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カテゴリー: 生物

ツバメのせかい

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 長谷川 克 、 出版 緑書房
たくさんのカラー写真とともに、ツバメの生態が詳しく紹介されている楽しい本です。とても身近な鳥ですが、知らないことがたくさんありました。
ツバメのメスは、ヒナにとてもよく似た声を出すオスに惹きつけられる。
オスの羽色が赤いほど、メスにもてる、その代わり、ケンカに弱い。
魅力的で経験豊富なオスが早く繁殖地に現れる。後から来たメスは、オスが来た順番なんて知らないはずなのに、早く来たオスがメスにモテる。不思議なことですよね。
ツバメをふくむ多くの鳥類には紫外線が見える。なので、多くの鳥は、ヒトより多彩な色を見えていることになる。
雨が降っていても、恒温動物の鳥は、日々、大量にエネルギーが必要である。
ツバメの平均寿命は1年半ほど。
日本に戻ってきたツバメのカップルの半数は離婚している。
巣立っても、無事に戻ってくる確率は数%ほど。大半は死んでしまう。
ツバメのメスは、夫より魅力的で子孫繁栄能力の高いオスを浮気相手として並んでいる。
日本の街中にいるツバメでは、婚外子は3%ほど。ところが、ヨーロッパの牛舎で集団繁殖するツバメでは婚外子が3割以上もいる。
玄鳥至、玄鳥去。玄鳥とはツバメのこと。ツバメが来た、ツバメが去ったというコトバ。
泥で巣をつくるというツバメの行動は、鳥類全体でみても類を見ないユニークな行動。
世界中にツバメは70種以上もいるが、日本には、わずか5種のみ。
ツバメは東南アジアから集団で渡って来ているのでしょうか。その渡りの途中をとらえた映像はないのでしょうか。あんな小さい身体で何千キロも飛んでくるなんて、不思議としか言いようがありません。
(2021年6月刊。税込1980円)

となりのハト

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 柴田 佳秀 、 出版 山と渓谷社
まさに身近でよく見かけるのがハトです。カラスも見かけますが、人間への警戒心が強く、いつも少し離れています。ハトは、いつも足元近くにまで迫っても逃げようとしませんので、「どいて、どいて」と声をかけるほどです。
世界に350種もいるハトの体型はほとんど同じで、例外がない。小さい頭に、ぽっちゃりした丸い体。嘴は小さくて、足が弱い。
ハトには目立った武器はなく、丸腰でも、天敵のタカに食べ尽くされないのは、逃げる天才だから。
鳩胸。胸が大きく張り出して発達しているのは、大きな筋肉があるから。その割合は体重の31~44%にもなる。このハトの胸は強力なエンジン。巡航速度で60キロ、風に乗ると100キロ超。この大きなエンジン(胸)があるおかげで、ハトは高速で飛び、タカの猛追を振り切って逃げのびることができる。
ハトの羽毛は、とても抜けやすい。タカに追いつかれて、尾羽がタカにつかまれると、ごそっと羽毛が抜け、逃げ出せる。
また、ハトの羽毛には、粉になる羽毛がある。タカがつかもうとすると、粉が邪魔になり、つかまえられない…。
ハトは地上を首を振って歩いているように見えているが、それは誤解。よく見ると、ハトは、頭を静止させている。そして、首振り(実は静止)しているから地上のエサを見つけて食べる。
ハトは、基本的にベジタリアン。ハトは、水をごくごく飲むことができる。ハトの舌は注射器のピストンのような働きをし、口の中の圧力が下がるため、水を吸い上げられる。鳥は、一般に水をあまり飲まない。ところが、ハトは水をとてもよく飲む。
ハトがヒナを育てるときの「ピジョン・ミルク」は、食道の「そのう」の壁がはがれ落ちて出来ている。オスの「そのう」も、ヒナが出来ると肥厚し、ピジョン・ミルクが出来るようになる。つまり、ヒナを育てるには、オスとメスがともにミルクを与える。
ハトは、ヒナにピジョン・ミルクという完全栄養食をまさしく我が身を削って与えている。
ハトは、種子さえたくさんあれば、ピジョン・ミルクができるので、昆虫の発生時期に左右されることなく、1年中、繁殖が可能。ハトの繁殖期間は1年中。だから、求愛の様子は1年中、見ることができる。
日本で記録されたハトは12種。一般人が出会うのは、ドバトとキジバトの2種。しかし、実は、ドバトというハトはいなくて、カワラバトのこと。カワラバトを家禽(かきん)化したのをドバトと日本では呼んでいる。
イスラム教では、ハトは神聖な鳥なので、食べない。砂漠では、ドバトの糞(ふん)は、燃料として貴重だった。
ハトは、平安時代末期から、戦いの神様の使い。ハトは、勝利をもたらす瑞鳥だ。
ドバトが少ないのは、公園でエサやりが減ったから。
ミノバトは乱獲されて、少なくなったうえ、砂肝にある「石」が磨くときれいになるので、宝石としての需要まである。
ナポレオンの戦争のとき、ワーテルローでイギリス軍が勝った情報を、ロスチャイルドは伝書鳩を利用していち早く知り、株価が上昇する前に大量の株を買い付け、大もうけした。
レース鳩は、最高時400万羽もいた。鳩レースは、短くて100キロ、長いと1000キロをこえる。北海道の最北から関東まで、ハトは15時間で飛んで来る。ただし、100キロ級のレースだと、無事に帰ってくるのは1割しかいない。
ハトにまつわる面白い話のオンパレードでした。
(2022年4月刊。税込1485円)

ビーバー

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ベン・ゴールドファーブ 、 出版 草思社
ビーバーについての480頁もある部厚い本です。
ビーバーは、その毛皮が狙われ、また、ダムをつくるので農家から目の敵とされ、一時は壊滅的状況に追い込まれた。しかし、その後、保護策が功を奏して、今や北アメリカには1500万匹のビーバーが生息していて、絶滅の危機は脱している。ヨーロッパでも同じで、わずか1000匹にまで減っていたのが、今や100万匹に急増している。
とはいっても、実のところ、かつての北アメリカ大陸には、ビーバーは6千万匹から40億匹はいたと推定されているので、とてもそこまでは復活していない。
ビーバーがダムをつくるのは、捕食者からの安全確保、風雨からの避難、食料の貯蔵のため。ビーバーは、水中では15分も息を止めていられる。水かきのある後ろ足のおかげで、水中の動きはパワーアップする。まぶたは透明なため、水面下を見ることもできる。
ビーバーは、摂取したセルロースの3分の1を消化する。これは、ビーバーが自分のウンチを食べること、非常に長い腸と多様な腸管内菌叢(きんそう)によって助けられている。
ビーバーの上下各2本の門歯は、死ぬまで伸び続ける。そのため、門歯でものを削っても、大丈夫。自生発刃作用(じせいはつじんさよう)がある。
ビーバーは、家族を大切にする動物で、一夫一婦制をとっていて、4~10匹で一家をなしている。子は2歳になり、下の子(弟妹)が生まれると、自分の縄張りを求めて巣立ちする。
ビーバーのつくるダムは、地表水と地下水をあわせて1基あたり2万2千~4万3千立方メートルの水を貯める。存在するものには、合理的な理由が必ずあるという昔からの格言どおり、ビーバーにも自然サイクルのなかで大きな役割を果たしてきたし、果たしていることを実感させてくれる本でした。
(2022年2月刊。税込3630円)

野ネズミとドングリ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 島田 卓哉 、 出版 東京大学出版会
ネズミは、鋭い一対の切歯(前歯)をもち、このネズミの切歯は一生伸び続けるため、年をとっても歯がすり減って堅いものがたべられなくなるということがない。
ネズミ算という言葉のようにネズミは多産の象徴として扱われることが多いが、実はそれほど多産ではなく、2~8匹(平均4~5匹)というネズミが多い。日本の野ネズミでは、アカネズミは2~8匹、ハタネズミは1~6匹。最多のアフリカのサハラタチチマウスは平均10~12匹の子どもを1回に出産する。少子のほうではウオクイネズミは1回に1匹のみ。
野生のアカネズミの寿命は半年から1年ほど。
アカネズミは、冬眠しないが、低温やエサ不足のとき、支出エネルギーを節約するため、日内休眠という低代謝状態に入る。
アカネズミにドングリを与えると、2日間から様子がおかしくなり、やせてきて、ふらふらしだし、そのうち数匹は死亡した。ブナの実を食べていたアカネズミはフツーだった。
好物のはずのドングリを食べたアカネズミが異常な状態になるのはなぜなのか…。
ドングリにはタンニンが含まれている。タンニンとは、植物によって生産される、タンパク質と高い結合能力を有する分子量500以上の水溶性ポリフェノール。赤ワインに含まれるポリフェノールや、お茶に含まれるカテキンもタンニンの一種。
タンニンの最大の特徴は、タンパク質との高い結合能力にある。
タンニンは、穏やかに作用する消化阻害物質だとみなされてきた。しかし、それだけなく、消化管の損傷や臓器不全といった、急性毒性をもつ物質だ。これが、タンニンは、量的防御物質でありながら、質的防御物質でもあるといわれる所以だ。
ドングリを日常的に食べているアカネズミにとっても、コナラやミズナラのドングリは、潜在的には有害なのだ。そして、この有害なのは、ドングリに含まれるタンニンによって生じていることが明らかになった。
アカネズミが、ドングリなどのタンニンを含むエサを少しずつ食べて、体がタンニンに馴(な)れた状態になると、ドングリに含まれるタンニンを克服することができるようになるのではないか…?
つまり、アカネズミは、馴化(じゅんか)することで、ドングリのタンニンを克服できるのだ。
ドングリは、植物学的には種子ではなく、果実である。多くのドングリはタンニンを豊富に含み、潜在的には危険。
北米産のドングリと比べると、日本産のドングリは、全般的にフェノール類が多い。要するに、ドングリを食べなれていくうちに、毒性が弱まっていくということのようです。それを観察と実験、そして数式で証明していくという地道な作業を繰り返していくのです。大変ですよね。でも、そもそも森林に入るのが好きな人にとっては、苦にならないのでしょうね。
(2022年1月刊。税込3740円)

熊を撃つ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 西野 嘉憲 、 出版 閑人堂
岐阜県は飛騨(ひだ)の山奥で熊を撃つ状況をド迫力でとらえた大判の写真集です。
トップ頁の写真は、銃を構えて熊に狙いを定める漁師の目つき、その迫力に圧倒されます。
飛騨市の山之村は昭和の半ばまでは秘境と呼ばれていた。麓(ふもと)の神岡から片道20キロ、車で40分。人口は64戸、132人。冬の積雪は2メートルをこえ、最低気温は氷点下20度。保存食となる寒干し大根が名物。
ここらの熊は絶滅危惧種どころか、数が増えるとともに大型化しているとのこと。その理由は、天然林は多く、餌になるニホンカモシカが増えているため。
熊のエサはカモシカなんですね。カモシカの方が逃げ足は速そうなんですが…。
熊は、肉や毛皮以上に、熊の胆(い)と呼ばれる胆のうに価値がある。熊の胆は万病の薬として昔から珍重されていて「医者の代わり」とか「命のようなもの」として尊ばれた。
熊の胆は、1匁(もんめ)あたり金より高い額で取引され、貴重な現金収入となる。
熊を探すのには猟犬が活躍する。ここでは、地犬の柴犬を使う。冬ごもりの穴に潜む熊を猟犬が探し出す。鉄砲を使う前は、猟師は槍を使った。
冬眠時の熊の肉は全体の8割が部厚い白い脂肪。上品なうま味で、しつこさがない。凍った状態で口に入れると、舌の上で溶け、チーズのような食感と風味が楽しめる。また、汁が冷めて固まることがない。
熊の胆は、米粒の半分ほどの大きさに割り、お湯に溶かして飲む。
東京から石垣島に移り住んだ著者が、熊猟の現場写真を撮るべく、厳冬期の飛騨に入ってつかんだシャッターチャンスの数々の写真です。大判だけあって、その迫力がすごいです。熊を撃つ写真が何枚もあり、よくぞこんな写真が撮れたものだと驚嘆しました。
もよりの図書館に購入してもらってでも、ぜひ手にとって眺めてみてください。
(2022年2月刊。税込3960円)

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