(霧山昴)
著者 畠 佐代子 、 出版 くもん出版
河原の草に巣をつくって生活している愛らしいネズミの話です。
苦労して探し求めたカヤネズミの巣が大雨のあとの洪水で流されてしまったり、河川管理事務所の除草作業で一掃されたり、小動物を保護するのも大変です。
カヤネズミは日本で一番小さなネズミ。6センチの大きさなので、大人の親指くらい。体重は8グラム、500円玉の重さ。それほど体が小さくて軽いので、草の上に乗れてしまう。
目は黒いビーズのようにつぶらで、とても可愛らしい顔をしている。
背中はオレンジ色の毛、これが冬になると黒っぽい茶色になる。カヤネズミの骨は鳥と同じくらいに軽く、体重の5%しかない。ちなみに人間の骨は体重の15%。
カヤネズミの主食はイネ科の植物の小さな種やバッタなどの昆虫。
カヤネズミの巣は、茎についたままの葉を編んでつくる。しっかり植物の本体につくっている。教えられるというより、本能で草を編んで巣をつくるのです。休憩用の巣をつくるのに2時間、子育て用の巣だと5時間かけてつくる。
カヤネズミは、巣づくりから子どもの世話までの全部をメスがやる。オスは子育てにはまったくかかわらない。
カヤネズミは3個から5個の巣をもっていて、ときどき引っ越す。生まれて2週間で、子どもは乳を飲まなくなり、生後3週間までに一人だちし、2ヶ月で大人になる。カヤネズミの寿命は1年ほど。
カヤネズミの天敵はヘビ。ヘビに狙われたら子どもたちは一気に呑みこまれて全滅してしまう。
今、カヤネズミは日本中からだんだん姿を消している。開発のために日本の草地が減っている。100年前の明治時代の日本は、面積の13%が草地だった。それが、今や、わずかに0.9%、そして、減り続けている。
カヤネズミは夜行性。昼間の観察は難しい。筑後川にもカヤネズミはいます。いちど、ぜひ出会ってみたいカヤネズミです。写真がたくさんあって、楽しくカヤネズミの生態を知ることができました。
(2015年9月刊。1400円+税)
2015年12月7日


