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カテゴリー: 社会

集団的自衛権で日本を滅ぼしていいのか

カテゴリー:社会

著者  半田 滋・川口 創 、 出版  合同出版
 安倍政権の憲法改正に向けた第一弾は、教育基本法の改正だった。これは2006年12月のことです。子どもたちに「愛国心」を強制して、お国のために命を捧げよというのです。そして、教科書統制を一層強化しました。
 第二弾は、防衛庁を防衛省に昇格させたこと。戦前の日本のようなカラ威張りする軍人がふんぞりかえる世の中なんて、サイテーですよね。
 そして、第三弾として憲法改正のための国民投票が定められました。
 航空自衛隊は、イラクでアメリカ軍の兵員と物資を輸送する活動をしていた。しかも、こっそり隠したというだけでなく、嘘までついて国民を欺した。
 航空自衛隊が運んだのは、国連職員が2800人、陸上自衛隊員が1万人。ところが、アメリカ兵は2万人以上だった。そして、アメリカ軍の物資は、ほとんど運んでいない。人道支援と称しながら、人道支援物資は運んでいない。
 この実態は、裁判のなかでようやく明らかにされたが、情報公開請求に対して黒塗り文書のみの公開だった。特定秘密保護法が制定された今日、このような事実は公表されないだろう。
 安倍政権には、人間の判断は誤ることがあるという事への警戒心や謙虚さがまったくない。日本は、ロシアと北朝鮮・中国の軍事通信はかなり正確に傍受している。北朝鮮の通信を傍受して、ミサイル搭載のやりとりまで把握している。しかし、中東について日本はまったく手がかりすらなく、すべてアメリカから情報をもらうしかない。
 官僚とって都合の悪い情報、判断に迷うものは秘密にされる。
 秘密保護法は官僚を肥大化させてしまう。
 日本の官僚は、能力の高いオレたちが国の舵取りをするので、国民は言うことを聞けばよいと考えている。お上(かみ)意識、命令する立場にいたいという意識でこり固まっている。
 安倍首相の元気の源は、フェイスブック。37万人のフォロワー、ネット右翼(ネトウヨ)がほめたたえるので、自分はエライと錯覚し、ますます過激なほうへ行く。
これまで集団的自衛権が行使されてきた例をみると、ベトナムもアフガニスタンも、惨敗している。良いことは何ひとつなかった。
 アメリカは、アフガニスタンとイラク侵略作戦のために150~500兆円もつかった。この膨大な軍事費の支出が、もとからあった貿易赤字と財政赤字という双子の赤字に拍車をかけた。その結果、オバマ政権は福祉や教育、医療という国内分野さらに外交政策で有効な手が打てないことにつながった。
 アメリカが現在、国際社会でリーダーシップを失いつつあるのは、このアフガニスタン、イラク戦争の負の遺産である。
日本の自衛隊は、攻撃的な分野は弱いけれど、防御的にみると世界一強い。
 日本は決して「丸腰」ではない。相手になかなか攻め落とせないという脅威を与えるに足りる軍事力をもっている。
テロとのたたかいは、相手が軍隊ではなく、特定できないために、必然的に無差別殺戮となり、憎しみが憎しみを生み、終わりがない。
 際限なき憎悪が生み出され、際限なき戦争になってしまう。そのような泥沼の戦争に日本がまき込まれてしまいそうだ・・・。
 もともと、尖閣諸島の上は米軍機や自衛隊機のP-3Cが飛んでおり、今もまったく変わらない。安倍首相の一連の言動こそ、日中韓の関係を悪化させている。
 アメリカの戦争戦略は大きく変わっている。かつては若いアメリカ兵を犠牲にしても軍事的介入を優先する方針だった。今や、イギリス、日本そして韓国の衛星国に兵士を出させ、死ぬのは、アメリカ以外の国というシステムに変えようとしている。
 日本がアメリカ言いなりに行動していて、何もいいことはない。そのことを実感させる本でもありました。大変歯切れよく、問題の危険な本質を対談のなかで明らかにしてくれる本です。
(2015年2月刊。1600円+税)

瞽女 キクイとハル

カテゴリー:社会

著者  川野 楠己 、 出版  みやざき文庫(鉱脈社)
 なぜか宮崎の出版社から出た本ですが、テーマは新潟県で活動していた盲目の女性芸人集団・瞽女(ごぜ)の生きざまです。
 生まれつき、あるいは病気によって失明してしまった女性が何を願ったか・・・。
 次の世に生まれ変わるときには、たとえ虫になっても明るい目をもらいたい。虫になってもいいから、明るい眼がほしいと百歳のときに語ったハル。そこには視覚障害者なるが故に体験しなければならなかった苦難の数々が、いかに耐えがたいものとして、ハルにのしかかっていたかを物語っている。
 鼓の下に目と女を書いて、瞽女・ごぜと読ませる。これは貴人の御前(ごぜん)で鼓を打って曽我物語を語るなどに携わっていたことからくる。元禄時代に三味線が普及してから、彼女たちも鼓を放して三味線を持った。
 旅の途中でも、5月13日の妙音講には必ず出席するために帰宅する。瞽女たちにとっては年に一度の祭典である。髪を整え、似合った着物を着て集まり、仲間と健在をよろこびあう。
 農村では、季節ごとに訪ねてくる瞽女を待っていた。ラジオがやっと始まったことのこと。娯楽としては、瞽女や浪曲語りが回ってくるのを待つ以外に、何もなかった。だから、瞽女の来訪は、村にとって「ハレの日」になる。
 宿は「瞽女宿」と呼んだ無償で泊めてくれる大きな農家があった。その家では代々瞽女の世話を引き受けていた。
 組ごとに決まった旅をもち、一つの村にいくつかの組が時期をずらして訪れていた。高田瞽女は、上越全体に100件もの宿をもっていたようだ。
 瞽女の旅は、通常3人か4人が一組になって歩く。一行のなかで、弱いながらも視力のあるものが先頭に立つ。
 農家の間口の戸を開けて、「ごめんなんしょ」と奥に声をかけて三味線を弾きだし、3分ほどの「門付け唄(かどつけうた)」をうたう。この門付(かどつけ)は、瞽女の一行がこの村に北ことを知らせる役割がある。
 宿の家では、間仕切りの襖を外し、表座敷を開放して臨時の会場をつくる。
 瞽女たちは、口説(くどき)、民謡、段物を次々にうたい続ける。終わるのは、夜10時、11時になることがある。演目は、驚くほど広い。
 ストーリーのある八百屋お七、佐倉宗五郎、小栗判官(おぐりはんがん)、照手姫(てるてひめ)、葛の葉子別れなどの古浄瑠璃を中心として、段物(だんもの)と呼ばれる「瞽女松坂」地震・災害・心中事件などのニュース性のある話題を歌い込んだ口説(くどき)清元、端唄、新内から、民謡や流行りうたなど、あらゆる分野にまたがっている。
 そして、瞽女が途中の村々で仕入れた情報も伝えられる。瞽女は、芸能と情という文化を村人に伝える存在なのだ。
瞽女社会には、男の肌に触れることは、能動的であろうと、受動的であろうと許されないという厳しい掟(おきて)がある。瞽女には、結婚は許されない。結婚すると瞽女仲間から離脱し、二度と戻ることは出来ない。
 文字ではなく、すべて聞いた音で覚え、三味線を弾いて語り、うたうという瞽女の声をぜひ聞いてみたいと思い、この本に紹介してあるのを早速注文してみました。なるほど、80歳とか90歳とは思えない張りのある声でした。
(2014年10月刊。2000円+税)

「カジノで地域経済再生」の幻想

カテゴリー:社会

著者  桜田 照雄 、 出版  自治体研究社
 カジノに頼る経済なんて、そもそも発想が間違っています。
 そして、この本は、カジノに頼って地域経済が再生するなんて、嘘っぱちだと実証しています。アベとかハシモトのインチキ宣伝に乗せられてはいけません。
 「IR型カジノ」の基本的な考え方は、エンターテインメントやショッピングなど、魅力ある「楽しみ」を提供する施設を組み合わせた複合施設を集めることで、観光客の大幅な増加を図ろうとしているもの。そのなかで、カジノ施設が、今までにない「楽しみ」を人々に提供する集客施設として位置づけられている。
 コンベンションを誘致する「切り札」としてカジノが考えられている。
 九州では、カジノに頼ることを北九州、佐世保(ハウステンボス)、別府、宮崎(シーガイア)、沖縄が名乗りをあげている。
 おぞましい、恐るべき事態です。
 賭博はコントロールできるか?現実には、人間の脳への刺激に起因する依存症の発症をコントロールすることは出来ない。
 カジノは、既存のビジネスを共喰い(カニバライズ)する。大阪のUSJの経済波小効果は5900億円だったが、地元の商店街は潤っていたという事実はない。
 カジノのもうけは、「客の負け分」にほかならない。大阪にカジノがオープンしたとしても、すでに飽和状態にある商業施設のなかで、多くの競争相手を向こうにまわしてカジノが生きのびるという保障はまったくない。
 かつて30兆円産業といわれた日本のパチンコ産業も、今では20兆円を大きく下まわっている。4割近く落ち込んだ。パチンコへの参加人口も、1790万人(2004年)から970万人(2014年)へと、半減している。
 そのなかで、マルハンとダイナムの2社で、半分の売上げを占めている。カジノと両立できるパチンコ店というのは考えられない。
 アメリカでは、IR型カジノが次々に閉鎖に追い込まれている。
 カジノは、バクチです。人の心を荒廃させ、まわりに不幸を持ち込むものです。そんなものにたよる社会は不健康ですし、長続きするはずもありません。
 大阪の橋下市長も、安倍首相も狂っているとしか言いようがありません。ところが、そんな彼らが、子どもに道徳教育を強制しようとするのです。世の中は、本当にわけが分かりませんよね。どうなっているのでしょうか。有権者は、一刻も早く目を覚ますべきだと思います。
(2015年1月刊。1100円+税)

うつの医療人類学

カテゴリー:社会

著者  北中 淳子 、 出版  日本評論社
 過労が続き、心身に過重なストレスがかかって「うつ」になると、自分の責任じゃない、この会社を辞めたらいいと普通に考える余裕を失い、自分が悪いとか、苦しみはずっと続くという心理的な視野狭窄の状態に陥ってしまうことがある。
 真面目で、責任感の強い人がうつ病になりやすいという性格論は、日本とドイツの一部を除いてはほとんど聞かれない。しかし、臨床の現場では、圧倒的な説得力をもって長く支持されてきた。
 自殺とは、自らの意思にもとづいて死を求め、自己の生命を絶つ目的をもった行動である。精神障害による自殺では「意思」そのものが病に侵され、自分の行為のもたらす結果を十分に理解できないとされるため、厳密な意味では、「病死」(過誤死・疑似自殺)として理解される。
 WHO報告は、自殺者の9割は、何らかの精神障害を病んでいるとする。
精神科医が治療対象とみなすのは、自殺一般ではなく、あくまでも「精神障害」による「病的絶望」なのである。
精神科医は、初診患者と会うとき、部屋に入ってくる瞬間から、その姿勢、表情、声のボリューム、挨拶の仕方、椅子の腰かけ方、話し方を仔細に観察し、根底に何らかの病理が潜んでいるのかを読みとろうとする。
 睡眠、食欲、体重の変調と気分の変化という、うつ病の主症状に関して質問する。精神科医にもっとも根本的な問題を突きつけるのは、慢性の精神病患者が、みずからの病に絶望しておこなう「覚悟の自殺」である。
 「精神療法は」は、15分しても1時間しても、保険診療で支払われる報酬は同額。だから、医師が精神療法的なかかわりに時間をさきたくても、より早くより確実な効果の期待できる薬物治療に専念し、診察できる患者数を増やさないことには、病院の経営が成りたたない困難な状況が続いている。
 医師の自殺率は高いが、そのなかでも精神科医の自殺率は圧倒的なトップを占める。実際に起こってしまった患者の自殺ほど、医師に深いダメージを与える経験はない。
 現在、世界規模で進行中の、うつの医療化の特徴は、うつ病が仕事や生産性という「公的領域」でとらえ直されている。また、うつ病への懸念が男女平等に向けられている。
 うつ病をストレスの病とする考え方が広く流布する契機となったのは、1990年代以降の過労うつ病、過労自殺裁判である。これらの判決によって、うつ病は「誰でもなる病気」だということが立証された。
 うつ病について、アメリカでも学んだ著者による日米比較もふくむ、興味深い人類学の学者による本です。
(2014年9月刊。2400円+税)

紛争解決人

カテゴリー:社会

著者  森 功 、 出版  幻冬舎
 東京外国語大学の伊勢崎賢治教授の活動を紹介する本です。本当に勇気ある日本人だと思います。心から敬意を表します。
 日本国憲法、戦争放棄の平和憲法を海外の戦争の現場で実践してきた人ですから、安倍首相のいう集団的自衛権の危険性を説く話には、まことに説得力があります。
 伊勢崎賢治は平和構築の研究者。世界じゅうの紛争地を飛びまわり、テロリストやゲリラと対峙し、紛争当事者の兵士たちと交わってきた。まさしく、たたかう紛争解決人だ。
 アフガニスタンには、もう一人、中村哲さんというペシャワール会の医師(福岡県人)も活躍しています。武力・軍事力に頼らない紛争解決と予防に日本人が貢献していること、その活動の背景には日本の平和憲法があることに、私たち日本人はもっともっと確信をもつべきだと痛感します。
 この本を読むと、強大な軍事力をもつアメリカが、どうしようもない間違いを重ねてきたことがよく分かります。軍事力に頼って平和が実現できるはずはないのです。
 伊勢崎賢治は、早稲田大学の建築科を卒業してインドに渡り、スラム街に活動するようになった。
 これまたすごい行動力です。とても真似できません。インドの公安当局から目をつけられ、ついには国外追放ということになるのですから、その実績たるや、すごいものです。
 オルグは思想によって組織をまとめるものではない。それは人間の必要性から成就するものであり、それを貫くことが大切。平和の思想をいくら持ち出しても、戦争や紛争は終わらない。このまま紛争を続けていても終わりがなく、暮らしていけなくなると人間が感じはじめたときに初めて和平が成り立つ。その必要性が、生存に直結すればするほど、人間は真剣になる。そこで、人間は団結する。
 伊勢崎賢治は、アフリカのシエラレオネに派遣され、NGOのディレクターになった。シエラレオネの国家予算90億円のうち、実際に使えるのは30億円ほど。これに対して、このNGOは年間3~5億円をつかって、学校や道路などのインフラを整備していった。そして、2年目(1990年)、伊勢崎賢治は、大統領の指名によって、市議会議員になった。
 シエラレオネの伊勢崎邸は高い塀に囲まれた一軒家で、門番が3人も立つ。
 しかし、ここでは、雇った警備員が強盗に変身するケースが珍しくない。
 そして、コブラがそこらじゅうにいる。だから、冷蔵庫にはコブラ用の血清を保管している。ところが、停電ばかりの国。血清の保管も大変だ。うひゃあ・・・、と思いました。こんなところに幼い子どもを連れて生活していたのです・・・。
 次は、ケニア。さらに、エチオピアに派遣される。そして、東ティモールに派遣され、県知事になるのでした。1500人の国連平和維持軍のリーダーです。
 すごい日本人がいるものですよね。軍人ではないのに、多くの軍人を指揮・命令していくのです。
 そして、再びアフリカのシエラレオネに戻ってきました。そこで武装解除に従事します。50人の部隊を率いる司令官がなんと14歳だというのです。
 伊勢崎賢治がたてた小学校出身の少年兵が、いつのまにか司令官にのぼりつめた。貫禄がある。
 集団的自衛権を行使するとしたら、もっとも大きな国際課題はテロとのたたかいである。
 アフリカ軍やNATO軍に火力、つまり戦力が不足しているということはない。だから、日本が自衛隊をそこに送っても、たいした働きはできない。戦力以外のところで日本はがんばるしかない。
 テロの温床となっている地域において、日本ほど評判がいい国はない。それは日本には平和憲法があり、この70年間、戦争をしたことがないからだ。
 現場の国際貢献という意味では、憲法9条はまだまだ使える。というか、いまここで踏ん張らないと、最大の国際的課題であるテロとのたたかいに光が見えなくなるように思える。
 肚のすわった日本人男性が世界の紛争現場で活躍していること、そして、彼を背後から支えているのは日本国憲法、とりわけ9条であることを知って、大いに励まされました。
 伊勢崎さん、これからも、身体の健康と安全に、くれぐれも気をつけて紛争解決のためにがんばってください。
(2015年2月刊。1400円+税)

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