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カテゴリー: 生物

究極のクロマグロ完全養殖物語

カテゴリー:生物

著者   熊井 英水 、 出版   日本経済新聞出版社
 日本は年間50万トン以上のマグロを消費するマグロ大国である。
 世界ではクロマグロ、メバチ、キハダなど175万トンものマグロが漁獲されている。その
27%を日本が消費している。クロマグロに至っては、8割が日本人の胃袋におさまる。
 大トロが取れるのはクロマグロとミナミマグロだけ。世界のミナミマグロの9割を日本が消費している。
 クロマグロでは、342キロの北海道・戸井産のものが3249万円で競り落とされた。
 マグロはスズキ目サバ科マグロ属。近畿大学水産研究所がクロマグロの増養殖研究に本格的に取り組みはじめたのは1970年のこと。うへーっ、今から40年もの前のことなんですよね。私はまだ大学生でした。そして、マグロの完全養殖に成功するまで32年もかかってしまった。
 マグロの体、ヨコワには鱗が細かく、とにかく皮膚が弱い。少しでも擦れると、もうダメ。そして酸素不足にも弱い。クロマグロは、ハマチに比べて体重あたりの酸素要求量が3倍も大きい。すぐに酸欠死する。
 クロマグロは5歳で成熟し、産卵可能な個体となる。ふだんは雄雌の区別はほとんどつかないが、産卵期になるとオスは全身が黒化し、メスは腹側が銀色に輝き、測線のブルーがなお鮮やかに変わり、激しい追尾行動が始まる。
 1979年に初めて産卵に成功。1ヵ月間に160万個の卵が採取できた。次は稚魚に育てるのが課題となる。
 マグロは夕方から夜にかけて産卵する。そして11年間、産卵しなかった。1994年に12年ぶりに産卵をはじめた。しかし、今なおどうして産卵を再開したのかは分かっていない。
 マグロは稚魚の前で動くものを餌として攻撃する性質がある。生簀が狭すぎるとマグロは衝突死する。光に敏感なマグロは車のヘッドライトに驚き、暴走、激突死していた。
 マグロの力強い遊泳力が養殖において致命傷となった。大きい図体に似合わず、本当に臆病な魚でもある。マグロの激突死を避けるため、生簀を大きくし、そのうえ夜間電照をして明るいところで育てた。
 2009年に沖出しした稚魚は19万尾。そのうち4万尾がヨコワとなり、生存率20%を記録した。卵から計算しての生存率も0.5%となった。 
 クロマグロを育てるのに15倍の生餌が必要。つまり、200キロのマグロを育てるには、3トンもの餌が必要である。いま、人口配合飼料となっている。
 2004年9月、近大産のクロマグロの3尾を大阪・奈良の百貨店へ初出荷した。
 全身9割がトロのトロマグロ。大トロが100グラムあたり1800円、中トロが980円、赤身が680円。いずれも天然本マグロの元値でたちまち完売した。
 クロマグロは、どの魚よりも早く泳いで餌を捕獲できるように進化してきた。スピードは時速20~30キロで泳いでいて、絶対に止まらない。睡眠時には、何かしらのセンサーを働かせて障害物をよけている。
 マグロは生まれてから死ぬまで、一生泳ぎ続けている。口を開けたまま泳ぐことで、常に新鮮な水をエラを通して酸素を取り入れている。マグロの体は徹底的に泳ぎに特化しており、尾ビレは強い推進力を生み出すため、大変発達している。
 カツオはスズキ目サバ科であり、れっきとしたマグロの仲間である。
いやあ、マグロのことを改めて知ることが出来ました。すごいですね。ぜひ近大産のマグロを一度は食べてみたいものだと思いました。
(2011年7月刊。1600円+税)

世界をやりなおしても生命は生まれるか?

カテゴリー:生物

長沼 毅 朝日出版社
 10人の高校生との対話をベースにした本です。分かりやすい反面、とても難しいところがありました。
 10人の高校生の知的レベルの高さには驚かされます。モノを食べない動物がいる。ええっ、ウ、ウソでしょ・・・。ところが本当なんです。暗黒の海底に棲息するチューブワームです。
 チューブワームには消化器官、つまり口・胃腸・肛門がない。栄養は内部から摂る。目には見えない特殊な微生物が体内に棲んでいて、チューブワームに栄養をつくってくれている。体内微生物の名前は、イオウ酸化細菌、イオウ酸化バクテリアともいう。これは植物の光合成と同じことをしている。ただし、暗黒の海底なので、光の代わりに海底火山のエネルギーを利用する。そして、でんぷんを作っている。
 この共生微生物とチューブワームはバラバラに切り離すことができない。単独での培養に成功していない。ええーっ、世の中には、こんな生き物がいるのですね。
 地下生物圏に棲息する微生物は3兆トンから5兆トンいると推測される。これは、陸上・海洋生物圏の2倍以上にもなる。すなわち、地球の内部こそが巨大な生物圏なのである。そのポイントは海底火山、地球の内部がアクティブであること。
リンキアというヒトデがいる。カリフォルニアや沖縄の海にいるヒトデである。このリンキアというヒトデは、腕を切り離すと、その腕の断片からも全体が復活する。
 同じようにプラナリアも、切っても切っても再生する。ある研究者がプラナリアを100個以上の断片に切り刻んだところ、その全部が全体を再生した。
 もし太陽がなくなったら、海底火山から出てくる、あるいは地下世界に秘められた化学エネルギーだけしか使えなくなる。太陽からは1367ワット/㎡のエネルギーが来るのに対して、地球内部からは69ミリワットしかない。太陽からの方が2万倍も大きい。もし太陽がなくなったら、地表はもう荒れ果てた平らな世界になるかもしれない。
 生命とは、問題を解くことである。そして、この宇宙で唯一、問題を解くことのできるものが生物である。
 生物の極限の状態を考えることが出来る本でした。
(2011年7月刊。1600円+税)

ツノゼミ

カテゴリー:生物

著者  丸山  宗利    、 出版  幻冬社   
 ありえない虫。こんなサブタイトルがついています。まさに、ありえない、奇妙奇天列な姿と形、色模様です。こんな虫が私たちの身近にたくさんいるなんて信じられません。でも、実際にたくさんいるというのです。だけど気がつきませんよね。なぜ・・・・?
 その秘密は、体調がわずか数ミリとごく小さいからです。でも、なんという形をしているのでしょう。カブトムシの頭に似ていて、そこから垂直に角が立ち上がったのは分かるとして、そこで4つのこぶがくっつくと、こりゃあ、一体何のため・・・・?不思議です。カサホネツノゼミとなると、丸いこぶの代わりに、日傘の骨みたいなツノが伸びています。
 ウツセミツノゼミは、透明なセミのぬけ殻(空蝉、うつせみ)そのものです。
ツノゼミは名前にセミとつくけれど、セミとは異なるグループの昆虫。大きさは1センチに満たず、だいたい2~25ミリほど。あまりに小さいため、人間の世界では見過ごされやすい。肉眼ではなく、ルーペで拡大してみて、はじめて、そのユニークさが見えてくる。
 正面からみたツノゼミの顔がまたなんとも奇妙な色と形、模様をしています。まるで、戦国武将のヨロイ・カブトのオンパレードです。
ハチマガイツノゼミは、背中のツノがハチそっくりになっている。ツノゼミは、一生を植物の上で過ごす。植物の芽やとげに似せている色や形のものが多い。また、ハチなどの危険な生きものに似せているもの、芋虫のふん、果ては昆虫の脱皮したぬけ殻まで、食べてもおいしくないものになり切っているものも多い。
 ツノゼミは植物の汁を吸って生きている。植物の汁には糖分が多く含まれているので、余った分は水と一緒に対外へ出す。ツノゼミは甘いおしっこをする。アリにとって、このツノゼミが出す甘い露はとても魅力的。1匹のツノゼミに40~50匹のアリが押し寄せてくることもある。
 アリは甘露をもらう代わりにツノゼミの護衛を引き受けている。アリはツノゼミを危険から守ろうと努力する。アリとは持ちつ持たれつの関係にあるのですね。
ツノゼミはオスとメスの交尾時間は長く、数十時間に及ぶことがある。このとき、オスとメスは何らかの交信をしていると考えられている。愛のささやき、ですね。
 そして、子育ては母親の役目です。卵を狙う敵を寄せつけません。ツノゼミの寿命は長くて3ヶ月。
 一読、一見の価値ある写真集ですよ。世界がグーンと広がります。
(2011年6月刊。1300円+税)
 朝、雨戸を開けると一番に目につくのは白っぽいクリーム色で、丸っこい可愛いらしい花を咲かせているシューメイギク(秋明菊)です。そのそばには、紫色の斑入りの不如帰(ほととぎす)の花が、ひっそり咲いています。
 フヨウ(芙蓉)の花は咲き終わって、ある意味のように丸まっています。そのかわりがエンゼルトランペットです。黄色いトランペットの花をたくさんぶら下げています。
 キンモクセイの芳香のなか、モズの甲高い鳴き声を聞きながら、チューリップの球根を植えつけました。

働かないアリに意義がある

カテゴリー:生物

著者   長谷川 英祐 、 出版   メディアファクトリー新書
 アリがみんな働き者かと思うと、そうでもないようなんです。アリの面白い生態が明らかにされています。
 1980年代まで、真社会性の生物は、ハチ、アリ、シロアリくらいしか知られていなかった。その後、アブラムシ、最近ではネズミ、エビ、カブトムシの仲間、さらにはカビの仲間まで真社会性と呼べる生き物がいることが分かっている。
 真社会性のアブラムシには、無性世代のなかに攻撃に特化した「兵隊」がいる。
ハチやアリには司令塔はいない。では、どうやって適当な労働力を必要な仕事に適切に振り分け、コロニー全体が必要とする仕事を見事に処理できるのか・・・?
 アシナガバチの女王は働きバチが巣の上で休んでいるのを見つけると、「さっさと仕事しろ!」とばかりに激しく攻撃し、エサを取りに行かせる。ところが、やられた働きバチもさるもので、巣を出ていったあと、少し離れた葉っぱの裏で何もせず、ぼんやりと過ごしている。
 なーんだ、人間社会によく似ていますよね。営業マンが喫茶店で、ぼおっとコーヒーを飲んでいる光景を思い出します。
 巣の中の7割の働きアリは何もしていない。案外、アリは働き者ではないのだ。
 ハチもアリも、非常に若いうちは幼虫や子どもの世話をし、その次に巣の維持にかかわる仕事をし、最後に巣の外へエサをとりにいく仕事をする。このパターンは共通している。
 年寄りは余命が短いから、外で死んでも損が少ないということ。すごい仕組みです。
 ハウスに放たれたミツバチはなぜかすぐに数が減り、コロニーが破壊してしまう。ハウス内には、いつも狭い範囲にたくさんの花があるため、ミツバチたちは広い野外であちこちに散らばる花から散発的に蜜を集めるときより多く働かなければならない。つまり、それだけ厳しい労働環境に置かれる。この過剰労働がワーカー(ミツバチ)の寿命を縮めてしまう。うへーっ、ハウス内のほうが楽ちんかと思いきや、まるで逆なのですね・・・。
 みんなが一斉に働くシステムは、同じくらい働いて、同時に全員が疲れてしまい、だれも働けなくなる時間がどうしても生まれる。だれもが必ず疲れる以上、働かないものを常に含む非効率的なシステムでこそ、種全体としては長期的な存続が可能となる。長い時間を通してみたら、そういうシステムが選ばれることになったのだ。
 なるほど、ふむふむ、そうなんですね。よくぞ、ここまで観察したものです。学者は偉い!
(2011年7月15日刊。760円+税)

イカの心を探る

カテゴリー:生物

著者   池田 譲 、 出版   NHKブックス
 なんという奇妙なタイトルでしょう。イルカじゃあるまいし、イカに心なんてあるはずないじゃないのさ。そう思ってしまいました。ところが、どっこい、なのです。なんと、イカは意外なことに巨大な脳をもち、ちゃんと学習効果をあげるのです。
 しかも、ほとんど養殖できない。イケスに入れると、たちまち死んでしまうというのです。ウッソー、マサカでしょ・・・。そんな叫び声が聞こえてきそうです。食べて美味しいイカに、なんとなんと心があったなんて・・・。これから気安くイカが食べられなくなりそうです。
 イカは情報を伝達する細胞である神経が発達し、それを統合したところの脳が大きい。イカは海の賢者とも言える存在なのだ。
 南氷洋だけで、イカは年間3400万トンも捕食者に食べられている。これは人間が食べている量より、はるかに多い。世界の海洋には、総量でで2億トンのイカがいると推定されている。
 淡水に生息するイカ、そしてタコなんていない。海にだけいる生き物だ。イカは変態しない。卵から孵化した時点から親と同じイカの形をしている。
 イカの寿命は1年ほど。それなのに、日本列島を南北に往復する大回遊をしている。
 イカの親であるオスもメスも我が子を見ることなく死んでいく。
 イカの養殖はできていない。水族館で生きたイカを常時展示しているところは少ない。イカを水槽に入れると、半日もしないうちにポロリと死んでしまう。
 ヤリイカ飼育成功の秘訣は水質にあった。ヤリイカは清水を好む。
 イカ、とくにスルメイカは神経質というか慎重であり、人が与えるものを簡単には受けとってくれない。しかも、エサが生きた状態でないと受けとってくれない。
 イカは仲間のお互いの行動を実によく見ている。
 スルメイカは、今もって全生涯を水槽内で飼育することができない。
 イカの眼はヒトと構造がよく似たレンズ眼だ。コウイカの視力は0.6ほど。
 イカは、体の色もパターンも瞬間的に変えることができる。
 群れをつくるアオリイカには順位制が認められる。繁殖相手のメスをめぐり、また、エサをとるときにも順位が形成される。
 イカは奥行きがあることが分かり、記憶力を持つ。
 アオリイカを鐘の前に置くと、強い関心を示す。鐘に映っているアオリイカは自分だと認識している可能性がある。
 イカは体色を変えてカモフラージュするが、それは貝殻という楯を捨てた代替戦略として、神経系を発達させ、高精度のレンズ眼をもち、高度な情報処理が可能な巨大脳を手に入れた。
 うむむ、こうなると、イカの活きづくりも、ただ単に美味しいというだけでは食べられなくなりますよね。学者って、すごいです。
(2011年9月刊。1300円+税)

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