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カテゴリー: 社会

ドアの向こうのカルト

カテゴリー:社会

著者  佐藤 典雅 、 出版  河出書房新社
この本でカルト教団とされているのは、日本でも全国各地で今日なお活発に布教活動している「エホバの証人」です。9歳から25年間のカルト生活を振り返った、壮絶な書物です。エホバの証人についてのコメントは、すべて著者によるものです。私のコメントではありません。念のために申し添えておきます。
 エホバの証人には、さまざまな抑圧の決まりごとがある。誕生日、クリスマス、正月など全ての行動はご法度。学校では体育の授業から運動会の騎馬戦まで禁止。国歌のみならず、校歌をうたうのも禁止。タバコはもちろんダメで、乾杯するのも禁止。信者以外の人と友達になるのも注意の対象となる。だから、多くの女性信者は独身を余儀なくされる。
 エホバは、この世はすべてサタンの配下にあると教える。世の終わりであるハルマゲドンは今にでもやってくると信者は信じている。だから、エホバの証人の子どもは、教団と親のいいつけを守らないと神によって滅ぼされると洗脳される。そして、一度、洗脳されたら信者は洗脳されたことに自覚のないまま自分の感覚を抑圧して生きていくことになる。そのため、うつ病、慢性疲労症候群、原因不明の病気に悩まされる信者が多い。
 エホバの証人は、春の記念式以外は、一切祝わない。
 エホバの証人は政治に一切関わらないので、選挙で投票はしない。
 エホバの証人は親は子どもを叩くのがあたりまえだ。
 エホバの証人は、宗教法人「ものみの塔聖書冊子協会」の一般名称である。ものみの塔はエホバの名前を擁護する唯一の真のキリスト教団体だという。
 エホバの証人は、死んだら霊魂はないと信じている。
 エホバの証人は、日本に22万人いる。
 証人の伝道は月90時間、毎日3時間、奉仕に出ると達成できる。
 エホバの証人の女性は、日よけのツバの出ている帽子をかぶり、日傘をもち、伝道カバンをもって、地味な色気のない長いスカートをはいている。
 この本には書いてありませんが必ず、数人からなるグループに、リーダーの男性がいるのも特徴の一つです。
 有名人にもエホバの証人は多い。マイケル・ジャクソン、ケビン・コスナーの妻、ジョージ・ベンソン、ラリー・グラハム。プリンス。矢野顕子。白井儀人(クレヨンしんちゃん)。
エホバの証人は霊魂不滅は信じていないが、地上の楽園は信じている。そして、14万4000人だけが特別に選ばれて、天国で永遠に生きている。
 この本には書かれていませんが、この14万4000人は、既にアメリカ人だけで満杯になっていて、日本人は入れるはずがないといいます。このように大いなる矛盾をかかえた「宗教」です。
 エホバの証人は世界中に750万人いて、日本に22万人弱の信者がいる。
どうやって、14万4000人を選抜するのでしょうか・・・。
 エホバの証人は、自分の本当の人生は楽園で始まると考えている。そして、自分をこの世においては死んだものとしている。
 まったく、わけの分からない教えです・・・。カルト宗教の怖さが伝わってくる体験記になっています。
(2013年1月刊。1800円+税)
 日曜日の午後、サボテンの世話をしました。親サボテンにくっついている子サボテンを火ばさみではさんでねじり切って、地面におろしてやります。
 こうやってサボテンは次々に代を重ねていきます。
 ふっくらした小さなサボテンの世話をすると心がなごみます。トゲにだけは注意しています。

タックス・ヘイブン

カテゴリー:社会

著者  志賀 櫻 、 出版  岩波新書
読んでいるうちに大いに腹の立つ本です。いえ、著者に対する怒りではありません。こんなデタラメな税制を許している国家とそれをうまく利用している超大企業とスーパーリッチたちに対して、です。日本には年間所得が1億円をこえる人が、確か10万人以上いたと思います。そんな人たちにとって、日本は本当に「いい国」です。所得税の税率が1億円をこえると低下していくからです。
 1億円の税率28.3%をピークとして、低下していき、100億円だと、なんと13.5%でしかない。思わず、目を疑う低率です。
  40億円以上の純資産をもつ富裕層は、1位がアメリカで3万8000人、2位は中国で4700人、3位はドイツで4000人、4位は日本で3400人。
 うひゃあ、40億円以上の資産をもつスーパーリッチ層が日本に3400人もいるんですね・・・・。
タックス・ヘイブンとは、税金がほとんどない国のこと。ケイマン諸島、バハマ、バミューダ、ブリティッシュ・バージン・アイランドなど。
 タックス・ヘイブン退治の先頭に立つはずの先進国が、実は最大のタックス・ヘイブンでもある。その筆頭がロンドンのシティだ。また、アメリカのデラウェア州のウィルミントンである。
 強い経済の背景には必ず部厚い中間所得層が存在する。貧富の差が激しく、二極分化した社会には、強い経済は望めない。
 世界中の金融システムは複雑かつ密接につながっている。誰がどのようなリスクを保有しているかは分からないが、誰かが破綻すれば、連鎖破綻が起きて、その影響は瞬時に国境を越えて世界に拡がる。世界が保有しているリスクは、むしろ増大している。今や世界は一つにつながっている。文字どおりグローバル・エコノミーである。
 ヘッジ・ファンドは世界経済にダメージを与える存在であり、有害である。ヘッジ・ファンドに危険なマネー・ゲームをさせるべきではない。
 ヘッジ・ファンドがしていることは、マネー・ゲームに狂奔して巨額の資金を動かし、世界経済に深刻な危機をもたらすこと。ヘッジ・ファンドのもたらす害悪は圧倒的に大きい。
 ヘッジ・ファンドに活動の場を与えるタックス・ヘイブンの罪もまた大きい。
 マネー・ゲームという悪事に加担している点からすれば、ロンドンとニューヨークの方が、よほどたちが悪い。
 いまの日本には、アベノミクスとやらに踊らされて株を買っている人が続出しています。しかし、やがて、ドンと株価は低迷するでしょう。そのとき泣くのは、騙された一般投資家のみ。
投機マネーは規制すべきだと著者は強調しています。本当にそのとおりです。
 アベノミクスなんかに騙されないようにしましょうよ。私と同じ団塊世代の著者による勇気ある警世の書です。
(2013年3月刊。760円+税)

働く君に贈る25の言葉

カテゴリー:社会

著者  佐々木 常夫 、 出版  WAVE出版
この社会で生き抜くうえでのヒントが、著者自身の体験にもとづいてぎっしり書かれています。肩に力を入れずに、すっと読めるビジネス書です。
 うつの奥様、そして自閉症の子をかかえて、ビジネス最前線でたたかい抜いてきた人でもあります。表紙の笑顔がいいですね。人柄が顔に表れている気がします。
 「それでもなお」という言葉が紹介されています。本当に心を打つ言葉です。
○ 人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい。
○ 正直で素直なあり方は、あなたを無防備にするだろう。それでもなお、正直で素直なあなたでいなさい。
○ 世界のために最善を尽くしても、その見返りにひどい仕打ちをうけるかもしれない。それでもなお、世界のために最善を尽くしなさい。
次は、時間の大切さです。私にとっても、時間こそ、もっとも大切なものです。お金なんて二の次です。時間より大切なものは家族のみです。
約束の時間を守ることは、相手を尊重すること。時間厳守はビジネスマンの鉄則。
人にとって、時間はもっとも貴重な財産である。
過ぎ去った時間は、もう二度と戻ってくることはない。どんなにお金を積んでも、ムダに費やした時間を取り戻すことはできない。
そして、仕事のすすめ方。ムダを減らすことは時間の節約にもなる。仕事を始める前に訊く。仕事の途中で、(分からなくなったら)訊く。これを実行するだけで、多くのムダを減らすことができる。これは、本当にそうですよね・・・。
 「何事にも全力であたる」
 これは、仕事のタイムマネジメントにおいては正しくない。物事には軽重、順序をつける必要があるからです。
 書くと覚える。覚えると使う。使うと身につく。自分の書いたものをあとで読み返して確認する。何度も繰り返して読み返すことによって、初めて物事は記憶として定着する。また、読み返しながら、そこに隠された意味や矛盾に気がつくことがある。
 簡にして要。これが話すときの鉄則だ。簡潔に、的を射た話をするように心がけること。
 いい本でした。いま自分のやっていることに自信の湧いてくる本でもありました。
(2012年8月刊。1400円+税)

検証・官邸のイラク戦争

カテゴリー:社会

著者  柳澤 協二 、 出版  岩波書店
防衛庁に入ったキャリア官僚として日米防衛ガイドライン改定作業にあたり、防衛庁防衛研究所の所長を経て、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)としてイラクに派遣された自衛隊の状況を見守り、イラク戦争の終結まで関わった。そんなキャリアの著者がイラク戦争への日本の関わりを厳しく弾劾した注目すべき本です。やはり、心ある人はアメリカのイラク戦争に反対し、日本が深く関与したことを問題としているのですね。
 イラク戦争について、アメリカ人ジャーナリストは、「まったくムダな戦争をした」と述懐したが、本当にそのとおりだ。イラク戦争においてアメリカが追求したのは、適法な戦争ではなく、法そのものを変えようとする戦争であった。
 イラク戦争は、公式に表明された論理にしたがえば、「大量破壊兵器がテロリストの手に渡る危険から世界を救う」という目的のために、「イラクが保有する大量破壊兵器を武装解除する」ことを目標に、その手段として、「武装解除に応じない、フセイン政権を排除する」戦争であった。
 イラク戦争におけるアメリカ軍の死者は9.11の犠牲者をはるかに上回る4000人以上となった。そして、犠牲となったイラク人の死者は10万人にのぼる。
 2010年に始まった「中東の春」によってリビア、エジプトで長期独裁政権が倒された流れを見ると、戦争という手段がイラクで必要だったのか、疑問が湧いてくる。
 防衛研究所の内部でも、アメリカによるイラク戦争に反対する声はあった。それは、アメリカが強力な軍事力をもって攻撃して簡単に「勝利」をおさめたとしても、目標とされた国はかえって核兵器をもつ動機を強めて、世界を不安定化する心配があるという理由からだった。
 アメリカによるイラクの戦後統治は、決して「周到に準備」されたものではなかった。
 日米防衛の新ガイドラインによって、PKOと「非戦闘地域」における対米支援の両面の枠組みによって、自衛隊は理論的には世界中のどこでも、一定の条件の下に、戦闘以下の任務を行うことができるようになった。
 ブッシュ大統領の言うように「大量破壊兵器、国連決議違反、独裁、そのすべてに該当していた」としても、イラク戦争を正当化することはできない。まことにそのとおりだと私も思います。
 自衛隊の支援活動が成功したと言えるのは、自衛隊が一発の弾も撃たずに、一人の犠牲者も出さずに任務を終えたこと。
 これって、自衛隊はまだ「戦争する軍隊」ではないということですよね。つまり、憲法9条の縛りが生きているという成果なんです。いいことです。
当時の政府・与党には、イラクで自衛隊の犠牲者が出たら、内閣はもたないという雰囲気があった。
 イラクにおける自衛隊は、日本が国家として達成しなければならない目標や防衛研究所で検討していたような「国益」のためではなく、「アメリカとのお付き合い」のために派遣されていたことになる。これでは、自衛隊員が犠牲になるわけにはいかない。
 日本がイラク戦争を支持しても「よほどのプラス」はなかった。日本の国際的立場は低下の一途をたどっている。それは、イラク戦争を支持した理由が日米同盟の維持であり、そのこと自体で政策目的を達成したため、「次の手立て」がなかったからだ。
 アメリカによるイラク侵略戦争は大義名分なきものでした。それを支持し、今も反省していない日本政府は愚かとしか言いようがありません。
(2013年3月刊。2400円+税)

南極観測隊

カテゴリー:社会

著者  日本極地研究振興会 、 出版  技報堂出版
南極の昭和基地をめぐる50年の歴史が思い出として語られています。貴重な本だと思いながら一気に読了しました。
 タローとジローの話は、私の小学生のころの話です。1年後に生きていたなんて、すごいことだと今も鮮明な記憶として残っています。
 犬ソリを使うために北海道にいたカラフト犬を調べた。道に1000頭近くのカラフト犬がいた。南極でつかうソリ犬に適した50頭近くが稚内で訓練された。しかし、集められたカラフト犬は極地で外の雪の中で寝るのが普通ではない、町中で育った犬たちだった。だから、それぞれ思いのままに走っていく。ソリ犬の訓練はカラフトから引きあげてきたギリヤークの男性が教師になった。タローとジローは、仔犬だったため、ソリ犬としての訓練は受けなかった。
 昭和基地から往復270日間の犬ソリの旅に出た。小柄なテツ(6歳)は、疲れてサボっていた。仕方なく、ソリから放した。ところが、テツは動かない。それどころか、元きた方向に戻っていく。テツをバカにしたため、テツは怒ったのだろう。自尊心を傷つけられ、これでは死ぬしかないと思ったのだろう。
 そんなエピソードも紹介されています。タロとジロは、生後3ヶ月で宗谷に乗せられてきたため、昭和基地を故郷と信じ、そこに踏みとどまったのだろう。そして、アザラシの糞を主食として生きのびてきたのではなかったか・・・。それにしても、成犬たちが皆、餓死するなどしたなかで、よくぞ生き残っていたものです。
 越冬隊員は、この25年間に平均年齢が5歳もあがった。今では、50代の隊員も数人いる。そして、女性隊員も越冬した。
 マイナス60度の野外で排便するのは大変だということです。沸騰した鍋の蓋を取ったようで体温と外気温の差が100度近くもあることを実感させられる。
 たくさんの隕石を南極では収集できるようです。2万6千個以上のうち、日本が相当数を集め、世界一となりました。なかには火星からの隕石も発見しているとのことです。
 それにしても、極地の狭い人間社会で大変なこともあったようです。死亡事故も起きましたし、手術も必要となりました。そして、自分の感情をコントロールできないような人がいたときには、周囲は大変だったようです。時として、無知無謀は罪悪だと思う。そんな指摘もあります。
マイナス60度、70度という極寒の世界で観測、研究してきた人々の労苦に率直に感謝したいと思いました。
(2006年11月刊。1800円+税)

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