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カテゴリー: 生物

進化とは何か

カテゴリー:生物

著者  リチャード・ドーキンス 、 出版  早川書房
 ドーキンス博士は、日本でも講演したようです。ぜひ参加したかったと思わせる内容が誌上で再現された本です。生命の神秘が進化とは何かを通じて語られていきます。思わずぞくぞくするほど、エキサイティングな内容です。
人間の脳の神経細胞をすべてつなげると、地球を25周するほどの長さになる。そして、このつなげた神経細胞の端から端まで情報を送るとすると、なんと6年もかかってしまう。
神経系の括目すべき点は、細胞の数ではなく、むしろそのつながり方にあり、その複雑さは驚くべきもの。脳内の突起にあるコネクションを数えると200兆にもなる。
 血液の中で、酸素を運搬する分子であるヘモグロビンは、6×10の21乗もあり、それぞれがすべて非常に複雑な構造になっており、みなまったく同じ形をしていて、血液中で常に古くなったものは壊され、新しいものが毎秒400兆個の割合でつくられている。
 ツツハナバチは、メスのハチが小さな石を集めてきて、それらをまるでセメントで固めるように固めて、素晴らしい瓶をつくる。一つの瓶のように見えて、実は、下にまだ瓶が4つも隠れている。
 オーストラリアのコンパスシロアリがつくる塚は南北にそってつくられている。冷しい朝夕は太陽の光で温まり、日中の暑いときには光が頂点を照らすだけなので、それほど暑くならずにすむ。
 トックリバチやカマドドリが瓶や巣を効率よく作るのは、先を読んでのことではなく、むしろ過去の失敗から「自然選択」によって直接選択されてきた結果に過ぎない。
眼の進化に25万世代がかかった。といっても、地質学上の時間のスケールからすると、25万世代というのは、ほぼなきに等しいくらい小さい。25万世代というのは、100万年の4分の1ほどにしかならない。
 眼はたやすく進化する。なぜか・・・・。
 半分の眼でも、眼がないより有利。半分の眼は49%の眼よりも有利で、1%の眼でも眼がないよりは有利になる。
トビヘビは、木の上を這っているときには、普通のヘビ。しかし、いったん木を飛び出すと、体が横にひらべったくなって風に乗り、下のほうに飛んでいって、けがすることなく別の木に着陸する。これは、翼へ進化する第一歩だと考えていい。
ハチによる花粉媒介サービスは本当に大規模である。ドイツ国内だけでも、ひと夏にハチたちは、10兆もの花に花粉を媒介している。人間の食糧の30%は、ハチによる花粉媒介に頼っている。
脳は、人体が搭載するコンピューターである。目が脳に提供するのは、二次元情報である。逆さまの画像を、脳はなんとかして、三次元の情報に置きかえようとしている。
 そこに見える現実だと思っているものは、実は脳の中に構築されたモデルであり、脳内のシュミレーションにすぎない。脳内につぎ込まれた情報は、生のままで見られるというのではなく、脳内モデルを更新していくために使われる。つまり、われわれが現実として把握しているものは、実はコンピューターゲームの世界のように、人間の頭のなかでつくられた仮想現実(ヴァーチカル・リアリティ)なのである。
 とても面白い生物の教科書です。一読をおすすめします。
(2014年12月刊。1700円+税)

イチョウ、奇跡の2億年史

カテゴリー:生物

著者  ピータークレイン 、 出版  河出書房新社
 日本中どこにでも見かけるイチョウですが、実は絶滅寸前にまでなった樹木だといいます。2億年も生きていたのに絶滅寸前になったとは・・・。そして、中国に細々と生き残っていたイチョウが日本に渡来してきて、そこからヨーロッパに行き、現在のように世界中に再び拡散して根付いているというのです。不思議な長命の木なのですね。・・・。
 種子植物のうち、花粉管のなかで精子を形成するのはイチョウとソテツしかない。イチョウは古い生殖様式をそのまま残した驚異の植物である。
イチョウは、かつて北半球の全域で見られたが、気候変動のために中国南部の山間地を除いて絶滅してしまった。そして、800年前ころに韓国や日本に広まった。寺院の庭などに植えられた。そして、17世紀後半に、日本でヨーロッパ人が見出すと、わずか数十年でヨーロッパ中にひろまり、やがて全世界に迫出していった。イチョウは大気汚染にも害虫にも病気にも強い木だからである。
 イチョウは、植物としてはかなりの変わり者で、現生する近緑種が存在しない。
イチョウの葉は、他の木の葉と比べると頑丈で、そう簡単には腐食しない。
 イチョウの巨木に何枚の葉があるか、それを数えたアメリカ人がいる。それによると、10万枚近かった。巨木には30万枚から50万枚。もっと古い巨木だと100万枚になるかもしれない。
イチョウは、雄の個体と雌の個体とが別々に存在している。一本のイチョウの雄木からでる花粉粒の量は驚くほど多い。1本の木が1年でつくり出す花粉の生産量は1兆個にもなる。その花粉粒が雄木で発生中の胚珠にたどり着く確率を考えると、それくらいは必要になるのだ。
 イチョウは、冬のかなりの低温や夏のかなりの高温をとりあえず短期間なら耐え抜くことができる。シカゴは冬にマイナス33度C、夏に42度Cにまでなるが、そこでもイチョウは平気で育つ。
 現在、イチョウは世界中で見ることができるが、それは基本的にヒトが植えたもの。
イチョウは、世界中に飢えられている街路樹の代表だ。イチョウには健康増進効果があるとされている。
イチョウの精子を発見したのは、平瀬作五郎という日本人であり、明治29年(1896年)のことだった。同年に、ソテツの精子も発見されている。
黄変した見事な街路樹は、たしかに日本全国にありますよね。昔みた東大本郷のイチョウ並木も壮観でした。イチョウのことがよく分かる本です。
(2014年9月刊。3500円+税)

ねこの秘密

カテゴリー:生物

著者  山根 明弘 、 出版  文春新書
 著者は、20年前、大学院生として、玄界灘の「相の島」(あいのしま)でノラネコ200匹を観察していたそうです。200匹すべてに名前をつけて、7年間、個体識別して観察していたというのです。学者って、本当に信じられないほど根気のいる仕事なんですね。
 24時間の定点観察もしています。食事やトイレはどうしていたんでしょうね。眠かったことでしょう・・・。徹夜してネコを観察するなんて、考えただけでも気が遠くなってしまいます。
それにしても、200匹のネコをよくも識別できたものです。もちろん、写真をとって、特徴をメモしたカルテのようなものを作成していました。でも、よほど注意してみていないと、見間違いますよね。
ネコが人間のそばで生活するようになったのは1万年前。人間にとっては、ネズミ駆除の目的からだった。
 ネコの祖先は、リビアヤマネコ。猫は、人間が時間をかけてつくり出した、犬や豚、牛や鳥と同じ「家畜」のひとつである。
 ネコと人類との最初の出会いの場所はメソポタミアと考えられている。古代エジプトではない。古代エジプトでは、ネコがペットとして飼われ、猫が死んだら家族全員が眉をそって喪に服した。猫をミイラとし、地下の猫専用の共同墓地に安置した。そして、人間が故意でなくても猫を殺してしまったら、死刑相当と考えられていた。
 うへーっ、ホ、ホントでしょうか・・・。
日本には、1400年前の飛鳥時代には猫がいた。
 ネコ科の動物は、排他的で単独の生活を基本としているが、猫はその例外として、集団で生活することもある。猫は血のつながったメス同士で、共同保育をすることがある。
 ネコ科動物は自分に必要なことはすべて自分で決定し、単独で行動しなければいけない。相手の顔色をうかがって行動する必要はない。
 猫は爆発的な瞬発力を発揮できる反面、それを持続させることは出来ない身体の構造になっている。
 ノラネコは、餌をくれる人が、あるいは敵意をもった人以外は、まったく関心がない。
 自由気ままに動きまわるネコの繁殖を人間がコントロールするのは至難の業である。
ノラネコでは、5匹に1匹しか1歳まで生き残ることが出来ない。ノラネコの平均寿命は3年から5年。飼い猫の3分の1ほどでしかない。非常に短い生涯を、命を燃やしながら、ドラマチックに、太く短く駆け抜けるのがノラネコの一生。
 「ねこの集会」とは、ひと気のない夜の公園などで、ノラネコが何匹も集まり、何をするでもなく、静かにじっと時間を過ごす現象。
 びっくりしますね。猫が夜に集まって、無言の集会をしているとは・・・。
 猫・ねこ・ネコについて知りたい人には、絶対おすすめの本です。
(2014年10月刊。770円+税)

ジュゴンの上手なつかまえ方

カテゴリー:生物

著者  市川 光太郎 、 出版  岩波科学ライブラリー
 沖縄の辺野古の海にも棲んでいるジュゴン。そんなところに基地をつくるなんて、とんでもない暴挙です。
 ジュゴンは人魚のモデル。ジュゴンは基本的にゆっくり泳ぐ。そして、ジュゴンは歌う。しかも、小鳥のような可愛らしい声で。
 ジュゴンは、一生を海で過ごす哺乳類のなかでは唯一の草食性動物である。
 ジュゴンは、一日に体重の10%の量の海草を食べる。日本の鳥羽水族館で飼育されているジュゴンは一日に30キロのエサを食べる。
 ジュゴンが食べた海藻がウンチになって出てくるまでに一週間かかる。
 ジュゴンの天敵はサメ。
 ジュゴンは、旧約聖書にも登場する。
 かつてジュゴンは、八重山諸島を中心に広く分布していた。
 沖縄の名護市の海には、オスのジュゴンが一頭だけ生息している。そして、反対側の古宇利島にはメスが一頭の子どもと一緒に生活している。
 ジュゴンは「ピヨピヨ」と鳴くことが多い。
 ジュゴンの鳴き声を10年間ずっと研究しているというのです。学者って、本当に忍耐強くないと出来ませんね。でも、そのおかげで世界のことが分かるのです。感謝、感謝です。
(2014年8月刊。1300円+税)

ほとんど想像されない奇妙な生き物たち

カテゴリー:生物

著者  カスパー・ヘンダーソン 、 出版  エクス・ナレッジ
 この長いタイトルの本は正式には、「ほとんど想像すらされない奇妙な生き物たちの記録」です。そのタイトルどおり、いろんな不思議な生き物たちが登場します。
 トップバッターは、アホロートル。かつて、メキシコの先住民にとっては重要な食材だったが、今では、野生のアホロートルは絶滅の危機に直面している。そして、最大の特徴は、その手足は何度切断されようが、傷跡も残さず繰り返し再生することが可能だ。
 その姿形は異様です。まぶたのないビーズのような目。首から突き出た柔らかいサンゴのようなエラ。トカゲに似た身体から生えた優美な手足に小さな指。オタマジャクシのような尻尾。大きな頭と、いつも微笑んでいるような顔、白いピンク色の皮膚は、気味悪いほど人間そっくり。まるで異星人のようだ。
 オニヒトデは、口が下にあって、肛門が上にある。これは、海底に沈殿している餌を食べるには理想的。
人間とイルカは共同で漁をする。この慣習には、非常に長い歴史がある。
 オーストラリア南東のウルンジェリ族はイルカを聖なるものと考えていたので、イルカを殺すことは禁じられ、漁のときもイルカの餌となる魚はとらなかった。
 イルカは、ボノボと同じくらい性行動が盛んだ。一年中、求愛や性行為を行い、前戯も多く、相手をこすったり、愛撫したり、お互いの性器に口や鼻をすり寄せたりする。
 オスもメスも性器の開口部をもっているため、両方ともに挿入が可能であり、ペニスや鼻先、下あご、背びれ、胸びれ、尾びれなど、すべてが使われる。ハシナガイルカは、10匹以上のオスやメスが一緒になって乱交することがある。イルカは、ハンターとして冷酷かつ優秀だ。
 イルカは互いに協力し、コミュニケーションをとることに長けた生物だ。
 イルカは噴気孔から空気嚢に空気を吹き込み、1000分の1秒にもみたないクリック音を発する。クリック音のパルスや周波数には幅があり、ドアがきしむ音にたとえられる低周波のクリック音は、対象物をざっと把握したり、遠くにあるものを認識したりするときに使われる。より細部を把握するときには、高音のブザーのような高い周波数のクリック音を出す。状況に応じて、イルカは1秒あたり8回から2000回のクリック音を出す。
 人間にはカチカチ、キーキーとしか聞こえないこうした音を利用して、イルカは何キロメートルも離れた場所にある物体を認識している。この音は、数メートル先にいる人間やイルカの皮膚を突き抜け、体内で鼓動する心臓や子宮内の胎児の動きを「見る」こともできる。人間の女性が妊娠していることを、本人よりも前にイルカが気づき、妊娠したイルカに対するのと同じように、その女性を扱った例もある。
 アカゲザルに対して行われた実験では、ごほうびがもらえるレバーを引くと、ほかのサルに苦痛を与えることを目にしたサルたちが、頑としてレバーを引くことを拒否した。
 ミツオシエは、蜜ろうが大好物だけど、蜂の巣を第三者にこわしてもらう。目をつけた助っ人の近くの枝に止まり、独特なさえずりを何度も繰り返す。相手の注意を引くことができたら、蜂の巣の方向に飛びつつ、道すがら頻繁に舞い降りては薄い色の尾羽をちらつかせ、相手がちゃんと見ているか確認しながら誘導する。相手がついてこないようなら、また元の場所に戻ってやり直す。そして蜂の巣に到着すると、最初のさえずりとは明らかに違う声で鳴き、アナグマが人間が巣を壊してハチミツを取り、後に蜜ろうを残してくれるのを気長に待つ。
 ウミガメは、かなり早い時代に陸地から再び海に戻り、それ以来、もっとも長く存続している種の一つだ。陸生だった祖先は、恐竜の時代が始まった2億2500万年前に出現した。
 1980年代初め、太平洋に面したメキシコ浜辺に7万5000匹のオスガメのメスが営巣していた。今では、200~300匹にまで減ってしまった。
 タコは、少なくとも犬と同じくらい賢い。シンボルマークを見分けることに関しては、タコには人間の3歳児か4歳児くらいの能力がある。そして、タコは遊ぶこともある。
 タコは、身体の色や質感を自在に変えられる。類いまれなカモフラージュ能力がある。
 タコは、顔を赤らめるどころか、好みに応じてどんな色にも変化できる。身体にある何万という色素胞を開いたり閉じたりして、周囲の環境の微妙な変化に合わせて、その配列を組織することができる。同時に、岩やサンゴ、そのほかの物体に擬態するべき、皮膚の表面を立体的に収縮させたりねじまげたりもできる。
 さまざまな奇妙な生き物がいますが、なんといっても、その最大のものは人間でしょうね。
 もちろん、この本も扱っています。
(2014年10月刊。2200円+税)

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