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カテゴリー: 社会

ブラック郵便局

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 宮崎 拓朗 、 出版 新潮社
 小泉純一郎の「郵政改革」って、とんでもないものだったと、私はつくづく思いました。なんで、あのとき多くの国民がやすやすと騙されたのか、不思議でなりません。時の勢いというのは恐ろしいものです。今は、「手取りを増やす」というインチキ宣伝で国民民主党がブームですよね。大軍拡に賛成して、消費税減税に消極的な玉木の党が本気で「手取りを増やす」なんて考えているとは思えません。国民を騙すっていうのは、意外に簡単な人だと呆れてしまいます。
郵政改革の「おかげ」で、郵便局は本当に不便になりました。市内でも普通、郵便だと3日かかることが珍しくありません。そして郵便料金の値上がりは呆れるほど大胆です。郵便局が減らされ、配達員の外注化が進んでいるようです。この本の著者は西日本新聞の記者です。
 まずは、郵便局の生命保険。かんぽ生命保険です。この保険事業の収益は全国に張り巡らされた郵便局網を維持するための、欠かせない収入減。そして、この保険のノルマ達成は厳しい。そのため、いろんな「不正」が横行している。その一つが、「不告知教唆」。持病があるのを聞いて知っているのに、正直に書かないでいいと言って加入させる。
 必要もないのに判断力の乏しい高齢者に次々に保険契約をさせ、月の保険料が20万円をこえている。ところが、年金は月12万円しかない…。
渉外社員は、契約をとるたびに、給料とは別に営業手当を支給される。成績上位者は、年間1000万円以上にもなる。
 既に加入している契約を解約して、新たな契約を結ぶ。乗り換え契約も横行している。
 2年分の保険料を支払いさせる。なぜ2年かというと、担当した契約が2年以内に解約されたら、渉外社員は受けとっていた営業手当を返還させられるペナルティがあるため。
 成績が上がらないと、懲罰研修を受けさせられる。そこでは、つるし上げの対象になって、心を病んで休職する人が続出する。ところが、上部は現場の実情を知っていても知らぬふり。すべてはお客様のサインをいただいて、了解のうえのことだと開き直る。厳しいノルマを強要された男性局員が九州で自死している。
そして、自民党のための選挙活動。結果としての得票数は局長にとっての通信簿となる。
 局長の仕事はソフトボールと選挙。いやはや、こんな違法な活動が汚れた自民党政治を支えているのですね、嫌ですね…。
 自民党公認を得た組織内候補の得票数は、だいたい43~60万票ほど。自民党のなかではトップクラス。こうやって日本の政治をけがしている集団の一つになっているわけです。考え直してほしいですよね。
(2025年4月刊。1600円+税)

ビジネスと人権

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 伊藤 和子 、 出版 岩波新書
 2013年4月24日、バングラディシュのダッカ郊外のビルが崩れ落ち、そこの縫製工場で働いていた労働者1000人以上が亡くなり、1000人以上が負傷した。この縫製工場は、ベネトンなど、国際的に著名なブランド服をつくっていた。
 1ヶ月の賃金が4千円という圧倒的に安い人件費がブランド品を支えている。
 しかし、人を活用しようとするのなら、人は尊重されなければならない。まことにそのとおりです。2011年、国連人権理事会は、ビジネスと人権に関する指導原則を全会一致で採択した。この指導原則は、国際条約がハードローであるのに対して、ソフトローに位置づけられる。
 指導原則は画期的な内容を含んでいるが、限界もある。ソフトローとしての指導原則は強制力がないとしても、行為規範としての影響力を持ちうる。
 指導原則は、サプライチェーンの現場でまだまだ実施されていない。
 ILO(国際労働機構)は、世界で2090万人が人身取引、強制労働、児童労働といった「現代奴隷」の状態におかれていて、うち550万人が児童労働であるとした(2011年)。これが2016年に4000万人、2021年に5000万人と増加している。うち強制、児童労働は2500万人、2760万人となっている。
 日本では、経産省が2022年にガイドラインをつくったまま足踏み状態となっていて、規制に踏み込んでいない。しかし、企業に対する実効性のある人権保障は難しい。
 ユニクロの製品をつくっている中国の委託先工場では、月119時間もの長時間残業、エアコンのない工場の室温は37~38度で、「まるで地獄」。
 ミャンマーの工場を取引先としているワコール、ミキハウスも同じく、長時間残業、女性労働者の保護の欠如という問題がある。パーム油、カカオ、シーフードなど、いろいろ状況は深刻だ。
 イスラエル軍に装備品を提供している日立建機、トヨタ、ソニー、三菱自動車。
 ビジネスと人権を考えながら国も企業も進めなければいけない。時代は変わったことを自覚すべきなのだ。一人ひとりが声を上げなければ社会は変えられる。
 企業に「責任」ではなく「義務」を課す法律が必要。
 未来をつくる主導権は私たち一人ひとりにあることを確信して、声を上げ、行動していこう。こんな呼びかけがなされています。まったく同感です。
(2025年2月刊。1100円)

教員不足

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 佐久間 亜紀 、 出版 岩波書店
 この本は主として日本の教育の現状と問題点を紹介しています。日本と対比させる意味で、アメリカのシリコンバレーにある私立の中学校を見学したときの様子が紹介されているのが私の目を惹きました。
学校は、資産家の元邸宅が改築されていて、教室もゆったり。そして、国語(英語)の時間には10人ほどの生徒がジェンダーに関する学術論文を読み合っている。天国のような環境だと驚嘆していると、それでも、ここの教員によると、問題を抱えているのは、他の学校と同じだという。生徒同士のトラブルがあり、親の虐待もある。そして、この豊かな教育環境は、特定の人々を排除することで成り立っている。黒人の子どもや身障児はごく少数しかいない。なので、こんな閉ざされた環境で育った子どもたちが、社会に出て、マイノリティの人々の住む現実をどこまで理解できるようになるのか、アメリカ社会の分断を統合へと導く市民に育ってくれるのかどうか…不安がある。
 そして、教員自身も不安を抱えている。年収1000万円以上をもらっていても、それは平均年収が3億円というこのシリコン・バレーでは低いほうでしかない。そして、私立学校なので、大口寄付者を確保しなければいけないが、彼らは、教育内容にまで介入しようとしてくる。すると、学校、そして教員との摩擦が生じかねない。要は教員の身分は決して安定したものではないということ。なーるほど、金持ち学校にも、内外ともに難しい問題を抱えていることを初めて知りました。
 今の日本の教員不足は深刻。それを実感するのは、とっくに高齢者になっている私の世代でも、まだ嘱託だとか名目はいろいろ違っていても、現役の教員として生徒に接しているという人が少なくないのです。
 日本の教員不足は、今に始まったことではない。戦前から断続的に繰り返されている。今では、政府は教員定数を増やすことはないとしている。すると、教員は非正規化するしかない。
 教員数について、地域格差が拡大している。自治体の財政力によって少人数学級を推進できる自治体と、推進できない自治体と差が生まれている。
驚くべきことに、教員給与を政府は削減しつつあるのです。これはたまりませんね…。
 国は教育費の国庫負担の割合を削減し、今では、教員給与の3分の1しか国は負担せず、残る3分の2は、自治体が負担している。
 終身雇用の公務員は大幅に削減され、伝期付、臨時・非常勤職員が急増している。教員を志望する子どもが減っている。いやあ、これは困ったことです。
 教員に憧れる子どもが減っているというのは、忙しそうな教員を見ているからでしょうか。
 教職の魅力は、第一に子どもが好き、第二に経済的に安定、第三に家庭生活と両立しやすい、だった。ところが、政府による「教育改革」はこれらを否定してしまった。
 教員の労働環境を改善する必要があります。まずは、仕事量を適正化することがあげられます。外部からは余剰にしか見えない人員が、実は必要不可欠な人員であるというのが公務員では多いというのは、私の実感でもあります。
 にもかかわらず、世間には公務員叩き(バッシング)して政治家としてデビューして評判を上げるというパターンが、今でも少なくないという悲しむべき現実があります。
 アメリカでは、学年別の学校行事というのはない。入学式も卒業式もない。運動会や修学旅行というのもない。また、生活集団としての学級(クラス)自体が存在しない。
 私の孫が通っている韓国の小学校では運動会はあるものの、それは担任の手を離れて、イベント業者の手になるもののようです。
 私は小中学校が次々に統廃合されているのに反対です。どんなに人数が少なくても、子どもたちが歩いて通えるところに小学校はあるべきです。少人数学級でいいじゃないですか。先生も生徒も、みんな伸び伸びと遊べ、学べる環境が一番です。そこでお金をケチケチすべきではないと思います。要は、なんでも効率化という名目で、大切な子どもたちの伸び伸びした可塑(かそ)性を奪ってはいけません。
 いろいろ考えさせられる指摘がたくさんありました。
(2025年2月刊。960円+税)
 日曜日に、朝顔のタネを庭のあちこちに植えつけました。夏は朝顔ですよね。いま、庭は黄ショウブが一面に咲いています。アマリリスの白っぽいピンクの花も見事で、心が安まります。クレマチスは終わりました。今年はジャガイモの花に勢いがあります。この調子で地中のジャガイモが大きく育ってくれたらうれしいのですが…。サツマイモは地上部分は元気一杯に生い繁っていても、地中は生育不十分ということが何回もありました。
 サボテンの白い花が一斉に咲いてくれました。まるで鉄砲百合のようです。濃い紫色の矢車菊もところどころに咲いています。
 ジャーマンアイリスは終わりかけています。もうすぐ近くの小川にホタルが飛びかう時期になります。

消された水汚染

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 諸永 裕司 、 出版 平凡社新書
 今やPFAS(ピーファス)として有名になった汚染物質を追跡した新書です。
 フライパンにテフロン加工すると、サビつかないというので、大流行しました。防水スプレー、泡消火剤そして半導体で使われました。それが、今では発がん性のある有害・有毒物質として、この世の嫌われものなのです。ところが、当局は、その危険性をずっと覆い隠してきました。
 アメリカ映画「ブラック・ウォーター」は実話にもとづくアメリカ人弁護士が活躍するストーリー展開です。もう20年も前の話ですから、すっかり解決されているかと思うと、おっとどっこい、日本ではまさに現在進行形の怖い話なのです。
 東京は多摩地区で深刻なPFAS濃度が検出され、多くの井戸水が使用禁止とされました。その原因は横田にあるアメリカ軍基地です。大量に使われた泡消火剤にPFASが使用されていたのです。ところが、東京都はそのPFASによる汚染データをもっているのに公表せず、隠していました。著者は、「えげつない」と非難していますが、まったく同感です。汚染データを公表したら人心の動揺(パニック)を生じるからという理由です。とんでもありません。真実はきちんと住民に知らせて、ともに解決法を考えていく必要があります。
 横田基地で、大量のジェット燃料が漏れ出たとき、泡消火剤が大量に使用されたのでした。その量はなんと3千リットルというのですから半端な数字ではありません。東京都はそれを知っても公表せず、またアメリカ軍基地への立ち入り調査もしていないのです。
 日米地位協定によって、アメリカ軍は日本国内で好き勝手なことをし続けています。日本政府は、いつだってへっぴり腰で、アメリカにモノ申すことが出来ません。
 それは沖縄でも同じことです。日本政府は日本国民の生命・健康を守ろうとしていません。そして、アメリカ軍は、日本人のことを何とも思っていません。性犯罪の横行もそれを意味しています。
 日本政府が駐留米軍のために「思いやり予算」を支出しているのは、今ではかなり広く知られています。でも、アメリカ軍が個人を含めて日本側に損害を与えて賠償しなければいけないとき、それを実際にしているのは日本政府なのです。アメリカ軍に分担請求もしません。その金額220億円をアメリカに支払うべきなのに、知らん顔をしたままです。情けない話です。
アメリカに日本は守ってもらっていると信じ込んでいる日本人が今なお、なんと多いことでしょうか。当のアメリカ軍人のトップは、日本を守るのは自分たちの仕事(役目)ではないと、何回も高言しているにもかかわらず…。それにしても、飲み水の安全性をもっと重視したいものです。日本政府も自治体も早くなんとかしてください。
(2022年1月刊。980円+税)

地面師たち

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 新庄 耕 、 出版 集英社文庫
 毎日毎日、特殊サギにひっかかった、危くひっかかりそうになったというニュースを目にします。そのとき、警察官を名乗り、また弁護士が登場します。弁護士が現金1千万円を受け取りに来るので、玄関のところで渡すように言われたので、郵便局で1千万円を引き出そうとして、危ないところでストップがかかった。こんな記事を読むと、たまりません。
ホンモノの弁護士を長くやっている身として、現金を取りに個人宅にまで出向くなんて、そんなヒマなんかありませんよ、そう叫びたくなります。
なんで、弁護士だとか警察官だとか、会ったこともないのに肩書きだけで信じ込んでしまうのか、不思議でなりません。
地面師というサギ集団になると、欺く方法がより高度です。なりすましなので、みんなの前で、それらしい演技が必要です。舞台度胸のない私なんか、とても出来そうもありません。
 なりすましの第一歩は年齢ですが、なにより干支(えと)です。ネズミ年の私は、寅年の奥様に睨まれて、いつも小さくなっています。それはともかく、他人の干支を自分のものかのようにパッと、ためらいなく言うには、練習を重ね、度胸もいります。
生年月日も、西暦とともに和暦も言えないといけません。これも案外に難しいのです。
 そして、訊かれてもいないことをペラペラ話してもダメ。余計なことを言うと、すぐにボロが出る。たとえば、どこの町には有名なラーメン屋が向かい合わせにあるなんて、地域の話になったら、話を合わせるのは簡単なことではありません。
 そして指紋。指の腹や手のひらに、アメリカの専門業者から取り寄せた超極藩の人工フィルムを貼っておく。海外の諜報機関で採用されているという特殊フィルム。このフィルムに指紋や手のひらの凹凸があるうえ、人間と同じ皮脂成分の油膜が塗られている。いやあ、そんな特殊フィルムもあるのですね…。知りませんでした。
 不動産売買には、銀行の応接室などが利用されることが多い。しかし、銀行員から値踏みされたくないし、行内の監視・防犯カメラに自分たちの姿を残したくない。そこで、弁護士事務所を利用する。舞台装置として利用されるなんて、嫌ですよね。
 サギ師集団は分業を徹底させている。なりすまし役を手配する係もいる。
 免許証の偽造も簡単ではない。透(す)かしの印刷技術ではなく、ICチップのスキミングと複製も必要になる。ICチップ入りの免許証を端までスキミングすると、券面に印刷された生年月日や顔画像などの免許証情報はもちろん、IC化で記載されなくなった本籍や暗証番号などの情報も取得できる。
抜きとった情報をそっくり別のICカードに書き写せるうえ、ICカードを専用の免許証チェッカーで検証しても偽造とは判定されない。顔写真だけを他人のそれに変えて書き写したICカードに透かしと表面の情報を印刷すれば精巧な偽造免許証ができあがる。
東京は五反田の廃旅館を舞台とした地面師たちに手玉にとられて、かの天下の積水ハウスが55億円という巨額のサギ(詐欺)被害にあったのは有名な話です。それをドラマ化したものはテレビ・映画でもヒットしました。そのドラマの土台となった小説です。
 事実は小説より奇なり、なんですよね。幸いにも、弁護士生活50年以上のなかで、なりすまし事件の被害にあったことは、まだありません。でも、これから先は分かりませんよね。気をつけましょう。
(2024年12月刊。740円+税)

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