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カテゴリー: 社会

内閣官房長官の裏金

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 上脇 博之 、 出版  日本機関紙出版センター
内閣は月1億円という大金を自由に使えます。領収書は不要だし、会計検査院のチェックもなく、まさしく使途不明金です。権力を握った「うま味」なのでしょう。
たとえば、沖縄県知事選挙で与党側の候補を応援・テコ入れするための「実弾」、野党議員を丸めこんで荒れる国会を演じながら乗り切る。そして、マスコミ幹部との高級料亭での豪華お食事会・・・。そんなことで使われる黒いお金です。
そこに敢然とメスを入れようと著者たちが裁判を提起し、ほんの少しだけ秘密に閉ざされた扉をこじ開けるのに成功したのでした。
月1億円ですから年間12億円。もちろん、私たちの血税です。許せませんよね・・・。
この機密費には三つあるとのこと。政策推進費、調査情報対策費、活動関係。いやはや、どれもこれもあいまいな名称ですね。
日航機のハイジャック事件(1977年)の身代金600万ドル、ペルー日本大使公邸人質事件(1996年)、アフガニスタンの反ソ、ゲリラ組織への武器購入資金数万ドル・・・。
沖縄県知事選挙(1998年)のときに7千万円。そして、退任する日銀総裁、検事総長、会計検査委員長へ百万円単位。政治評論家やメディア幹部への付け届け。
マスコミが「内閣官房報償費」という裏金について報道したがらないのは、自らのトップにもこの黒い大金が渡っているから・・・。何ということでしょうか。
首相が退陣するときは、残ったお金を「山分け」して、金庫を空にするのが「礼儀」だった。ひえー、空前の税金のムダづかいですよね、これって・・・。
このような権力の裏金とは、つまるところ暗黒政治の産物にほかならない。
情報公開訴訟で裏金の一端が明るみに出たわけですが、裁判官の大半は、権力の報復を恐れてか、公開を是とする判決を出そうとしない現実があります。困ったことです。
国政の闇に光をたあてた画期的なブックレットだと思います。
(2018年10月刊。1600円+税)

財は友なり

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 髙岡 正美 、 出版  浪速社
現代日本では残念なことに労働組合というものの存在がほとんど見えない状況です。過労死・過労自殺そしてブラック企業の横行、さらにはパワハラ・セクハラが止まない職場・・・。いったい、労働基準法・労働組合法はどこにいってしまったんだろうかと心配します。
この本を読むと、労働組合は労働者の生活と権利のために欠かせないものなんだということを改めて教えてくれます。そして、労働者の生活を守るためには、労働組合が会社経営に関与することもあるし、労働組合の幹部が会社の取締役になることだってあるのだと著者は力説するのです。
これは単純な労使協調路線ではありません。資本に労組のダラ幹が抱き込まれ、懐柔されるとは少しばかり違うのです。だって、目の前には工場閉鎖・企業倒産が迫ってくるときの話なのですから・・・。
もちろん、お金をもらえるだけもらって、そんな会社とは見切りをつけてさっさと辞めてしまうほうがいい場合もあるでしょう。でも、他に職を探すのも容易ではありませんし、少しでも会社再建の可能性があるなら、それに賭けてみようという気にもなりますよね。
この本のなかでは、著者が関わったものとして、無責任な旧経営陣を退陣させて、労組が会社を管理し、新しい社長には労組幹部が就任したり、既に引退していた有能な元社長をひっぱってきて社長にすわってもらって見事に企業を再建した例も紹介されています。たいしたものです。
著者のたたかいは、なによりも企業を存続させて労働者の雇用を確保しようとするものだった。そのため、企業を敵視せず、企業再建のためには、労使が一緒になって取り組むことを著者は求めた。これは、使用者言いなりの「労使協調路線」ではなく、労働組合が自ら方針を立て、主体的に経営にかかわり、合意に達しなければ、裁判闘争・労働委員会闘争などの法的手続をとることも辞さない。
著者は、頭の良さに加えて、持って生まれたエネルギーの量と負けん気、手を抜かない自己に厳しい姿勢と努力でこのような力を身につけ、難局にあたってきた。
著者は紙パルプ労連の中央執行委員をつとめ、各地の労働争議に関わってきました。
労働組合のなかには、組合費を基本給の3%にしているところもあるそうです。その高さに驚かされます。3%の組合費を払うだけのメリットがあると一般組合員が受けとめているからこそ続いているのでしょうが、すごいことです。実に素晴らしいです。別のところでは、1人月1万8千円という高い組合費のところもあるとのこと、信じられません。
著者は大阪府地労委の労働者委員となり、4年間に審査事件84件、調査事件50件を担当しました。相手にした企業は91 社。結果は命令交付が25件、和解等で解決したのが23件、訴訟になったのが18件だった。いやはや、大変だったでしょうね。
大商社の伊藤忠を相手にした大阪工作所事件では、残った組合員はわずか18人。ところが、まいたビラは1日4万枚、トータルで100万枚をこえ、2千人からの労働者による抗議行動が御堂筋で展開するという華々しい活動を展開した。その成果として、労組が億単位の解決金に加えて、土地や技術を譲り受け、会社の経営権を握って見事に再建することができた。今も、この会社は存続しているというのです。たまげましたね・・・。
読んでいるうちに、そうか労働組合って、こんなことも出来るのか、やれば出来るんだねと勇気が湧いてきて、心がぽっぽと温まってくる本です。大阪の大川真郎弁護士より贈っていただきました。いい本を紹介していただいてあつく、お礼を申し上げます。
(2018年10月刊。1667円+税)

憲法が生きる市民社会へ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 内田 樹 ・ 石川 康宏 ・ 冨田 宏治 、 出版  日本機関紙出版センター
いまの日本社会をどう考えたらよいのか、アベ流改憲の恐ろしさの本質はどこにあるのか、深く思い至ることのできるブックレットでした。80頁あまりの薄さで、値段も800円です。ぜひ、あなたも手にとって読んでみてください。
カナダはGDPが日本の3分の1、兵力で日本の4分の1だけど、国際社会から敬意と共感を得ている点は、日本を圧倒している。
まことに、そのとおりです。日本なんて、アメリカの属国だと国際社会ではみられていると思います。日本国内のいたるところにアメリカ軍の基地があり、治外法権みたいな状況で、莫大なお金を貢いでいる残念な現実がそれを裏付けています。
自民党には、今では1800万票しか票が入らない。投票所に足を運ばない人が2000万人もいる。
どうせ選挙に行ってもムダだ、変わらないと考えている人が自民党政権を支えているわけです。
いまの日本の政治が劣化した最大の原因は「語るべきビジョンがない」ことにある。アベ首相たちが語る「戦前回帰」、軍事力信仰、そして「日本はすごい」キャンペーンは、日本の未来に見るべき希望がなくなった人たちが過去の栄光を妄想的につくり出して、それを崇拝するという、苦しまぎれのソリューションだ。つまり、未来に何も期待できないので、妄想的に「美しい過去」を脳のなかで構成して、そこに回帰しようとしている。彼らは、20年後、30年後の日本について語ることが出来ない。
そうなんですよね、戦前の日本は良かっただなんて、とんでもないことです。
いまの天皇が護憲派であることはアベ首相もよく分かっている。なので、天皇の退位宣言以降、天皇に対する激しい嫌がらせをしている。アベ首相が集めた「有識者」会議には、天皇を平然と罵倒する人物もいた。「天皇は黙って祈っていればいいんだ」と彼らは言う。天皇崇敬の念は彼らに感じられない。現実の天皇が何を考え、何を願っているか、なんて彼らは何の興味もない。
でも、私たちは希望を捨てることなく、新しい日本の姿を展望しつつ、一歩一歩たしかに前進していきたいものです。沖縄の県知事選挙、那覇市長選挙の勝利は、それが可能だということを証明しているのですから・・・。
(2018年5月刊。800円+税)

「資本論」

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 マルクス 、 出版  講談社
講談社が、まんが学術文庫なるものを創刊したのですね、知りませんでした。
マルクス『資本論』には、少なくとも3度は挑戦しています。学生時代に1度、弁護士になってから1度。それぞれ分からないながらも、なんとか読み通したつもりです。そして、もう1回、時期は忘れましたが、挑戦したように思います。
『資本論』は、部分的には分かるところもありましたが、全体としての経済理論は、ついによく理解できないままでした。大学1年のときには、有名なサムエルソンの『経済学』も読みましたが、こちらも、さっぱり訳が分かりませんでした。要するに、この人は何が言いたいんだろうか・・・、そんな疑問が私をとらえて離しませんでした。経済学って難しいというか、まるでピンと来ませんでした。それより、法理論のほうが、よほど私の性分にもあい、理解できました。
そこでマンガで『資本論』を語ると、どんな展開になるのか・・・。ストーリーがあります。『資本論』の記述の説明マンガではありません。
19世紀イギリスの現実社会のなかでもがく若者たちが、パン屋から起業してスーパーを展開し、土地を所有して地代を稼ぐ地主階級を没落させていくというストーリーです。なかでは労働者階級の悲惨な状況も描かれていて、なかなか読ませ、考えさせる展開になっています。
ははーん、こうやって労働者を搾取する支配階級がつくられていくんだな・・・。マンガですから、当然、視覚的な分かりやすい展開です。
しっかり『資本論』を勉強した気分になるのは、さすがです。
(2018年4月刊。680円+税)

おじいちゃんのノート

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 中村 輝雄 、 出版  セブン&アイ出版
開くと真っ平になるノートが付録として付いている本です。いわば奇跡のノートですよね、これって・・・。
「このノートは、書きやすくコピーやスキャンも影が出ない、画期的な水平開き製本の新時代ノートです。左右ページ単独に、または両面をワイドに使用!テーマに合わせて使い方いろいろです」
なるほど、どのページもたしかに水平開きになるノートです。
そこで、問題は、誰が、どうやってこんなノートを開発したのか、です。
誰が・・・。零細そのものの「中村印刷所」という会社です。80歳になる製本職人と70歳の社長の二人して2年がかりで完成させたのです。すごい執念です。2012年に始めて、2014年に完成しました。
どうやって・・・、というと、製本職人と社長が二人で、試行錯誤を繰り返したということに尽きるようです。でも、零細な町工場が画期的なノートをつくったからといって、一挙に市場で注目され、売れるものではありません。
そこに、SNS(ここではツィッター)が登場します。
「うちのおじいちゃん、ノートの特許をとってた・・・。宣伝費用がないからできないみたい。どのページを開いても見開き1ページになる方眼ノートです」
このツィッターがたちまち拡散して、半日たたずに2万件をこえた。やがて、10万をこえるアクセスがあり、テレビ局や週刊誌から取材したいと電話がかかってきた。
在庫はたちまちなくなり、引き戸を閉め、カーテンを引いて、部屋の電気も消して居留守を使った・・・。
いきなり、大騒動になったのです。ツィッターの威力って、すごいんですね、見直しました。
すでに10万冊以上の水平開きノートが販売されたそうです。おめでとうございます。
きっかけは、印刷所が不景気になって、仕事がなくなったことにあります。そこで、なんとか売れる商品をつくろうとがんばって世に送り出したのが、水平開きノートだったのです。
「ノドが膨らまないノート」です。ノドとは、見開いた本の真ん中、ページを閉じた部分のこと。水平開きノート開発のカギは、接着剤にある。
いやあ、いい話ですね。苦労が報われる社会というのはいいものですよね。
(2016年8月刊。1500円+税)

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