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カテゴリー: 社会

受験は母親が9割

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  佐藤 亮子 、 出版  朝日新聞出版
  3人の息子を東大理Ⅲ(医学部)へ進学させたスーパーママの体験記の第二弾です。
その合理的な手法に目を開かされるとともに、最後まで徹底してやり抜いた実行力には驚嘆すると同時に、頭が下がります。
著者の夫が私の親しい弁護士なので、前著に引き続いて著者サイン入りの本を贈呈していただいたのでした。
きわめて合理的な子育てが実践されたのですが、それでも著者は、楽しみながら、そして息抜き、手抜きも按配・加減しているという点で大いに共感するところがあります。
受験ですから、目標ははっきりしています。それに合わせて日常生活がすべて進行していくのですが、読んでいてギスギスしたところがないので、ひょっとしたら、我が家でも出来るのでは(出来たのでは)と思わせるのです。
前著を読んで、もっと詳しく知りたいという人に向いた本だと思います。つまり、私は、まずは前著(カドカワ)を読んだうえで、本書を読むことをおすすめしたと思います。
3兄弟が通っていたのは灘(なだ)中学・高校です。奈良の自宅から神戸にある学校まで電車を乗り継いで1時間40分かかります。大人でも嫌になるほどの長い通学時間ですが、3兄弟は6年間やりとおしたのです。しかも、サッカー部にも入っていたというのですから、すごいものです。
そして、母親である著者は、毎朝、午前4時半に起床して9合のご飯を炊き、3兄弟と夫の弁当を作り続けました。3兄弟は午前6時すぎに家を出ます。朝ご飯のためには、別におにぎりを握って持たせるのです。
そして、昼間も昼寝付きの専業主婦どころではありません。子どもたちの勉強の準備をするのです。問題集をコピーしたり、大事なところにはマーカーをつけたり、、、。
夜は、子どもたちが寝るまで起きていますので、午前2時になることもしばしば、、、。
なんとタフな母親でしょうか。子育てのプロと自称しているのも理解できます。よくぞ続いたものです。私のよく知る夫の果たした役割は「1割」だということですが、それはそうかもしれませんが、見えないところで著者を大いに支えていたような気がします。
子どもを勉強させるためには、ただ「勉強しなさい」と言うだけではダメ。子どもが勉強できるように、親は徹底的にサポートする。翌日の持ち物をそろえてカバンに入れ、忘れものがないかチェックするのは母親の役割。
3兄弟と妹には、すべて名前に「ちゃん」をつけて呼び、「お兄ちゃん」とは呼ばない。兄弟すべて、いつも同じ扱いをする。これを徹底した。
子どもからすると、母親は完璧すぎない。家の中は散らかっていて、庭も荒れている。母親は割り切っている。それでも、家の中は、基本的にのびのびした雰囲気で過ごせる家庭だった。
夫婦ゲンカもあったようですが、いつも母親の勝ち。なので、一瞬のうちに終わる。
「そんなに勉強ばかりでは、かわいそうだろう」「子育ては、私の責任、口出ししないで」
いやあ、これには、まいりました、、、。
勉強するのは、人としてより豊かに生きていくためなんだ。子どもたちには、何度も話して聞かせた。うむむ、そうなんですよね、なるほど、、、。
いわゆる「東大脳」は、生まれついたものではなく、育て方で決まるもの。子どもたちは、勉強が楽しいと目を輝かせていた。塾の日は、心待ちにしている、とても楽しい日だった。
私も、小学4年生から中学3年生まで塾に通いました。学校とは違った教え方で、よく分かりました。でも、私なりの勉強法が分かりましたので、高校になると塾には通わず、Z会の通信添削のみにしました。これには大いに刺激を受け、また励みになりました。
3兄弟は、勉強するのは同じ部屋。つまり、各自の子ども部屋というのはありません。テレビを見るときは2階にあがらないといけません。1階のリビングにはテレビがないのです。我が家では、子どもたちがいるあいだテレビはありませんでした。子どもたちが家を出てしまった今はテレビがありますが、私は基本的に今もテレビは見ません。録画したものを見ることがあるだけです。
どんなテストでも、目ざすのは100点。ほめるのは、ほどほど。母親は何事にも動じず、感情的にならないことが大切。
私がこの本を読んで、あっと驚き、今でもそんなことしていいのかと疑問に感じたことがあります。それは、3兄弟が1歳から公文式教室に通って、読み、書き、計算をはじめたということです。ひょっとして、これがすべての基礎だったのかもしれません。でも、これって、本当にいいこと、必要なことなのでしょうか、、、。
とても実践的な、ぐいっと目の開かれる思いのする本です。子育てに少しでも関心のある人には強くおすすめしたいと思います。
佐藤先生、今後ともどうぞよろしくお願いします。
(2015年7月刊。1300円+税)

武器ビジネス(上)

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  アンドルー・ファインスタイン 、 出版  原書房
 自民・公明の安倍政権が安保法制法を強引に成立させてしまいました。このとき、アベ首相は今後の日本の平和を守るために必要な法制だと高言していましたが、実際には、日本が世界各地の紛争に武力介入しようとするものです。その結果、日本社会の平和が大きく脅かされることになるのは必至です。
 ですから、多くの国民が安保法制法案を戦争法案だと名づけて反対してきたのも当然のことです。アベ政権が現実にすすめているものの一つが軍需産業の育成・強化です。戦車や潜水艦などの軍事品を諸外国にどんどん輸出してもうけようというのです。日本も、アメリカやイギリスそしてドイツやフランスと同じような死の商人になろうとしています。
 自分がもうかりさえすれば、自分の家族が死ななければよその家族の誰が死のうと知ったことではない。ましてや、外国人がいくら死んでも関係がない。これがアベ政権です。本当に恐ろしい人たちではないでしょうか。それこそ血も涙もありません。いえ、血もしたたる強欲の輩(やから)です。この本は、そんな戦争ビジネスの実態を世界的視野で暴いています。
 サウジアラビアの指導者たちは、臣民には厳格なコーランの教義の厳守を要求する一方で、自分たちの行いは、彼らの信仰とは、これ以上ありえないほどかけ離れていた。
 サウジアラビアがアメリカやイギリスから武器を購入するとき、王族たちは莫大な賄賂を収得していた。高級車、飛行機、高級リゾートでのぜいたくな休暇、豪華なショッピング、、、。
 これって、アベ首相たちが、高級料亭やレストランでぜいたくざんまいをしている一方で、庶民は倹約精神を押しつける道徳教育に熱心なのとまるで同じですよね、、、。
 なにしろ、月1億円、年間10億円もの使い放題の内閣官房機密費があるのですから、やめられませんよね、ぜいたくは、、、。私は、そんなアベ首相は絶対に許すことができません。戦争への道連れなんかしたくないからです。日本で自爆テロが頻発するようになってから、あのときアベ首相に反対しておけばよかったなんて後悔しても遅いのです。
 2010年、世界全体の軍事支出は総額1,6兆ドルにのぼった。地球全体で、ひとりあたり235ドル。これは、2000年から53%増加している。そして、全世界の国内総生産の2、6%にあたる。アメリカは国防予算が7030億ドルをこえ、国家安全保障に毎年1兆ドルをついやしている。大小の通常兵器の取引は、毎年、総額600億ドルにのぼる。
 アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、オランダ、イタリア、イスラエル、中国は、常に武器と軍需品の最大の製造国であり、輸出国である。
武器取引には贈収賄や腐敗行為が蔓延し、完全に公明正大な武器取引はごくわずかしかない。
 兵器産業の腐敗した秘密主義の手口は、販売国と購入国の両方で、説明責任のある民主主義を土台から揺るがしている。
武器取引は、全世界の取引の腐敗行為の40%以上を占めている。武器取引は、表向きの世界と影の世界、政府と商業と犯罪行為の錯綜するネットワークであり、我々をもっと安全にするどころか、たいていは豊ではなく貧しくする。そして、我々のためでなく、自己の利益に奉仕する少数のエリートの利得のために管理され、見たところ法律が及ぼす、国家安全保障の機密主義に守られ、誰にたいしても説明責任を負うことはない。
 政治家たちは、日本に限らず表向きはキレイゴトを口にしつつ、裏では汚い金をふんだんに我がモノにしている。その典型が武器ビジネスなのです。あまりにもおぞましいので、目を覆いたくなるほどです。でも、しっかり目を見開いて究明し、根絶したいものです。
(2015年6月刊。2400円+税)

すごいぞ「しんかい6500」

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山本 省三   出版 くもん出版 
「しんかい6500」の建造にあたって、まず課題となったのは、操縦室。6500メートルの深海の水圧は、601気圧以上。それだけの水圧に耐えられる素材は、チタン合金しかありえない。
操縦室の直径は2メートル。そこに3人の乗員が座る。スペースがとれないので、トイレなし。携帯トイレを持参する。女性には辛い。
暖房設備はない。理由は二つ。すべてのエネルギーをリチウムイオン電池にたよっているので、できる限り電力を節約しなければならない。また、船内で呼吸するため、酸素を使用している。酸素が濃くなると、自然に土がついたりするので、熱を出すものは危険。6500メートルの深海の水温は1度か2度。それが操縦室の中にまで伝わってきて寒い。だから、上下がつかなかった。燃えにくい布でできた潜航服を着用する。その下には、真夏でもセーターを着る。
沈むスピードは1分間に40メートル。深さが300メートルをこすと、太陽の光がしだいに届かなくなり、窓の外は夕暮れのように暗くなっていく。
母船とは、声でやりとりする。水の中では電波が弱まるので、音波を使う。音波が水中を6500メートルすすむのに4秒かかるので、海上で聞くのは4秒前の声。
6500メートルの海底に着くまでに、潜航開始から2時間半かかる。海底にいられるのは4時間ほど。
マリンスター。船体に触れたショックで、ぱっと光を放つ発光生物。しかし、写真やビデオにはこの光がうつらない。深海にもぐった人だけが見られる光景。
浮かび上がるときにも、行きと同じ速さで浮かんでいくので、海面まで2時間半かかる。合計すると、8時間の船旅だ。こんな潜航調査を4月から12月にかけて60回おこなう。残りの4ヶ月は、部品の分解やそうじ、修理にかける。
なぜ日本に地震が多発するのか。それは、日本列島が沈んでいくプレートに直面しているからです。
「しんかい6500」は、地上の私たちの暮らしの安全を支える調査の一つを実行しているとも言えるわけです。
写真がたくさんあって、とても分かりやすく、楽しい本でした。
(2012年4月刊。1600円+税)
 

融氷の旅・日中秘話

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 浅野 勝人  、 出版 青灯社
 南京大虐殺が世界記憶遺産に登録されることになったことについて、日本政府が抗議したという報道が流れました。とんでもない「抗議」です。「南京大虐殺場は幻だった」という妄説を日本政府がとっているということでしょう。この点でも、安倍政権の暴挙を許すことができません。
この本は、NHKの政治記者から自民党の国会議員になったという経歴の著者によるものです。私と意見が一致しているわけではありませんが、南京大虐殺について、著者が次のように述べている点は、まったく共感できます。
南京大虐殺では、軍人だけでなく、戦闘と何らかかわりのない女性や子ども、お年寄りをふくめて殺害された人数が問題になっている。たしかに人数は重要な要素だが、30万人も殺してはいけないが、3000人ならいいのか、300人なら民間人を殺しても許されるのか。人数が問題なのではなくて、非戦闘員を殺したら虐殺だ。大事なことは、被害者が何人だったかについて論争を繰り返すことではない。南京大虐殺を教訓に二度と民間人の虐殺を伴うような武力紛争を起こさせない誓い、平和を死守する強固な意思が大切だ。
 本当に、そのとおりだと思います。30万人も虐殺しているはずがないから、南京大虐殺なんてウソだ。そんなデタラメは許されません。これは論理の飛躍をこえています。
日本軍が南京大虐殺を実行したことは、いろんな資料によって歴史的に証明されていることです。それなのに、「30万人」でなかったから、「虐殺」事態をなかったかのように話をすりかえてはいけません。安倍政権は安保法制法の制定過程でも、たくさんのウソとペテンで国民をだまそうとしましたが、同じように騙されてはいけません。
もう一つ、この本は小選挙区制は日本の政治風土になじまないとしています。この点も同感です。わずか4分の1程度でしかない自民党の支持率なのに、自民・公明で3分の2の議席を占めるなんて、ペテンそのものです。
 選挙制度の是正は喫緊の政治課題です。
 国会の構成はより民意を反映させるものに直ちに変える必要があります。そうすれば、安保法制法は実施される前に廃止できるのです。
 NHKと安倍政権の醜い癒着が問題になっていますが、著者も、その先駆けの存在なのでしょう。それでも、保守のなかにもまだ良心をもっている人がいることを知って、少しは救われる思いがしました。
(2015年9月刊。1600円+税)

勁草

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  黒川博行 、 出版  徳間書店
 「オレオレ詐欺」、「振り込め詐欺」、最近は、特殊被害詐欺として一般化されています。振り込めではなく、現金を授受したり、郵パックで現金を送らせる手口が主流になっているからです。
 この本は、その欺す側の内情を暴いています。警察の捜査能力の上を行くような悪賢さです。しかし、悪は滅びるものなのです。欺しとった大金をめぐって仲間割れが起こり、犯罪の連鎖を止めることができません。
 タイトルからは本の内容を予測できません。表紙裏の解説によると、人のしぶとさ、したたかさを表したとのことです。この本を読むと、欺す側のしたたかさを描いたのかな、と思えます。
 老人を騙してお金をとる。そこに罪悪感はないのか?
 まったくない。これはゲームだ。いまの日本で何百万、何千万円とお金を貯めこんでいる老人は勝ち組であり、勝ち組からお金を掠(かす)めとるのは、ある意味で正当な権利だ。
 プロの詐欺グループがいて、そのグループを束ねる「番頭」がいる。番頭はグループが稼いだお金を金主に上納し、金主はケツ持ちのヤクザに守り料を渡す。何段階ものピラミッドになった複雑な系図は、下っ端にはまるで分らない。
 振り込ませた金融機関から現金を引き出すのか、出し子。被害者に接触してお金を受けとるのか、受け子。掛け子を管理しているのが、番頭。出し子と受け子がお金を持って逃走するのを防止するための見張り。出し子と受け子をスカウトするのが、リクルーター。
 闇の携帯電話や架空口座を売るのが、道具屋。多重債務者や株取引経験者、大手企業退職者といった名簿を売るのが、名簿屋。
 つかった携帯電は一回きりの使い捨て。5万円以上で売買される。
 特殊詐欺の検挙率は、きわめて低い。9か月の認知件数8500件、被害総額338億円というのに対して、検挙率は20%未満。それも、検挙されるのはATMやお金の受け渡し現場にあらわれる出し子と受け子が大半。騙し役の掛け子や掛け子をまとめている番頭に捜査の手が及ぶことはほとんどない。
 振り込め詐欺は激減した。それはATMの送金限度額が1回10万円になったことによる。
受け子になっているのは、多重債務者、ネットカフェ住民、ホームレス、生活保護受給者などの社会的弱者。
ある統計によると、7割の老人が非通知であっても電話をとる。老人は寂しいのだ。
 騙しのターゲットを標的(マト)と言い、金持ちの標的を金的(キンテキ)と言う。
 名簿屋は、証券会社員や介護施設の職員などに成りすまして、マト(金的)の下見をする。家族構成やら資産状況を聞き出しておくのだ。つまり、特殊詐欺は、その前に、資産調査に知らないうちに応じている人が被害にあっているのです。その根は深いわけです。
 これをひとつの名簿にまとめてグループに提供する。それは譲渡ではなく、成功報酬を10%とする歩合制だ。
 特殊詐欺は、このようにきわめて高度に分業体制が確立していますので、なかなか金主の摘発までたどり着けないようになっています。この本は、その仕組み、カラクリを実に手際よく、分りやすく目の前で展開していきます。
 現代日本社会の病癖を端的に示した本でもあると思いました。
 欺された奴が悪い、自己責任だと、もし、あなたが考えていたのなら、それが間違いだったことを思い至らせる本だと思います。ぜひ、ご一読ください。
(2015年6月刊。1800円+税)

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