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カテゴリー: 社会

少年の名はジルベール

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  竹宮 恵子 、 出版  小学館
 私より少しだけ年下のマンガ家による半世紀です。『地球(てら」へ・・・』とか『風の木の詩』で有名ですが、その内容に圧倒されたことを今でも鮮明に覚えています。マンガって、馬鹿にできないと、つくづく思ったことでした。
 今ではマンガ家を卒業(?)して大学教授であり、学長です。すごいです。尊敬します。著者の良きライバルとして登場してくる萩尾望都は福岡県大牟田市出身として紹介されています(ちなみに、著者は四国・徳島出身で、徳島大学を中退)。前にもこのコーナーで紹介していますが、私の母が萩尾望都の母親と女学校(福岡女専)が同じで親しかったので、私は、その母親そっくりの萩尾望都の近影に驚いています。
 著者たちは、「大泉サロン」と呼ばれる古ぼけたアパートでマンガを描き続けたのです。20歳から22歳までのことです。「24年組」とも呼ばれています。1949年生まれということですね。1970年代少女漫画の基礎を築いたのでした。
中学2年生、14歳でマンガ家を目ざした。週刊誌の連載を目標とした。すごいですね。中学2年生のとき、人生の目標をもっていたなんて・・・。私なんか、いったい自分は将来、何になるのかな・・・。なんて、とんと見当もつきませんでした。もちろん、司法界とか弁護士なんて、考えたこともありません・・・。マンガは読んでいましたが、それこそ「イガグリ君」の世界です。中学時代に読んだ本と言えば、山岡壮八の『徳川家康』くらいしか思い出せません。それから、有名人・偉人の伝記は小学校以来、学校の図書室で借りて、よく読んでいました。
 萩尾望都が、親の反対を押し切って、上京してきたとき、マンガ道具と布団と当面の衣類だけだった。そりゃあ、親は反対するでしょうね。自分の娘がマンガ家になると言って、家を出ていくというのですから・・。
 著者も萩尾望都も、映画を1回みただけで、映像を、そのまま丸ごと視覚的に記憶できた。うひゃ~っ、こ、これはすごいですね。こんなこと、並みの人間には絶対に不可能なことです。やはり、常人にない才能をもっているのですね・・・。
 そんな著者にもスランプが訪れたのです。しかも、3年間。それを著者たちは45日間のヨーロッパの旅行を経て乗り越えたのです。まだ、22歳でした。
 私も初めて海外へ行ったのが30代前半だったと思います。それから、年に1回は海外へ出かけようと心に決めました。日本を深く知るためにはいったん身を海外に置いてみることが必要だと感じたからです。
ボーイズ・ラブの世界に挑戦した著者は少女漫画に新しい天地を切り拓きました。
 そして、担当の編集者とのバトルが生々しく紹介されています。このバトルも、著者を鍛えたもの一つだったのでしょうね。
 あらためて、著者の作品をみてみたくなりました。
(2016年2月刊。1400円+税)

安保法制の正体

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  西日本新聞安保取材班 、 出版  明石書店
 西日本新聞で連載していた安保法制の問題点が一冊の本になりました。
 「安保法に反対と言うけど、国民はすぐに忘れるよ」
アベ政権の側は、そう思って期待しているようです。それが現実にならないよう、新聞人として「知らせる義務」に汗をかき続けたい。その思いで走りまわった成果が、この本に結実しています。ですから、一人でも多くの人が本書を手にして、記者の労苦にこたえ、さらに励ます必要があると思いました。
アフガニスタンで今もがんばっている中村哲医師(ペシャワール会)は、こう言っています。
 「平和には戦争以上の力があり、平和には戦争以上の忍耐と努力が必要だ」
 ドイツはアフガニスタンへ国連の国際治安支援部隊(ISAF)として最大5000人を派兵した。それは、戦闘には直接かかわらない治安維持のはずだった。ところが現実には、何回となく戦闘に巻き込まれ、第二次世界大戦後はじめて本格的な地上戦を経験したドイツ兵となった。その結果、アフガンでのドイツ軍の殉職者は事故死や自殺をふくめて55人。戦死者も35人にのぼった。殺し殺される戦闘ストレスから帰還兵1600人がPTSD(トラウマ)を負った。
 ドイツ人の画家は、記者にこうこう語った。「日本が戦後、海外で一人も殺さず、殺されずにきたことを恥じる必要はありません。誇るべきなんです」 
 私も、本当にそう思います。平和な国・ニッポン。この平和ブランドを自民・公明の安倍政権が汚れた手で黒く塗りつぶそうとしています。とんでもありません・・・。
日本の自衛隊が、アメリカでアメリカ軍と一緒になって戦闘訓練をしている。カルフォルニアの砂漠地帯です。明らかに中東での戦闘を想定した訓練です。
そして、自衛隊は今度、アメリカ軍海兵隊のつかう水陸両用車「AAV7」を計52両、2015年度だけで30両も導入する。1両6億円。うひゃあ・・・。国立大学の授業は年間40万円とか、どんどん値上げして日本の若者を苦しめているのに、軍事予算のほうは気前よくアメリカの高価な兵器をどんどん買っているのです。
「AAV7」って、実は、日本では使い勝手がいかにもわるい。サンゴ礁や岩礁の多い島には向かない。水上では時速13キロなので、攻撃を受けやすい。船酔いがひどくて、上陸直後は戦えない。海でつかうたびにアメリカ本土へ持ち帰って分解整備が必要。
まるで役に立たないおもちゃ、みてくれだけのバカ高い代物ですね、これって・・・。
弾道ミサイルを迎撃して撃ち落とせるはずはありません。それは鉄砲のたまを鉄砲で撃ち落とすようなものなんです。できっこありません。それを、出来るかのように多くの国民をペテンにかけて導入したのが「PAC(パック)3」です。福岡県内に4隊あるというのですが、危険なおもちゃの類です。ところが、この役に立たないシステムになんと国は1兆円もかけています。つまるところ、軍需産業を喜ばせているだけです。そして、自衛隊高級幹部の天下り先の獲得には確実に役立っています。私たちの税金が、こんなにしてムダに使われているのかと思うと腹が立ちます。それより、もっと人を育てるほうに、福祉のほうに税金をつかってほしいものです。
 この本にも、中村哲医師の活躍ぶりが少しだけ紹介されています。砂漠と荒地に水を引いて、緑の農地に変えていくという苦難の取り組みです。なんで日本政府は、もっともっとこんな活動に力を入れないのか、援助しないのか不思議でなりません。中村哲医師のレポートを西日本新聞で読むたびに元気をもらう者として、この本にも紹介されていて、うれしく思いました。
日本が国際社会から求められているのは武力ではなく、この中村医師のような平和的貢献だと確信するのです。ぜひ、あなたも手にとってお読みください。
(2016年2月刊。1600円+税)

病める社会、相談現場から

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  ふくみつ 洋一 、 出版  くらしの相談センター
 横須賀市内で、くらしの相談センターを営んできた著者のすさまじい活動が活字になっています。今の日本社会のかかえている問題点を生々しく紹介した貴重な記録です。
 私は、本書を読みながら、北九州市小倉北区で同じような活動をしていた西辰雄さんを思い出しました。西さんも、著者とまったく変わらず、いろんな生活相談を受けていました。大変な苦労を伴う活動だと思うのですが、いつもひょうひょうとした物腰で、疲れを見せませんでした。
 「不況で勤め先が倒産。ハローワークに通っても求人はない。50歳を過ぎると、足を棒にして探しても就職先は見つからない。いま3人家族で、妻のパート給料の6万円で暮らしている。お先、真っ暗。どうにもならない」
 「下町で事業をしていたが、共同経営者は蒸発。膨大な借金をひとり背負って倒産。59歳だが、妻は半年前に心筋梗塞で死んで、家賃も半年分滞納している。追い出されたホームレスになってしまう・・・」
 「小学生2人をかかえた40代のシングルマザー。求人広告を頼りに面接に出かけても、子どもかかえた40代の女性は雇ってもらえない。今月中に支払わないと、電気・ガスも止められてしまう」
 「生活保護を受けようと思って保護課に行くと、病気で働けないという医師の診断書がなければ、と断られた。週3日、パートで働いている。もっとたくさん働ける仕事を探してから来るように言われた。そう言われても働く場所なんて見つからない」
 1ヶ月に100人ほどの相談を受けたことがあった。新規相談だけでも50人。平均して月30件の新規相談。土曜も日曜も休みなく、平日だって夜7時からスタートすることがある。一人の相談時間は平均して2時間。DVについて、親子をまじえて5時間かけたこともある。午前10時から夜8時すぎまで、びっしり。昼食が3時ころになったこともある。
 不誠実な人、利用するだけしようという人には突き放すこともある。しかし、ほとんどの人は、悩み、苦しみ、すがる思いでやって来る。なので、どんなに疲れていても、疲れた顔を見せれられた信頼関係が成り立たない。どの人とも対等平等に話し合う。
 事務所を維持するのに月30万円はかかる。すべてカンパに頼る。 
 「眠れなくなった。食欲もない。パートの仕事は出来なくなった。自殺も失敗した・・・」
 「ケータイ料金を支払えずに止められた。ケータイがないと仕事も見つからない。ケータイを買うお金がない」
 「ネットで知り合った男性と同棲するようになった。事業資金が足りないというので、親戚のおばさんを騙して借金して貸してやった。男性は、お金をもち逃げした。男に騙されていたことが分った・・・」
 本当に深刻な相談のオンパレードです。それを20年以上も受け止めてきたのです。偉いですね。ゆっくりおやすみください。
 横須賀の根岸義道弁護士から押し売りされた本です。いい内容なので紹介したくなりました。
(2015年10月刊。1500円+税)
 わが家の庭はすっかり春満開となりました。色とりどりのチューリップがたくさん咲いています。朝、雨戸を開けるのが楽しみです。朝のうちは、三角おむすびのような形をしていて、昼には花が開いています。ハナズオウの木が小豆(アズキ)のような豆粒の花をたくさんつけ、アスパラガスが採れはじめました。春の香りを口中に感じる楽しみは、まさしく春を満喫していると実感します。
 団地のソメイヨシノも満開です。
 ビックリグミの木にとまってウグイスが澄んだ声で高らかにホケキョと鳴いているそばで、メジロが一心に花の蜜を吸っています。春は本当にいい季節です。花粉症さえ出なければ、、、。

夜中の電話

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  井上 麻矢 、 出版  集英社
 私のもっとも尊敬する現代作家である井上ひさしの貴重な言葉が記録されています。娘(三女)に対するものです。
自分の不幸さえも幸せに転化させる術、「書くこと」を見つけた父。中年期以降は本来が明るい性格だったのだろう。とても楽天家だった。
 癌とたたかっていた父は、なるべく大好きな鎌倉の家に戻りたいと思っていた。なるほど、竹林を見ていると、心が落ち着く。
 父は死ぬのが怖いので、人はいかに死んでいくのかを戯曲に書いてきた。病院嫌いだし、そうとう怖かったと想像できる。父は、よくも悪くも真面目な人だ。
 父は元気になったら書く演目を決めており、それをいつから書き始めると計画を立てていて、強い意思をもっていた。
 父は、生真面目なので、新しい家庭ができると決まった日から、娘たち3人とは一線を引いた。この事実も、娘たちには、大きなショックとしてのしかかった。
 父にとっての幸せは作品を書くことだった。父とは行楽に行くこともなかった。父は眠る時間さえなかったのだから、子どもとの会話など、あろうはずもない。父は、忙しくて書斎にこもってばかり。机に向かって書いている父には、誰ひとり声をかけられなかった。
 立食パーティに行ったら、食べ物を食べないこと。どんなにお腹が空いていてもダメ。私も、いくら高い会費を払っても、立食パーティでは食べないようにしています。それは、どれだけ食べたのか分からない食べ方はしないようにしているという、ダイエットの一環であると同時に、話すべき相手をつかまえて談論することを優先させていることによります。それがうまくいったときには手にした赤ワインが2杯、3杯となって酔いを感じてしまうのです。やはり、空きっ腹にワインは良くありません。
まじめなことをだらしなく、だらしないことをまっすぐに、まっすぐなことをひかえめに、ひかえめなことをわくわくと、わくわくすることをさりげなく、さりげないことをはっきりと書く。
 井上ひさしの偉大さは、こんなにも分かりやすく課題を提起していることにもあります。
言葉は、お金と同じだ。一度だしたら元に戻せない。だから、慎重に、よく考えて使うこと。
 絶対に成功するという強い心をもつことは、逃げ道をつくらないで進む覚悟にも通じる。
 後ろ向きな言葉を言うときには、一日、置いてみる。仕事でも恋愛でも家族でも、決定的なことは最後まで口から出さない。
言葉は、自分が身につけられるものの中で、もっとも重要なもの。仕事場に行くとき、気分が落ち込む原因は、その場所で自分の立ち位置がよく分かっていないからだ。
 井上ひさしが作品を書くために膨大な資料を調べたのは、想像力をかきたてる下準備だ。調べてはじめて想像することが容易になる。
 プロというのは、自分で決めたことは、どんなことがあっても実行してしまう、強い魂の持ち主を言う。
 交渉時は、まず相手にしゃべらせること。仕事では、まず相手の話を聞くこと。人間は、自分の意見を聞いてくれた人には、割と素直になれる。
突然「こまつ座」を率いる立場になった井上ひさしの三女の話です。井上ひさしも偉いですが、三女である著者もすごい、すごいと感じながら読了しました。
(2015年12月刊。1200円+税)

東芝・不正会計

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  今沢 真 、 出版  毎日新聞出版
 東芝といったら、経団連副会長の企業。いわば日本を代表する企業です。その東芝で最高トップ連中が醜い派閥抗争のあげく、違法な「利益」を操作していたというのです。許せません。そして、自らは手がうしろにまわるような犯罪行為をしているくせに、経団連は子どもたちに学校で道徳教育をもっとやるべきだと声高に叫びたてています。いったい誰を手本としろというのでしょうか。まさかアベ首相ではないでしょうね。「東芝の社長のような立派な人になれ」と子どもたちに言うのですか。とてもそんなこと言えませんよね・・・。
 不祥事を起こした大企業の株主総会のときには、役員はズボンの下に大人用のおむつをつけて壇上にあがる。今では、これが常識となっている。というのは、質問に答えるべき役員がトイレに行っていて答えられないというのでは困る。とくに議長をつとめる社長がトイレだといって退席したら、株主総会は中断してしまう。そして、中断した時に株主が帰ってしまって議決ができなくなったら大変なことになるからだ。
 うひゃあ、トイレ休憩もとれないのですか・・・。ちっとも知りませんでした。東芝なんて、自業自得ではあるのですが・・・。
 東芝では、トップ(社長)の指示のもとで、たった3日間で119億円もの利益操作が行われた。佐々木社長(当時。経団連副会長)は、4年間にパソコン部品の押し込み販売による利益水増し額が654億円に達した。
 ここから言えることが少なくとも二つあります。一つは、こんなインチキをしているといことは、まともに税金を支払っているはずもないということです。それなのに、アベ政権は法人税の減税を強引にすすめています。もう一つは、会計法人なんて無用の長物だということです。情けない存在です。
 東芝で利益水増しが組織的に行われていた背景には「上司に逆らえない企業風土」があると指摘されている。いやな企業社会ですね、これって・・・。
 結局、東芝は過去6年間に1500億円もの利益水増ししていた。そして、最終的には5500億円もの赤字をかかえる会社だと発表された。ここまでデタラメしても、東芝の元社長たちはのうのうとしています。刑事責任が厳しく追及されるべきではないでしょうか。
 私は、弁護人としてスーパーの万引き(常習)事件をよく担当します。わずか1000円とか2000円の被害で懲役1年というのが珍しくありません。それと対比させると、東芝の社長たちだったら、懲役20年とか30年が相当なのではないでしょうか。
そして、東芝はウェスチングハウスというアメリカの原発企業をかかえているのも問題です。日本政府が原発を海外へ輸出しようというのに東芝も乗っていますよね。これまたとんでもない無責任な行動です。日本国民を裏切るものです。
自分たちの金もうけのためなら、何でもやっていいという企業風土を根絶してほしいものです。
                              (2016年2月刊。1000円+税)
 

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