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カテゴリー: 生物

サルと屋久島

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 半谷 吾郎、松原 始 、 出版 旅するミシン店
屋久島のサルの生態を現地で30年間にわたって観察してきた学生主体の調査隊の苦闘が生々しく紹介された本です。私が大学生だったころの奥那須・三斗小屋での5泊6日の夏合宿を思い出しながら、楽しく最後まで読み通しました。
三斗小屋は温泉旅館(煙草屋)でしたが、ランプ生活で、自炊です。なので黒磯駅で男女学生30人分の食材を購入して分担して搬入しました。食事当番は、食当(本書では「しょくとう」、私たちは「しょくあたり」)と呼んでいました。
この本では乏しい予算のなかでのやりくりの大変さ、山の中、雨の中での食事づくりや避難のときの食材不足のハプニングをいかに切り抜けていったか、笑える話が満載です。
私たちも「闇ナベ」というのをしていましたが、本書でもお腹をこわさなかったのが不思議な食事内容がいくつも紹介されています。まさしく若さの特権です。
屋久島は、小さな島の中に、南日本から北日本までの気候を垂直方向に詰め込んでいる。とにかく雨が多い。屋久島登山では携帯トイレの利用が義務づけられている。
イラストは著者の一人である松原始博士の手になるものですが、これがまたホンワかした絵なので、親しみやすく、理解を助けます。
残念なことに、私は屋久島へ行ったことがありません。
屋久島にはサルが多い。「猿害」防止のため、1980年代後半には、年に400頭毎年捕獲されていた。捕っても捕っても、サルは湧いてくると思われていた。このころ、サルが屋久島に3000頭いると推測されていた。
定点観測では、学生が炎天下、一日中、ただただ座って、サルがあわられるのを待つ。ひたすら退屈と戦う。眠気との戦いだ。その結果、1平方キロメートルあたりサルが100頭もいるという驚異的な密度にあることが判明した。
屋久島のサル群は、出会ったら常にケンカが起きる。縄張り争いだ。サルは基本的に樹木の葉を食べている。キノコも食べる。毒キノコかどうか、慎重に選んでいる。
サルの顔は、一度覚えてしまうと、一頭一頭がまるで違って見える。もちろん、そうなるまでには、何か月もひたすら観察しなければいけない。著者は30頭のサルを識別できたとのこと。すごいですね…。
じっくり顔や指を見て、識別の手がかりとなるポイントを探す。
ニホンザルの寿命は、野生では20年ほど。生後6ヵ月までをアカンボウ、その後はコドモで、オス5歳、メス4歳ころにワカモノになり、10歳でオトナになる。メスは一生、群れにとどまり、オスはワカモノになったら群れを離れ、数年おきに群れを移籍していく。
屋久島のサルを実態調査した結果、2000頭から4000頭いることが判明した(1988年)。
一読する価値が大いにあるヤクシマザル調査の苦労話です。
(2018年12月刊。1600円+税)

お蚕さんから糸と綿と

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 大西 暢夫 、 出版 アリス館
私が中学生のころ、通学路の途中に桑畑がありました。桑の実も、ほんの少しだけとって食べたことがあります。あまり美味しいと思わなかったので、1回か2回だけです。桑畑があるということは、そこらで養蚕(ようさん)していたのでしょう。
生糸を産み出す蚕(かいこ)は、この本では「お蚕さん」と「さん」づけで呼ばれています。
お蚕さんに満足のいくまで桑の葉を食べさせるため、土作り、肥料など桑畑は手入れが欠かせない。
この本に登場する養蚕農家は春と秋の2回、お蚕さんを育て、糸とりまでしている。飼っているお蚕さんは1万頭以上。1匹とは数えないんですね…。敬意を表しているわけです。
春は桑の葉がやわらかく、秋の葉はかたい。なので、お蚕さんのはき出す繊維は、季節によって手触りが違う。春の糸と秋の糸、糸には季節による違いがある。
うひゃあ、ちっとも知りませんでした…。
お蚕さんの食事は人間と同じで、一日三食。小さいときは1万頭いても1日800グラム、ところが大きくなると、80キロの桑の葉を食べ尽くす。そして大小便もたくさんするから、養蚕農家は掃除も大変。
育てはじめて20日目。お蚕さんが身体をそい上げたら、食べるのをやめる合図。
お蚕さんを1頭ずつ小部屋におさめていく方法と、わらをジグザグに打ったなかにお蚕さんを入れる方法とがある。
そして、お蚕さんは細い繊維は吐き出して、だんだん自分の姿は見えないように、真白いウズラの卵の形になっていく。
お蚕さん1万頭から、やっと着物3着分の糸がとれる。
お蚕さんが蛾になって、繭(まゆ)を破って外に飛び出したら困るので、その前にお蚕さんを殺してしまう。繭が破られたら、長い1本の糸がとれない。お蚕さんが繭から飛び出す寸前に乾燥させて、その命を止める。養蚕農家の仕事はここまで。
次は糸とりの仕事だ。繭は細い繊維でからみあって1本につながっている。
長いものは1500メートルになる。それを、20個ほどあわせると、1本の生糸・絹糸になる。
繭を80度の湯の中に入れて、繊維を取り出し、20本で1本の生糸にしていく。糸はあくまで均等な太さの糸にしなければいけない。糸とり機がまわる。
綿花からできている綿は木綿(もめん)。お蚕さんからできている綿は真綿(まわた)という。
真綿は、軽くて暖かい布団やジャンパーにも使われている。生糸から丈夫なパラシュートもつくられた。
お蚕さんのなかで、殺されずに繭の外に出た蛾は、パタパタと羽ばたくことはできても、実は飛べない。糸をとるために改良された生きものなので、飛べなくなってしまっているのだ。
カイコから生糸のできあがるまでが写真と解説文でよく分かりました。
群馬県の富岡製糸場を数年前に見学してきましたが、あそこはフランス人技師の指導によって工場がつくられ、運営されていました。日本からの生糸の輸出は明治期の日本の経済発展を支えたのですよね…。
(2020年7月刊。1500円+税)

山と獣と肉と皮

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 繁延 あづさ 、 出版 亜紀書房
女性写真家が猟師と一緒に山に入り、「殺す」行為を見たときの衝撃を語っています。
ところが、その直後に、肉を食べるほうに関心が移っていくのでした。まことに人間というのは身勝手な存在です。私も子羊の肉をいつも美味しいと思って食べています(でも最近は、残念なことに久しく食べていません…)が、赤ちゃんのときから羊を育てていたら、とても食べられないでしょうね…。
前に、豚を飼ってペットのように可愛がっていた女性が豚を美味しくいただいた(食べた)という体験記を読みましたが、なかなか出来ることではありません(これには飼って育てることも含みます)。
尖った槍のひと突きで猪の心臓を刺す。鉄パイプを思いきり振って猪の眉間を叩く。素早く銃の安全装置を外して引き金を引いて猪を殺す。現場で身近に「殺す」行為を見たときの「圧倒的な暴力」がびんびんと伝わってきます。
箱罠にかかった猪は目から怒りがあわらしている。あきらめという気配がまったく感じられない。追いくる生気に圧倒される。ところが、猟師が狙いを定めて槍を突き出すと、たちまち猪の動きは止まり、魂が抜けていってしまう…。そして、直後に「肉」が見えると、とたんに「おいしそう…」という喜びに近い感情が湧きあがってくる。ふむふむ、少しだけ分かる気がします。
猟師から、獲れたばかりの猪の心臓、ヒレ、ロース、後脚2本そして首をもらう。心臓は焼肉、ロースは焼肉とぽん酢味のしゃぶしゃぶにして食べる。心臓は、しょうが醤油に付け込んでおく。野生動物の肉は、スーパーで売っている肉と全然ちがって、料理する工夫や手間が多い。心臓は、しっかり血を洗い流し、スライスして焼肉にして食べる。独特の歯ごたえがある。猪の肉は、繁殖期のはじまる12月ころが脂が乗っていて、一番おいしい。
著者がついていく猟師は大型バスの運転手を定年退職する前から始めたベテラン。鹿と猪をあわせて年間100頭以上も獲る。とった肉を好みの人々に配っている。
罠にかかって死んだ獣は決して食べない。あくまでも自分が殺した獣を食べる。食べないときには山に埋める。すると、動物たちが寄ってたかって食べて、たちまち跡かたもなくなってしまう。
子どもたちと一緒に山に入って猟師が猪を殺すところ、肉として解体する場面に出かけ、また自宅で一緒に料理する。すごい家庭教育の実践ですね…。
私の家の近辺にはタヌキが巡回することはあっても、猪は見たことはありません。山中で猪と偶然に出くわしたら、本当に怖いですよね…。
こんな勇気ある女性写真家の作品を一度じっくり見せていただきたいものです。これからも健康に留意して、ご活躍ください。
(2020年10月刊。1600円+税)

マンモスの帰還と蘇る絶滅動物たち

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 トーリル・コーンフェルト 、 出版 A&F
19世紀半ば、アメリカ東部には30億から50億弱のリョコウバトがいた。ところが、人間の乱獲によって絶滅してしまった。安い肉として食べ尽くされてしまったのだ。
そして、1980年にヨーロッパの鳥100羽をニューヨークのセントラルパークに放したところ、今や2億羽も生息して、自然と農業の両方に脅威となっている。ヨーロッパホシムクドリだ。うひゃあ、そんなことが起きるのですね、信じられません。
シベリアの凍土に眠っていたマンモスの牙がどんどん掘られ、中国人バイヤーに高く売られている。毎年60トンものマンモスの牙が中国に売られている。
ある中国の企業は、15キロ以上にはならない遺伝子組換えミニブタを販売している。ブタにどんな斑模様がほしいかを前もって顧客に決めさせ、すべての赤ん坊ブタを注文どおりに組み換えようと計画している。
1876年に、アメリカは日本からクリの木を輸入した。日本のクリはアメリカのクリより小さく、樹木の美しさとその実のためだ。ところが、一緒にクリ胴粘病菌も日本から入ってきた。そのためアメリカの野生のクリは破滅した。日本のクリの菌に耐性がなかったからだ。アメリカでは50年間に300万本ものクリの木が枯れてしまった。
アメリカのイエローストーンにオオカミが放たれたことが自然生態系の保護にいいというのも最近では疑問符がついている。
人間に慣れすぎ、その行動を人間に合わせるようにならないように捕食動物を育てて、放つというのはとても難しいこと。
絶滅したマンモスをよみがえらせるというのは、実にむずかしいこと。マンモスだろうが蚊だろうが、動物が死ぬとその身体はすぐに分解しはじめる。長いDNA分子は、最初に壊れるものの一つだ。DNAは、タンパク質やほかの細胞構造に比べて、弱く不安定なのだ。
恐竜のゲノムを研究するには、DNAに6500万年間も残っていてもらわなければいけないということ。この道のりは遠い。とてもよく保尊された恐竜の化石を対象にして、なんとかほんの少しのタンパク質の固定はできた。コラーゲン、ケラチンなど。しかし、DNAはかけらさえ見つかっていない。
絶滅してしまった種を再び復元することがいかに至難のことなのかが、チョッピリ理解できました。スウェーデンの女性科学ジャーナリストによって書かれた専門的な本です。
(2020年7月刊。2200円+税)

おどろきダンゴムシ図鑑

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 奥山 風太郎 、 出版 幻冬舎
わが家にもダンゴ虫はたくさんいます。犬走りのあたり、また、小石を取りあげると、もぞもぞとうごめいています。孫たちは喜んで、ダンゴ虫を手のひらに乗せて、じっと眺めます。
ダンゴ虫は小さい子どもたちに大人気です。決して踏みつぶして殺そうとはしません。あくまでも可愛い仲間なのです。
この本は、いえ、この図鑑は世界のダンゴムシ(虫)のオンパレードなんです。うひゃあ、こ、こんなにいろんな形のダンゴムシがいるんだ…、おどろきました。
ダンゴムシは世界に1350種ばかり。甲殻類のなかのワラジムシ亜目(3700種いる)に属する。
著者は、ダンゴムシを自宅で飼育中とのこと。南西諸島の種を中心として200以上の地域のダンゴムシを、5万か10万か、20万か…。数えきれないほど…。うひゃあ、これはたまりませんね。いくら可愛いといっても、20万もいたら…、ぞぞっとしてきます。
でも、ダンゴムシの飼育は楽しいし、そんなに難しくはないとのこと。
ある程度の湿度を保つことが可能な湿らせた落ち葉や腐葉土を敷けば、どんな容器でも飼育できる。乾燥させないこと、落ち葉や隠れ家をつくることができればいい。餌はニンジンのかけらでいい。
ダンゴムシは、常に穏やかで平和に暮らしている。その様子を眺めていると、日頃のストレスなんて吹っ飛んでいってしまう。
ダンゴムシの一生は意外に長く、飼育下では3年も生きる。
ダンゴムシのほとんどは、社会性のある集団生活を送ることはなく、1ヶ所にたくさんいても、それは結果として集まっているだけで、単独行動を好む。
世界最大のダンゴムシは体長2センチもあり、イタリアに多く、フランスにも少しいる。
ダンゴムシは雑食性で、カルシウム含有量の多い落ち葉ほど、よく食べる。
わが家で見かけるのは、黒光りのするオカダンゴムシ。なんと日本には明治時代に入ってきた外来種だといいます。もとは、地中海が原産地なのです。
いかにも愛くるしい、丸まった姿のダンゴムシは、防禦こそ生きのびるための最大の保障と考えています。いやはや、いったい誰が、そんなことを考えついたのでしょうか…。
ダンゴムシのカラー写真を眺めているだけで、ついつい楽しくなるダンゴムシの図鑑でした。
(2020年6月刊。1300円+税)

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