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カテゴリー: 社会

小屋を燃す

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 南木 佳士 、 出版  文芸春秋
信州の総合病院を定年退職した医師が、身辺雑記を淡々と描いています。
この本のタイトルである『小屋を燃す』の前に、『小屋を造る』というものもあります。いったい、この小屋って何の小屋だろうか、気になりますよね・・・。
歩く習慣を獲得できたうつ病患者は、明らかに再発率が低下する。脳には血流。
診察室で、基準値からはずれた検査値をおだやかに指摘すると、急に無口になり、「人間どうせ死ぬんだしな」とふてくされて部屋を出ていく。どうせ死にゆく身なのだという真理がほんとに身についている老人は、もっと明るい表情をしているものだが、こういう、50代、60代の男性(ほとんどが喫煙者。まれに女性)は、眼前の現実を直視せず、あらゆる事象を明らかに見ないまま、おのれを包む脆弱な殻を後生大事に守りつつ生きてきた印象を受ける。
小屋は、村の知人たちが寄り集って建てた。それは、手造りそのもの。寝泊りするためというより、酒盛りをするための場所を確保しようというものだった。完成したら、みんなが車座になって焼酎で乾杯した。
この小屋は、半分以上が廃材で作られていたから、築6年となった小屋の解体はあまりにも容易だった。小屋を解体したあと、みんなで焼酎を飲みはじめた。
なんということもない日々を、つい振り返ると、そこにたしかに人それぞれの生きざまがあるのだと実感させられる本です。
これって、いわゆる私小説なのでしょうか・・・。
(2018年3月刊。1500円+税)

受験で合格する方法100

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 佐藤 亮子 、 出版  ポプラ社
あまりにも合理的な子育て法に圧倒されます。この本を読んで思うことは、自分でやれると思ったところを真似してやってみたらいいんじゃないか、ということです。無理して、みんなやろうとすると、息が切れてしまうかもしれません。
佐藤ママの包容力はたいしたものです。そこまでの自信がない人は、自分の身のたけにあったところで、やれることをやったらいいと思うのです。ですから私は、佐藤ママのやり方を全否定するかのような批判には組みしません。それぞれの置かれた条件で、やれるところをやったらいいのです。佐藤ママのやり方を批判するなんて、まったく意味がないと私は思います。
大学受験は、与えられた18年間をいかに効率よく使えるかという勝負。
私には、こんな発想はまったくありませんでした。びっくりしてしまいました。
基礎の問題は、もう解きたくない、つまらないと思えるくらいまでやって、それから過去問(カコモン)に移るのがいい。
そうなんですよね。なんといっても基礎学力をいかにしっかり身につけるのか、この点は本当に大切なことだと思います。
寝る時間をきちんと確保する。
これまた大切なことです。まともな睡眠時間をきちんと確保するのは、頭が正常に働くために不可欠です。ダラダラが一番いけません。
「宿題の丸つけは親がする」。うむむ、これは、さすが佐藤ママのコトバです。なかなかフツーの親には、こんなこと出来ませんよね。でも、たしかに言われてみれば、そうなのだと私も思います。
受験は、「余裕」をもてた者が勝つ。そのためには絶対に「やり残し」をつくらない。
なるほど、この点は、まったく同感です。ああ、あの分野が弱かったよな・・・、そんな思いを引きずって本番の試験会場にのぞんではいけません。私も体験を通じて、そう思います。
子どもに絵本を1万冊よんであげる。
いやあ、まいりましたね・・・。私も、自分が本を好きですし、子どもたちにもたくさんの絵本を読んでやったつもりですけれど、さすがに1万冊という目標というか課題設定までは考えませんでした。
先日、亡くなったかごさとしさんは川崎セツルメントの先輩でもありますが、カラスのパン屋さんシリーズや、「どろぼう学校」など、読んでるほうまで楽しくなる絵本を、私も子どもたちに声色を変えて一生けん命に読んでやっていました。楽しい思い出です。
歴史を学ぶときには、マンガで日本史も世界史も読んでおくといいというのも、私はやっていませんが、これはなるほどと思います。マンガを馬鹿にしてはいけません。手塚治虫のマンガは面白いというだけでなく、人間と歴史を考えさせてくれる哲学書でもあります。
親は「元気でウザいくらいがちょうどいい。親がいつも笑顔でいれば、子どもは安心して過ごすことができる。
子どもには、素直な感情を出せる環境が必要。そのためには、親は、いつもニコニコ笑顔が構えていることが大切。親は「家の壁紙」のような存在なのだ。
これが、この本で、もっとも肝心なところです。親が子どもの前で、いつもニコニコしている、これこそ容易に実行できることではありません。それを佐藤ママはやり切ったのです。子どもたちがインフルエンザにかかっても、佐藤ママにはうつらなかったのです。
私も、同じようにインフルエンザにかかって寝込んだ、ということは一度もありません。毎日、いつも、やりたいことがたくさんあって、寝てる場合じゃない、そんな気分で弁護士生活45年をやってきました。やるべき仕事があって、やりたいことがあるなんて、なんて幸せなんだろうと、感謝の日々を過ごしています。
子どものときには、なるべく失敗の経験はさせない。子どもに必要なのは自立ではなく、自活。自活とは、親が仕送りしなくても、自分で稼いて、食べていけること。
本当にそうなんですよね・・・。子育てがとっくに終わった私からすると、この本を読んで反省するしかないことだらけです。でも、子どもたちから切り捨てられてはいないのが、私にとっての救いです。
家庭が明るいこと、親が笑顔で子どもと接することができること、佐藤ママは本当に大切なことを指摘してくれています。
(2018年2月刊。1500円+税)

私はドミニク

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 ドミニク・レギュイエ 、 出版  合同出版
国境なき医師団(MSF)という組織は知っていました(MSFはフランス語です)。でも、国境なき子どもたちという組織があるのは、この本を読んで初めて知りました。
ドミニク(著者)は、MSF日本の事務局長でした。10年つとめたあと、今の国境なき子どもたちを設立したのです。
ホームレスの人々が路上生活するに至った原因は、人道援助団体にとってはどうでもよいこと。病気、親類縁者との関係疎遠、社会からの疎外、失業など、路上生活に至った原因はさまざまだけど、その原因を苦境にある人々へ人道援助の手を差し伸べるかどうかの判断材料にすることがあってはならない。人道援助とは、人が人に示す連帯の証(あかし)であり、すべての人が平等であることの証なのだから。
ところが、ホームレスの人々に対して、
「身から出たサビで、あの状況にあるのだから・・・」
「自分で選んだことでしょう」
「本気になれば、路上生活から抜け出せるだろうに・・・」
と批判する人が少なくない。私も、遠くから批判しているだけではダメだと思います。
常に相手に向きあうこと、理解しようと努めること、人々をありのままに受け入れること、互いの違いを認めあうこと、自分の価値観だけで、相手を判断しないこと・・・、これが大切。
子どもにとって学校とは、学ぶ場である前に、仲間と一緒に過ごしながら、社会性、社交性を身につける場である。
ストリートチルドレンは道徳や法の規範からは外れているが、彼らは自立している。彼らに教えなければいけないのは、人に頼ってもいいという事実だ。他人を尊重すること。そして、何よりも自分自身を大切にすること。これこそ彼らが学ばなくてはならないこと。
子どもとは、両親や家族、教師を頼って生きる存在である。そして、自分というものを主張しながら大きくなっていく。思春期になれば、選択すること、理解しようとすること、許容と拒否、許し、そして忘れることを学んでいく。
わずかなひとときであっても、安心して過ごせる時間、尊重してくれる人と過ごす時間は、その一瞬一瞬が成功の証だ。
フィリピンのマニラ地区、カンボジア、タイ、ベトナム、東ティムール・・・、世界各地へ子どもたちの自立を援助して不屈にたたかう組織なのです。
世界各地の子どもたちの実情に目を大きく見開かさせる本(写真もたくさんあります)でした。ぜひ、手にとってごらんください。
(2017年11月刊。1500円+税)

福島第一・廃炉の記録

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 西澤 丞 、 出版  みすず書房
宇宙服を着ている人々が働いている場所がある。それが日本の一部だとは信じられないけれど、これこそ福島原発の廃炉への工程の現状です。
これからまだ何十年、いえ何百年も続くのかもしれません。なにしろ人間の手に負えるものではないのです。宇宙服を脱いでいる人々も見かけるようになっていますが、肝心の廃炉作業では生身の人間が近づくことは絶対にありえません。行っただけで人間が溶けてなくなる、とまでは言いませんが、明らかに寿命を縮めてしまうことは間違いありません。
 東京電力(東電)の協力の下で撮られた写真です。つまり、どれも決して隠し撮りではありません。でも、撮られるのをいやがる労働者がいて、怒鳴ったりされます。その心は、恐ろしさに満ちた場所にいることを家族に知られたくないということではないでしょうか。
でも、写真を撮られるといってもマスクしているのですから、素顔が見えるわけでもないのです・・・。
毎日、何千人もの人々が廃炉に向けて黙々と作業をすすめています。私はここで働く人々に対して、心より敬意を表します。と同時に、こんな原発は日本には絶対にいらないと改めて痛感します。
前にも書きましたが、福島第一原発のすぐ近くに東電の会長以下、取締役は家族と一緒に社宅をつくって住んでみたらどうですか。皆さん、その勇気がありますか。原発が安全で「アンダーコントロール」というのなら、それを自分と家族の身体で証明してもてください。いえ、無理強いするつもりは決してありません。それが出来ないのなら、正直に原発は怖いから、とても近くになんて住めないと正直に告白すべきだと思うのです。他人に危険を押しつけておいて、自分たちはぬくぬくのうのうとしているなんて、戦前の日本軍の高官と同じではないでしょうか・・・。
この一連の写真を見て、ついつい興奮して筆がすべりました。廃炉作業がすすんでいるとはいえ、まだまだ、ほんの序の口です。それを実感させる貴重な写真集でした。少し高価ですので、図書館で手にとって眺めてください。
(2018年3月刊。3200円+税)

TOEIC亡国論

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 猪浦 道夫 、 出版  集英社新書
かなりインパクトのある刺激的なタイトルのついた本ですが、読んでみると、ごくまっとうな英語教育論が展開されていて、大変参考になります。
私は英語はあきらめてフランス語一本でやっていますが、その理由の一つは英語の発音が私の耳にはあまりに聞きとれないことです。よほどフランス語のほうが聞きとりやすいのです。この本は英語が日本人に聞きとりにくい理由もちゃんと指摘していますので、私だけじゃないことを知って安心しました。
英語が聞きとれないという人は、文法や語法を知らない、単語力がない、会話の背景にある文化的バッググラウンドについての知識がない、それだけのこと。
日本に住んでいて、周囲が日本語で話している環境のなかで「日本語脳」を捨てて「英語脳」を獲得するなんて、まず不可能。
TOEICは、コツを覚えれば、誰でもある程度の点数がとれる。英語の本当の実力を測るには適当ではない。TOEICは、コツに習熟すると、実力以上のハイスコアがとれる。問題を解くのに複雑な思考を要求しないので、対策さえすれば、ある程度の点数はとれる。
TOEICは、年に何回も受けることができるので、お金のある人が有利。
海外では通用しないので、海外で何かしたい人にとってはムダな努力になってしまう。
TOEICは、作文能力をテストしていると言いながら、現実には、語彙(ごい)クイズ、語法クイズでしかならない。
TOEICは、日本人のためにつくられた試験。TOEICをつくったのは、通産省と経団連であり、英語ビジネスの既得権益を確保しようとしているだけのこと。
大学生に求められる英語能力とは、原書をきちんと読解する能力である。
日本人向けの英語力検定試験を早急に開発すべきだ。
ALTには資格が必要ない。ALTひとりに年間600万円もの予算がついている。英語が母国語だといっても、誰もが英語を教えられるわけではない。
語学の学習に必要なものは、お金と時間の二つ。語学の学習のための三種の神器は、良い辞書、良い参考書、良い教師だ。
いつまでも英語が身につかないという人は、英文を文法的に正確に書けず、語い力が不足しているのが根本的な原因だ。
発音はネイティブに習うより、音声学にもとづいた科学的な発音指導のできる日本人の先生から訓練を受けるのが非常に効果的。
大変よく分かりました。
(2018年3月刊。740円+税)

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