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カテゴリー: 社会

絵でみるニッポン銭湯文化

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 笠原 五夫 、 出版  里文出版
私にとって銭湯とは、まず何より我が家にテレビのなかった小学生のころ、銭湯の経営者宅に上がり込んでテレビ(もちろん白黒です)を見せてもらっていたという記憶です。「ジャガーの眼」だったでしょうか。それとも「快傑ハリマオ」か・・・。私のような子どもたちで満員盛況でした。でも、銭湯を利用していない子どもは入場禁止になったような気がします。我が家にはテレビはなくても、風呂はあったのです。大学生のころには、寮生活と下宿生活をしていましたので、銭湯には、よく行きました。1回40円だったと思います。「神田川」の世界ですが、待ち合わせするような女性は残念ながらいませんでした。
銭湯が始まったのは江戸時代で、経営者には新潟、富山、石川の三県出身者が多かったとのことです。なぜ、この北陸三県に銭湯の経営者が多かったのでしょうか・・・。故郷の若者を呼び寄せ、チームを組んで苦労して湯水を確保していたようです。
今でも東京の銭湯の9割は、新潟、富山、石川の三県出身者が経営している。ホントでしょうか・・・。
富山県人(越中人)は、酒もタバコもやらずにひたすら働き、せっせと貯め込む、その勤勉ぶりは、新潟県人も驚くほど。県民意識が高く、人間関係が緊密。経済観念は北陸随一。
ところが、今や銭湯も絶滅危惧種。昭和43年(1968年。私が大学2年生のころ)に東京都内に2660軒あったのが、平成6年には1650軒になった。1000軒も減っている。利用客の減少、固定資産税の高負担などが原因。
この本によると、銭湯の料金は私が大学生のとき(1967年)に32円だったのが、大学を卒業した1972年には48円だったとのこと。たしかに、私の司法試験受験日記には40円を払って銭湯に入って、さっぱりしたという記述があります。
今では、その10倍近い460円になっています。
銭湯でなくても、日帰り温泉も安くなりました。日本人の風呂好きは昔からですが、これも高温多湿の気候条件を抜きにしては考えられません。
銭湯を残すのは社会的責務なのではないでしょうか・・・。
自らも銭湯を営みながら、昔をしのぶ絵を描いて、銭湯の歴史をたどった貴重な本です。
(2016年11月刊。2000円+税)

すきやばし次郎 旬を握る

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 里見 真三 、 出版  文芸春秋
いやあ、ホンモノの寿司って、実に見事に美味しそうです。
映画にまでなった「すきやばし次郎」の寿司のオンパレード。残念ながら映画は見ていませんし、店に入ったこともありませんが、この本一冊で、なんとか我慢することにします。
原寸大の寿司のカラー写真がたっぷりなので、眼のほうだけは満腹感があります。そして、次郎さんのセリフが素敵です。さすが超一流の職人芸は違います。
本書は、当代一の鮨職人、小野二郎が一年間に供する握り鮨、酒肴、小鉢などの全点を洩れなく収めた、究極の「江戸前握り鮨技術教本」である。
本書は、旬(しゅん)を知る歳時記としても大いに役に立つ。寒い季節の自身の王者はヒラメで、夏はフッコやマコカレイ。タコの足は冬に味が乗って、関東のアワビの旬は夏。シャコは子を持つ春が一番うまい。
小野二郎が握る鮨は、端正で美しい。一流の料理人に必須とされる抜群の嗅覚と味覚、そして未蕾(みらい)の記憶力を兼ねそなえているばかりではない。例を見ないほど度外れて執念深い完全主義者であり、凝り性だ。小野二郎は、味の改革改良のためには労をいとわない。だから、その握る鮨は、日々進化する。
握りの横綱はコハダ。コハダは鮨ネタで一番安い魚。しかし、上手に加工すれば喉が鳴る「握りの横綱」になる。とくにコハダの稚魚であるシンコは秒争い。
小野二郎は、一日に何回も、ネタの味見をする。鮨屋のオヤジが味をみて、「これは、うまい!」と自信をもって握らなかったら、お客さんに失礼にあたる。このように考えている。
コハダは、朝に食べて、お昼に食べて、夕方に食べて、明日の締め具合を見るのにノレンを下ろしから食べる。自分が納得するまで、こうして食べ込んでおけば、お客さんは、決して「まずい」とは言わない。
脂の乗った旬のイワシは、煮て食べる。これが楽しみで鮨屋をやってるんじゃないかと思うほど、煮ると実にうまい。これぞ鮨屋のオヤジの特権である。
カツオを握るのは、春の初ガツオだけ。秋の戻りガツオは使わない。戻りガツオは脂がクドすぎるから。戻りガツオは秋の菊。香りが強すぎる。
マグロに限らず、微妙な香りをどうやって嗅ぎ分けるのかというと、口に入れた瞬間、上あごにネタを少し押さえつける。そして、匂いをフンと鼻に抜いて香りを確かめる。舌では分からない。舌ではなく、鼻で味わう。
うまい握り鮨を楽しむためには、前に食べた握りの味と脂、それに匂いをガリの刺激で消して、粉茶でつくるうんと熱いアガリで口中を洗う。これが江戸前の流儀。だから、アガリは熱くないといけない。このように、鮨屋のアガリは、いれ加減がむずかしい。濃すぎてもダメ、薄くてもダメ。粉茶は一度しか使わない。新茶や玉露ではない。
小野二郎の握った鮨は、食べても喉が渇かない。店を出たあとで、ああ、もう少し食べたかったなあ、そんな気にさせるには、シャリは薄味でなければいけない。
『すきやばし 次郎』の客は、何も言われなくたって、看板の10分前、午後8時20分になると、一斉に席を立つ。
見事な鮨の写真には、ほれぼれします。そして、鮨の技術教本というだけあって、写真付きの懇切丁寧な解説までついています。20年前の本をネットで注文して読んでみました。あなたに至福のひとときが約束される本です。
(1997年10月刊。2800円+税)

蜜蜂と遠雷

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 恩田 陸 、 出版  幻冬舎
うまいですね。よく出来てますね。この本は、有明海を渡るフェリーの住復の船中で読んだのですが、まさしく至福のひとときを過ごすことが出来ました。
私の親しい友人の勧めから読んだ本です。もちろん直木賞を受賞した本だというのは知っていましたが、賞をとった本が必ずしも私の好みにあうとは限りませんので、先送りしていました。
よく言われることですが、面白い本というのは、初めの1頁せいぜい2頁までに分かります。この本は、出だしの3頁を読むと、何か面白いことが起きそうだという気がしてきて、頁をめくって次の展開がどうなるのか、はやる気持ちが抑えられなくなります。
ピアノのコンクールに出場するピアニストの心情、そして演じられる曲が実に言葉豊かに表現されるのです。まったくピアノの曲目のことを知らない門外漢の私にも妄想たくましくというか、果てしない想像をかきたててくれるのです。その筆力には完全に脱帽です。
うーん、これは、すごい。心憎いばかりに計算され尽くした展開には茫然とするばかりです。
幼いころからレッスン漬けで頭角をあらわし、著名な教授に師事していれば、めぼしい者は業界内では知れ渡っている。また、そんな生活に耐えている者でなければ、「めぼしい」者にはなれない。まったく無名で、彗星のごとく現れたスターというのは、まずありえない。
プレッシャーの厳しいコンクールを転戦して制するくらいの体力と精神力の持ち主でない限り、過酷な世界ツアーをこなすプロのコンサートピアニストになるのは難しい。
技術は最低限の条件にすぎない。音楽家になれる保証など、どこにもない。運良くプロとしてデビューしても、続けられるとは限らない。
幼いころから、いったいどれくらいの時間を、黒い恐ろしい楽器と対面して費やしてきたことか。どれほど子どもらしい楽しみを我慢し、親たちの期待を背負いこんできたことか。
誰もが、自分が万雷の喝采をあびる日を脳裡に夢見ている。
練習を一日休むと本人に分かり、二日休むと批評家に分かり、三日休むと客に分かる。
いいなあ。心から幸福を覚えた。
いいなあ。ピアノって、いいなあ。ショパンの一番、いいなあ。
音楽って、ほんと、いいなあ。
なんだろう、音楽って。
ただ、限りない歓びと、快感と、そして畏怖とが確かに存在しているだけだ。
音楽、ピアノ、そしてコンクールのことを何も知らなくても、十二分に楽しめる本です。すごい言葉のマジックに酔わされてしまいました。
絶対おすすめの本です。
(2017年1月刊。1800円+税)

重版未定

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 川崎 昌平 、 出版  河出書房新社
私の本は、残念なことに、一つを除いて、すべて重版にはなりませんでした。私としては、数万部とまではいかなくても万に近い数千部は売れると見込んでいたのですが・・・。ですから、文庫本にして、さらに売るつもりだった思惑も、見事にはずれてしまいました。
この本は、出版業界の、なかなか思うように本が売れないという悩み深い現場をマンガで描いています。私にとっても、身につまされる話で、思わず泣けてきました。だって、本を出版する以上、やはり大いに売れて、たくさんの人に読んでほしいじゃありませんか・・・。
ちなみに、私の売れた本の最高は800部です(『税務署なんか怖くない』)。
カラー印刷は、ふつう4色の版を重ねて色を表現する。その版がずれると、輪郭線が鋭くなったり、紙色が見えてしまったりする。
カラー印刷って、いつも平気で見慣れていますけれど、あれってよく考えると、不思議なんですよね。たった4色で、あれだけ複雑かつ微妙な色あい・濃淡を再現できるのも不思議ですし、版のずれが起きないというのも私には摩訶不思議なことです。
実売印税とは、実際に売れた部数をベースに設定されるもの。実売印税8%だとすると、2000円の本が1000部売れたら、著者の印税収入は16万円となる。
私の場合、8000部も売れたときには、それなりの印税収入となりましたが、それを元手として新聞広告をうったので、差引ゼロに等しくなりました。広告代を著者負担で新聞一面下に広告を出すことにしたのです。あまり効果はありませんでしたが、自己満足にはなりました。
書店の平積み。書店は、売れる見込みの高い商店(本)しか平積みはしない。
ですから、私の本はなかなか(1回だけしか)平積みしてくれないのが現実です。
出版社のぞくぞくする実際を知りたい人には必読というべき真面目なマンガ本です。
(2016年11月刊。1000円+税)

星をつける女

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 原 宏一 、 出版  角川書店
食べることが好きなだけでなく、舌が肥えていないとつとまらない仕事をしている女性が主人公です。
レストランを星で格付けする仕事です。それも覆面調査員として・・・。ただ、一般人向けの格付けではなく、投資家向けの格付けです。要するに、この店は投資する価値があるかどうかを探る仕事なのです。本当に、そういう人が存在するのでしょうか。
覆面調査員の顧客は、飲食ビジネスに投資したり買収したりする個人投資家や機関投資家たち。調査対象のメニューや味、品質はもちろん、サービス、店舗オペレーションさらには経営論理に至るまで、包括的に調べあげて格付け評価をする。
ミシュランガイドによる星の格付は有名です。私もリヨン郊外の「ポール・ボキューズ」に行ったことがあります。さすがの雰囲気と味わいの店でした。
どんな羽振りの良さそうな客であっても、2、3回来店した程度で挨拶してしまっては、店の格とシェフの威厳は保てない。簡単に常連扱いしないことで、挨拶してもらえる常連客に特別感を与える。それがまた店の格とシェフの威厳を高めてくれる。
20年も前に南仏のエクサンプロヴァンス語学留学していたとき、夕食は決まって同じレストランでとっていました。続けていくと、マダムが顔を覚えてくれて、まさしく常連扱いをしてくれます。昼間、街角ですれちがったときにも挨拶をかわしました。
シェフの挨拶は、デザートをクリアして食後のコーヒーを二口ほど飲み終えたころに行く。挨拶のタイミングとなったら、給仕長に先導されて、おごそかにホールへ向かう。他の客の視線がシェフに集中するなか、ほかの客とは目を合せず、挨拶しようとする客のテーブルだけを見すえて、脇目もふらずテーブルに進み、笑顔で問いかける。
「本日のお食事、いかがでしたでしょうか?」
実際には、シェフは全部のテーブルを挨拶してまわるのではないのでしょうか・・・。
味覚とは磨きあげるもの。毎日、毎日、真剣に味わい続けて初めて舌からの脳に記憶される。
日本で高級レストランを経営するのは大変なこと。高価で稀少な食材を手の込んだ技法で調理し、何皿も提供しなければならない。高額ワインの充実した在庫も必須だし、店舗の内装や備品にも凝らなければ満足してもらえない。高級食器も山ほどそろえておく必要がある。したがって、はたから見えるほど、うまみのある商売ではない。
そこで、食材の産地を偽ったりする店が出てくることになるわけです。この本では、フランス産のシャロレー牛なのかどうかが問題になっています。本当に食べただけで牛肉の産地まで分かるものなのでしょうか・・・。
といっても、私も高級牛肉の味の素晴らしさを一度味わったことがあります。ふだん食べている牛肉とは全然違っているのに舌が驚いていました。
フレンチレストラン、ラーメン店そして高級リゾートホテル。どこにでも、まがいものがあり、よこしまな野望に燃える人がいるのですよね。美味しいグルメ本でもありました。
(2017年1月刊。1500円+税)

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