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カテゴリー: 社会

トヨタ、中国の怪物

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 児玉 博 、 出版 文芸春秋
 日本を代表するメーカー(トヨタ)の社長が創業家の一族で占められているのは、私も本当に不思議な現象だと思います。創業家の持ち株はわずか2%ほどなのだそうです。
 豊田章一郎、英二、そして章男…。能力があろうとなかろうと、豊田家に生まれたというだけで社長になれる(なる)なんて、まったくおかしなことです。
 トヨタの社長だった奥田碩も同じことを考えていたようですが、結局は、追われてしまいました。同じく社長だった張富士夫は、この本によると豊田一族には逆らわなかったようです。
 先日、豊田章男でしたか、社長報酬(年間)が株式配当を含めて34億円だと発表されました。トヨタの数値ごまかしが暴露されたにもかかわらず、です。これは、株式配当は少しでも多くしてもらいたいという大株主の意向だそうです。従業員の賃金アップなんか、どうでもよく、ひたすら株式配当アップしか考えない巨大な株式投資集団がいるわけです。
 この本は、トヨタが中国進出するにあたって、中国で生まれ育った日本人(服部悦雄)の半生をたどったものです。大変興味深い内容でした。
 服部は日本人の両親のもと、中国で生まれ育っていますので、ネイティブの中国語を話します。小さいころから、日本人の子どもとして迫害され、また文化大革命も経ています。服部が生きのびられたのは、ひとえに学業成績が優秀だったからのようです。それでも、北京大学には受験すら認められませんでした。
 服部は、こう言います。
 「日本人は中国人を分かっていない。本質をちゃんと見ていないから、中国人のこと、中国共産党のことを見誤る」
 私も『トヨトミの野望』は読んでいますが、この本のなかに服部について「八田」として登場しているものの、事実に反することも多いようです。服部は残留孤児ではないし、中国人の名前を持たない。なーるほど、です。
 奥田碩は、「創業家に生まれただけで社長になるのは、おかしいのではないか。豊田家は、本当に必要なのか?」と常々言っていたし、章一郎をトヨタから遠ざけようともした。創業家は、旗のような特徴的な存在であるのが望ましい。つまり、経営には口を出してはならない。そう考えた。
 中国に進出するのを決める会議で、豊田英二は、こう言った。
 「中国では、小さければ、つぶされる。大きすぎれば、取られる。それを覚悟でやるか!」
 最高幹部だけが集められた会議に服部は特別に参加が認められた。服部の肩書は「トヨタ中国事務所総代表」(2001年)。トヨタの中国進出を可能にした男は、豊田章男を社長にした男でもあったことがよく理解できました。トヨタという超大企業の一断面を知りました。
(2024年3月刊。1700円+税)

葬儀業

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 玉川 貴子 、 出版 平凡社新書
 後期高齢者(75歳以上)が800万人いるという日本です。これからますます葬儀業が栄える。そう思っていましたが、どうやら、この本によると、そうでもなさそうです。
これまで葬儀業の市場は2兆円から1兆6千億円という幅のある市場だと考えられてきました。ところが、葬儀一式費用が150万4000円から下がり続けているのです。今では112万円ほどになっています。人口の多い都市部では家族葬が定着しているので、これからも単価は上がらないとみられています。
 葬儀業の所管は厚労省かと思うと、そうではなく、サービス業として、経産省の管轄だというのにも驚きました。
コロナ禍で死亡した人は1万7千人弱。その全員が病院で亡くなっています。遺族は病院で最期を看取ることが許されませんでした。
そして、今や、家族葬が全国平均で65%(東京で52%)。一日葬(通夜なし)が10%、直葬(通夜も葬儀もなし、火葬のみ)が12%。これが最近の実情。
 葬儀の商品化は明治以降というのではなく、すでに江戸時代、関西に始まっている。いやあ、これは知りませんでした。
今ではネットで調べて葬儀社を依頼するというのが多くなりました。葬儀社は、許認可登録事業制ではない。
葬祭ディレクターという資格制度があるそうです。1級と2級があります。厚労省が認定します。
葬儀社の新規参入問題として、冠婚葬祭互助会と農業協同組合(JA)が取りあげられています。私も、少し前には冠婚葬祭互助会をめぐるトラブルにいくつも関わりました。毎月支払う会費では、とてもまかなえない高額の葬祭費を請求されたり、脱会したいのに出来ないと言われて高額の解約料の請求を受けている、そんな苦情(相談)でした。最近は、とんとありません。
私の住む団地では、昔は近所の人が亡くなると、隣組で受付・接待することになっていて、そのためのお茶碗なども隣組にありました。みんな高齢化してしまって、ずいぶん前から葬儀社に頼んでやってもらうようになりました。
日本社会が隅々まで変わりつつあることを実感させられる一つの現象を認識させられました。
(2024年5月刊。1100円+税)

介護の裏

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 甚野 博則 、 出版 文春新書
 この本によると、介護の質はケアマネ次第とのこと。しかし、そんな重要なケアマネを自由に選べないことが多い。いやあ、これは困りますよね…。
そして、介護サービスも幅がありますが、限度額ギリギリまで料金を上げる業者がいるのです。それは決して詐欺ではありませんが、介護施設と介護業者とが囲い込み、ひも付きという癒着をしているわけです。まあ、これは避けられないことでしょうね。
「サ高住」の監督官庁は国土交通省と厚労省。介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームは厚労省が管轄。介護付き、住宅型の施設は老人福祉法、サ高住は高齢者住まい法にもとづいて運用されている。
24時間介護スタッフが常駐する介護付き有料老人ホームは、入居時に数百万円から数千万円の一時金の支払いのうえ、毎月1人20万円が一般的。いやあ、これは大変なことですね…。いえいえ、入居時に数千万円の一時金が必要なうえ、夫婦あわせて50万円という施設はザラなのです。驚くしかありません。
私は今75歳、後期高齢者の仲間入りしましたが、なんと800万人もいるそうです。この介護保険の自己負担額を自・公政権は増加させようとしています。軍需予算を天井知らずに増やすときには財源のことは何も言わないのに、福祉のときだけ財源がないというのです。こんな不公平・不合理は許せません。団塊世代はもっと怒りの声を上げるべきですよ。昔、20代のころに行動したように…。
 東京や福岡には、入居一時金だけで3億円とかいう超高級老人ホームがあります。まあ、タワーマンションを購入できるスーパー・リッチ層ですね。
 「老人は歩くダイヤモンド」
 いやなキャッチフレーズです。介護保険の給付費は2022年度に11兆円。これで、金もうけしようというのです。嫌ですね…。
 それでも介護ビジネスは、まともにやっても決してもうからない。もうかるためには、人件費を削るしかない。そうすると、貧すれば鈍す、です。
 施設における高齢者への虐待が増えている。介護スタッフにまともな給料が支払われなかったとき、また、スタッフが確保されていないとき、虐待が起きるのは必然です。寝たきりで、文句を言わない入居者を囲っておくと介護報酬が業者に入ってくる仕組みが、虐待を生んでいる。いやあ、怖いです。まるで、「養鶏場のニワトリ」のようだ。いやはや、もはや人間扱いされていないのですね…。
 国が「自立支援」と言い出したのは、「高齢者介護になるべくお金をかけたくない」という本音のあらわれ。いえいえ、そうなら、それを止めさせる必要があります。声を上げ、行動するしかありません。自民党や公明党にまかせていたら、私たちのお先は真っ暗なんですから…。
(2024年6月刊。950円+税)

定年自衛官再就職物語

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 松田 小牧 、 出版 ワニブックスPLUS新書
 自衛官の定年は55歳(2024年9月までは54歳)。ただし、将官は60歳。
 そうすると、まだまだ元気な定年後をいかに過ごすのか、真剣に考える必要があります。そのとき、定年後、何もしないという選択肢はおすすめできません。魚釣りざんまいの生活をしいているうちに社会的刺激がなくなって認知症になったという話も聞きます。やはり、何かしらの社会に関わる仕事をしたほうがよいのです。
 定年の早い自衛官だから、年金も早くもらえるとばかり思っていました。でも、年金は65歳からしかもらえないのです。そしたら、ますます働かざるをえませんね。もちろん、自衛官のトップ層は別格です。そんな心配は不要です。需要産業である三菱重工やら川崎重工に顧問として迎え入れられ、破格の顧問料が保障されます。
 潜水艦の保守・点検作業の関係で、川崎重工や三菱重工が現職自衛官に供応・接待している事実が先日から発覚しました。需要産業と軍部の癒着は戦前もありましたし、古今東西、あたりまえの現象です。要するに、口先では勇ましいことを言ってくるくせに、実は自分と身内の便益優先というのが、いつだって、どこだって悲しい高級軍人の現実なのです。
 自衛官が高給取りなのは昔も今も同じです。陸・海・空将は月給70万円から117万円、一左(昔の大佐)で40万円弱から54万円、1尉(少尉)で28から44万円。しかも、これに年4.5ヶ月分のボーナスが付加されます。そのうえ、イラクやジブチなどに赴任すると、さらに破格の危険手当が支給されます。
 そして、55歳で定年退職すると300万円の退職金がもらえます。
 どうですか、こんなに高給・優遇されているのに、近年、志望する若い人が激減しています。なぜ…。もちろん、戦争の危険が現実化しているからです。
 自衛隊の訓練の基本は何か…。要するに、人殺しの訓練です。それも、効率よく大量の人殺しができるようになる訓練です。ためらうことなく「敵国」人を殺さなければいけません。そして、それは当然、殺される危険も伴います。それでも上司の命令とあらば、四の五の言わず黙って従い、文句を言うことは許されず、ただ死ぬしかないのです。死んだら遺族は1億円もらえるぞ、靖國神社に祭られるぞ…、誰だって、そんなの嫌でしょ。私は、もちろん嫌です。
 定年した自衛官の再就職事情をピンからキリまで、知ることができる新書でした。
(2024年6月刊。1100円)

病棟夫婦

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 宮川 サトシ 、 出版 日本文芸社
 よく出来た、考えさせられる社会派マンガです。
もう十分に老年の夫婦が二人してガンにかかって、入院中です。病院ですから、ホテルと違って夫婦同室というわけにはいきません。どっちが先に逝(い)くのか、ちょっとした言い争いになりします。
 抗ガン剤の影響で食欲がなかったりします。
 病院食の塩気抜きだと味気ないので、白ごはんにふりかけをたっぷりかけて、看護師に叱られてしまいます。
遠くに住む娘は孫を連れて病院にまで面会に来てくれます。でも、もう一人の息子のほうは、ずっと自宅に引きこもっています。もう10年にもなります。家の中は両親が出たあとは、ゴミ屋敷状態です。ゲームざんまいの生活のようです。恐らく両親の財産と年金を頼りにしているのでしょう。
もう青年とはいえない年齢の引きこもりの男性は、私の身近に何人もいます。いろんな原因があると思いますが、この本では、親父が息子のやりたい道を「世間体(せけんてい)」を気にして「弾圧」したことによります。父親は息子のためを思ってというのですが、それは自分の見栄のためということが少なくありません。
夫婦の入院先の病院には小児ガンの子どももいます。元気だったのですが、ある日突然、亡くなってしまいます。その子の好きなゲーム機を買ってやったのに、手渡す前に亡くなってしまったのです。
 そして、いよいよ老夫婦は終末期を迎えます。主治医は転院を息子に言い渡します。
 そのとき、息子は、土下座して両親を同室にさせて下さいと主治医に頼むのでした。
 「こんな自分なんかの土下座になんの価値もないのは分かっています。それでも、これしか思いつかなくて、すいません」
 泣かせるセリフです。まもなく、夫婦はほとんど同時に、同じ病室で亡くなります。
 老親と引きこもりの子どもを描いたマンガとして、秀逸だと思いまいた。
 ひきこもっていた息子はマンガ家になるのです。自伝のように思わせるところが憎いです。
(2024年6月刊。814円)

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