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カテゴリー: 生物

マザーツリー

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 スザンヌ・シマード 、 出版 ダイヤモンド社
 森林はインターネットであり、地下には菌類が縦横無尽につながっていて、「巨大脳」を形成している。
 ええっ、いったい何のこと…、と思いたくなりますよね。先日、NHKテレビでもこれを実証する映像を流していました。圧倒される思いでした。
 古い木と若い木は、ハブとフードで、菌根菌によって複雑なパターンで相互につながりあい、それが森全体を再生する力となっている。
 古木は森の母親だ。これらのハブはマザーツリーなのだ。いや、ダグラスファーは、それぞれが雄である花粉錐と雌である種子錐の両方をつくるのだから、マザーツリーであり、ファザーツリーでもある。このマザーツリーが森を一つにつないでいる。マザーツリーから伸びる太くて複雑な菌糸は、次の世代の実生に大量の養分を効率よく転生している(に違いない)。森林を皆伐すると、この複雑な菌根ネットワークがバラバラになってしまう。
 ダグラスファーは、自分が受けたストレスを24時間以内にポンデローサパインに伝えている。
 マザーツリーは、親族の苗木の菌根菌に、そうでない苗木よりもたくさんの炭素を送っている。マザーツリーは、自分の子どもが有利なスタートを切れるように図らうが、同時に、村全体が子どものために繁栄できるよう、その面倒もみている。
 私たち、現代社会に生きる人々は、木々に人間と同じ能力なんかあるはずがないと決めつけている。でも今や、私たちは、マザーツリーには、実際に子孫を養育する力があることを知っている。ダグラスファーが自分の子どもを認識し、ほかの家族や樹種と識別できることが分かっている。彼らは、互いにコミュニケーションを取りあい、生命を構成する要素である炭素である炭素を送っている。
 マザーツリー役の苗木は、その炭素エネルギーで菌根ネットワークを満たし、炭素はそこからさらに親族の苗木の葉へと移動して、マザーツリーの滋養は苗木の一部になっていた。
 ハサミで傷つけられたマザーツリーの苗木は、より多くの炭素を親族に送っていることも判明した。つまり、自分のこの先が分からなくなったマザーツリーは、その生命力を急いで子孫に送り、彼らを待ち受ける変化に備える手助けをした。死が生きることを手助けをした。死が生きることを可能にし、年老いたものが若い世代に力を与える。
 このように森は知性をもっている。森には、周囲の状況を知覚し、コミュニケーションを取りあう能力がある。
 著者はカナダの森林生態学者です。2人の娘の母親としてもがんばっていましたが、乳ガンと分かり両乳房を切除し、抗ガン剤で頭髪が抜けても、見事に研究生活を続けています。ガンになってから寛解に至るわけですが、それは、決して希望を捨てないことを実践したからでした。
 健康でいられるかどうかは、周囲とつながり、意思を伝達しあうことができるかどうかにかかっている。
 あれっ、これって森の中のマザーツリーが果たしているのと同じことじゃない…。著者は、その点でも共通点をつかんだのでした。550頁もの大部の本ですが、一気読みしようと決意し、電車の中の1時間で読了しました。典型的な速読です。
(2023年1月刊。2200円+税)

孤高の狩人、熊鷹

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 真木 広造 、 出版 メイツ出版
 圧倒的な迫力です。熊鷹(クマタカ)の目付きの鋭さには、見ているだけでタジタジとさせられます。
 山形県生まれの写真家が山形の朝日連峰に出かけて捉えたクマタカです。どの写真もピントが見事なほどあっていますので、その広げた翼の美しさに思わず息を呑みます。
 冬の時期に、年間50日から60日間も、山中、ブラインドにこもって、ひたすら待ち続けてクマタカを待ちます。深い積雪の中、厳寒との戦いです。それなりの覚悟と強い姿勢がなければ撮れない画像です。それでも、シャッターチャンスは10%以下。ひゃあ、すごいです。こんな寒さに耐えて6年間もがんばったんです。クマタカも写真を構えている人間には気がついていたようです。なにしろ、ときに目線があうのですから…。
 クマタカは、古くから鷹狩りのタカとして利用されてきた。
 オスとメスと目で見て識別するとのこと。メスは次列風切が長く、翼の幅が広く見える。オスは、次列風切と初列風切の長さの差が少ない。なので、メスのクマタカのほうが少しばかり大きい感じです。
 紅葉の秋をバックとしたクマタカの写真もありますけれど、やはり真っ白な雪景色のなかのクマタカのほうが断然、迫力があります。
 カメラを向けると、クマタカもそれに気がついて、じっとにらみつける。その眼光の鋭さ、その迫力に圧倒された。まさしく、そのとおりです。
 ブナの大木の上のほうで子育てしているクマタカ親子の様子もカメラで捉えています。いったい、どうやってこんな写真を撮ったのでしょうか…。
 大空を悠然と舞うクマタカは気品があります。この本では「貴賓」と書かれています。
 クマタカがヘビを捕まえて飛んでいる写真もあります。ヘビたって食べるのですね。ヘビから噛まれてしまいそうですが…。
 ところが、2羽のカラス(ハシブト)に追われて必死に逃げていくこっけいなクマタカの姿もとらえられています。2対1ではクマタカも、うるさくてかなわん、もう相手にせんどこ…という感じで、逃げまどっているのです。
 6年間の血と汗の結晶が見事な写真として結実しています。撮影データもぎっしり。こんなに詳しく記録していくものなんですね、驚きます。
 ぜひ、あなたも手にとって眺めてみてください。一見の価値は大いにあります。
(2022年10月刊。税込2200円)

動物のペニスから学ぶ人生の教訓

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 エミリー・ウィリンガム 、 出版 作品社
 オーストラリアのヤブツカツクリはペニスが非挿入性であるにもかかわらず、複数のパートナーと分け隔てなく交尾する。ペニスを持たないオーストラリアツカツクリは忠実に一夫一婦制を貫く。
 挿入器を持ち、父親が熱心にヒナの世話をするダチョウやエミューは巣内に不義の子のいる割合が高く、育てているヒナの半数以上は、オスと血がつながっていない。
 何が原則で、何が例外なのか、勘違いしないように…。
 陰茎骨は、脊髄動物の歴史上、もっとも謎に包まれた骨のひとつだ。
 マルミミゾウの求愛に関する観察によると、オスはメスを「愛撫」したあと、鼻を交差させ、先端をお互いの口の中に入れる。交尾の前に、オスはメスの協力のもと、メスの検体の化学検査をする。交尾が終わると、群れのほかにメンバーが周りを取り囲み、おのおのオスとメスから「検体採取」をして、幸せなカップルの交尾を祝う。ゾウにとって、情交は集団全体で育(はぐく)むもの。
 ゾウアザラシのメスは、オス同士の闘争をけしかけ、配偶相手の候補者をふるいにかけ、選択している。
 古代ギリシャでは、ペニスは小さく、きゃしゃであるのが良いとされた。大きく太いペニスは野蛮で、奴隷や未開人の特徴であり、ギリシャ人にはふさわしくないとされた。
 著者は学者であると同時に、妻であり、母親でもあります。
 「3人の息子たちと夫は、私のヒーローだ。生殖器づくしのこの本を私が芝居かかった調子で読みあげ、衝動の赴くままにダジャレを連発するのを、品よく我慢してくれた」と、あとがきに記しています。このように女性が男性のシンボルであるペニスについて研究して発表した本なのです。なので、とてもユニークな視点に満ちみちています。
(2022年8月刊。税込2970円)

イノチのウチガワ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ヤン・パウル・スクッテン、アリー・ファン・ト・リート 、 出版 実業之日本社
 通常のX線よりも波長が長く、透過性が弱いため、骨などの硬い物質ではない、ちょっとした薄い皮膚でもうつるものを軟X線という。この軟X線撮影装置で撮った生物の写真。これまでのX線では採れなかった貴重な写真が満載です。
要するに、生物のウチガワをうつし出すのですから、すごいものです。コンピューターで調整せず、歯も骨も、そっくりそのままの姿で撮られています。
X線写真の撮影では、照射するX線量を調整する。照射線量が多いほど、X線は簡単に物を透過する。硬い物質のX線写真を撮りたいときには、照射線量を多くする。柔らかい物質や薄い物質を撮るには少ない量で足りる。
サソリは、クモに近い節足動物。クモの脚は8本だが、サソリも実は同じで8本、前の大きな「はさみ」は、実はあごから伸びた触覚(触肢)。
トンボには超強力な胸筋がある。これを使って、4枚の翅をそれぞれ個別に動かせるので、空中でどんな曲芸も演じることができる。そして、あらゆる飛び方をするあいだ、まっすぐなしっぽでバランスをとっている。一匹の大きなトンボは、1日で数百匹の蚊を食べている。
イモムシがチョウになるとき、羽化のあと、翅脈の管に体液がたくさん送られてチョウの翅をぴんとさせる。
タツノオトシゴは、食べた物を蓄える胃がない。食べたものは、そのまま腸へ向かう。タツノオトシゴは、小さな口で吸いこむだけ。常に食べていないと、十分なエネルギーが得られなくなる。
カメは、新陳代謝がものすごく低い。新しい細胞をつくり出すのに必要なエネルギー消費が少ない。
セキレイ(鳥)の骨はストローに似ていて、重さもほとんどストロー並み。中身はほとんどスカスカの状態。
鳥は腕の筋肉はほとんど使わず、胸筋を使って胸をはって飛んでいる。
コウモリは骨を細くすることで、できるだけ体を軽くしている。コウモリの翼は、手のひらが大きく進化したもの。コウモリの4本の指は非常に長く、親指だけが短い。
ノウサギとアナウサギは似ているが、少し違う。ノウサギは単独で暮らし、アナウサギは群れで暮らす。ノウサギはくぼみで、アナウサギは地中の巣穴で眠る。
モグラの手の指は各5本ずつのあと、6本目がある。
メンフクロウが実はやせた生き物であること、マルハナバチがくたびれた細い腰をもち、コウモリが大きな両手を使って飛ぶこと、シタビラメの全身の骨は、まるで芸術作品のよう。命の内側がこんなに本当は美しいのですね…。貴重な、未知のものへ誘(いざな)ってくれる大判の生物写真集です。
(2022年12月刊。税込2860円)

へんてこな生き物

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 川端 裕人 、 出版 中公新書ラクレ
 カラー版なので、カラー写真がたくさんあって、見ても楽しい新書版の生き物図鑑です。
 哺乳類なのに、花の蜜と花粉しか食べない小動物のハニーポッサムは、花の中に突っ込む長い「クチバシ」をもった不思議な格好をしている。
 ハリモグラは、モグラの仲間ではない。卵を産んで、母乳で育てる。赤ちゃんは、母親の腹の袋の中で守られながら、母親のお腹からにじみ出る母乳をなめるようにして飲んで成長する。ハリモグラにはREM睡眠が観測されないので、夢を見ない(はず)。
 ヒロバナジェントルキツネザルは竹を主食にしている。パンダみたいですね。食事の9割以上が竹。この竹は有毒なシアン(青酸)化合物を非常にふくみ、そのうえ猛烈に苦い。なので、地元民は絶対に、この竹は食べない。なのに、このキツネザルは美味しそうにかじる。哺乳類の平均的な致死量の50倍近いシアン化合物を消化できる、つまり毒を分解する腸内細菌をもっているようだ。
 屋久島にすむヤクシマザルは本土のニホンザルより一回り体が小さく、ずんぐりしている。
 ヤクシカはいつもサルの群れの近くにいる。サルが樹上で果物や葉を食べるとき、枝ごと落としてしまうことがある。また、サルの糞もシカが食べる。なので、いつも一緒に行動している。
 チンパンジーは、常時、にぎやかだ。騒々しい大型類人猿だ。
 テングザルは、他の動物が好むであろう糖分の多い、熟した果実はあえて避けている。
 ジンベエザメは、サメと言っても、プランクトンを主食とする「優しい巨人」。人を傷つけたという話はない。
 アマゾンマナティーは、アマゾン川の固有種で、植物だけを食べる。
 カカポは、世界唯一の飛べない鳥。
 ミナミシロアホウドリは体重が9キロもある。威風堂々で、気品あふれる鳥だ。
 サバクトビバッタは、その研究者である前野ウルド浩太郎が詳しい。『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)は、まことに面白い本なので、読んでいない人には超おすすめの本です。
 いやあ面白い本でした。世の中には、こんな奇妙奇天烈な生き物がたくさんいるのですね…。
(2022年8月刊。税込1320円)

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