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カテゴリー: 生物

にっぽんスズメしぐさ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 中野 さとる 、 出版  カンゼン
夕方になると、駅前の街路樹でスズメの集団がかまびすしいですよね。大勢のスズメたちが、あっちうろうろ、こっちうろうろして、鳴きかわしています。いったいぜんたい、何を話しているのでしょうか・・・。私は、ぜひぜひ、その会話の中味を知りたいです。
この本は、日本のスズメの生態を写真で紹介するシリーズ第二作。
スズメは、3月、桜の花が咲くころ、メスは卵を産みはじめる。産んだ卵をすぐに温めるのではなく、すべての卵を産み終えてから抱卵をはじめる。これは産卵順で成長に差が出ないように、卵のかえるタイミングをそろえるため。卵のほうも、温められてから成長スイッチが入るようになっている。
抱卵して2週間ほどでヒナが誕生する。そして、親は毎日せっせとエサを運ぶ。1日300回、2週間で4200回、親はエサをヒナに運ぶ。そして、ヒナのフンを外へ放り出して、巣の中を清潔にたもつ。
巣だってしばらくの間も、エサをとるのが苦手な幼鳥は親鳥がエサを与えて、ケアする。
その後、親は次の子育てに入り、8月から9月にかけて2回、多いときには3回も子育てする。そんなにヒナの子育てしたら、スズメが爆発的に増えるはず。ところが、現実には、そんなにスズメは増えていない。なぜか・・・。
野生のスズメの平均寿命は1年3ヶ月。自然のなかでは仔スズメは、ほとんどが生きのびれない。生き残った、ほんの一部が子孫を担うことで命がつながっている。
カラスやツミがスズメのヒナを襲う。
亡くなった作家の半村良は、スズメが大好きで、庭に来る100羽のスズメの全部に名前をつけて個体識別していた。
山の中で道に迷ったらスズメを探したらよい。なぜか・・・。日本のスズメは、人の暮らしの周囲にしかいないので、山の中でスズメに会ったら、人家が近くにあることを意味しているからだ・・・。
スズメは、水浴びと砂浴びの両方をやる。そして、不思議なことに水浴びのほうが先。そのあと砂浴びをする。
スズメの生態をよくとらえた写真集です。
(2017年5月刊。1400円+税)

山と河が僕の仕事場2

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 牧 浩之 、 出版  フライの雑誌社
神奈川県川崎市で生まれ育った都会っ子が宮崎県高原町で山の生活を謳歌しているという、読んで、また見て楽しい、写真たっぷりの体験記(レポート)です。
フライフッシングの毛鉤(けばり)づくりの仕事に始まり、山でシカやイノシシそしてカモなどを捕まえる猟師となり、果てはシイタケ栽培やら農業にまで手を広げていくのです。
毎日が、生き物を相手としていますので、予定が狂わされることも多いようですが、次第にネットワークが広がっていく様子は頼もしくもあります。
著者はよほど器用な人なのでしょうね。
フライフッシング用の毛鉤をつくっていく過程が写真でも紹介されていますし、シカやイノシシを解体・精肉化していく様子も見事です。
九州は宮崎の山の中で住むのって、虫やら蛇やらいて、大変じゃないかと思いますが、地元出身の気丈夫な奥様とうまく折りあっていきながら、毎日、楽しそうです。
マガモの尻に生えている羽はCDC(フランス語です)と呼ばれる特別の羽。フライフィッシングにはもってこいの羽だ。
罠にかかったメスジカは最後まで逃げようとするが、オスジカは、意を決すると、角で人間に向かってくる。ええって、こんな違いがあるのですね・・・。
シカと同じようにイノシシも罠にかかっても危険なようです。うかつに近づくと踏み倒されそうです。
霧島山麓には、1平方キロメートルに50頭ものシカが生息するとみられている。
シカやイノシシが村人の畑を襲い、日常的に被害を与えているのです。ですから、人間と共存するためには、一定の駆除は必要だとのことです。現実は、単純に野生動物を保護しましょうとはいかないのですね・・・。
著者は猟師になってからアルコールを絶っているとのこと(なぜなのか、理由は書いてありません)。代わりに奥様がビール党としてがんばっているようです。
読んで楽しい、大自然の中で楽しく生きているという素晴らしいレポートです。前の本とあわせて、一読をおすすめします。
(2017年2月刊。1600円+税)

樹木たちの知られざる生活

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ペーター・ヴォールレーベン 、 出版  早川書房
森のなかでじっと立っているだけのように見える木が、実は、お互い同士で交信し、支えあっているし、世代交代によって場所を移動しているというのです。さすがは森林管理官だけあって、樹木の生態がよく語られている本です。
木は自分を表現する手段をもっている。それが芳香物質、つまり香りだ。
葉をキリンに食べられたアカシアは、災害が近づいていることを周囲の仲間に知らせるために、警報ガス(エチレン)を発散する。警告された木は、いざというときのために有毒物質を準備しはじめる。そして、それを知っているキリンは、風に逆らって警告の届かない木のところまで歩いていく。
樹木は、どんな害虫が自分を脅かしているのか、判断できる。
樹木には、自分で自分を守る力をもっている。たとえばナラは、苦くて毒性のあるタンニンを樹皮と葉に送り込むことができる。
密集しているブナ林のほうが生産性は高い。密集しているほうが木が健康に育つ。養分や水分をよりうまく分配できるから、どの木もしっかりと生長する。
一本のブナは5年ごとに少なくとも3万の実を落とす。立っている場所の光の量にもよるが、樹齢80年から150年で繁殖できるようになる。寿命を400年としたとき、その木は少なくとも60回ほど受精し、180万個の実をつける。そして、そのうち成熟した木に育つは、たった一本のみ。残りの種や苗は、動物に食べられたり、菌に分解されたりして消えてしまう。
木が若いころにゆっくり生長するのは、長生きするために必要な条件だ。ゆっくり生長するおかげで、内部の細胞がとても細かく、空気をほとんど含まない。おかげで柔軟性が高く、嵐が吹いても折れにくい。抵抗力も強いので、若い木が菌類に感染することもほとんどなく、少しくらい傷がついても、皮がすぐにふさいでしまうので、腐らない。
樹木は助けあいが大好きで、社会をとても大切にする生き物だ。仲間のいない森の外に出ただけで、ブナは生きていけなくなる。
うひゃあ、本当なんですか・・・。ちっとも知りませんでしたよ。
中央ヨーロッパには、もはや本当の意味での原生林は存在しない。もっとも古い森林でも、200歳から300歳だ。とても老木とは言えない。木は年をとればとるほど、生長が早くなる。樹木の世界では、年齢と弱さは比例しない。それどころか、年をとるごとに若々しく、力強くなる。若い木より老木のほうが、はるかに生産的だ・・・。
広葉樹は、1億年前に出現した。針葉樹は、すでに1億7000万年前に生まれていた。
木は昼の長さと気温の組み合せで、それを判断する。
マツ林のなかの空気は、針葉が発するフィトンチッドの働きで、ほぼ無菌である。クルミの木の下にいると、蚊に刺される確率が格段に低くなる。
木について、思う存分に知ることの出来る、知的刺激にみちた本です。
(2017年6月刊。1600円+税)
これはまったく私の独断と偏見なのですが、裁判官のなかには騙されたほうが悪いという考えにこり固まっている人が少なくありません。騙し方はいろいろな形態があるわけですが、型通りの法律論をふりまわして切って捨てようとします。そこには弱者に思いを寄せるという発想が全然みられません。悲しくなります。もっと柔軟な発想で社会の真実を見きわめて、適正妥当な解決を図るという発想を裁判官はもってほしいと思います。
よくしゃべる若手裁判官なのですが、社会を見る目が足りない気がしてなりません。

ウニがすごい、バッタもすごい

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 本川 達雄 、 出版  中公新書
生物の生きていく仕組みを解明すると、大自然の奥深さをまざまざと実感させられます。
サンゴは動物。ただし、体内に大量の植物を共生させていて、藻類との共生が、サンゴ礁をつくり出している。
サンゴは、食べて出てくる排泄物も、呼吸で出てくる二酸化炭素も褐虫藻がもらってくれるため、排出物の処理は気にしなくていい。褐虫藻が光合成する際に排出した酸素を、サンゴは細胞内で直接もらい受けることができている。
結局、サンゴは、褐虫藻と共生しているおかげで、食う心配がほぼなくなり、トイレの心配もなく、人口呼吸器を体内に備えたようなものだから、無理に息をする必要もない。
昆虫は、体の部分ごとに、必要に応じてクチクラの硬さを調節している。
昆虫の大きな特徴は飛べること。昆虫の羽は厚さ0.1ミリほど。羽を生やして飛べるおかげで、昆虫は餌を探すにも敵から逃れるにも、また、子孫を広くばらまくうえでも、きわめて有利になった。
同じ距離を行くのに必要なエネルギーは、飛行のほうが歩行より少なくてすむ。飛ぶことはエネルギーの節約になる。昆虫は、飛べたことから、被子植物との共進化可能にし、食物供給源を確保でき、かつ種類の増大につながった。
多くの飛ぶ昆虫は、幼虫時代は植物の葉を食べ、成虫は蜜や樹液を吸う。
ナメクジは、カタツムリが殻を失ったもの。ナメクジは、昼は地中という土で守られ、かつ湿り気のある環境に身をひそめ、夜になって湿り気の多い地表近くで活動するため、殻がなくても問題がないのだろう。
ナマコは、自分のまわりの砂を触手でごそっとつかんでは口に押し込む。つまり、砂を食べている。しかし、砂は鉱物なので、栄養にはならない。ナマコが食べて栄養にしているのは、砂粒の間に入っている有機物や砂粒の表面に生えているバイオフィルム。
ナマコは、じっと動かないため、摂取エネルギーの量が極端に少なくてもすむので、砂でも生活できる。ということは、ナマコは砂の上に住んでいるから、食べものの上にいることになる。砂はほかの動物たちは見向きもしないので、競争相手はおらず食べ放題。広大なお菓子の家をナマコが独占しているようなものだと言える。
ナマコは動くといっても砂を食べる場所を少し動くくらいなので筋肉は少なくてすむ。身体の大部分は身を守る皮ばかり。皮を食べても栄養にはならないので、ナマコを狙う捕食者は減っていき、ますますナマコは安全になる。食う心配がなく、食われる心配ない。これは天国のような生活だ・・・。
ナマコは、半分にすれば、二匹になる。
ヒトデは、自腕一本から残りの腕すべてを再生するのがいる。
ウニは、殻を割って内臓を取り除いても、殻の破片が数日間は、もそもそとはいまわっている。これって、不思議ですよね・・・。
さまざまな生物の生きる実態と仕組みを平易に解き明かす貴重な新書です。
(2017年4月刊。840円+税)

毒々生物の奇妙な進化

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 クリスティー・ウィルコックス 、 出版  文芸春秋
生物の毒を研究している某学者は、26種類の毒ヘビに咬まれ、23回も骨折し、3尾のスティングレイ類と2匹のムカデ、そして1匹のサソリの毒液に触れた。これで、よくも死ななかったものです。私は学者にならなくて良かった・・・。
咬みつく種は、毒液を主に攻撃のために用いる。刺す方の種は防衛のために用いる。もちろん、それぞれ例外はある。サソリやクラゲは、針で刺して餌となる生物を殺すし、スローリスは身を守るために相手を咬む。そして、クモは、しばしば毒液を両方の目的のために使い、必要に応じて攻撃から防衛へと切り替える。
夜行性の毒ヘビに咬まれたときは、比較的痛みが少ないため、その場では大丈夫だと思い込みやすい。そして医師の介護と抗血清がすぐに必要だったと気がつくのは、何時間もたって、徐々に麻痺が進行し、呼吸が困難になってからのこと。そのときには手遅れになっている。
アンボイナガイの致死率は70%。一気に麻痺が進行して、数分のうちに死んでしまう。
毒ヘビに対して、もっとも強い耐性をもつのは、ヘビを日常的に食べる動物たち。ミツアナグマ、マングース、オポッサム、ハリネズミなど・・・。
毒ヘビが毒液をつくることの代謝コストはきわめて大きい。
アメリカで1年間の毒ヘビによる8000件の咬傷事件で、そのほとんどは、ガラガラヘビによるもの。ガラガラヘビは、自分の防御のためしか人間を咬まない。人間は身体が大きいから、すぐに死ぬこともない。
毒々生物というのは、人間にとって毒であると同時に、生命を助ける薬にもなる存在のようです。そこがこの世の面白いところですね・・・。
(2017年6月刊。1600円+税)

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