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カテゴリー: 生物

鳥の惑星

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 日経サイエンス編集部 、 出版 日経サイエンス社
 鳥は恐竜の子孫というより、恐竜そのもの。しかも、小型肉食恐竜が進化した生き物。鳥は獣脚類恐竜から進化したというのが現在の通説。
 これまでは白亜紀末の大絶滅(大きな隕石の衝突によるものというのが現在の有力説)よりあとに鳥類が恐竜のなかに誕生したというものだったが、最近では大絶滅の前に鳥類は誕生したと考えられている。すると、どうやって大絶滅から生きのびることが出来たのかという疑問が生まれる。この謎は今なお解明されていない。
 オオソリハシシギはアラスカのツンドラから太平洋を縦断して1万2千キロ先のニュージーランドまで少なくとも7昼夜も飛び続ける。毎年、数万羽が無事に渡っている。
 オオソリハシシギは、1万3千キロを1回の休憩もなく、11日間ぶっ通しで、アラスカからタスマニア島まで飛び続けた。時速50キロで、1日24時間、ずっと飛び続けた。地上にも海上にも降りることなく、食べも飲みもせず、ひたすら羽ばたき続けた。
 どうやって、何の目印もない海の上を飛び続けて迷い鳥にもならず、目的地にたどり着けるのか…。
 渡り鳥は、天体をナビゲーションの手がかりとして使い、また、地磁気(融解した地球コアによって生じた磁場)を検知して飛んでいる。
 鳥の眼の中には光化学反応によって「ラジアル対」という短寿命の分子ペアが形成されていて、鳥のコンパスは、このラジカル対に生じる微妙で本質的には量子的な効果に依存している。
渡り鳥は、視覚と嗅覚そして磁気感覚を頼りとして飛んでいる。磁気に反応するクリプトクロムというタンパク質は、蝶のオオカバマダラや哺乳類のクジラにも見つかっている。
 鳥の羽の拡大写真は思わず息を呑みこむほど見事です。そして、羽の先端に切れこみが入っていると、それは飛ぶうえで特別の効用があるというのです。
フクロウの無音飛行にも、翼の前縁の羽毛に櫛(くし)のようなふさふさのフリンジ(ふさ)があることによって音が生じない。
 羽毛と空気の相互作用による振動が起こらないので音が発生しない。
 ホバリングの得意なハチドリは、非常に高い羽ばたき周波数と蜜を吸いながら花の前でホバリングする際の独特の羽ばたき動作に適応するためハチドリの羽毛はきわめて硬い。
 キンカチョウは、お互いの地鳴きに含まれる小さな違いを聞き分け、お互いの性別やアイデンティティーなどの情報を交換しているらしい。そしてメスもオスと同じように歌う。オスとメスのペアが高度に入り組んだデュエットを歌う。人間の耳には、連続した単一の歌のように聞こえる。
 カレドニアガラスが賢い鳥だというのは有名です。道具を使ってエサをとるのです。そして、なんとチームを作って作業できるというのも判明しました。
 カササギは、鏡に映った自分の姿を検分できる。
 いやあ、鳥という生き物の驚異的な能力には圧倒されてしまいます。しかも、鳥は、かの恐竜の一種だというのですからね…。
(2024年12月刊。2200円+税)

先生、イルカとヤギは親戚なのですか!

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小林 朋道 、 出版 築地書館
 コバヤシ先生は、今や大学の学長先生。そして、このシリーズも19冊目。すごいものです。私の本棚にコバヤシ先生の本が何冊並んでいるか、数えてみました。18冊ありました。つまり、この本で19冊目になるというわけです(シリーズ以外の本もありますので、シリーズ全巻をそろえたわけではないようですd)。
 さてさて、今回の対象は何かな…。
 コバヤシ先生はタヌキが好きとのこと。実は我が家の隣はうっそうとした雑木林になっていて、少し前のことですが、朝、そこから一頭のタヌキが姿を現わし、悠然と団地内の道路を偵察に繰り出したのです。呆気にとられてしまいました。
 日本に生息する、オオカミと同じ食肉目イヌ科の野生動物はタヌキとキツネだけ。
 アカハライモリの背中は黒色で、腹側は赤い。これは、背中の黒色で見つからないようにしていて、認知されたときは体を回転させて腹側の赤色を見せて攻撃をためらわせる戦略。
シマヘビが交尾しているのをコバヤシ先生は邪魔したそうです。実は、私も同じ経験があります。庭にヘビがいるのを見つけたので、長い竿で叩いて驚かして追い払おうとしたのです。ところが、なんと、ヘビは2匹いて、からまりあっているのでした。いやはや驚きました。
 コバヤシ先生は野生生物を扱う学者なので、ヘビを捕まえて観察したのです。すると、オスは肛門のところにヘビに特有な、球に棘(トゲ)がびっしり生えたようなペニスが露出していたのです(もちろん写真があります)。このペニスがメスの肛門に入って、ペニスが抜けないようになっているというわけです。こうやって、私も一つ賢くなりました。
 コバヤシ先生が学長をつとめる大学ではモモンガを描いた可愛らしいグッズを製作しています。とてもよく出来たコースターです。
 コバヤシ先生がビオトープ(池)をつくると、カエルを狙ってマムシが出没するようになった。鮮やかな模様の毒ヘビ。コバヤシ先生はこのマムシを追いかけ、正面からにらみあっていました。ちゃんと、その証拠写真があります。たしかにマムシの顔がこちらを向いて威嚇しているのです。マムシが怒って飛びかかってきたら、どうしましょう…。もちろんコバヤシ先生は一定の距離を置いていました。
 コバヤシ先生のいる大学で学べる学生は幸せです。
(2025年1月刊。1760円)

ヘビ学

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ジャパン・スネークセンター 、 出版 小学館新書
 わが家の庭にはヘビが長く棲みついています。40年ほども前、1回だけ怖さのあまり殺してしまったことがありますが、深く反省して、その後は決して殺さないようにしています。ただ、ばったり遭遇しないようには心がけています。モグラがいますし、ミミズもいます。庭の隅にヘビの抜け殻を見たことは何回かありますし、赤と黒のブチの小さなヘビの死骸もころがっていました。この本のグラビア写真にあるヤマカガシです。ヤマカガシは毒ヘビです。ただ、その毒には血管や組織を壊す作用はなく、痛みや腫れも起こさない。ただし、強力な血液凝固作用を示し、血管内で血液を凝固させて血栓をつくってしまう。ヤマカガシに咬まれて、ある時間が経過しても、血管内に抗毒素を投与すれば、毒は短時間で中和されていく。
 ニホンマムシの毒には筋肉細胞を壊す作用がある。また、その毒には少量ながら神経毒が含まれる。マムシに咬まれる人は年3000人ほどいて、死ぬ人が毎年、数人はいる。抗毒素が適切に使われていないことによる。
 ハブに咬まれる人は年に70人ほどで、減少傾向にある。
 全世界でヘビは4100種いて、日本には、そのうち43種しかいない。島国ニッポンは、ヘビの数では小国だけど、独自の進化を遂げた「ヘビ独立国」。
アオダイショウは木に登るのが得意。なるほど、わが家の木のてっぺんにヒヨドリが巣をつくっていたとき、ヘビがするすると木をのぼっていくのを見かけました。どうして、地上を這うヘビが3メートルほどの高さの小鳥の巣を発見できたのか、今もって不思議でなりません。
ヘビの眼には「まぶた」がなく、目を閉じることが出来ない。その代わり、「アイキャップ」という、眼球を保護する膜があり、眼球の乾燥を防ぐことができる。
 ヘビの交尾は、1~3時間と長いとのことですが、私も庭で2匹のヘビがからまっているのを見たことがあります。そのときは怖いので、竿(さお)で叩いてしまいました。今となっては悪いことをしてしまったと、これまた反省しています。
 ヘビは1ヶ月くらいなら、何も食べなくても生きていける。ハブだと2~3ヶ月はもつし、水分さえあれば、半年から最長2年まで生存が可能。いやあ、これはすごいですね…。
ヘビの寿命は10~20年。ところが、大型のニシキヘビだと30~40年生きる個体がいる。
 ヘビは省エネで、捕食できる条件を待つというのが生き方の基本。つまり、待ち伏せ作戦を基本とする。
ヘビは変温動物なので、自ら熱を生み出す必要がない。そのため基礎代謝量は低め。ヘビは鼻だけでなく、舌でも匂いを嗅いでいる。なので、舌をチョロチョロさせる。
 ヘビは人間に懐(なつ)かない動物。ヘビは、どんなに慣らしても触られて喜ぶことはない。他者に対する関心が薄い。ヘビの思考は3パターン。エサとして食えるか、敵か、繁殖の対象か。どれにも当てはまらないものには無関心。ヘビはまったく賢くない。
 ヘビを飼っている女性が相談に来たことがあります。エサは冷凍ネズミだそうです。アパートの大家さんから明渡を求められているという相談だったと思います。うひゃあ、これは難問ですよね。たまに大型ヘビがアパートから逃げ出して、大騒動になることがありますからね…。いくら個人の性向・趣味だといっても、厳重に管理してほしいものです。
 ヘビのことが少し分かりました。
(2024年12月刊。1050円+税)

ウマと科学と世界の歴史

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 リュドヴィク・オルランド 、 出版 河出書房新社
 家畜ウマのルーツは4200年前の北カフカスのステップにある。DNAによる探査で判明した。より正確には、ドン川とヴォルガ川の下流域。いやあ、なんでそんなことまで判明するのでしょうか…。不思議です。
 インド・ヨーロッパ語族の起源は、ステップの騎馬民族にある。
 ウマは、かつてもっとも狩られた動物種のひとつだった。
野生のウマは、きわめて社会的な動物であり、複数の雌(メス)ウマと、その子どもから成る群れで暮らし、総じて一頭の雄(オス)ウマに守られている。
若い雄ウマ、つまり独身雄は4歳か5歳になると群れを離れ、単独で生活する。それはしばしば数年におよび、年老いた「リーダー雄」を倒してトップの座につくまで続く。「リーダー雄」といっても、実は群れのウマに力を行使するのは雌ウマだというのは、珍しいことではない。
野生ウマは、どちらかというと移動を好まず、自然の原産地の周辺にとどまろうとする。
 ウマは1日に50グラムの塩を摂取する。いったい、どうやって、こんな量の塩を摂れるのでしょうか…、不思議です。
 ラバはウマより丈夫で、飢えや渇き、病気や害虫にも強い。ウマより足は遅いが、飼育にそれほど手間がかからない。ラバは辛抱強い。ラバはロバの性質を受け継いでいるが、ロバより体が大きく、ロバの悪い性質、強情さは持ち合わせていない。
 ラバはよく働き、自立心が強く、丈夫なので、運搬用の動物というだけでなく、貨幣の役割も果たした。ただし、ラバに繁殖力はない。
考古遺物がウマのものかロバのものか、それともラバのものか、決定するのは容易ではない。古代ローマ人にとって、ラバはきわめて重要な動物だった。オリエントでは、高位の者がラバに乗るのは珍しくなかった。
アラブウマが世界中で知られているのは、その特徴的なシルエットや自然な優美さとともに、並外れた持久力をもつから。もっともスタミナのあるウマは160キロメートルにもなる長距離耐久レースを競う。レースのあいだに4回の休憩をとりながら、騎手を乗せたまま平均時速20キロのペースで走り続ける。チベット王国では、現ナマではなく、ウマで茶の代金を支払っていた。四川省で生産された茶の半分が2万頭以上の馬と引き換えにチベットに送られた。
今日、アメリカにいるウマは、入植者たちが旧世界の出身地から連れてきたウマの子孫。かつてアメリカ大陸に生息していたウマは絶滅している。その子孫のウマは今のアメリカ大陸にはいない。
ウマの体は6歳にならないと完全に成熟しない。ところが、多くのウマが生後18ヶ月でトレーニングを始める。これは、人間ならわずか10歳の子どもがプロの競技会に出るようなもの。
競走馬にサイロキシンを過剰に投与すると心臓の不整脈を引き起こして死亡することがある。
 サラブレッドは競馬産業の中心にいて、アメリカ一国だけで毎年340億ドルの収入、そして50万人もの雇用を生み出している。
 ウマのことを初めて詳しく知ることができました。
(2024年9月刊。2970円)

深海ロボット、南極へ行く

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 後藤 慎平 、 出版 太郎次郎社
 マリアナ海溝。水深8000メートルをこえる超深海。投光器の灯りは、ほんの数メートル先までしか届かない。真っ暗な深海が果てしなく続いている。そこに動いているのは深海ロボット。マリアナ海溝最深部では1平方センチにかかる圧力は1トンをこえる。これは人差し指の先に軽自動車2台が乗っかっているのとほぼ同じ状況。水中なので、四方八方から、この圧力がかかる。
 水中探査機をROVと呼ぶ。著者は南極用ROVを開発した。しかも、短期間のうちに、あまりお金をかけずに…。水中用のロボットケーブルは、細径で軽量、そして引っぱりにも強い特性が求められる。そんなのあるの…。神奈川県にロボットケーブルメーカー「岡野電線」がつくっている。これでケーブは解決。次は圧力に強いもの…。カシオの腕時計Gショックが圧力に強い。やはり、あるんですね。
 南極の観測隊は、総勢100人ほど。それに自衛隊員を含めると、300人以上になる。夏隊と越冬隊がいる。越冬隊は南極に14ヶ月を過ごす。
 ROVはリモコン戦車と原理が共通している。
 水中探査機(ROV)は、水に入れると、そのまま自重で沈んでしまうので、「中性浮力」と呼ばれる浮きも沈みもしない状態が求められる。そのため浮力材が取りつけられている。
 水中探査機(ROV)には、かなり強力な投光器が搭載されている。この投光器にあてることで充電できるように工夫した。
この本を読んで、南極に行く人は日本の冬山で極寒状況における訓練に参加するのですね。いやあ、これは大変なことです。
 南極に個人的に持っていくものとして、チョコレートとココアがおすすめだそうです。そしてヨーグルトにのどアメも。もちろん南極に便利なコンビニがあるわけないですからね…。
 南極のトイレは、丸い一斗缶のようなバケツ。このペール缶に用を足す。大も小も、老若男女みな同じ。用を足したら、上から菌の増殖を抑えるシートや凝固剤を入れ、また次の人がそこに用を足す。
風呂には50日間入れないが、意外に変な臭いはしない。ウェットシートで体を拭くていど。
食器は洗わない。汚れはあるていど拭きとると、霧吹きで水をかけて、さらに拭きとる。少々ガンコな汚れは、アルコールで拭きとる。これで完了。拭いたペーパーは可燃ごみとして基地で焼却する。
 南極の直射日光には気をつける。上空にオゾンホールがあり、大量の紫外線が降りそそぐので、日焼け止めを塗っていないと、火傷(ヤケド)のように皮膚がただれてしまう。
 昭和基地の近くには50以上もの湖が点在している。そしてROVを投入し、無事に観察を成功させる。湖底にはコケボウズがいる。
 著者は生態学者ではなく、あくまでROVを扱う工学屋。ロボット工学者が南極へ何しに行くのかと訊かれたそうです。そりゃあ、南極にだって、仕事ありますよね、工学者にも…。面白い本でした。
(2024年4月刊。1900円+税)

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