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カテゴリー: 生物

言葉を使う動物たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 エヴァ・メイヤー 、 出版 柏書房
驚くべき事実のオンパレードです。
オウムのアレックスは、100をこえる単語を知っていた。そして、アレックスはジョークも言えた。
ボーダーコリーのチェイサーは、1000以上の玩具の名前を覚えていて、文法も理解した。
野生のイルカは互いに名前で呼ぶ。
プレーリードッグは侵入者を表現する言葉を豊富にもっていて、人間の体格や衣服の色、あらゆる持ち物、髪の色を表現する。
飼育されているゾウは、人間の言葉で話せる。野生のゾウには、「人間」を指す言葉があり、それは危険を意味する。
最近の研究によると、以前に考えられていたよりもはるかに複雑な方法で、動物同士がコミュニケーションをとっていることが示されている。
オウムは体のつくりから、人間が声に出した言葉をそのまま繰り返して言うことのできる数少ない動物の一つだ。
カンジというボノボは、ゴリラのココの映像をみて、手話を覚えた。カンジは、ボノボが人間やボノボからだけでなく、ほかの霊長類を見ることでも、言葉を学べることを示した。
ゾウは複雑な社会的関係のなかで暮らしているため、音がコミュニケーションで重要な役割を担っている。
ゾウが死にかけているとき、グループ内のほかのゾウ(多くは、家族)が、死んでいくゾウの周囲に集まってきて、それぞれが鼻で優しく慰める。ゾウが亡くなると、ゾウたちは亡骸を抱きかかえたり、抱き上げたり、あるいは背中を押し上げようとすることもある。そして、土と葉で覆うと、それから何年ものあいだ、亡くなった場所を訪れる。ゾウの墓参だ。
カラスには、人物、ネコ、イヌのそれぞれを意味する違う音があり、2匹のネコも区別できる。カラスは決して顔を忘れない。カラスは群れの仲が亡くなると、葬式を行う。群れのメンバーが集まってきて、ときには、もっと大きな集団となり、亡くなった仲間や親類を囲んで騒ぎ立てる。
コウモリは、お互いを呼ぶ名前があるので、暗闇でも一緒に過ごすことができる。吸血コウモリは、哺乳類の血液をエサとし、夜のあいだにそれを探し出す。エサを70時間も食べられないと死んでしまうので、その間にエサをとれなかった不運な仲間には飲んだ血液を吐き出して与える。
イルカたちは病気の仲間のそばを離れず、できる限り助けるため、たとえば弱っているイルカを囲んで救命ボートのような形になる。
イヌだけが遊ぶ動物というわけではない。ほとんどの哺乳類は遊ぶし、鳥類、爬虫類、魚類も遊ぶ。遊びに似た行動は、頭足類、ロブスター、そしてアリやハチ、ゴキブリなどの昆虫でもみられる。
人間と棒物の違いは、いったいどこにあるというのか、よくよく考えさせられる本でした。
(2020年5月刊。2200円+税)

植物はなぜ毒があるのか

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 田中 修 ・ 丹治 邦和 、 出版 幻冬舎新書
ジャガイモによる食中毒が毎年、学校で起きている。それは秋ジャガではなく、春ジャガに限られる。ジャガイモの表皮の内側に有毒物質がある。そこは虫にかじられることが多い部位。食べられるのを防ぐため、緑色の部分には有毒な物質がふくまれている。そして、このジャガイモの有毒物質は、お湯で茹でたり、油で揚げたりして調理しても、毒性は消えない。
この有毒な物質は、ジャガイモが芽を出すには必要なもの。つまり、有毒な物質がつくられなければ、芽を出さない。それだけジャガイモは慎重で、用心深い。
私はジャガイモを毎年つくっていますが、幸い、食中毒になったことはありません。もちろん、掘りあげたあとに日光にあてて緑色に変色しないよう、用心はしています。
江戸時代後期の外科医、華岡(はなおか)青洲(せいしゅう)が世界で最初の全身麻酔で、乳がんの手術に成功した。この手術で用いられた麻酔薬の原料は、チョウセンアサガオだった。このチョウセンアサガオは英語でエンゼルス・トランペットというとされています。ダチュラという名前もあります。
でも、わが家には、チョウセンアサガオもエンゼルス・トランペットもあります。花の形は、まったく違います。どこかで混同・混乱が起きているようです。誰か教えてください。
アジサイの葉っぱを食べると食中毒を起こすそうです。気をつけましょう。
ビワは、果実も葉っぱも健康を保つ効果のある成分がふくまれている。しかし、ビワのタネの中味には、有害物質がふくまれている。
広島で原爆のあと何十年間にわたって、花も木も育たないと言われたのを裏切って真っ先に咲いたのがキョウチクトウだと聞いています。排気ガスに強い木として、街路樹としても良く見かけます。うちの庭にも紅白の花を咲かせてくれます。このキョウチクトウは、葉っぱや枝におそろしく有毒な物質をもっている。そのため、虫に食べられることがほとんどない。フランスでは、この枝をバーベキューの串として使ったため、死者が出たそうです。怖いですね…。
蚊取り線香は除虫菊の成分であるピレトリンが蚊の神経を麻痺させてしまう。人間には、ピレトリンが神経細胞に届く前に、人間の身体のなかで分解されて、毒性がなくなってしまうので、蚊にとって危険であっても人間には安全だ。なーるほど、ですね…。
コーヒーは、1日に3~4杯が適切で、それ以上は飲み過ぎになる。緑茶のほうは1日5杯以上のんでいてもいいどころか、もっとも死亡率が低い。
黒にんにくはアルツハイマー病を防ぐ可能性があると紹介されています。依頼者の一人の手づくりの黒ニンニクを以前から食べていますが、これは良かったと思いました。
世の中は、本当に知らないことだらけですよね…。
(2020年3月刊。800円+税)

アホウドリからオキノタユウへ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 長谷川 博 、 出版 新日本出版社
アホウドリとかバカドリと呼んで、昔の人は何十万羽もいた鳥を絶滅寸前に追い込みました。羽毛をとり、油をとったのです。ところが、著者たちの長年の努力とたゆまない工夫によって、なんとか絶滅を免れたのでした。
著者はアホウドリなんて馬鹿にした名前ではなく、オキノタユウと呼ぶことを提唱しています。大賛成です。
オキノタユウは非常に長生きで、著者が確認した最高齢は38歳。50歳をこえ、60歳いや70歳まで、生きるのかもしれない。うひゃあ、すごいですね…。
オキノタユウの主な天敵は人間。なので、いま生き残っているオキノタユウは人間をものすごく警戒する。
海上ではシャチにも狙われるが、シャチを追っかけ、その食べ残しも利用している。
オキノタユウは、生涯、一夫一妻で、いったんつがいになると、相手が死ぬまでつがいの関係。といっても、遠くへ旅に出るときには、群れをなすことなく、一羽一羽で飛んでいく。
そして、繁殖地では子育てを一緒にする。抱卵期間は2ヶ月あまり、交代で卵を抱いて温める。その間、10日間は絶食状態。
私と同じ年(1948年)に生まれた団塊世代の著者がオキノタユウの調査を始めたのは28歳のとき、私が弁護士になって3年目に郷里にUターンした年のことになります。
1979年から40年間、一度も欠かすことなく、鳥島(とりしま)にいるオキノタユウの生息・繁殖状況を調べた。
営巣地に草を植え替え、デコイ作戦を展開した。2018年にオキノタユウの繁殖つがい数は1000組になった。8年後の2016年には繁殖つがい数は2000組、総個体数は1万羽になると予測されている。
デコイという本物そっくりのオキノタユウの「はりぼて」を設置するとき、求愛音声をスピーカーで流し、また、営巣地のにぎやかな音声も放送した。
著者は42年間に、鳥島を125回も訪問しています。1回に1ヶ月間ほど、無人島に一人で生活するのです。ちっとも寂しくないといいます。本当でしょうか…。
今では本土と衛星電話でつながっていて、AMラジオで世の中の動きを知る。鳥島にいるときは、すべての時間をひとりで自由に使うことができる。こんなに幸福なことはない。
ただ、鳥島は、今も活動している活火山であり、船で行くしかないので、船酔いの苦しみを味わされる。
いやはや、本当に長いあいだ、お疲れさまです。これからも無理なくがんばってください。応援しています。
アホウドリなんて、写真を見たら、その気品の良さに、やっぱりオキノタユウだよねと、つい納得してしまうカラー写真もあり、楽しめます。
(2020年4月刊。1500円+税)

美の進化

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 リチャード・O・プラム 、 出版 白揚社
性選択は人間と動物をどう変えたか、がサブテーマになっている本です。大変興味深い内容で、思わずひき込まれました。
なにより人間です。進化のなかで陰茎骨(ペニスにも骨があるのです)をなくした霊長類は、たったの2種類のみ、クモザルとヒトだけ。ええっ、知りませんでした…。
ただし、陰茎骨をもたない哺乳類は、ヒト以外にもオポッサム、ウマ、ゾウ、クジラなどたくさんいて、骨がなくても、ちゃんと勃起できる。
鳥類は、恐竜の祖先からペニスを受け継いだが、およそ7000万~6600万年前に新鳥類のもっとも新しい共通祖先がペニスを失った。
ところが、カモはペニスがある。いったい、なぜ…。
コバンオタテガモのオスのペニスは、42センチという最長記録をもっている。証拠写真が添えられています。
太った女性に性的魅力を感じ、崇める文化もある。アフリカのモーリタリアでは、フツーの体型の女子は「ファットキャンプ」に送られ、体重を増やすために食べ物を大量に食べさせられる。反対に、アメリカでは、非常に太った若い女性は、体重を落とすために「ファット・キャンプ」に送られる。
アフリカのコイサン族の女性は、臀部(お尻)に大量の体脂肪が蓄積されていて、お尻が強調された、きわめて独特な体形。コイサン族の男性には、この特質がきわめて魅力的に思える。
なーるほど、もちつもたれつの関係にあるんですね…。
見知らぬ相手と誰彼かまわずにセックスしたいという飽くなき欲望は、ヒトの進化史とはほぼ無縁のものだった。人口密度は、それほど高くないし、分散もしていたので、行きずりの性的出会いの機会は、戦争のときは別として、きわめて少なかった。その結果、ヒトの男の性行動は、相手を選り好みする方向へ進化してきた。
ええっ、そうなんですか…。これには腰を抜かしそうになりました。
ヒト以外の猿人類のオスは、性欲旺盛で、受精が可能な相手であれば、いつでも誰とでも性交する。ゴリラ、チンパンジー、オランウータンのオスは、機会があれば、いつでも性交する。しかし、ヒトの男は、まったく異なる。これは、生殖に大きな投資をすることと、関係している。ヒトの男は、子の保護や世話、食事、社旗化のために、資源と時間とエネルギーを費やす。
地球上に生息する哺乳類のうち、常に乳房が大きいのはヒトだけ。ヒト以外の哺乳類では、乳房が大きくなるのは排卵期と授乳期だけ。ヒトは生涯を通じて大きな乳房の組織を維持する。常に大きいままの女性の乳房は、男性の配偶者選択によって進化した美的形質。
そうなんですよね…、よく分かります。
もっとも男性的な顔立ち、角張った顕著な顎(あご)、目立つ広い額、濃い眉、こけた頬、薄い唇を女性は好まない。女性は、むしろ中間的な顔立ちは、「女性的な」顔立ちの男性を好む。男性的な濃いあごひげよりも、薄い無精ひげのほうを女性は好む。
女性にもっとも好まれるのは、細身だが、やや筋肉質で、肩幅が広く、逆三角形の体形をした男性であり、筋骨隆々のたくましい体をした男性は一番好まれない傾向にある。
うひゃあ、そ、そうなんですか…。なんだか一般常識とは違っている気がしますけど、本当にそうなんですか…。もっとも、私自身は筋骨隆々とは無縁なんです、はい。
メスにとって不運なことに、霊長類の社会的序列は、本質的に不安定である。
世の中は、実に不思議なことだらけ…としか言いようがありません。
(2020年3月刊。3400円+税)

虫とゴリラ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 養老 孟司、山極 寿一 、 出版 毎日新聞出版
二大巨人の対談ですから、面白くないはずがありません。
ゴリラは小さな虫を遊ぶことができる。手にダンゴムシをのせて遊ぶ。ココというメスのゴリラは、すごく猫好きで、何匹も猫を飼っていた。ええっ、本当ですか、どうやって…???
東北地方のサルは、江戸時代にマタギによって根絶やしにされた。サルを狩猟していない西南日本一帯では、サルは「神様の使い」だった。
アメリカザリガニは本当にたちが悪い。西日本新聞(2020.8.27)に中国・武漢では、ビールのつまみとして、日本から入ってきたアメリカザリガニが大いに食べられているとのことです。びっくりしました。戦後、日本でも食べていましたが、主としてニワトリのエサでした。私も小学生のころはザリガニ釣りに夢中でした。
いまの日本ではサル以上に恐ろしいのはシカとイノシシ。どれだけ捕まえても、どんどん増えている。
インドネシアの島に7種類のサルがいる。ペニスの形が違うので、交雑種はできない。また、お尻の形が違うと、発情すらしない。
サルやチンパンジーは、年中、毛繕いをしている。それで親しく共存できる。ヒトは体毛がないので、毛繕い以外の何らかのコミュニケーションを考えなくてはいけなくなった。
ゴリラが昼寝するときには、夜のようにベッドをつくらず、お互いに腹をくっつけあってつながって寝ている。
ヒトの祖先は草原(サバンナ)へ進出していった。ゴリラはもっとも保守的で、未知の場所へは出て行かず、むしろ熱帯雨林のど真ん中で暮らし続けることにした。なので、非常に食性を広くもつことにした。
チンパンジーもゴリラも、食物の分配はする。だけど、運ぶことはしない。ヒトだけが、仲間のいる安全な場所へ食物を運んだ。
言葉は聴覚と視覚を利用する。言葉は意味を伝えるもの。
オランウータンは7年も母乳を吸うし、チンパンジーは5年、ゴリラも4年。ところがヒトだけが1年か2年で、乳歯のまま離乳する。
子どもは保育園児までは、虫の好き嫌いが一切ない。小学校にあがると急に虫の好き嫌いが出てくる。子ども時代に自然に接していないと、実は自然に親しめなくなる。
私もザリガニ釣りのためにカエル(ビキタンと呼んでいました)を手にもって地面に叩きつけて殺し、両足をひき裂いて、糸にぶらさげてエサにしていました。カエルの足はザリガニ釣りのエサとしては最高なんです。そして、ストローでカエルの尻に空気を吹き込み、パンパンにふくれあがらせて、池に放りこんで、うれしがっていました。子どもは残酷なことが平気ですし、好きなんです。
子どもは、そうやって虫の世界、動物の世界に入っているし、いける。
人間のもっている大きな力は想像力。想像力が人間の世界を拡張するのに役立った。
いまの日本社会は、「感じない人」を大量生産している。受動的な人間ができてしまう。
常識を破るところに人間の面白さがある。AIは常識を破ることはできない。
日本の大企業の内部留保は460兆円。これは、にほんの国家予算の規模。これが有効に活用されていない。
人間同士のつながりは人間だけではなしえない。そのつながりには、常に自然が介在してきたことを忘れてはいけない。
はっとさせられる指摘が多く、日頃のあまりに「常識」的な発想を反省させられました。
(2020年7月刊。1500円+税)

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