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カテゴリー: 社会

希望の牧場

カテゴリー:社会

                                (霧山昴)
著者  森 絵都・吉田 尚令 、 出版  岩崎書店
 福島第一原子力発電所。そこから20キロ圏内にあった牧場。330頭の肉牛がいた。
 3.11のあと、放射能をあびた牛たちは、もう食えない。食えない牛は売れない。それでも、生きてりゃのどがかわくから、水くれ、水くれってさわぐんだ。エサくれ、エサくれって、なくんだよ。
 だれもいなくなった牧場に、オレはのこった。そりゃ放射能はこわいけど、しょうがない。だってオレ、牛飼いだからな。まったく牛たちはよく食うんだ。エサ食って、クソたれて、エサ食って、クソたれて、まいにち、それだけだ。
 それが肉牛の仕事だもんな。牧場の牛たちは、そのために生きて、死ぬ。それがこいつらの運命。人間がきめた。そして、原発事故によって、人間がくるわせた。
 国は、そんな牛について、殺処分することをきめた。オレは、そうしなかった。
 売れない牛を生かしつづける。意味がないかな。バカみたいかな。売れない牛に、まいにちエサをやる。もうからないのに、金だけかかる。
 いま、牧場には360頭もの牛がいる。原発事故の前よりもふえている。ふしぎだろ?
 知覚の牧場主からたのまれた牛や、迷子になっなってた牛を、ひきとったのだ。
力強いタッチの絵で原発事故による悲惨さを描き出した大判の絵本です。
(2014年9月刊。1500円+税)

オーガニックラベルの裏側

カテゴリー:社会

                               (霧山昴)
著者  クレメンス・G・アルヴァイ 、 出版  春秋社
 従来型の養鶏や条件の悪い有機養鶏場で発症するのがカニバリズム。鶏は、互いに首や背中、尾そして尻周りの羽をつつきあう。そのため、体表が広く羽がむしりとられて皮膚が露出するため、感染症が発症しやすくなる。
 群れの上下関係が確定していないときにも、カニバリズムが起きやすい。
 鶏は鶏舎から出ようとしない。自然界では、鶏は森の周縁部に生息しているので、広い場所で身を隠すところがないようなところに出るのを鶏は恐れる。
オスのヒナは、生まれたその日に工場内のベルトコンベアーでシュレッダーまたはガス室に送られる。オスは卵を生まないから。
 鶏は、はじめに濃度の薄いガスにさらされる。呼吸困難になり、パニックに陥って大暴れする。その後、より高い濃度のガスで気絶させられる。そして、回転シャッターにのせられて、一秒に3羽のペースで鶏は解体され、全自動工程でプラスチック容器にきれいに収まる。
 この本は、有機畜産・有機農業といえども、家畜は劣悪な環境で飼育されていること、天然の在来種ではなく、ハイブリッドが利用され、農薬も使われ、形が悪いというだけで大量の作物が廃棄されていることを明らかにしています。
 有機農業が本来の理想とかけ離れてしまった理由は、大規模化、産業化にある。それをスーパーマーケットなどの大規模な小売企業が推進している。
 スーパーマーケットが納品量や形などについて理不尽な要求をするから、生産者は生き残るためには有機農業の理想を捨てるしかない。
 有機農業だからといって、手放しで礼賛したり、安心してはいけないということのようです。
(2014年11月刊。2200円+税)

老人喰い

カテゴリー:社会

                               (霧山昴)
著者  鈴木 大介 、 出版  ちくま新書
 大変勉強になりました。振り込め詐欺(今では呼び名が特殊被害詐欺と変わったようです)が、こんなに高度に発達した詐欺集団による者だと知って、本当に認識を新たにしました。欺すほうの進化と、欺される側の一般国民と弁護士の認識は昔ながらのものでしかありません。その意味で、この本は消費者被害に関わる弁護士にとっては必読だと思いました。
 昔、私は豊田商事とか海外先物取引による被害救済にあたっていました。欺す側の正当化論理は、世の中の眠っている資金をオレたちは活性化してやっているというものでした。
 振り込め詐欺集団も、まったく同じ論理で自らを正当化しつつ行動しているのですね・・・。
 お年寄りから老後のために貯め込んでいた大金を奪い去る当事者(若者)は、決して生まれ育ちの貧困が生み出した犯罪者だとは言い切れない。親の愛を十分に受けた者もいれば、大学教育を受けた者もいる。だが、それでも彼らは明確な敵対感情をもって、高齢者に牙をむく存在となった。なぜなのか?
 特殊詐欺犯罪に手を染める若者たちは、夜露(よつゆ)の世代である。彼らは砂漠のなかで、夜露をすすって生きている。ところが、その横には、たっぷり水がたまった革袋をかかえた高齢者がいる。渇き切った若者たちは、血走った目で高齢者のかかえる水袋を奪い去ろうとする。
 老人喰いをしている若者たちは、とてつもなく分厚い停滞感、閉塞感の雲を突き抜けた者たちだった。非常に優秀で、異常なほど高いモチベーションの持ち主だった。
 振り込め詐欺の集団が活動するマンションに持ち込んでいいのは、タバコと現金、そしてケータイのみ。免許証とか自分名義のケータイなどは厳禁、マイカーやオートバイでの通勤も許されない。
 毎朝、唱和される「御法度九ヶ条」。酒、薬、女、博打、喧嘩、他業、服装、家族、銀行。これは、詐欺の現場が警察の摘発を受けないため。
詐欺業界において、名簿屋の進化は著しい。警察署の生活安全課や行政の名をかたって電話をかける。高齢者の安全確認や社会的な調査業務のためといって電話をかけてくる。こんな電話には素直に応じてしまうのが普通の人だ。これは、下見調査と呼び、下見屋が業務委託を受ける。
 詐欺のターゲットになりそうな高齢者は「下見」調査のすべてに非常に丁寧にこたえ、かつ訊かれてもいないことまで自発的に長時間にわたって話してくれる。
欺しの電話の手口は、問題を起こした息子役以外に二役が代わるがわる電話口に出ることで、ターゲットを混乱させる。お金が奪えないと判断した相手には、さっさと興味を失う。騙す側は、圧倒的に洗練されている。
 詐欺集団は、徹底的に管理された高度な集団である。自分の役まわりの技術を徹底的に磨きあげている。そして、詐欺に関与する裏の名簿屋がいる。情報を強化した名簿によれば60%もひっかかる。
 詐欺犯罪者集団のトップに暴力団が接近している。今、詐欺集団を完全に組織化しようとする動きがある。暴力団による系列化である。
彼らは、金主たちのお金をまとめ、詐欺に必要な設備、事務所や荷電するための通信回線、ターゲット名簿などを準備して、現場展開する。これが振り込め詐欺の裏側の状況です。 1店舗9人体制。2、3人一組で、役割を分担して電話をかける。話す。切られる。かける。話す、切られる。これを一日中、やるのです。まさに非人間的な作業です。
 老人は、日本社会が今後発展しようとするのに対するガンだ。だから、大金を奪ってもいいというのです。
あなたも、ぜひお読みください。きっと目が開けます。
(2015年2月刊。800円+税)

大阪都構想が日本経済を破壊する

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  藤井 聡 、 出版  文春新書
 5月17日に、大阪市民の投票によって決まるものは何か?
 大阪都構想と言うけれど、実は、今回の投票によって大阪都が成立するというわけではない。そうではなく、大阪市がなくなって、5つの特別区が出来るというだけのこと。大阪府はそのままなので、5つの特別区のうえに大阪府が君臨することになる。
 本書は、政令市としての大阪市がなくなってしまうことによる大阪市民にとっての大きなダメージというか損失を明らかにしています。ええーっ、そんなこと知りませんでしたがな・・・、とは言えませんよ。橋下市長の口先にごまかされては大変なことになります。
 政令市である大阪市は、255億円の事業所税を自由に使える。549億円の都市計画税も使える。固定資産税2707億円も、1259億円の法人市民税も使える。ところが、「都構想」が実現したら、大阪市民が、これらのお金を使うことはできなくなる。大阪市は、年間2200億円を自由に使えなくなる。そして、この年間2200億円は、大阪府の予算に組み込まれる。すると、どうなるか・・・?
 大阪府の借金返済に使われるのは避けがたい。そして、その結果として、大阪市民サービスは削減されてしまうだろう。
 大阪市をなくして5つの特別区を作るというのが、橋下市長の「都構想」。では、東京の都区制度はうまくいっているのか?
 都区制度はやめて、市にしてほしいと東京の23区は言っている。それなのに、大阪では東京にならって都区へ移行するというのか・・・?
 東京23区が豊かなのは、日本の中での東京一極集中があるから。そんな特殊事情は、大阪にはないし、あてはまらない。
 「都構想」は大阪市から、権限と力、そしてお金をむしり取るもの。
 これは橋下・大阪市長が大阪府知事当時に言ったセリフ。そのとおりなのだ。
 大阪市長がいなくなってしまう。5つの特別区長には、それほどの権限はない。
 大阪市長がいなくなり、大阪市議会議員がいなくなったうえ、大阪市役所も存在しなくなる。強力なパワーが大阪になくなったとき、大阪市民は、自由に力を発揮できるのだろうか・・・?
 5つの特別区をつくったら、「一部事務組合」というプチ大阪市役所がどうしても必要になってくる、そこに大阪府が介入してきたら、なんともややこしい「三重構造」が生まれる。
 「都構想」は、二重行政を解消するという。当初は年間4000億円もの節約になると言っていた。それが、1000億円となり、いつのまにか155億円、さらには11億円にまでなってしまった。実は、むしろ年間13億円もの赤字を出す可能性すらある。
 橋下市長の「都構想」のウソを明らかにした本です。
 この5月17日の大阪市民の投票は、憲法改正の予行演習だという見方があります。低い投票率のなかで、「橋下」「維新」人気だけで、「過半数」をとろうというのです。マスコミ操作をあくまで重視しているのも、そのためなのでしょう・・・。
 本当に恐ろしい、「都構想」です。ぜひ、大阪市民のみなさん、物事の本質をつかんでくださいね。
(2015年4月刊。740円+税)
 日曜日、初夏らしい晴天でしたのでチューリップの地上部分を始末しました。スイセンなどと違って、チューリップの球根は毎年うえるしかありません。
 いま、庭には黄色のアイリス、ライトブルーのジャーマンアイリス、紫色のクレマチス、純白のカラー、橙色のヒオウギが咲いています。
 2月に植えて霜枯れを心配したジャガイモは、なんとか生きのびました。白い花を咲かせているのもあります。
 アスパラガスが毎朝のびていて、一日一本食べられます。電子レンジで1分間チンして、そのまま口にふくみます。春の香りをかみしめることができます。春ですよね・・・。

プラチナタウン

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                               (霧山昴)
著者  楡 周平 、 出版  祥伝社
 舞台は東北のさびれゆく町です。冬に雪に埋もれてしまうという点こそ違いますが、東北も九州も、田舎に残っているのは年寄りばっかりという点では、まったく同じです。
 そんな町が、ハコモノだけはどんどん造ってしまうのです。もちろん、その利用者なんかいなくて、宝の持ち腐れ、町は大赤字を抱え込んでしまいます。それでも、公共工事を請け負った土建業者と政治家は大もうけするのです。この本に欠けているのは、公共工事を取り仕切っている暴力団が登場しないという点です。そして、悪役として、古狸の町会議員はいるのですが・・・。
主人公は大手総合商社の部長にまで登りつめているサラリーマンです。ところが、実力ある取締役ににらまれて、子会社へはじき飛ばされようとするのです。そこへ、故郷の町をよみがえらせる救世主になってほしいという話が飛び込んできたのでした。
 なんとかマッケンジーといったコンサルタント会社への、次のような痛烈な皮肉もあります。まったく同感至極です。
 コンサルタントの話をまともに受けて事業が成功するのなら、苦労はしない。連中の能力がそれほど高いというのなら、世の中につぶれる会社なんて、ありやしない。世の中に存在する会社で、少なくとも一流と目される企業でコンサルタント出身の社長なんて、ただの一人も存在しない。それが何よりの証拠だ。
 真の公共事業とは、一時のカンフル剤であってはならない。恒久的に利益を生み、雇用を確保するものでなければならない。
 この本では、工場を誘致しようとして整備した3万坪の土地に定年退職後の人たちの住める町づくりをしようという企画が進行していきます。たしかに、私たち団塊世代が引退後の生活を、どこで、いかに過ごすかは、国家的な関心事のはずなのです。ところが、いま十分な対策がとられているとは、とても思えません。
 この本では、赤字再建団体寸前の田舎を、外国に住んだこともある総合商社の部長が町長になって、町の特産を生かしつつ、高齢者本位の町づくりに成功したというストーリーです。現実には、それほどうまく行かないように思いますが、こんな取り組みが本当にあってほしいものだと思いました。介護施設というのは、若者の働く場でもあるのですから・・・。ご一読をおすすめします。
(2008年7月刊。1800円+税)

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