで描いたものと言ってもよいと思います。ところが、実は、この本は1979年秋に発刊された『アサヒグラフ
』に掲載されたものがベースになっているのです。ですから、今から30年以上も前の福島第一原発の状況が描かれています。
自ら原発労働者になって原発作業の危険性を次々に告発していった著者は、アサヒグラフに誘われて、水木しげると一緒に福島原発に再び取材に出かけます。文章も迫力がありますが、なんといっても、さすがは水木しげるです。原発内の様子が刻明に再現されています。
いまや無残な姿をさらす原発建屋が健全な姿を見せていますが、そこで働く労働者にとって、そこは地獄です。
 防護服の着用を義務づけられるものの、それは放射線被曝から身体を防護してくれるわけではない。職場で、突然、汚染水が吹き出す事故が起きる。労働者は放射能まみれの水を見て悲鳴をあげて逃げまどう。
 炉心の近くの高線量エリア内の仕事。この日作業目標はたったバルブ1台の据え付け。普通なら2人がかりで30分もあれば十分な作業、それを6人もの労働者が疲労の極限まで追い込まれながら、3時間かけてもまだ終わらせることができない。あせったボーシン(現場監督)は、ついに全面マスクをはずしてしまった。ところが、横にいる放射線管理者は、そのボーシンに注意もしない。
1日あたり1ミリシーベルトが許容線量とされていた。日本人が一年間に浴びる自然放射線量は平均1ミリシーベルトというので、労働者は原発内で1年分を1日で浴びていることになる。
 原発内の作業実態をイメージできる良書だと思いました。わずか90頁あまりの薄い、イラストたっぷりの本ですが、タイムリーな出版です。
(2011年9月刊。1000円+税)

狡猾の人

カテゴリー:社会

著者   森 功 、 出版   幻冬舎
 狡猾(こうかつ)って、ずるがしこいという意味ですよね。防衛省のトップの事務次官として4年間も居座り続け、ついには防衛省の天皇とまで呼ばれた高級官僚について書かれた本です。この本を読むと、防衛族なる国会議員、防衛省のトップそして自衛隊の高級将官が日本の国土と国民を守ると豪語しながら、実は、それは単なる口実であって、要するに自分とその家族を守ることにしか念頭にないことがよく分かります。こんな人たちに日本人は愛国心が足りないなんて言ってほしくありません。
 軍需産業が昔からボロもうけだったのは、まさにそこが競争のない世界だからです。定価なんてまるでありません。戦車1両が10億円とするとメーカーが言えば、防衛省は値切ることもなく、はい買いましょう、100両買いましょうなんて言って、惜しげもなく税金を注ぎ込むのです。もちろん、そこには中間に介在する人々へのもうけもしっかり保障されています。防衛省そして軍需産業のえげつなさが暴露され、お金のためには国すら売り渡してしまう人々が、表向きは愛国心を鼓舞していると言うことが分かって嫌になってしまいます。
 日本政府は1機100億円するE-ZCを13機購入した。1300億円だ。ところが、今度はAWACSを買うという。AWACSは550億円もする。このAWACSを3機も購入しようという。
日本って湯水のようにムダなところにお金をつかうのですね。だって、これって、日本の国土を守るというより、アメリカ軍のお先棒かつぎというだけなんですよ。
 自衛隊の装備の購入の7割が一般競争入札で随意契約は3割。ところが、これは件数の比率であって、金額のみでみると逆転する。7割が随意契約である。航空機や戦車などは主要なものは、みな随意契約。
 要するに軍需メーカーの言うとおりに国は買っているというわけです。
軍事装備は市場性がない。競争相手なんていないから、定価というものが考えられない。水増し請求は日常茶飯事である。防衛省には、メーカーの提示する価格を徹底的に検証する能力はない。だからメーカーの言い値どおり買うしかない。
仲介する商社の手数料は代金の1.4%と決まっているから、民間の取引場である10%の手数料にあわせるため、価格の水増しが起きる。
 守屋武昌元次官は自民党の防衛族として有名な石破茂元防衛庁長官を口舌(こうぜつ)の徒と評する。さらに、田母神俊雄・元航空幕僚長についても、ジョークが得意だけで、本来、幕僚長になるような器ではなかったと酷評する。
 アメリカは自動車産業は日本に負けたが、航空機と宇宙産業は手放さない。日本の参入を許さない。アメリカのものを買えと、露骨に要求し、日本政府はそれ唯々諾々と従っている。
 4年間も防衛庁の事務次官を務めた守屋武昌の退職金は6000万円だった。うひゃあ、これって、やっぱり高すぎますよね。防衛省って、そこにいる人たちの生活を防衛する、名ばかり官庁のようです。
(2011年12月刊。1400円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.