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カテゴリー: 生物

タネが危ない

カテゴリー:生物

著者   野口 勲 、 出版   日本経済新聞出版社
 タネは野菜の種のことです。そのタネが危ないという本なのですが、実は動物というか、人間の生存そのものが危なくなっているのではないかと問いかける衝撃的な内容です。
昔は、世界中の農民が自家採取していた。よくできた野菜を選抜し、タネ採りを続けると、3年たつとその土地やその人の栽培方法にあった野菜に変化していく。
 長野の野沢菜の先祖は大阪の天王寺かぶであり、新潟のヤキナスのもとは宮崎の佐土原ナス。
日本のタネ屋の発祥は江戸時代で、栽培した野菜の中で一番よくできたものはタネ用に残し、二番目を家族で食べ、三番目以下を市場に出していた。
 江戸に種苗店が2件誕生したのは天禄年間(1688~1704年)のこと、フランスで種苗商会が創業したのも同じころ(1742年)。
東京オリンピックを契機にした高度成長時代以後、日本中の野菜の種が自家採取できず、毎年、種苗会社から買うしかないF1タネに変わってしまった。
F1は均一で揃いが良いから、指定産地の共選でで秀品率が高く、歩留まりがいい。固定種の多様性・個性は、販売するには邪魔になる。たとえば、固定種大根は収穫まで4ヵ月かかるのに対し、F1大根なら2ヵ月半でできる。
F1(一代雑種)タネの野菜からタネを採っても親と同じ野菜はできない。姿形がメチャクチャな異品種ばかりになる。
 F1種は、現在、雄性不稔(ゆうせいふねん)という花粉のできない突然変異の個体から作られることが多い。子孫を残せないミトコンドリア以上の植物ばかりになって、世界中の人々がこれを食べている。子孫を作れない植物ばかり食べ続けていて、動物に異常が現れないという保障はない・・・。
 F1は一代限りなので、毎年、交配された新しい種を買わなくてはいけない。種苗会社の大きな利益になる。
 F1種がどのように作られるか、その過程はブラックボックスになっている。種苗メーカーは製造過程の秘密を決して明かさない。タネの小売店にも明かしていない。
 ミツバチが消えていること、人間の男性の精子が減っていることと雄性不稔の関係を、誰かが証明したら、大騒ぎになるのは間違いない。野ネズミや野生のサルはF1野菜を食べないそうです。今のままF1野菜ばかりでいいのか、大いに心配になりました。
(2011年9月刊。1600円+税)

なぜシロクマは南極にいないのか

カテゴリー:生物

著者  デニス・マッカーシ   、 出版  化学同人   
 ガラパゴス島に生息する「ダーウィンフィンチ」は、適応放散の非常に分かりやすい例だ。元は一種だったフィンチが食材を争う必要性を最小限にするために、今では10種以上に分化している。
 鳥の求愛のさえずりは、適応放散を進めるもっとも重要な要素だ。フィンチのひなは求愛の歌を父親から習う。そしてメスは、自らが歌うことはないが、つがいの相手を選ぶときに、そのオスの歌が自分の親の歌と似ているかどうかを選ぶ基準にしている。ある集団が違う島に住みはじめると、その遺伝子だけでなく歌にもさまざまなバリエーションができはじめる。隔離された二つのグループの歌は急速に異なっていき、再び出会ったときには互いの集団の間では繁殖ができなくなっている。これはダーウィンの「種の起源」のきっかけとなるフィンチの違いです。
 性交は進化の非常に強力なエネルギーになる。二つの個体の遺伝子を混ぜあわせ、新たなやり方で分配する機会になるからだ。性交によりさらなる多様性が生まれ、その種は変化したり都合が悪かったりする環境に適応しやすくなる。
 太平洋の真ん中に住む鳥たちが飛ぶ能力を失うという傾向は、飛ぶことにどれほどのエネルギーが必要なのかをあらためて示してくれる。多くの種にとって島という環境は、進化の重要な刈り込みである働きを二つ減らしてくれる。捕食者と、食物をめぐる過酷な競争だ。その結果、島に住む鳥たちは、大陸に住む親戚がもし大陸にもっと楽な条件がそろっていたら、そうなるという姿をしている。つまり、島で進化し、やがて島の鳥の中で多数派になる飛べない側系統(胸筋が弱くなり、翼が小さくなる)は、大陸の個体群でも芽生えているが、大陸ではこうした小枝は結局、主にコヨーテやネコなどの捕食者によって切り落とされてしまう。キウイの祖先は、1000万年前に飛ぶ能力を失った。
 ニューギニアでは、それぞれの谷に別の部族がいた。それぞれの部族は別の言葉を話し、服装の習慣も子育ての傾向も、迷信も性道徳も、病気も遺伝的な異常も違っていた。そのバリエーションは非常に多く、ニューギニアには1000もの言語がある。ヨーロッパ全体でも50しかないのと対照的だ。隔離された部族に生まれた人々は、生まれた場所から15キロメートル以上離れた場所には行こうとしないことが多い。
 人間は地域によって遺伝的な差がない。これは注目すべきことだ。無作為に選んだ2匹のチンパンジーには、無作為に選んだ2人の人間の2倍の遺伝的な差異がある。我々人間は驚くほど単一な種なのである。
 化石の証拠によると、我々の最近の祖先である霊長類ホモ・エレクトゥスはアフリカで進化したが、170万年前にその中からユーラシア大陸に移住したものがいて、東南アジアまで到達した。
 ミトコンドリアの進化の樹からもっとも早く分岐した系統はみなアフリカで発見されているので、イブはアフリカ人だと考えられている。アフリカは人口が多く、原人が遺伝的に非常に多様だったため、個体が有効に適応するチャンスが多かったのだ。
 ユーラシア大陸のすべての地域の人類に、アフリカから70万年前と10万年前の2度にわたって遺伝子拡散が押し寄せ、あふれかえった。ヒト科動物の一番の特徴である、非情に大胆で冒険好きな性質と、身体的な移動能力が非常に高いことが組み合わさり、遺伝拡散を維持し、人類としての特質を広めた。
 人類は総合的な運動選手として第一級の能力をもっていて、ほかの脊椎動物をほとんど寄せつけない。これは人類の突出した均一性を維持する鍵となる能力だ。
 陸上での移動能力は非常に高く、放浪する本能があり、困難な障害に立ち向かい、新たな道の領域へと進んでいく大胆さがあるおかげで、長年、遺伝的に隔離された地域ができなかった。だから大きな差異が出ず、人類全体が同一になった。これほど広い地域で同一性を保っている生物は人類のほかに発見されていない。
 この指摘は私にとって極めて新鮮でした。そうなのか、人類って世界中どこでも一種しかいないから、混血しても何も問題が起きないし、それどころか良性遺伝することが多いんですね。このように、生物学は私たちが何者であるか教えてくれる大切な学問なんですね。
(2011年8月刊。2000円+税)

森の奥の巨神たち

カテゴリー:生物

著者   鈴木 直樹 、 出版   角川学芸出版
 タイの森に棲むアジアゾウの生態がロボットカメラも駆使して、よく撮られています。
 象って、家族愛がすごいんですね。みんなで赤ちゃん象を守り育てていくのです。17歳になったらオスの象は一人立ちします。自由気ままな一人暮らしを楽しむのです。でも、一人立ちしてすぐのころには、元いた母親の群れに戻って甘えることもあるといいますから、まるで人間と同じだなと、つい苦笑いしていました。
 著者によると、動物園で飼われている象と野生の象とでは、まったく別の生き物といってよいほど違う存在だということです。飼われている象は、本来持っている機能、能力、知識のかなりの部分を失っているということです。
 象を森の中に追いかけているうちに、彼らの持っている、人間ですら共感できるほどにはっきりした誇りや意思、さらには細やかな愛情に接することができた。
 象は、まったく人を恐れない動物である。象は、遠い昔から人間のやることをずっとみてきていて、その力を見切っているようである。親から子どもへ、「人間って、たいしたことない」というのを知識として教えている節がある。
 子象の写真がたくさんあります。ほのぼのとした光景です。子象が母親に甘え、子象がイタズラをして大人象たちから叱られているとしか思えない写真まであります。子象たち同士も仲良しで、一緒に遊びます。
 ロボットカメラを使って、人間では撮れない貴重な場面がいくつもある、楽しい象の写真集です。
(2011年10月刊。3200円+税)
同窓会の話の続きです。
私のクラスでは法曹界にすすんだのが私一人だけなのです。珍しいと思います。ちなみに駒場寮の6人部屋からは3人が法曹界にすすみました(私のほかは裁判官2人です)。
銀行員商社マンになった人が多数でした。長い人で累計21年、短い人でも6年くらい海外にいましたということでした。20年も海外にいて、日本のことがよく分からなくなったといいますが、そのとおりだろうなと思いました。団塊世代は、世代の人数比の割には社長が少ないとよく言われます。社長は50代前半ということが大会社でも珍しくはありません。今回は欠席でしたが、一人だけ大会社の現役の社長をつとめています。もう長いよね?と訊くと、いやまだ3年だよ、大会社の場合、社長は6年くらいはやるものだからというコメントが返ってきました。
参加者に現役の社長が何人もいました。大手商社から独立して社長になったり、子会社に移って社長になったりした人たちです。さすがに社長の貫禄がありました。それでも、副社長のときは気楽だったのに、社長となると大変だとこぼしていました。なるほど、そうなんでしょうね。(続く)

究極のクロマグロ完全養殖物語

カテゴリー:生物

著者   熊井 英水 、 出版   日本経済新聞出版社
 日本は年間50万トン以上のマグロを消費するマグロ大国である。
 世界ではクロマグロ、メバチ、キハダなど175万トンものマグロが漁獲されている。その
27%を日本が消費している。クロマグロに至っては、8割が日本人の胃袋におさまる。
 大トロが取れるのはクロマグロとミナミマグロだけ。世界のミナミマグロの9割を日本が消費している。
 クロマグロでは、342キロの北海道・戸井産のものが3249万円で競り落とされた。
 マグロはスズキ目サバ科マグロ属。近畿大学水産研究所がクロマグロの増養殖研究に本格的に取り組みはじめたのは1970年のこと。うへーっ、今から40年もの前のことなんですよね。私はまだ大学生でした。そして、マグロの完全養殖に成功するまで32年もかかってしまった。
 マグロの体、ヨコワには鱗が細かく、とにかく皮膚が弱い。少しでも擦れると、もうダメ。そして酸素不足にも弱い。クロマグロは、ハマチに比べて体重あたりの酸素要求量が3倍も大きい。すぐに酸欠死する。
 クロマグロは5歳で成熟し、産卵可能な個体となる。ふだんは雄雌の区別はほとんどつかないが、産卵期になるとオスは全身が黒化し、メスは腹側が銀色に輝き、測線のブルーがなお鮮やかに変わり、激しい追尾行動が始まる。
 1979年に初めて産卵に成功。1ヵ月間に160万個の卵が採取できた。次は稚魚に育てるのが課題となる。
 マグロは夕方から夜にかけて産卵する。そして11年間、産卵しなかった。1994年に12年ぶりに産卵をはじめた。しかし、今なおどうして産卵を再開したのかは分かっていない。
 マグロは稚魚の前で動くものを餌として攻撃する性質がある。生簀が狭すぎるとマグロは衝突死する。光に敏感なマグロは車のヘッドライトに驚き、暴走、激突死していた。
 マグロの力強い遊泳力が養殖において致命傷となった。大きい図体に似合わず、本当に臆病な魚でもある。マグロの激突死を避けるため、生簀を大きくし、そのうえ夜間電照をして明るいところで育てた。
 2009年に沖出しした稚魚は19万尾。そのうち4万尾がヨコワとなり、生存率20%を記録した。卵から計算しての生存率も0.5%となった。 
 クロマグロを育てるのに15倍の生餌が必要。つまり、200キロのマグロを育てるには、3トンもの餌が必要である。いま、人口配合飼料となっている。
 2004年9月、近大産のクロマグロの3尾を大阪・奈良の百貨店へ初出荷した。
 全身9割がトロのトロマグロ。大トロが100グラムあたり1800円、中トロが980円、赤身が680円。いずれも天然本マグロの元値でたちまち完売した。
 クロマグロは、どの魚よりも早く泳いで餌を捕獲できるように進化してきた。スピードは時速20~30キロで泳いでいて、絶対に止まらない。睡眠時には、何かしらのセンサーを働かせて障害物をよけている。
 マグロは生まれてから死ぬまで、一生泳ぎ続けている。口を開けたまま泳ぐことで、常に新鮮な水をエラを通して酸素を取り入れている。マグロの体は徹底的に泳ぎに特化しており、尾ビレは強い推進力を生み出すため、大変発達している。
 カツオはスズキ目サバ科であり、れっきとしたマグロの仲間である。
いやあ、マグロのことを改めて知ることが出来ました。すごいですね。ぜひ近大産のマグロを一度は食べてみたいものだと思いました。
(2011年7月刊。1600円+税)

世界をやりなおしても生命は生まれるか?

カテゴリー:生物

長沼 毅 朝日出版社
 10人の高校生との対話をベースにした本です。分かりやすい反面、とても難しいところがありました。
 10人の高校生の知的レベルの高さには驚かされます。モノを食べない動物がいる。ええっ、ウ、ウソでしょ・・・。ところが本当なんです。暗黒の海底に棲息するチューブワームです。
 チューブワームには消化器官、つまり口・胃腸・肛門がない。栄養は内部から摂る。目には見えない特殊な微生物が体内に棲んでいて、チューブワームに栄養をつくってくれている。体内微生物の名前は、イオウ酸化細菌、イオウ酸化バクテリアともいう。これは植物の光合成と同じことをしている。ただし、暗黒の海底なので、光の代わりに海底火山のエネルギーを利用する。そして、でんぷんを作っている。
 この共生微生物とチューブワームはバラバラに切り離すことができない。単独での培養に成功していない。ええーっ、世の中には、こんな生き物がいるのですね。
 地下生物圏に棲息する微生物は3兆トンから5兆トンいると推測される。これは、陸上・海洋生物圏の2倍以上にもなる。すなわち、地球の内部こそが巨大な生物圏なのである。そのポイントは海底火山、地球の内部がアクティブであること。
リンキアというヒトデがいる。カリフォルニアや沖縄の海にいるヒトデである。このリンキアというヒトデは、腕を切り離すと、その腕の断片からも全体が復活する。
 同じようにプラナリアも、切っても切っても再生する。ある研究者がプラナリアを100個以上の断片に切り刻んだところ、その全部が全体を再生した。
 もし太陽がなくなったら、海底火山から出てくる、あるいは地下世界に秘められた化学エネルギーだけしか使えなくなる。太陽からは1367ワット/㎡のエネルギーが来るのに対して、地球内部からは69ミリワットしかない。太陽からの方が2万倍も大きい。もし太陽がなくなったら、地表はもう荒れ果てた平らな世界になるかもしれない。
 生命とは、問題を解くことである。そして、この宇宙で唯一、問題を解くことのできるものが生物である。
 生物の極限の状態を考えることが出来る本でした。
(2011年7月刊。1600円+税)

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