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カテゴリー: 社会

ヘイトデモをとめた街

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 神奈川新聞「時代の正体」取材班 、 出版  現代思潮新社
舞台は川崎市川崎区桜木。
50年前の4月(1967年4月)、私は大学に入ったばかりでした。川崎からバスに乗って桜本へ出かけました。当時、桜木には東大生をはじめ何人かの先輩たちが下宿していたのです。川崎セツルメントの学生セツラーが桜本地域で子ども会活動をしていて、その何人かが桜本に下宿して、そこから大学へ通学していました。私は駒場での新入生歓迎オリエンテーション(新歓オリ)のあと、現地の川崎へ様子を見に行ったというわけです。それから3年あまり地域は別(私は幸区古市場)で、青年部パート(若者サークル)の学生セツラーとして活動しました。私が下宿したのは古市場です。
桜本では、パチンコ店の裏の木造アパートの2階の一室で先輩セツラーの話を聞き、まさしく別世界、異次元の話を聞いて圧倒されてしまいました。ともかく先輩セツラー(男女とも)の威勢の良さ、その元気には声も出ないほどでした。
なぜ学生セツルメントが桜本で子ども会活動をしていたのかというと、そこが在日朝鮮人、韓国人をふくむ底辺労働者が多く居住する町だったからです。子どもたちの非行も珍しいことではありませんでした。学生セツルメント活動は、今でいうボランティア活動の一種だと思いますが、私にとっては世間の現実に大きく目を開かせる学校のようなところでした。私は、そこでたくさんのことを学びました。おかげで、大学には語学の授業以外、まともに行かず、川崎市内を週に何日もうろうろしていました。そのうち、大学2年生の6月から東大闘争が始まり、ついに正規の授業自体がなくなってしまったのです。ですから、ますます私は川崎にいりびたりになっていました。
その桜本にヘイトスピーチをするデモが押しかけてきたというのです。絶対に許せないことです。ヘイトスピーチで何が叫ばれているのかを、ここで文字として紹介したくはありません。あまりにおぞましい言葉の羅列です。まさしく、それは犯罪そのものです。少しだけ品のいいセリフは次のようなものです。
「多文化共生、断固反対」
多様な文化が共生してこそ文明の発展はあったのです。それは世界の歴史が証明しています。それに「断固反対」ということは、野蛮人に戻れと叫んでいるようなものです。自らが野蛮人だと名乗っているわけです。
JR川崎駅から臨海部の京浜工業地帯へ車を走らせること10分あまり、工場群に隣接する街の玄関口、桜本商店街にたどり着く。ここは在日コリアン集住地域。その一角に、全国でも類例をみない施設がある。川崎市ふれあい館。在日コリアンと日本人が交流する場として川崎市が1988年に開設した。
2013年5月から、JR川崎駅周辺の繁華街や市役所に面した大通りを巡るコースでヘイトデモが10回も行われてきた。ところが、2015年11月、桜本地区にヘイトデモがやってくるという計画が知らされた。さあ、どうするか・・・。
川崎駅周辺に歓楽街をかかえる川崎は在日コリアンの街であるとともに、フィリピンやタイ、日系人といったニューカマーの街でもある。
2016年1月、「ヘイトスピーチを許さない」かわさき市民ネットワークが結成された。
ヘイトスピーチは明らかな犯罪行為。日本も加入する人種差別撤廃条約は、締結国は人種差別を禁止し、終了させる義務を負うと定めている。ヘイトスピーチに中立はない。被害にさらされている人たちに肩入れすることは、偏っていることでも、不公正なことでもない。
「ぶち殺せ」なんていう言葉が表現の自由であるはずがない。差別の問題に中立や放置はありえない。差別は、差別を止めるか否かだ。現状において、国は差別を止めていない。それは、残念なことに差別に加担していることになる。
まともに関心を示し、話を聞いてくれる場をつくったのは共産党だけだったとして、福岡県弁護士会の会員でもある仁比聡平参議院議員の国会での追及が紹介されています。頼もしい限りです。
ヘイトスピーチをする人は、日本では少数派だと言われているが、現実には広く許容されている。
残念なことに、この指摘はあたっているように思われます。全国チェーンの「アパホテル」に、南京大虐殺は嘘だったというデマ宣伝の本が各部屋に置いてあることが問題になっていますが、お隣の韓国・中国に戦前の日本が何をしたのか、その真実から目をそむけて、本当の親善と交流はありえません。
ヘイトスピーチは犯罪。そのことを強く確信させる本でした。
(2016年9月刊。1600円+税)

入社一年目の教科書

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 岩瀬 大輔 、 出版  ダイヤモンド社
司法試験に合格しながら弁護士にならず実業界に入り、アメリカでMBAプログラムに入って学んだりしたあと、今では生命保険会社の副社長として活動している著者の本です。
後進に対して実践的な心がまえを説いた本ですが、私にも、なるほどと思うところが多々ありました。
まず、3の原則があると強調しています。
第一は、頼まれたことは、必ずやりきる。
第二は、50点でいいから、早く出す。
第三は、つまらない仕事はない。
他人(ひと)から信頼されたら、仕事がまわってくるようになるというのは本当です。
メールへの返信は、対応が早いだけで、2割増しの評価が得られる。返信は途中報告でもよい。
そうなんです。ですから企業相手の仕事をしていない私は、メールはお断わりしています。そのあいだに他の仕事をしたいため、原則として報告は郵便で送ります。
メールの内容は簡潔に整理されたものにする。
これは、なるほどと思います。何事もくどくど書いてはいけません。要点をズバリつたえるのが一番良いのです。
交渉したり、打合せしたら、最後に、書き出して確認しておく。
会議では、新人でも必ず発言する。私は弁護士1年生から、ともかく参加した会議では発言するようにつとめてきました。何も分からないので、初めは質問ばかりでしたが、それでいいのです。そうすると、私が参加していることをアピールすることにもなりますし、そのうち意見を言えるようになります。
仕事と人を選ぶ基準は、一緒に働きたい人かどうか。これも、なるほどです。一緒に働いて楽しくなければ続きません。
コミュニケーションは、電話と対面こそ重視すべき。メールか電話ではなく、電話を基本とする。直接会って話すことこそ、もっとも有効なコミュニケーションを生む。
本はじっくり、1冊をあわてずに読む。そこから一つ学べればいいという軽い気持ちで読んだらいい。私は、これに反対するわけではありませんが、私のように乱読・多読しても、得るものは多々あるものです。その出会いがうれしくて、年間500冊以上の本を30年以上よんでいます。
新聞紙は毎日よむ。そして、勉強し続けることが大切。そうです。私は毎日、5紙よんでいます。
休息をとるのも仕事のうち。睡眠は最低6時間は確保する。私も実行しています。
230頁ほどのコンパクトな本ですが、さすが出来る人の言うことは、いちいち合理的で、納得できます。ツイッターで何人もの人をフォローしているとのこと。私はFBのみです。あまりネットに時間を奪われたくない気持ちが強いのです。
(2015年2月刊。1429円+税)

限界マンション

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 米山 秀隆 、 出版  日本経済新聞出版社
うわっ、マンションがスラム化するなんて、信じられません。マンションって、ずっとずっと住んでいるっていうのは難しいものなんですね。この本を読んで、マンションをめぐる諸問題の深刻さを考えさせられました。
全国にマンションが613万戸。このうち1981年6月前につくられたマンションが106万戸。さらに1971年4月前でも18万戸ある。
マンションの空室率は古いほど増える。1974年前は10%、1969年前だと15%になっている。初期マンションの老朽化がすすみ、マンションの終末期問題に、いよいよ日本社会は直面しつつある。
マンションは、冷静に考えたら資産としての価値は高くない。ところが、マンション供給業者にとって、分譲マンションは、開発に要した資金を早期に回収できるメリットがある。
日本では、戦前は借家が中心で、戦後は持ち家中心に変わった。戦前の日本人は持ち家にこだわらなかった。戦後は、政府が公営住宅の供給を怠ったため、人々は自力で住宅を確保せざるをえなかった。そして、国民に持ち家の取得を促すことで、意識の保守化を狙った。
マンションは、かつては全国で年に20万戸のペースで増えていたが、今は半減して8万戸から10万戸になっている。
マンションは、時間の経過とともに、建物の老朽化に加えて、区分所有者の高齢化も進んでいく。マンションが直面する2つの老いである。
マンションに住んでいる人が60歳以上の割合は、1970年より前のマンションだと50%、1980年までのマンションでは44%。
マンションは、時間の経過とともに空室化、賃貸化がすすんでいく。
マンションでは、建物の老朽化とともに、区分所有者の高齢化や空室化が進行していくため、管理機能も落ちていく。
賃貸戸数の割合は、古い物件ほど高く、1970年より前のマンションでは20~50%の賃貸率が19%、50%以上の賃貸率が6%に達する。
管理組合の機能が著しく低下したら、マンションがスラム化する危険がある。
古いマンションでは、管理組合がないところもある。
タワー(超高層)マンションは、大規模修繕や将来の終末期問題でより大きな困難に直面する。
日本のマンション寿命が短いのは、初期マンションではコンクリートにも問題があった。水分の多いコンクリート(いわゆるシャブコン)や、海砂をつかっていて塩分から鉄筋がさびていったりする。また、内部配管の耐久性にも問題がある。
定期借地権つきマンション(定借マンション)は、借地期間が満了したあとは、必ず取りこわされることになっているため、途中の改修が困難となりやすい。
既に老朽化しすぎて、空室ばかりのマンションに老夫婦と、安く賃貸するので不法滞留外国人と寮として使われているという事実もあります。
マンション問題の深刻さに目を大きく開かされた思いがしました。
(2015年12月刊。1600円+税)

量子コンピュータが人工知能を加速する

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  西森 秀稔・大関 真之 、 出版  日経BP社
 さっぱり分からないなりに、なんか分かるところがあるかもしれない。そう思って、最後まで読みとおしました。
あるようでない。ないようである。そんな不思議な世界が、量子の世界である。
量子コンピュータは、これまでのコンピュータに比べて、1億倍の高速。
量子コンピュータは、1980年代に考案され、開発がすすめられてきた。
量子コンピュータは、量子力学の特徴を生かし、「0」と「1」の両方を重ねあわせた状態をとる「量子ビット」を使って計算する装置。この「0」と「1」を重ねあわせた状態とは、「0であり、かつ1である」状態ということ。これは、直観に反するけれど、フツーの常識が通用しないのが量子力学の世界なのだ。
ただし、量子コンピュータは、ある特定の目的でしか使えない。
量子コンピュータは、これまでのコンピュータとは構造がまったく異なる。CPUなどのプロセッサ(処理装置)、メモリー、ハードディスクなどの外部記憶装置は存在しない。
量子コンピュータでは、超電導回路を絶対零度(マイナス273.15度)に限りなく近くなるまで冷やす必要がある。超電導回路による実現している量子ビットの数は1000以上。小さな回路を絶対零度近くまで冷やすと、右回りの電流と左回りの電流が同時に存在する状態になる。これが2つの状態の重ねあわせになっているということ。重ねあわせ状態は、とても不安定で熱や電磁波などの影響を受けて、すぐに壊れてしまう。
世界中でITが消費する電力は、世界発電量の10%に相当する。これは、日本とドイツの総発電量の合計に匹敵し、全世界の航空機が消費するエネルギーの総量の1.5倍にあたる。
アメリカの大手ローファームでは、人工知能(AI)を導入して膨大な過去の判例から、現在の案件に何を適用するのが最適かを判断している。
量子コンピュータは、カナダのベンチャーが商用化したが、そのアイデアや要素技術には、日本で発明されたものが多く用いられている。
最後まで読んでも、残念ながら納得と理解は得られませんでした。それでも、無駄だったとは思いません。なんとなく別世界が分かったのを良しとしました。
(2016年12月刊。1500円+税)

利益を追わなくなると、なぜ会社はもうかるのか

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 坂本 光司 、 出版  ビジネス社
著者は私と同世代ですが、いつも読んで元気の湧いてくる本を書いてくれます。うん、そうだよね、会社って、自分のこと、自分の利益しかも目先の利益を考えるだけではダメなんだよね、つくづくそう思います。
たとえば、三井鉱山という強大な会社がありました。大牟田市を植民地のように支配し、君臨していました。三池炭鉱を経営していましたが、地元の大牟田市には鉱害など負の遺産は残しただけで、美術館ひとつつくりませんでした。研究所や大学もつくっていません。利益はすべて東京へ吸い上げ、地元への還元というのはまったくやりませんでした。地元に残したのは、人々が集団で敵対し、いがみあうような仕組みだけです。まさしく分断して統治せよ、という支配の論理を貫徹したのです。そして、今では三井鉱山という会社はありません。
会社の成長エンジンは人以外にありえない。人財が新しい価値の唯一の創造的な担い手である。
管理型の経営ではダメ。組織にギスギス感が生まれてしまう。そうではなく、ぬくもりがあり、仲間意識が醸成されているアットホーム的な社風こそが優れたモノづくりのできる社会をつくりあげる。
働き甲斐こそが会社を強くする源泉である。強くなった会社は景気の変化に影響されることなく、経営が安定して長く継続する。
お客様を大切にするあまり、社員とその家族が犠牲になるような経営は正しくない。
「お客様第一主義」は大切。しかし「お客様偏重」では、会社がいびつになってしまう。
現在、日本の会社の7割は赤字で、日本全体の会社の利益率は、平均したら1.5~2%。
真に強い会社は、いきすぎた競争は求めないし、社員のあいだに大きな格差をつけることもしない。チームのため、自分の所属する組織のための努力、協力を惜しまない。いきすぎた成果主義、能力主義で人事を決めていて業績を安定して伸ばすことはできない。
200頁の本ですし、さらっと読めますが、とても大切なことが書かれた本です。年俸10億円というカルロス・ゴーン社長の従業員をふみつけるばかりのコスト・カッター方式とは真逆のやり方だと思いました。
(2016年11月刊。1200円+税)

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