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カテゴリー: 社会

夜の放浪記

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  吉岡 逸夫 、 出版  こぶし書房
 東京の夜をさまよって得た取材記です。
 都内を夜に走るダンプカーが必要なのは分かります。午前2時半から5時まで、横浜と町田間の90キロを走るのです。積荷は建設用の砂。ダンプの運転手は、夜10時から午前1時半まで3時間半眠り、仕事が終わって、朝6時半から寝て9時半に起きる。あとは自由。
 トラックはデコトラ。派手に装飾されている。映画「トラック野郎」(菅原文太主演)に協力・出演した。デコトラのクラブが全国に500もある。すごいですね。でも、前ほどは見かけない気がします。
 新宿の新大久保には24時間の青果店があり、客の9割は外国人。中国人、韓国人、ベトナム人、ネパール人などなど。タイ人もいれば、ミャンマー人も来る。深夜にも客が絶えないとのこと、どうなってるんでしょうか・・・。
 渋谷区の恵比寿横町には、ギターを手に夜の酒場をめぐる「流し」の歌姫がいる。そう言えば、昔はギターを抱えてスナックやクラブを渡り歩く「流し」をよく見かけました。今は、私の身近には見かけません。そもそもスナックもクラブも人口減少のあおりもあって不景気で、それどころではないようです。
 両国の国技館の売店で売られている焼鳥は夜中に全自動でつくられている。うひゃぁ、そうなんですか・・・。
眠らない職場といえば、私の身近にも多いのが介護施設です。介護の現場で働く人には、本当に頭が下がります。必要な仕事ですが、きつい割には低賃金のため、定着率が良くないですよね。残念です。役にも立たないイージス・アショアにまわすお金(2600億円以上もします。とんでもない大金です)があるんだったら、そんなのやめて介護・福祉予算にまわすべきです。
そして、24時間保育園もあります。夜の仕事をしている母親にとって、なくてはならない施設です。でも、ここでも保育士の確保に苦労しているようです。
私は24時間コンビニなんていらないという考えですが、それでも病院のように24時間オープンの施設が必要なことも現実です。その一端を改めて認識させられた本です。取材した記者(著者)も病気で倒れたとのこと。気をつけてがんばって下さい。
(2017年12月刊。1800円+税)

裸足で逃げる

カテゴリー:社会

著者  上間 陽子 、 出版  太田出版
 沖縄の夜の街の少女たち。これが、この本のサブタイトルです。琉球大学の教授である著者が沖縄のキャバクラで働く若い女性たちに話を聞いたルポルタージュなのです。
 子どものころから暴力にさらされて育った女性は、大人になってからも家や地元周辺を離れることはなかった。妊娠して結婚して、子どもが8ヶ月になったころに離婚して、その子どもを奪われた。その後も、兄や恋人からの暴力にさらされ続け、そして、もう一度ひとりで子どもを産んだ。今、24歳。
キャバ嬢の仕事は日本の女子中高生のなりたい職業にランク入りして久しい。若い女性が層として貧困に陥るなか、華やかなドレスを身にまとい、男性客とのトークでお金を得るキャバ嬢が若い女性たちの憧れ職業となっている。
 スーパーやコンビニのレジの800円の時給より、2000円の時給のキャバクラで働くことによって、単身でも子どもを育てられる。つまり、沖縄のキャバ嬢たちは、子どもをひとりで抱えて、時間をやりくりして生活する気若い「母」でもある。
 中学校の教師たちは、非行に走った少女たちを見捨てない。しかし、そう言いつつも殴っていた。自分を大切にしてくれるひとが、一方では自分に暴力をふるうひとにもなる。そのことは、女性が男性とパートナー関係をつくるにあたって、大きな問題を生み出す。
 沖縄の非行少年たちには、先輩を絶対とみなす関係の文化がある。そのため、先輩から金銭を奪われ、ひどい暴行を受けても、後輩の多くは、それを大人に訴えることはしない。そして学年が変わり、自分が先輩になると、今度は自分たちより下の後輩たちに暴力をふるう。暴力が常態化かするなかに育つ子どもたちは、成長をすると、自分の恋人や家族に対しても暴力をふるうことを当然だと思うようになる。殴られるほうもまた、大切にされているから自分は暴力をふるわれていると思い込もうとし、逃げるのが遅れてしまう。
 入籍していないカップルの暴行は保護の対象でないとして警察署は追い返す。
キャバ嬢のなかには、客のなかから結婚相手を探しているシングルマザーたちがいる。深夜から明け方までお酒を飲み続ける仕事は体力的にきつく、長期にわたって働き続けることは難しい。時給2000円といっても、送迎代やメイク代などを差し引くと日給は1万円ほどでしかない。
 沖縄のキャバ嬢たちの置かれている実情がよく分かりました。それにしても暴力の連鎖はどこかで断ち切ってほしいものですね。広く読まれるべき本だと思いました。
(2017年12月刊。1700円+税)

トラクターの世界史

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 藤原辰史 、 出版  中公新書
トラクターと戦車は、二つの顔を持った一つの機械である。
トラクターとは何か・・・。トラクターとは、物を牽引する車である。もっと詳しく言うと、トラクターは、車輪が履帯のついた、内燃機関の力で物を牽引したり、別の農作業の動力源になったりする。乗車型、歩行型、または無人型の機械といえる。
アメリカのフォード社は、第一次世界大戦を4度戦ったイギリスの農村での労働者不足を補うべく、トラクターを輸出した。
トラクターの登場は、馬の糞尿を肥料に使う習慣を徐々になくし、化学肥料の増産と多投をもたらした。
ソ連は、国家主導でフォードのトラクターを導入し、フォードの大口の顧客となった。
ソ連の農業集団化政策は、アメリカのトラクターの量産体制の成立のただなかで遂行された。トラクターは共産主義のシンボルでもあった。
ソ連では、トラクター運転手の半分以上が女性だった。
レーニンは、アメリカの農業機械化に強い関心を抱いていたし、農民こそ革命の主体になりうると考えた。
第二次世界大戦が始まると、ほとんどのトラクター企業が戦車開発を担うようになった。
スターリングラードにはトラクター工場があったが、トラクターだけでなく、ソ連軍を代表する中戦車T-34の約半分を生産していた。
アメリカの歌手・エルヴィスプレスリーの趣味の一つは、トラクターに乗ることだった。
日本は、20世紀の前半はトラクター後進国だったが、後半には先進国へと変貌をとげた。農地面積あたりの台数も世界一位となった。
トラクターを取り巻く社会環境の移り変わりを興味深く読みました。
(2017年9月刊。860円+税)

人口減少時代の土地問題

カテゴリー:社会

著者  吉原 祥子 、 出版  中公新書
 空家等対策特別措置法が2015年に反面施行されてから、2017年3月付で、行政による空き家の強制撤去(代執行)は全国で11件。所得者不明のときの略式代執行は34件。これって、まだまだ少なすぎますよね。
所得者の所在把握の難しい土地は、私有地の2割にのぼり、今後も増加するだろう。鹿児島で2015年に調査したところ、相続登記がきちんとなされていない農地が21%あった。全国的にも、相続未登記の農地が2割ある。
福島第一原発の除染廃棄物を保管するための中間貯蔵施設予定地の地権者2400人のうちの半分1200人分が「所得者不明」の状態にある。
なぜ相続登記がなされないのか。土地売却や住宅ローンを組むためには相続登記する必要がある。しかし、自己資金でマイホームを建てるのなら、相続登記の必要はない。そして、相続登記手続には一定の費用がかかるが、対象土地の資産価値が高くなければ、お金をかけてまでする意味はない。
土地の資産価値は下落する一方にある。人口減少にともない土地需要が減り、地価の下落傾向が続けば、人々にとって土地は資産というより、管理コストのかかる「負の資産」になっていく。もらっても困る田舎の土地をわざわざ手間と費用をかけてまで相続登記を行わないのは、短期的な経済合理性から当然と言える。
 家庭裁判所への相続放棄の中立件数は年々増加する傾向にある。2000年に10万4500件だったのが、2015年には1,8倍の18万9400件になっている。
 地方自治体は、土地の寄付を受けとろうとはしない。受けとるのは「公的利用が見込める場合」だけだ。
国土調査の進捗率は52%。残りの48%については、完了までにあと120年を要する。この国土調査費用について、市町村の実質負担は5%でしかない。しかし、職員の人件費は補助対策とはなっていないので、市町村の負担減は小さくない。そして、国土調査で「筆界未定」がたくさん生まれている。
相続人不存在によって、亡くなった人の資産が国庫に帰属した金額は、2006年度に224億円だったのが、2015年度には420億円へ増加した。
 日本全国で空き家問題、相続登記未完了の土地が大量に存在している問題について、その原因と対策が論じられています。まさしくタイムリーな新書です。
(2017年7月刊。760円+税)

沖縄フェイクの見破り方

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 琉球新報社編集局 、 出版  高文研
アメリカのトランプ大統領が平然と嘘を言うことから、どれが本当なのか世間をごまかす言論が目立ちます。
そのターゲットにされている一つが沖縄です。沖縄経済は基地でもっているとか、沖縄にアメリカ軍の海兵隊がいるから日本の平和は守られているといった言説です。沖縄の地元新聞社が総力をあげて、いずれも事実でないことを実証しています。
沖縄からアメリカ軍の基地がなくなったら、それこそ沖縄経済は見違えるように発展すると思います。私も沖縄の新都心のにぎわいぶりを見ていますので、実感できます。
アメリカ軍の基地が返還された跡地は、どこも例外なく市街地として大きく発展している。いずれも雇用は数十倍から数万倍に増え、域内総生産は数十倍になった。
那覇新都心地区では、返還前の雇用者はわずか168人、それが返還後はなんと1万5560人と、93倍になった。経済効果も、返還前は年間52億円だったのが、返還後は年間1634億円になった。31倍だ。
沖縄の経済が基地に依存していた時代は確かにあったが、それは、1950年代、1960年代の話だ。今から50年も前のこと。今では基地関連収入は県民総所得の5%ほどでしかない。
政府の「沖縄振興予算」なるものは、特別の予算でもなんでもない。その総額は日本全体の予算の0.4%にすぎず、沖縄の人口が全国の1%をこえることを考えたら、極端に少ない。
東京MXテレビで沖縄に関して事実に反する番組が放映されたが、これは化粧品会社DHC系列の会社が制作したもの。このDHCという会社は超右翼に偏向していると指摘されていますが、テレビで「嘘」をされ流すなんて許せません。先日、川端和治弁護士を委員長とする放送倫理機構(BPO)が、その偏向をたしなめましたが、東京MXテレビはまったく反省していないようです。
日本にいるアメリカ軍は沖縄をふくめて日本を守るために駐留しているのではない。それは日本の責任だ。アメリカ軍は、韓国、台湾およびト東南アジアの戦略的防衛のために駐留している。沖縄を拠点とするアメリカ軍海兵隊の主力戦闘部隊は、年間の半分以上は沖縄にはいない。太平洋地域を巡回展開している。
やはり、なんといってもマスコミは真実をあくまで報道すべきですよね。その点、沖縄の地元紙は偉いと思います。広く読まれるべき本です。
(2017年10月刊。1500円+税)

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