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カテゴリー: 生物

すべての生命に出会えてよかった

カテゴリー:生物

著者  桃井 和馬   、 出版  日本キリスト教団出版局 
 
 世界中の、140ヶ国に出かけて取材を続ける写真家による貴重な写真レポートです。
地球には、ひとつだって無駄な存在はない。すべての生命、すべての出会い、すべてはすべて連なっている。だから、無意味に死んではいけない。だから、人が人を殺してもいけない。
生きとし生けるものの躍動感がよく伝わってくる写真が続きます。そして、世界の人々の表情豊かなスナップ写真があります。白一色の凍れる世界で吹雪に耐える白鳥たちは、次に来る春をひたすら耐えて待っているようです。ぐっすり眠りこけているアシカの寝顔は、夢見るしあわせな時間をよくぞ表象しています。そして、ライオンの赤ちゃんが大人のメスライオンの群れのなかで気持ちよさそうに寝入っています。
 ツバルの少女のきらきらと光輝く瞳がとくに印象的です。未来は青年のもの。いや、未来は子どもたちのものなんです。青年、そして子どもたちの豊かな未来をきちんと保障するのは、大人とりわけ年寄り(私も当然その一員です)の責任です。子どもは、いつくしみと愛情に溢れている。ホント、そうでなければいません。
 この写真集は、フォトジャーナリストとして、世界各地で紛争を追い求めてきた著者によるものです。
 自然という、複雑で大きなメカニズムの一部として生かされている人間、そうであるなら、同じ宗教や民族の中で争うことも、宗教や民族で殺しあうのもあまりに空しい。
 自然と、生き物と、子どもたちと、そして壮年や老人の生き生きとした姿がよくも撮られています。奥の深い写真集でした。
(2010年10月刊。1800円+税)

ラッコ

カテゴリー:生物

著者   久保 敬親 、 出版   新日本出版社
 
 野生のラッコの可愛いらしい写真が満載の写真絵本です。
 ラッコって、もともとの日本では見ることができなかった動物なんですね。昔からいるものとばかり思っていました。ところが、最近になって、北海道東部の海岸近くに現れるようになったのです。
岸辺に近い海でプカプカと気持ちよさそうに2頭のラッコが仲良く浮かんでいます。つぶらな黒い瞳が魅力的です。そして小さな身体を柔軟に丸めてしまいます。鼻はぺしゃんこの三角形です。
 コンブの海で、あおむけになって寝っころがります。ラッコの足(後ろ足)は、ひれ状になっていて、泳ぐのに最適の形をしている。そして前足は肉が厚くて、爪の出し入れが自由に出来るので、食べ物を持ったり、岩に登ったりもできる。
 ラッコの下毛(したげ)は、密にはえていて、あいだに空気の層をつくっていて体温を保つことができる。
 ラッコの大好物はウニ。カニもホタテも大好き。ええーっ、それじゃあ人間の食べ物をとってしまうんじゃない。ラッコの敵は人間かも・・・。そう思いました。実際、しなやかで、質のよい毛皮を持つラッコは人間からどんどん殺され、絶滅が心配されていたほどです。
海辺に浮かぶラッコを現地で見たくなる楽しい写真絵本です。
 この本の著者は、たくさんの写真集を発刊していて、実は我が家に何冊もあるのでした。『エゾヒグマ』(山とう渓谷社)、『大雪山の動物たち』『キタキツネとの出会い』『シマリスの四季』(以上、新日本出版社)です。どれも、動物たちの、大自然のなかで伸び伸び、そして生き生きと躍動感あふれる素晴らしい写真です。見るだけで心あたたまる写真を、いつも本当にありがとうございます。
(2010年6月刊。1500円+税)

鯨人

カテゴリー:生物

著者   石川 梵、 出版   集英社新書
 
 銛(もり)一本で、鯨(くじら)に挑むインドネシアの島民を現地に溶け込んで取材した日々を生き生きと再現した衝撃的な本です。その漁のすさまじさは手に汗を握ります。が、それに至るまでのなんと気の長い日々でしょう・・・。ひたすら鯨の来るのを待つのです。じっとじっと海の上でそして地上で見張るのです。その悠長さには、とてもつきあってはおれません。
 インドネシアは赤道をまたぎ、1万7500ほどの大小さまざまな島からなる人口2億人をこえる海の大国である。沖縄本島ほどの大きさのレンバタ島の南端にラマレラ村がある。ラマは土地、レラは太陽という意味。つまり、太陽の土地だ。ラマレラは人口2000人足らずの小さな鯨漁の村。水道もなければガスもない。調理には山で集めた薪の火を使い、夜になると、村は鯨の脂でランプを灯す。といっても、これは現在のことではありません。著者が泊まり込んでいた1997年当時の話です。
 ジンベイザメを仕留める。ジンベイザメは、プランクを食すおとなしいサメ。天敵もいないので、水面でいつものんびり泳いでいる。全長10メートルをこえるジンベイザメは、船体を水中に引き込む力がある。鯨とちがって水上で呼吸する必要のないサメは、銛を打ち込まれると、どこまでも深く船を海中に引き込む。うへーっ、怖いですね。
 マンタ漁には、鯨漁に匹敵するほどの危険がともなう。マンタの振り回す巨大な翼は危険で、直撃すると人を即死させる破壊力がある。うひゃうひゃ、これまた怖い話です。
 鯨の漁期は、毎年5月から8月。捕れて年に10頭。捕れるときは3、4頭まとめてということもあるので、チャンスは少ない。
長く海を眺めていると、時間の感覚が麻痺していく。鯨人にとっては、それが一生続く。
ラマレラの人々は、海の上で1キロ先のマンタの飛翔も見逃さない。目は、鯨漁に従事するラマファの命だ。鯨の急所は尾ビレの付け根の30センチほどの狭い範囲で、そこに動脈がある。揺れる船の上から最高のタイミングで狭い急所に銛を打ち込まなければいけない。
大型のマッコウクジラの巨大な頭には、2000リットルもの脳油が詰まっている。脳油の融点は29度と低い。この脳油を冷やしたり温めたりして身体の比重を変え、浮上や潜水をする。浮かぶときは、深海の水で冷やされ、固く、高密度になっている脳油を温めるため、脳油器官をめぐる毛細血管に大量の血液を流し込む。鯨の体温は33度なので、脳油は溶け、密度が薄くなる。頭の比重が軽くなったマッコウクジラは、頭を上にするだけで浮上する。海面に出たマッコウクジラは、そこで30分ほど呼吸する。血液により温められた脳油は、このとき液体状だ。潜るときには海水を鼻孔から脳油器官に導く鼻道へ吸い込み、脳油を急速に冷やす。冷たい海水により脳油は固形状になり、密度が上昇する。今度は比重が重くなった頭を下げれば自然に潜水していくという仕組みだ。うむむ、なるほど、うまい仕組みです。
マッコウクジラは、肺や血液だけでなく、筋肉のなかに多量の酸素を貯えられる。だから潜水中でも筋肉に貯えた酸素を体内に供給できるわけだ。しかし、どうして深海3000メートルの水深に鯨の体が耐えられるのか、実はまだ謎だ。
銛を打ち込まれたマッコウクジラは、SOSを発し、必死に仲間を呼んで助けを求める。
鯨一頭捕れたら、村民が2ヶ月しのいでいける。手に入れた肉は、干し肉にして、女たちが市に持っていき、野菜や生活必需品と交換する。残りの肉も乾燥させて保存し、交換する。鯨の解体は時間がかかる。血の一滴、脊髄や歯に至るまで村民に分配される。血は鯨を煮込むときのソースとして、歯は指輪などの装飾品に用いられ、脂身を干したときに出る油は家庭の灯火として利用される。鯨の油はマイナス40度になっても凍らないので、ロケットの潤滑油として今も利用されている。骨を除く鯨のすべてが、くまなく利用される。ところが、ラマレラの民の胃袋に鯨肉はほとんど入らない。たんぱく源というより通貨のようにラマレラの民の生活を支える。
圧巻は、鯨を打ち込まれた鯨の目を写真に撮ろうというシーンです。
鯨の目は赤く血走り、食われてたまるかというように、いきり立っている。鯨の眼から発する炎のような怒りが全身に伝わってきた。すごいですね。同じ哺乳類ですからね・・・。
鯨は本来やさしい動物で、遊泳中にダイバーが視界に入ると、尾ビレがぶつからないように避けてくれる。それなのに、なぜ非情にも殺すのだと怒っているのです。
自分たちは、食うために必死に鯨と戦う。鯨も生きるために必死に抵抗する。どちらが勝つか、それは神様の決めること。鯨は友人なのだ。
今では、このラマレラもかなり変貌したことが「あとがき」で紹介されています。そうなんでしょうね・・・。
(2011年2月刊。780円+税)

うなドン

カテゴリー:生物

著者  青山 潤、    出版  講談社
 
 『アフリカにょろり旅』の著者がウナギを求めて歩いた苦難の旅を面白おかしく書きつづっていて、とても読ませます。これでも学者なのか、それともルポライター(旅行作家)なのかと疑ってしまうほど抱腹絶倒のウナギ探訪体験記です。すごいものです。若さでしょうね。タヒチ島のジャングルの中まで踏み分け、イタリアのマフィアの別宅に侵入してしまうのですから・・・。苦労、苦難、苦闘の連続の日々なのです。
 ウナギは全世界に18種類しかいない。それを全部集めることが出来たら、それだけで博士号がとれる。そんな話で勇躍、まずはインドネシアに乗り込みます。しかし英語もまともに話せず、ましてやインドネシアの言葉なんかもちろんダメ。そんな日本人青年が、よくぞインドネシアでウナギを探そうと思ったものです。
 現地の若者たちに取り囲まれて絶体絶命の大ピンチになります。そんなときは、カタコト英語ではダメ。威勢よく日本語でタンカを切るのです。
必死の思いで確保した貴重なウナギをどうするか。生のままでは税関ではねられる。やがて思いついたのは塩漬け。5キロの塩を買い込んで塩の中に放り込んだ。なーるほど、ですね。
イスラム教徒のなかで生活しているうちにラマダン期に突入。昼間は水も食料もダメ。著者は夜までダメだと思いこんでついに栄養失調で倒れる寸前となって、その家を脱走。そして、あとになって人々は夜にちゃんと食べているのを知ったのでした。
世界のウナギ18種類のうち、ほとんどは赤道熱帯域に生息し、日本やヨーロッパのような温帯域に棲むのは5種類のみ。熱帯のウナギについては、ほとんど何も分かっていない実情である。
インド洋のウナギを探し出かけるときには海賊に襲われる心配もあったのでした。
いやはや、熱帯のウナギの生まれる場所を突きとめた学者グループの苦労を平和な日本にいながら偲ぶことができる興味深い本です。
(2011年2月刊。1600円+税)

クジラ・イルカ生態写真図鑑

カテゴリー:生物

著者  水口 博也、    出版 講談社ブルーバックス
 
 クジラとイルカの楽しい生態写真集です。天草のイルカ・ウォッチングにはまだ行っていませんので、この写真集を見て、ぜひ近いうちに行ってみたいと思いました。
 哺乳類のクジラは陸上生活から海に生活場所を戻した。海で暮らすようになって、クジラは早い時期に後肢が退化し、前肢は胸びれに形を変えた。体全体が流線形になり、最後部に水を蹴って泳ぐための力強い尾びれを発達させた。
 クジラは浅海だけではなく、中心層(水深200~1000メートル)にいるエサを求めて潜る。マッコウクジラは1時間近くも潜れる。
 クジラは血液中だけでなく、全身の筋肉にふくまれるタンパク質ミオグロビンにたっぷり酸素をためられるので、こんな長時間の潜水が可能になった。
 水中は空気に比べて、はるかに音をよく伝える。そして、水中は視界が悪い。そのため、クジラは多彩な鳴音を利用してコミュニケーションをとる。それで聴覚を発達させた。
 ザトウクジラは海面に尾びれを出すので、それで個体を識別する。クジラの観察も科学的になされているのですね。
 そして、クジラやイルカは遊ぶ動物である。イルカはサーフィンを楽しむ行動を見せる。波乗りをして遊んでいる。
 クジラとも遊ぶし、人間とも遊ぶ。自分の吐き出す息で白い泡の渦を楽しんだり、なかなかに芸術家である。海中で泡を吐き出してオキアミを集めるクジラもいる。
 人間だけが遊ぶことを楽しむ動物ではないこともよく分かる写真集・図鑑でもあります。
(2010年12月刊。1280円+税)

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