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カテゴリー: 朝鮮・韓国

サムスンの真実

カテゴリー:朝鮮・韓国

著者   金 勇澈 、 出版   バジリコ
 著者は私よりひとまわり年少の韓国の弁護士です。特捜部検事をつとめたあと、サムスンに入り、会長秘書室で7年間、財務チームと法務チームに所属し、裏金作りと賄賂渡しという汚れた仕事をしていました。そして、弁護士になって良心の告白をし、サムスンの不正を世に知らしめたのでした。ところが、いわば生命がけの告発も不発に終わり、サムスンは今もなお韓国政治を牛耳る巨大な存在として君臨しています。
 韓国法曹界に対する違法なロビー活動の実態には刮目せざるをえません。
 モチ代検事リストというのがある。賄賂をもらった検事たちの名簿である。
 ところが、サムスンから賄賂を受けとっていた公職者は失職するどころか、要職に就いていった。これはとくに今の李明博政権になって、さらにひどくなった。
 大韓民国は民主共和国ではなく、サムスン共和国である。
大韓民国の主権は1%の富裕層が握っており、法は1万人に対してのみ平等だと言われている。権力層に顔の広い大物の前では無力になるのが韓国社会だ。人々は何か問題が起きると、まず人脈を探して解決しようとする。原理、原則では、不可能なことも、人脈を使えば解決できるという後進的な文化がある。
 検察庁の部長は、後輩検事の捜査を督励するのではなく、上司の意向を尊重し、捜査を妨害する役職だ。そして、血気盛んな後輩たちを意のままに操る部長になるためには、スポンサーとなる後ろ盾が必要だ。ときには豪勢な場所で部下たちを飲み食いさせてこそ、本物の部長を言われる。
ある地域の判事、検事、弁護士はみな同窓生で、それを理由として普段から頻繁に酒席をともにしていた。弁護士は、判事と検事を盛大に接待するのが当たり前になっている。これは日本では、ありえないと弁護士歴40年になろうとする私は確信しています。
 相手方の弁護士を買収したり、担当裁判官を買収する。判事を買収するのは当たり前と思われている。だから、今回は我々サイドの判事だ、ところが相手サイドの判事に変わった、などという報告があがってくる。うひゃあ、日本ではそんな話を聞いたことがありません。もちろん、権力に弱い判事はいるのですが・・・。
 裏金はサムスンの系列会社でつくり出す。そして、借名口座で裏金を管理する。テーマパークの無料利用券や衣料商品券を現職の検事に渡したことがある。
 初めは、ちょっとしたものを贈る。これを受けとる鈍感が大きな不正へとつながっていく。慣れたら、結局、賄賂も受けとるようになる。たしかに、慣れは恐ろしいですよね。
公職者に一度お金を渡すと、ずっと渡し続けなければならない。後になってお金を渡すのをやめたら、相手は不快に思い始める。
 恥も数を重ねると、何とも思わなくなる。不正なお金を渡す側も、もらう側も同じだ。公職者がサムスンからはばかることなくお金をもらう背景には、サムスンのお金は安全、もらって危険がないと言う意識があった。彼に賄賂をもらって公職から追放されても、サムスンが職場を用意してくれる。
サムスンに不利な判決を下した判事は、私は反企業的な法曹人ですと宣言したも同然、反企業的な法律家だという噂が流れると、韓国社会の主流から一瞬のうちに排除される。うへーっ、そこまでなんですか・・・。
 今では、サムスンが、政府、司法、議会の上に君臨している。大統領といえども簡単には接することのできない巨大権力だ。
 サムスンの不正を告発した著者は、左翼共産主義者だと非難されたそうです。しかし、むしろサムスンこそ資本主義の市場経済体制を脅かしていると反論しています。まったく同感です。韓国の繁栄の裏側を鋭く告発した本だと思いました。
(2012年3月刊。1800円+税)

「父・金正日と私」

カテゴリー:朝鮮・韓国

著者   五味 洋治 、 出版   文芸春秋
 先日亡くなった金正日の長男である金正男にインタビューした本です。かなりホンネが伝わってくると思いながら、興味深く読みすすめました。
金正男はディズニーで遊ぼうとして偽のパスポートが発覚して、制送還されて日本で有名になりました。日本には5回来たことがあるそうです。新橋の第一ホテルに泊まり、新橋駅ガード下のおでん屋で飲食したこともあるといいます。
金正男はヨーロッパ(スイスなど)に留学して、「完全な資本主義青年」になったため、金正日から警戒されたと本人が語っています。さもありなん、ですね。
 金正日は、子どもたちが国際的な見解をもつことを希望しながらも、金正男以外の子どもの留学期間を短縮し、留学先で友人と自由に交際できないよう厳格に統制したといいます。なるほど、それもありうるでしょうね。独裁者は孤独でしかありえないのです。
 金正恩が権力を承継したことについて、金正男は、「2年ほど後継教育を受けただけの若者が、どうやって37年間続いてきた絶対権力を受け継いでいけるのか疑問だ」としています。
金正恩は単なる象徴となり、これまでのパワーエリートが実権を握るだろうと見通している。
 正男は「三代世襲」に反対しています。そして、実は世襲については金正日も反対していたことがあると言います。ところが、北朝鮮の内部的な特殊事情から、父の金正日は「三代世襲」せざるをえなかったとみているのです。これもまた、さも、ありなんです。
権力世襲は、物笑いの対象になるし、社会主義の理念にも符合しないと正男は断言する。いまの北朝鮮の経済実情は、とても経済強国に到達したとは言えない。住民を、もう少しよく食べられる生活をさせる政治にしてほしい。こう金正男は著者に語ったとのことです。
 正男は、フランス語、英語のほかロシア語が出来る。中国語や日本語も少しは話せる。
北朝鮮の内情を少しばかり肉声で知ることができました。
(2012年2月刊。1400円+税)

儀軌、取り戻した朝鮮の宝物

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著者   慧 門 、 出版   東國大学校出版部
 日本が戦前、帝国日本として朝鮮半島を植民地として支配していたとき、朝鮮の貴重な文書を勝手に運び出したようです。しかも、その貴重な文書のなかには、なんと日本軍が朝鮮の皇后を虐殺したあとの葬儀を記録したものがあったというのです。これを知れば、日本が一刻も早く韓国に返還すべきは当然です。ところが、この返還にあたって韓国の人々の求めにもっとも協力したのが日本共産党の国会議員でした。かつて反共法まであって、反共産主義が徹底していた韓国の人々は複雑な気持ちで共産党の国会議員の助言を受け入れたとのことです。
 日本共産党って、こんな国際交流活動にも力を入れているんですね。偉いものです。民主党の議員もいくらかは関与したようですが、残念ながら共産党の比ではありませんでした。政権与党になると、こんなにダメになってしまうものなんでしょうか・・・・・。
 朝鮮半島の歴代の各王朝は、国家の大小行事を文書または絵で記録して残した。朝鮮王朝も、王室の行動を詳細に記録した。儀礼手続が反復する宮中行事を効果的に進行するため、すべてを文字と絵で製作し、後代に典範として残した。これを朝鮮王室儀軌という。
 福岡の櫛田神社には、韓国の明成皇后を刺し殺したときの日本刀が保管されている。全長120センチ、刃の長さ90センチ。木製の鞘(さや)には、「一瞬電光刺老孤」と書かれている。17世紀の江戸時代に忠吉という匠人がつくった名剣、肥前刀である。この刀は明成皇后の寝殿に乱入した3人の日本人の一人である藤勝顕が櫛田神社に保管を依頼した。
 王妃は殺害されたあと、裸体で局部検査までされたという。平常時には、男性に顔すら見せなかったのに、死んで異国(日本)の男子らの前に裸体をさらしたのである。
ほとんどの日本人はこの明妃殺害事件を知りませんよね。でもこう考えてみてください。日本の皇后に朝鮮の兵士と壮大たちが武器を持って突然乱入し、皇后を殺害し、その遺体をその場で焼却してしまったとしたら、同じ日本人として、下手人の朝鮮人ひいてはこの件とは何の関係もない朝鮮人に対してまで敵意をもつのは必然ですよね。加害者は忘れても、被害者は忘れないものです。
 「朝鮮王室儀軌」は、王室の主要な儀式という行事の準備過程など詳しく記録し、絵画も入れて制作された文書である。朝鮮時代の儀軌は通常は同じものを8部ほどつくられる。王の閲覧のために、高級材料で華麗につくる御覧用と、関連する官署と地方史庫に所蔵しておく分上用に分けられる。
 この本には、伊藤博文を暗殺した犯人である安重根も紹介されています。
 安重根は今でも朝鮮半島では英雄です。
 それにしても良かったですよね、朝鮮半島の貴重な書物が日本から本来あるべき故国に「返された」というのは。
(2012年2月刊。1800円+税)

北朝鮮に潜入せよ

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著者  青木  理     、 出版  講談社現代新書   
 韓国に潜入してきた北朝鮮の工作員については、これまでも多少の知識はありました。その典型が1968年1月に起きた青瓦台襲撃事件(1.21事態)です。私はこのとき大学1年生です。まだ、東大闘争が始まる前で、平穏な寮生活を楽しく過ごしていました。
北朝鮮の特殊部隊「124部隊」に所属する武装工作員が南側に侵入し、青瓦台までわずか1キロという至近距離に迫った。生け捕られた一人は「朴正熙の首を取りにきた」と目的を語った。
 これに対して朴大統領が報復を考えた末に起きたのが映画『実尾島』で有名となった実尾島事件である。同じく31人から成る「684部隊」は過酷な猛訓練を経て北朝鮮に潜入することになった。ところが、世界情勢の変化により朴大統領も報復を断念する。そうなると、「684部隊」の存在自体が不要となる。隊員の不満が爆発して大惨事が発生した。
 私もここまでは知っていました。しかし、韓国軍も北朝鮮へ多くの「北派工作員」を隠密裡に送り込んでいたのでした。朝鮮戦争後に北派されて失踪死亡した工作員は7726人にのぼる。50年代の北派工作員は、朝鮮戦争の延長線上にあり、北朝鮮出身者が大半を占めていた。そして50年代の工作員の9割は任務から帰還できなかった。60年代に北派工作員となったのは、貧困にあえぐ孤児や前科者・不良・無職の若者たち。軍が高額の報酬をえさとして騙すようにして誘引していた。60年代、2000人以上の北派工作員が死亡・行方不明となった。ところが72年の共同声明のあと、北派工作は劇的に減少した。「諸君たちは国家のため任務に就く。諸君は契約を破るかもしれないが、国家は破らない」 
 このようにして工作員は契約書を書かされた。しかし、国家は契約書を交付しなかった。そして、「国家は裏切らない」というのは大嘘だった。そうなんですよね。国家を構成する個々の公務員は異動してしまうと、前任職場の言動にはまったく何の責任もとらなくなるものです。また、責任の取りようもありません。なにしろ無縁なのですから。これは、今の福島第一原発事故で放射能対策に現場であたっている人にもあてはまってしまう危険があります。放射能によるがん発生が、確率が高まるというものである以上、国は素知らぬ顔をしてしまう恐れは大きいのです。
 国家の非情さも明らかにしてくれる本でした。
(2006年4月刊。740円+税)

KARA、少女時代に見る韓国の強さ

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著者   朴  倧玄 、 出版  講談社α新書
 テレビを全く見ませんし、歌謡曲を聴くこともない私ですが、活字を通して、いま日本で韓国の少女そして男性芸能人が大いにもてはやされていることは知っています。その秘密を知ろうと思って読んでみました。
いやあ、韓国人って芸能人を育てるのに長い時間そして莫大な手間とひまを(もちろんお金も)かけているのですね。驚いてしまいました。
 そして韓国の高校生の唯一の楽しみが遠足であり、そこでクラス対抗の歌と踊りを披露して日頃のウサ(ストレス)を発散させるというのです。日本以上に韓国では苛烈な受験戦争がまかりとおっているとのこと。韓国は日本以上の学歴社会。試験は年に1回だけで、応募できるのも3校まで。高校から大学に持ち上がるシステムはない。
韓国では、人気のある歌手の踊りを男女を問わず、すぐに「ものまね」する。それもお笑いまじりでやって、大喝采を受ける。
芸能事務所の練習生期間は長い。たとえば少女時代のユナは5年2ヶ月をそこで過ごした。うひゃあ、5年あまりもの練習生なんて、とても信じられません。よくぞ若いなか我慢したものです。
少女時代には、短くても3年、長いものは7年もの練習生時代を送ったメンバーがいる。韓国では、芸能事務所の練習生が1000人いて、そのなかで実際に歌手としてデビューできるのは、毎年4~5グループ、20~30人ほど。これは厳しい選抜ですが、スターになるには当然のことなのでしょうね。
 韓国には、芸能人になりたいと思う子が、日本以上に多くいる。芸能事務所が練習生一人にかける費用は、トレーニング費、車両維持費まで含めると、毎月15万円。整形・美容に要する費用まで含めると年間250万~290万円。練習生の平均を5年とすると、一人あたり1500~2200万円かかる。すごいですね。元を取り戻したくもなりますよね。
東方神起がデビューするまで、練習生一人当たり145万円の費用がかかり、平均の練習期間が5年だとすると一人3700万円が投資された。
宿舎購入費、CDやミュージックビデオ、衣裳などの制作費をふくめると、デビュー前に1億4000万円ほどかかった。それにマーケティング費用までかけたら、東方神起は5億 9000万円のプロジェクトだった。そして、5年間の売上高は36億円。それまたすごいですね。
日本ではAKB48のようにデビューしてから人材を徐々に育てていく。韓国では、莫大な投資と練習生時代に厳しい競争をくぐり抜けてアイドルが生まれてくるので、すでに踊りも歌もうまい。
 韓国のアイドル・グループの多くは、練習生時代だけでなく、デビューしてからもひとつのマンションで合宿生活を送る。この合宿生活こそ、世界で活躍するパワーの源となっている。
日本人は、電車やバスの中でも本を読む。韓国人は、日本人ほどには本を読まない。韓国人は、女も男も整形手術を平気で受ける。韓国では普通にスターは自分の肉体を見せ、ファンと視聴者はそれを見ながら喜ぶ。
似てるようで違いのたくさんある韓国について知ることができました。
(2011年5月刊。838円+税)

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