法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 生物

目立ちたがり屋の鳥たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  江口 和洋 、 出版  東海大学出版部
 タイトルから想像される内容とは異なり、鳥について、多角的なアプローチがなされている本です。
 これまで鳥類は嗅覚が鋭敏ではないとされてきたが、ミズナギドリ類などの海鳥などでは、においが信号として重要な役目を果たしていることが最近わかった。ミズナギドリ類は、個体ごとに独特のにおいをもち、このにおいをもとに、視覚のきかない夜間でも、つがい相手のいる自分の巣穴の位置をつきとめることができる。
 地中海沿岸にいるクロサバクヒタキはスズメより小さい鳥。オスは巣の近くに多くの小石を運ぶ。多くの小石を運んだオスとつがいになったメスは早く産卵を開始し、産卵数が多い傾向があり、小石を運ぶ量の少ないオスのつがいより多くのヒナが巣立つ。つまり、メスはオスが運ぶ小石の量でオスの質を評価し、早く繁殖を始めて、より多くの卵を産むことで、つがい形成後の繁殖投資を高めている。また、小石を多く運ぶオスは、ヒナの誕生したあと、ヒナへの給餌回数が多い、良い父親でもある。
 ホシムクドリでは、長い歌をさえずるオスほど早くメスを獲得し、また、より多くのメスを獲得する。
 オオガラは、長い歌をさえずるオスは、つがい外交尾(浮気のこと)に成功することが多く、自身のつがいメスが、つがい外交尾をすることが少ない傾向にある。
 カラスはダチョウの卵の殻を割ることができない。そこで、殻を割っているハゲワシにつきまとい、殻が割れた瞬間に集団で攻撃し強奪する。いやはや、すごい知能犯集団です。
 ヨーロッパのカササギは、日本と同じく小枝をつかって大きな巣をつくる。少し異なるのは、日本のカササギは例外なく立派な屋根つきのドーム状の巣をつくるけれど、ヨーロッパのカササギは、屋根のない巣をつくるものもいる。屋根があると、捕食者のカラスが入りにくく、卵やヒナが捕食される危険を小さくできる。
 カササギは巣をつくるのに費やす時間が短く、早く巣をつくるオスのつがい相手のメスは多くの卵を産んだ。カササギのメスは、巣や造巣行動を手がかりに、オスの造巣能力、ひいてはオスの資質を評価して、能力の高いオスとつがった場合は、産卵数がふえる。
 闘争能力の高い個体は、冬期の餌の確保や繁殖期のなわばり占有を通じて適応度を高めている。これに対して闘争能力に劣る個体は、頭をつかって別の道を探る方向に進んでいる。
 鳥にもいろんな鳥がいて、それぞれ適応・発達していることがよく分かる本です。
(2017年4月刊。2800円+税)

日本犬の誕生

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  志村 真幸 、 出版  勉誠出版
 私はイヌ派です。幼いころから我が家には犬がいました。忠犬ハチ公の話は泣けてきます。ネコは飼ったことがありませんし、ネコパンチなんて敬遠したいです。
 犬は形態はオオカミに近いが、生態的な側面からするとジャッカルが近い。オオカミは人家に近づかず馴致(じゅんち)しにくいが、ジャッカルは村落周辺に集まり、容易に人間に馴(な)れる。
 現在、日本に988万頭の犬が飼育されている(2016年度)。このうち秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬という日本犬は100万頭。
昭和の初めころ、平岩米吉は自由ヶ丘に広大な庭をもつ家をもっていて、そこでオオカミを飼っていた。朝鮮半島産6頭、満州産1頭、モンゴル産2頭。
ニホンオオカミは明治38年に絶滅してしまった。
狆(チン)が江戸時代に渡来してきたという説は誤っていて、平安時代から日本で飼育されてきたという説が今では有力。
明治末に日本犬の危機が自覚され、大正に入って日本犬の保有運動が始まった。秋田犬は、東北のマタギ犬が祖先だとされている。ハチ公によって秋田犬は忠犬としてのイメージを得て人気を高めた。
私がフランスに行ってロアール河のシャトーホテルのレストランで夕食をとっていると、大きな犬がテーブルの下におとなしく寝そべっていました。マダムは私が日本人だと知ると、「この犬は秋田犬なのよ、すばらしいわ」と絶賛しました。私も、少しだけ鼻を高くしてしまいました。
この秋田犬は戦争中は軍用犬として献納されたりして、終戦時にはわずか十数頭しかいなかった。ところが、日本に駐留したアメリカ兵士がアメリカへ持ち帰ってアメリカで人気犬種となり、見直されて、日本でも急速に人気を回復し、昭和47年には4万頭をこえるまでになった。
昭和の初めまで、日本犬が蓄犬商で扱われることはなかった。その後、日本犬といえども、お金を払って購入するものという意識が生まれた。
日本犬は軍用犬に不向きだった。特定の主人には忠実だが、別の操継者には従わない。しかし、戦場では誰が指揮官になるか分からない。ひとりの主の命令しか聞かないようでは、戦闘現場では役に立たない。なーるほど、そういうこともあるんですね・・・。
柴犬をふくむ日本犬を見直してしまいました。ちなみに、私の家ではスピッツと柴犬を飼いました。
(2017年3月刊。2400円+税)

したたかな魚たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  松浦 啓一 、 出版  角川新書
 脊椎動物のなかで体の軸が地球表面に対して垂直にあっているのは人間だけ。他のすべての脊椎動物の体軸は地球表面と平行になっている。
動物学では、「縦」とは、体軸にそった方向のことであり、「横」とは体軸に対して垂直となる方向のこと。
 脊椎動物の全種類は6万種。魚の種類は3万2000種。脊椎動物の半数以上を占めている。日本には4200種がいる。
砂地の海底にミステリーサークルをつくる魚が発見された。アマミホシゾラフグのオスである。
 私が唯一欠かさず見ているNHKテレビ番組「ダーウィンが来た」(録画で見ています)で紹介されました。
魚の新種が今も次々に見つかっていて、日本では年に10種ほど。60年間では491種。オーストラリア740種、中国202種。日本は多い。
リュウグウノツカイは体長が8メートルにもなる。
 左ヒラメに右カレイ。ヒラメは体の左側に両目があり、カレイでは体の右側に両目がある。先日の「ダーウィンが来た」で、この魚の両目が次第に一方に寄っていく仕組みを解説していました。エサのとり方も違うのですね・・・。
 多くの魚は陸から離れられない。浅海という8%の狭い海に全海水魚の8割がひしめいている。なぜか・・・。水深200メートルより深い海には光合成ができないためプランクトンがいないことによる。
 マグロの巡航速度は時速7キロ。ダッシュ速度は時速50キロ。マグロは太平洋を往復できる。ずっとずっと時速7キロで泳いでいられるのだ。マグロは海中で止まると沈んでしまう。マグロのウキブクロが小さいからだ。マグロは体の一部を温かく保つことができる。体温を外界よりも高く保つことができるため、高速で持続的に泳ぐことができる。
 マグロやカツオは血合筋が発達しているため赤身の魚。メバルやカサゴ、タイやヒラメは白身の魚。白身の魚は長時間にわたって泳ぐことができない。
 魚のあれこれを興味深く知ることができました。
(2017年3月刊。800円+税)

昆虫の交尾は味わい深い

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 上村 佳孝 、 出版  岩波科学ライブラリー
昆虫の交尾の研究をしている学者がいるのですね・・・、驚きました。いったい、それが何の役に立つのか、なんて野暮な質問はしないでおきましょう。
じつは、昆虫の交尾器のもつ形の不思議に魅せられて研究しているのです。それは昆虫の進化の歴史を反映するものでした。いったい、どんな・・・。
オスとメスは、どう違うのか・・・。卵をつくる側をメス、精子をつくる側がオス。
では、卵と精子の違いは・・・。鞭毛(べんもう)のない、泳げない精子をつくる動物がいる。そこで、大きな配偶子(卵)をつくるのがメス、小さな配偶子(精子)をつくるのがオスなのである。
昆虫のもっとも古いやり方では、精子の授受は間接的。シミ類がそうである。コオロギやキリギリスの交尾は、多くの場合、メスがオスの背後から背中に乗る。
オスの交尾器の腹側は、メスの交尾器の背中側にかみあうというのが昆虫の多くのグループで原則となっている。
生物全般において交尾器の進化は速い。形のなかではもっとも変化が速いと考えられている。交尾器を見ない限り、種を見分けられない。1000万種もいる昆虫たちは、それぞれオンリーワンの交尾器をもっている。
セイヨウミツバチの新女王は最大で17匹ものオスと交尾してから巣づくりを始める。その交尾のとき、オスは手持ちの精子のすべてを新女王に渡してしまい、交尾器の柔らかい部分が破れてショック死してしまう。
ブラジルの洞窟に棲むトリカヘチャタテは、なんとメスがペニスをもっている。オスの側にはペニスにあたる構造は一切なく、そのかわり、メスペニスのトゲ束を受けとめるポケットがある。トリカヘチャタテの交尾時間はとても長く、平均して50時間にも及ぶ。その間に、精子を含む巨大な精包がオスからメスへ渡される。オスは精子だけでなく、大量の栄養物質もあわせてメスに与えると、メスはたくさん交尾するほど、子の数が増えることになる。逆にオスは栄養補給のために次々に複数のメスと交尾するのは難しくなる。オスの獲得をめぐって、メス同士が競争するケースもある。
いやはや学者の世界って、こんなにも奥深いものなんですね・・・。
(2017年8月刊。1300円+税)

歌うカタツムリ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  千葉 聡 、 出版  岩波科学ライブラリー
 カタツムリが歌うだなんて、何かのたとえ話かなと思うと、そうでもないようです。歌うカタツムリの伝説は、ハワイにある昔からの言い伝え。しかし、著者も確かに聞いたというのです。
 小笠原の島で、雨上りの夏の真夜中、耐えることなく湧きあがるように聞こえてきた不思議なざわめき。短い口笛のような音、軋(きし)むような音、ガラスのコップが触れあうような音、そんな一つひとつの小さな音が幾重にも重なり、共鳴し、ついに波濤のような響きとなって、森や谷間にあふれていた。この不思議な音色がカタツムリのものだとは、にわかには信じられなかった。これは、足の踏み場もないほど地上にあふれだした、おびただしいカタツムリの群れが、互いに貝殻をぶつけあい求愛し、硬い歯をむさぼる音だった。
およそ200年前、ハワイの住民はカタツムリが歌うと信じていた。しかし、20世紀の今日、ハワイにはカタツムリがいない・・・。ええっ、本当でしょうか。
ダーウィンはガラパゴス諸島で、三つの島で、15種のカタツムリを採集している。
ナメクジは、カタツムリとともに陸貝のメンバーである。殻のないカタツムリがナメクジの仲間。ナメクジは、多くのカタツムリと同じく雌雄同体で、一匹の個体にオスの機能とメスの機能が両方そなわっている。雌雄胴体の動物は、普通、二匹が交尾をして、卵は別の個体から受け渡された精子と受精する。ナメクジは、それだけでなく、好んで自分の精子を自分の卵と受精させる。
 北海道にいるエゾマイマイは、捕食者オオルリオサムシに襲われると、大きな殻を激しく振り回し、相手に打撃を与えることによって敵を追い払う。殻を武器として振り回すことによって敵を撃退するのだ。
 同じく北海道にいるヒメマイマイハ他の多くのカタツムリと同じくオオルリオサムシの攻撃を受けると瞬時に身を殻内に引っこめ、引きこもって防御する。
 オナジマイマイ系は、交尾のとき、恋矢を繰り返し相手に突き刺す。これによって自分の精子の受精確率を高めるため。恋矢を刺されると、以降の交尾意欲が失われ、受け渡された精子の受精機会はいっそう高まる。そのうえ、恋矢を刺されると、寿命まで縮んでしまう。
交尾相手が自分より大きいと、自分の身が危ない。小さい相手は、子孫を残す相手として好ましくない。できたら、体の大きい相手、つまり質の良い相手と交尾したほうが、この適応度は上がる
 なるほど、カタツムリの研究って、大変ですけど、よくもここまで観察したものです。学者稼業も楽じゃありませんね・・・。
(2017年6月刊。1600円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.