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カテゴリー: 生物

小さな生きものの不思議

カテゴリー:生物

著者  皆越 ようせい 、 出版  平凡社
土壌動物の様子を大きく拡大された写真で知ることができます。
 みんな私の身近にいるものばかりなんです。それでも、よくぞ、こんなに接近して、拡大写真をとれたものだと驚嘆してしまいます。
 たとえば、我が家の庭にもたくさんいるダンゴムシ。すぐに身体を丸めてしまう、ほら、あの可愛い小さな虫のことです。危険がすぎたと思うと、やおら起きあがります。そのときの様子が、くっきり写真にとられています。本当に可愛いものです。ダンゴムシの脱皮の写真があります。
脱皮途中は、まるで無防備のため、アリや自分の仲間から食べられてしまう危険もある。脱皮も命がけなのだ。
 ダンゴムシは黒いものだけでなく、クリーム色に黄色を混ぜたもの、黒色に透明感のある白色、薄い黒い地色に茶褐色を入れたもの、果ては輝くブルーのものまでいる。
 ダンゴムシは、こけ類だけでなく、なんとコンクリートまでかじる。
 森の中にたくさんいるダニも大きな写真にとられています。私は先日、庭で雑草を刈っていたときに右手首をダニにかまれてしまいました。はじめの2、3日、放置していたら、赤くはれて、かゆみが止まりませんので、慌てて皮膚科に駆け込みました。もらった塗り薬のおかげで赤いはれとかゆみは治りましたが、2週間して、再びかゆくなってきたのには驚きました。それにしても、そんなに小さなダニを写真でとらえるなんて、信じがたい話です。
 クモの拡大写真は、この世のものとは思えない不気味さです。ムカデやヤスデの大きな写真も登場します。
 梅雨のころには、我が家にもたまに登場して、悲鳴があがります。不殺生を一応のモットーとしている私ですが、ムカデは殺しています。だって、怖いんですもの・・・。
 それにしても、こんな嫌われもののムカデやヤスデを写真にとる人がいるんですよね・・・。
 ナメクジそしてミミズの写真もあります。少々グロテスクですが、慣れたら可愛いばかりなのかもしれません。
(2013年4月刊。2400円+税)

犬から聞いた素敵な店

カテゴリー:生物

著者  山口 花 、 出版  東邦出版
私は犬派です。猫には、なんとなく、なじめません。
 犬派というのは、幼いころから犬が身近にいたからです。小学1年生のころ、優しい大型犬を飼っていたのですが、引っ越しのとき車のうしろから尾いてきていたのが、いつのまにかはぐれて見失ってしまったのでした。私が大泣きしたのは言うまでもありません。親を大いにうらんだものです。
 犬は、昔から人間にとって良き伴侶として過ごしてきました。
 この本は、人間にとっての犬の効果的な働きかけなどが報告されていて、うんうん、そうだよねと大いにうなずきながら読みすすめていきました。
 犬にも、人間のうな多彩な感情がある。人間は、それを知って、愛犬を人生最良のパートナーとして大切にするようになった。
 愛犬は、たがいに思いやり、ともに喜び、悲しみを分かちあいながら、人間に多くの幸せを与えてくれる、唯一無二のかけがえのない存在だ。
 いまや、愛犬は 、番犬でも飼い犬でもなく、大切な家族の一員として、それぞれの家庭にあたたかく迎え入れられている。
 黒い瞳の、やさしい目。じっと見つめられると、それだけで幸せな気分になってきます。子どもたちが幼いころに柴犬を飼っていました。不注意からフィラリアで死なせてしまいました。それ以来、犬は飼っていません。飼えないのが本当に残念です。
 14話の犬を中心とした心あたたまる短編集です。
(2013年9月刊。1300円+税)

アリの巣をめぐる冒険

カテゴリー:生物

著者  丸山 宗利 、 出版  東海大学出版会
アリそのものというより、アリと共生している昆虫の話です。アリを食べたり、アリの死骸を食べたり、いろんな昆虫がアリとともに生きているのですね。でも、昆虫ですからとても小さいのです。解剖するといっても、手先が器用じゃないとやれないでしょうね。
 米粒より小さい虫から交尾器を抜き出すのが解剖の作業になる。米粒に字を書くよりもずっと細かい作業である。
 しかし、そのミクロな世界を拡大すると、この世の生きものとはとても思えない奇妙奇天烈な姿と顔をした昆虫のオンパレードなのです。
 マンマルコガネは、カブトムシに似た形をしています。ツノゼミは奇妙な形です。奇想天外としか言いようがありません。
 オサムシの変てこりんな姿は、さすが我らが手塚治虫先生を思い出させるに値します。アリと共生するというより、アリを食べるアリもいるのですね。ヒメサスライアリです。アリを専門に食べるアリなのです。毒針を使って、自分よりはるかに大きなアリを仕留めます。
 この本の最後にある次の言葉が私の心に残りました。ああ、本当に好きでやっているんだな、いいね・・・と思いました。
 私は、これからもアリの巣を求めてあちこちをめぐりめぐるだろう。そして、新しい発見をするたびに、その感動を人に伝えたいと思っている。ああ、なんて楽しみなことだろうか。
 著者が引き続き元気に研究を続けられること、そしてその成果を広く伝えていただくことを期待しています。
(2013年1月刊。2000円+税)

野生のオランウータンを追いかけて

カテゴリー:生物

著者  金森 朝子 、 出版  東海大学出版会
学者って、本当にすごいです。ジャングルのなかに一日中すわって、はるか樹上のオランウータンの挙動を観察し続けるのです。しかも、オランウータンは、ほとんど一日じっとしているのです。退屈このうえない観察作業です。ところが、動かないなら動かない様子をじっと観察ノートに何分間隔で記帳し、何か食べたら、地上に落下してきたものを素早く拾ってビニール袋に保存する。退屈だからといって一瞬でも目を離すとそのスキに姿を見失い、その日のそれまでの苦労が水の泡という悲惨な結末も待っています。
 とてもとても、好きじゃなければやってられない作業です。しかも、うら若き女性がじっと密林にいるのですよ、汚れなんて気にすることもなく・・・。
 野生のオランウータンの日本人研究者は著者の前には一人だけしかいない。
 オランウータン研究者に共通している特徴は、忍耐強くておおらかで、かつ、人当たりがよく社会交渉に長けている人。効率やコストパフォーマンス、業績を重視しすぎる計算高いタイプには、まず勧めることができない。
 森の中でオランウータンを見つけるのは容易なことではない。早朝6時から、樹上にいるオランウータンを探す。オランウータンの行動データは、少なくとも6時間以上は連続して追跡しなければ、そのデータは使用価値がない。
 すごいですね。6時間の連続追跡そして観察ですよ。
オランウータンは他の霊長類に比べて圧倒的に活動量が少なく、樹上でじっとしているときは、まったく物音がしない。そのため、発見するのが非常に難しい。まして、単独生活をおくるオランウータンは、ほとんど音声を発することがない。
 では、どうやって探すのか。それは、匂い。オランウータンの糞尿の匂いで探す。
 いちど匂いを見つけると、オランウータンを脅かさないように、足音を最小限に小さくして、一歩一歩ゆっくり歩く。話などはせず、ゆっくり周囲を見渡し、森の中の物音を盛らさずに聞きとる。オランウータンの追跡調査は、恐ろしく地味で、忍耐のいる、きつい仕事だ。うんざりするほど長い時間、じっと観察するために、鉄の意志をもたねばならない。
 森の中で長時間すごすといっても、簡単なことではない。森の湿度は常に80%を超えるから、居心地は決してよくない。
一日中、樹上にいるオランウータンを見上げていると、首が痛くなる。地面に寝転がって観察をし続ける。オランウータンは、そのほとんど単独で活動し、他の個体との接触も非常に少ない。観察中には、特別なことはまず起きない、「退屈な生き物」である。
 しかし、このようにオランウータンは1頭のフランジオスを中心に、緩やかな「つながり」をもつ社会を形成している。直接に触れあうことはほとんどなくても、フランジオスが遠くから発するロングコントロールが聞こえると、オランウータンたちは採食の手を止めて、音声が聞こえた方向をじっとみつめている。オランウータンは、ある一定の距離を保ちつつも、お互いを識別し、位置関係も良く把握している。オランウータンは決して他個体に無関心ではなく、むしろ自分の周囲に自分の好まない相手と接触しないように、他個体がどこにいるのかをよく把握して距離をとっている。
 オランウータンの魅力の一つは、その高い知能である。オランウータンが熱帯の森の中で生きていくには、多様な果実の場所と時間を記憶し、次に食べられる果実を予測しながら稼働しなければならない。
 オランウータンは、食べ物の乏しい環境下で、さまざまな工夫をこらしながら生活している。オランウータンは、ほぼ決まった属の食物植物を集中して食べ、かつ、わずかではあるが、多様な属の植物を食べている。オランウータンがよく食べているイチジクは、繊維質が多く、栄養価は低い。イチジクは、多種多様な種類のものが、毎月、森のどこかで結実している。
 オランウータンは、ある植物を薬草として使っている。
いやはや、著者のような学者のおかげで、野生のオランウータンの生態を知ることができます。まことにありがたいことです。
(2013年5月刊。900円+税)

白い包哮

カテゴリー:生物

著者  長澤 幹 、 出版  未知谷
圧倒的迫力の本です。すごいものです。日本狼の生態と猟師(またぎ)の生態・生きざまがことこまやかに描写され、息つく間もなく話が展開していきます。
 主人公は、初めのうちは、猟師の岩作です。
 猟師(またぎ)は、春から秋にかけて農業に勤(いそ)しみ、その合間に山の恵みや薪の採集などに努める。冬から春にかけて白神山地の奥深い森林で数日間にわたって狩猟を行う。狩猟の対象は主にカモシカとクマだ。
 夏場、狩りの季節の前に、あらかじめ森林の中に猟師小屋と呼ばれる簡易な小屋をたて、ここに食料などを運び込んでおく。狩猟が始まること、ここを基地として寝泊まりしながら狩りを行う。この小屋は非常に簡易かつ粗末なものなので、長持ちはしない。風雪にさらされて壊れると、翌年はまた新しい小屋を作る。
猟師は数人で組をつくる。棟梁は絶対命令者で、猟師の頭をシカリと呼ぶ。
 猟犬は獲物を見つけたら行動を制限し、留めておくことが重要で、優秀な猟犬はこまめに動き、獲物と一定の距離を保ちながら威嚇し続けることのできる犬でなければならない。そのためには、無闇な闘争心よりは、獲物の変化に応じた怜悧な判断力と獲物を引き止める胆力が優先する。
秋田犬は闘犬として好まれたが、その前身は「秋田マタギ」と呼ばれ山岳狩猟犬であり、 見た目に堂々とした風格があって、日本犬らしさをもった犬である。もともと闘犬としての資質をもっており、力も強いが、我も強い。反面、落ち着きがあり、飼い主の言いつけを忠実に守るという性格がある。
 秋田犬はもともと頭のいい犬で、上手にしつければ飼い主思いのいい猟犬になる。
秋田犬のユキが、ひょんなことからオオカミの群れの一員となり、ボスオオカミとの仔をもうけます。ギンゲです。太陽の光が当たると、胴体が銀色に輝くので、銀毛(ギンゲ)と呼んで岩作の子・源兵とともに生活しています。いよいよ、この本の本当の主人公ギンゲの登場です。
 猟師の岩作と熊がたたかううちに、岩作が転落死してしまうのでした。
 残された家族はギンゲを飼う余裕などありません。ついに犬好きの山林地主に譲り渡します。そして、さらに別の和歌山に住む大好きの大地主へと・・・。
 そこを嵐の夜に脱走したギンゲは故郷の白神山地へ仲間のオオカミの群れとともに戻ってきます。
 とにかくスケールも大きいオオカミの話です。
 鹿児島への出張の一日、ずっと読んでいました。本当に充実した一日となりました。ありがとうございます。著者にお礼を申しあげます。
(2013年5月刊。2200円+税)

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