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カテゴリー: 生物

タカの巣とり

カテゴリー:生物

著者 猪崎 隆、 出版 鉱脈社
 楽しく読める童話のような話の本です。山里育ちではない私でも、なんだか身近なものとして想像できる少年時代のなつかしい話でした。
 いまでは、宮崎でも、このような山里の体験をしている少年は少ないのではありませんか。実にうらやましい少年時代の思い出です。ですから、サブタイトルに「我が生涯の最良の日々」とあるのも、素直に、そうだろうなとうなずけます。
 というのも、あのサシバをヒナを巣から獲って育てて、野に戻したという貴重な経験が淡々と語られているからです。すごいですよね。おかしなことに、タカと間違ってフクロウの子を巣から奪って育てようとした話も紹介されています。
 そうはいっても、成鳥にまで育てる苦労は大変なものですね。毎朝、早くから田んぼなどに出て、カエルだけでなく、カナヘビまでとってきて、餌として与えるのです。
 私も、子どものころはザリガニ釣りに夢中でした。ですから、カエルを捕まえると、片足を持って地面に思い切りたたきつけ、両手でカエルの両足を引き裂き、ザリガニ釣りのエサにすることに何の抵抗もありませんでした。今は、とてもそんなことはできません。子どもって、本当に残酷です。
 タカ(サシバ)の子を巣から奪うにしても、あまりに早すぎると、人間の手で育てるのは難しい。卵の様子を見て、いつごろにヒナがかえるか判断する。これもすごいですね。
 卵の汚れ具合で、だいたいの産卵時期を予想できる。産みたての卵は真っ白だ。日が経つにつれて茶色っぽくよごれていく。それで、ヒナがかえる日を想定する。なーるほど、ですね。そして、ヒナがかえっても、すぐには奪ってはいけないのです。
 カラスは、人の目につく場所でも大木なら巣をつくる。しかし、サシバは木の大きさよりも、まず場所を選ぶ。人の近寄らない、見晴らしのよくきく山腹の急斜面を選ぶ。
 サシバの喉には、子どもがいたずら書きでもしたような、一本の黒いタテの線があり、こっけいな感がする。この千から、サシバの名前がついた。
 そして、サシバを育て上げ、ついに野に放すまでの日々が描かれています。
 著者は、よき父と母をもったものだと感心しながら読みました。
 我が家の庭にも小鳥たちはやってきますが、さすがにタカは来ません。私と同世代の著者の少年時代を描いた、いい本でした。
 
(2009年5月刊。1000円+税)

凍った地球

カテゴリー:生物

著者 田近 英一、 出版 新潮新書
 ええっ、地球が雪玉(スノーボール)のように凍りついていた時期があった……。とんでもない仮説です。地球って、火の玉地球から始まったはずなのに……。
 かつて地球の表面は氷で完全に覆われていた。こんな衝撃的な事実が明らかとなったのは、この10年来のこと。火山活動による二酸化炭素の供給が現在の10分の1以下になると、地球は全球凍結を避けられないことが理論上の計算で導かれた。
 でも、本当にそんなことが起きたのでしょうか……?
 地球が誕生したのは、今から46億年前のこと。そして、その後の6億年間は、地質記録がほとんどない。
 今から5000万年前のころ、地球は最温暖期だった。パリやバンクーバー(カナダ)のような緯度50度あたりまで、今のアマゾンにあるような熱帯雨林が分布していた。その原因は二酸化炭素濃度の増加にあった。
 今から46億年前、誕生したばかりの太陽の明るさは、現在の70%程度だった。太陽は。時間とともに徐々に明るさを増しており、現在でも1億年に1%程度の割合で明るくなっている。うーん、そういうことってあるんですかね。地球も進化してるんですか……。
 地球の大気組成は、時間とともに大きく変わっている。それは進化しているとも言える。原生代において、主要な生物のほとんどは海の中に生息していた。全球凍結が生じると、海は表層1000メートル程度が完全に凍結してしまうため、光合成生物が活動できる場は失われる。しかし、海洋は表層の1000メートルほどが凍結するだけで、深層領域は凍結しない。やがて、大気中の二酸化炭素分圧が0.12気圧にまで達すると、氷は赤道から一気にとけはじめる。
 全球凍結現象というのは、全球平均気温の変動が100度にも及ぶような極端な気候変動である。
地球には、もともとオゾン層はなかった。生物が陸上に進出できたのは、大気中の酸素濃度が増加したことでオゾン層が形成され、それが太陽の紫外線を吸収してくれるようになったおかげだ。地球と生命は、お互いに影響を及ぼしあいながら、ともに進化してきたのではないか。これを、地球と生命の共進化という。
 地球の全球凍結が生物進化のフィルターとしての役割を果たした。全球凍結によって生物の多様性が大幅に減少することでボトルネックが生じ、その直後に生物の多様化が促進された可能性がある。また、全球凍結の直後に大気中の酸素濃度が増加したことによって、生物の大進化が促進された可能性がある。
 全球凍結イベントという破局的な地球環境変動が生じれば、生物進化に与える影響は計り知れない。全球凍結による生物多様性の大幅な低下と大気中の酸素濃度の増加が重なり、真核生物や多細胞動物の出現という、生物進化史上の大進化をもたらしたのだとしたら、全球凍結は生物の進化にとって決定的な役割を果たしたことになる。つまり、全球凍結がなかったら、地球上の生物は、いまだにバクテリアのままだったかもしれないのだ。うむむ、なんという逆説的な指摘でしょうか……。
 地球は、いま、新生代後期氷河期のまっただなかにある。氷期と間氷期が10万年の周期で繰り返しており、ほんの1万年前までは寒冷な氷期だった。その後、地球は温暖な間氷期となり、人類は文明を発展させてきた。しかし、あと数千年から一万年のうちに、また再び氷期が訪れることは確実なのだ。
 地球温暖化が叫ばれているなかで、いずれ地球に氷河期が来るという指摘がなされています。地球と私たち生物体との関わりを考えさせてくれる好著です。
 
(2009年1月刊。1100円+税)

蝶の道

カテゴリー:生物

著者 海野 和男、 出版 東京農工大学出版会
 いのちあふれ、きらきらと輝く蝶の写真にただただ圧倒されます。魚眼レンズですから、蝶が目の前をヒラヒラ飛んでいるようです。
 蝶は水たまりから水を飲む習性がある。土から溶け出したミネラル分を摂取するためだ。ただ、不思議なことに、集まるのは全部オスの蝶だ。
 なんと、蝶が勢いよくオシッコしている写真まであるのです。すごい、ですよ。水をたくさん飲んでは、しょっちゅう排出するのです。
 蝶にも飛んでいく蝶道がある。沢沿いに、開けた林道に沿って蝶道があり、そこでカメラを構えて待ち続ける。魚眼レンズを使っても、蝶までわずか1センチというところまで近づくため、逃げらることも多い。
 蝶は、同じ種類同士で集まる習性がある。一匹が水を飲みに地面に降りると、まわりを飛んでいた同種の蝶も次々に舞い降りて、集団をつくる。繁盛しているレストランに、さらに人が集まるのに似ている。
 蝶は、子孫を残すために交尾をする。オスの仕事はメスを探すこと。オスがとどまらずに草むらをとんでいたら、メスを探していると思っていい。それに対して、メスの仕事は卵を産むこと。メスが飛んでいるのは、産卵に適した植物を探しているのだ。
 蝶は交尾しながら飛ぶこともある。たいていは、交尾直後に安全な場所に移動しようとするからだ。オスとメスのどちらが飛ぶかは、種によって決まっている。モンシロチョウの場合は、オスがメスをぶら下げて飛ぶ。
 モンキチョウのメスは、オスに誘われると交尾する気がなくても後をついて飛ぶという面白い習性がある。
 モンシロチョウは、農薬を使わない家庭菜園に多い。モンシロチョウが食べているキャベツなら、人間も安心して食べられる。
 いやあ、そうなんですか。実際にキャベツを栽培してみたことがあります。そのとき、その大変さが身にしみて分かりました。毎日毎日、青虫取りに追われるのです。割りバシを使って青虫をつまんで踏みつぶす作業を続けましたが、とても追いつかず、まさしく虫食いだらけのキャベツとなり、人間はあえなくモンシロチョウに敗退してしまいました。2年ほどキャベツづくりに挑戦しましたが、ついに断念してしまいました。ということは、いま、店頭に並んでいる見事なキャベツには相当の農薬がふりかけてあるはずです。
 表紙にある蝶の道の写真は、アマゾン(ペルー)の林道だということです。色とりどりのおびただしい蝶が舞う道です。こんな道が12キロも続いているというのですから、地球は広いですね。心の軽くなる、豪華絢爛たる蝶の写真集です。
 
(2009年2月刊。3600円+税)

風の中のマリア

カテゴリー:生物

著者 百田 尚樹、 出版 講談社
 オオスズメバチの30日という短い一生をたどった物語です。知識としては知っていましたが、読み物仕立てになったストーリー展開は見事なものです。一気に読み上げ、オオスズメバチの雄々しくも(実のところ、戦士はメスたちばかりなのですが…)短い一生を知って、感慨深い余韻がありました。
 オオスズメバチは、最大のスズメバチである。女王バチは50ミリほど、ハタラキバチは40ミリ以下、オスバチは40ミリ前後もある。非常に獰猛(どうもう)で、攻撃力も極めて高く、他の昆虫を襲って幼虫のエサにする。
 大アゴの力は強力で、固い甲虫類の甲殻も噛み砕いてしまう。太い針から噴出する毒液は、大型の哺乳動物も殺傷する力がある。秋の繁殖期には、ミツバチや他のスズメバチの巣を集団で襲い、サナギと幼虫を奪い取る。
 オオスズメバチは幼虫時代は肉食だが、成虫になると、逆に肉などの固形物は一切食べない。そのため、樹液や花密が食物の代わりとなる。最高の栄養源は、幼虫の出す唾液だ。そこには特殊なアミノ酸化化合物が含まれていて、そのおかげでオオスズメバチのワーカーは体内の脂肪を直接燃やしてエネルギーに変換できる。
 脂肪を直接燃やすことのできるオオスズメバチは、体内に乳酸を発生させないので、どれほど運動しても、ほとんど筋肉疲労を起こさない。オオスズメバチが一日に100キロ以上も飛べる驚異的な運動量を誇る秘密は、そこにある。
 ミツバチはエサ場を見つけると巣に戻って尻振りダンスで仲間にその場所を知らせる。オオスズメバチは、フェロモンで仲間をあつめる。フェロモンを察知して集まったワーカーは、3頭以上になると行動を一変させ、殺りくに終始する。飛来してくるワーカーの中には、仲間に栄養を補給するものもいる。戦場から巣にもどるときには、殺した敵の肉だけでなく、死んだ仲間の肉も持ち帰る。
 攻撃は、たいてい一日で終わるが、ときに2~3日もかかる。集団攻撃を受けたスズメバチ類は、ほとんど全滅してしまう。
 ニホンミツバチは、オオスズメバチの偵察ワーカーが分泌する「エサ場マークフェロモン」に反応して「蜂球」行動に移る。つまり、ニホンミツバチは、オオスズメバチがやってくると、大勢で取り囲んで、蜂球をつくる。そのなかは、摂氏46度まで上がる。オオスズメバチは、46度を超える高温にさらされると死んでしまうのだ。ニホンミツバチは46度までは耐えられる。その差が彼らの死生を分ける。
 女王バチ、兵隊バチ、そしてオスバチなどがそれぞれ書き分けられていますし、隣接するハチなどが襲われていく状況などは憐れみも誘います。でも、そうしないとオオスズメバチは生き残れないのです。
 自然界の過酷な生存競争について考えさせる面白い小説でした。
 連休中、久しぶりに近くの小山へハイキングに出かけました。昼から雨はあがるという天気予報を信じて、小雨が少しぱらついていましたが、おにぎり弁当をもって小さなリュックを背負って出かけました。
 土手には野アザミが一面に咲いていました。すっくと伸び立つ紫色のアザミの花は気品を感じさせます。山のふもとにあるミカン畑では、白いミカンの花が満艦飾でした。隣にビワ畑もあり、こちらは袋かけがおわっています。
 ポツポツ降っている小雨が止みそうもありませんでしたので、頂上まで行くのは断念し、見晴らしのいい丘で腰をおろして弁当開きとしました。ウグイスやら名前のわからない小鳥がきれいな声でさえずってくれるなかで、おにぎりを美味しくいただきました。
 なかなか晴れ上がってくれないなと思いながら帰路に着きました。家に戻って休んでいると、やがて雨は本格的に降り出し、天気予報もあてにはならないと思ったことでした。
(2009年3月刊。1500円+税)

自然に学ぶ・粋なテクノロジー

カテゴリー:生物

著者 石田 秀輝、 出版 化学同人
 土は私たちの生活には不可欠の材料である。西洋紙のなか30%、光沢のあるアート紙は40%以上の粘土鉱物が含まれている。軽い和紙に対して洋紙が重いのは、このため。6Hの鉛筆には55%、化粧品の口紅に15%、ファンデーションには40~70%も含まれている。
 うへーっ、ちっとも知りませんでした。
 カタツムリや卵は、表面に分泌液を出すこともなく、いつもピカピカ、きれいな表面をしている。なぜか?
 カタツムリの表面を電子顕微鏡で見てみると、数十ナノメートルからミリメートルにいたる小さな凸凹がたくさん存在する。この凸凹が材料の表面エネルギーを変化させているから。なんだかよく理解できませんが、いろんな細かい仕掛けがあるのですね。
 水のいらないお風呂が作られている。4リットルのお湯を泡にする。まったく水による圧力のかからない入浴感を楽しめる。うむむ、なるほど、そういうこともできるのですね。
 シマウマの縞は風を起こす役割をもっている。縞の白い部分は熱を吸収しにくく、黒い部分は熱を吸収しやすくなっている。そのため、身体の表面で温度差が発生し、微妙な風の流れ(対流)が起こる。このおかげで、シマウマは常に身体を快適な温度に保つことができている。
 むひょう。す、すごいですね。敵から見つけられにくくするためとばかり思っていましたよ。
 アワビの貝殻は落としたくらいではびくともしない。ハンマーで叩いても、なかなか壊れないほど強靭だ。アワビの貝殻は、厚さ1マイクロメートル以下の薄い炭酸カルシウムの板を有機質の軟らかい接着剤で貼り合わせた「積層構造」になっていて、厚さ1ミリメートルの中に、その薄い板が1000枚以上重ねられている。貝殻にヒビが入っても、柔らかい接着層でヒビが止まり、薄板が一枚一枚、少しずつ壊れることで破壊エネルギーを吸収し、なかなか割れない。破壊するためには、炭酸カルシウム単体と比べて、3000倍の破壊エネルギーを与える必要がある。
 ふむふむ、自然の驚異、そのすごさを改めて実感させられました。
 
(2009年1月刊。1700円+税)

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