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カテゴリー: 宇宙

ALMA電波望遠鏡

カテゴリー:宇宙

著者 石黒 正人、 出版 ちくまプリマー新書
 波というのは、振動を伝える水そのものが移動していくのではなくて、媒体の上に乗っかっている振動だけが移動していく現象である。
 電磁波の場合は、空気のような媒体がなくてもそれが伝わる。電場と磁場の振動、つまり電場が振動すると磁場を誘導し、磁場が振動すると電場を誘導し、ということを交互にくりかえすことによって、宇宙の何もないほとんど真空の状態でも、電磁波が遠くまで伝わる。
 可視光線も電磁波の一種である。可視光線は、波長のうんと短い電磁波である。
 サブミリ波、ミリ波の宇宙からの電波は、大気中の水蒸気に吸収されてしまう。だから、空気の薄い標高5000メートルの高地、しかも高地でありながら平らで、10キロメートル四方以上の広さにパラボラアンテナが展開できるアタカマ高地(チリ)を選んだ。
 温度のあるものは、すべてから電波(電磁波)が出ている。人間の身体からも、36度あるので、それに相当する電波が出ている。
 新書版ではありますが、カラー写真によって宇宙のさまざまな姿が紹介されています。なかでも有名な馬頭星雲の形には驚かされます。まさしく、そこに馬の頭の恰好の星のかたまりがあるのです。
 私たちの生活する銀河系が2億5000万年で1回転するなんていうことを知ると、気が遠くなってしまいます。人間は、たかだか100歳までしか生きられないのです。万年はおろか、2億5千万年前だなんて、さっぱりイメージすることもできません。
 そうはいっても、たまにこんな本に出会い、紹介される宇宙の写真を眺めていると、時の経つのを忘れてしまいます。といっても、確実に年齢(とし)はとっていて、身体の老化現象は隠せないのですが……。
 
(2009年7月刊。950円+税)

ハッブル望遠鏡で見る宇宙の驚異

カテゴリー:宇宙

著者 ビバマンボ・小野夏子、 出版 講談社ブルーバックス新書
 毎年、夏の終わりには、寝る前、2階のベランダに出て望遠鏡で月面を観察することにしています。ところが、今年は例年になく、月面を観察することができませんでした。
 天候不順だったとしか言いようがありません。それでも、望遠鏡から覗く月世界は、いつものように「平和の海」をゆくりなく、さらけ出して見せてくれました。寝る前に心の落ち着くひとときです。
 ハッブル望遠鏡で宇宙をのぞいたら、どんな世界が見えるのか楽しみですよね。この本は、見事なカラー写真で、宇宙の果てまでの素晴らしさを味わわせてくれます。
 ハッブル望遠鏡は地上にはない。それは、スペースシャトル・ディスカバリー号で宇宙に打ち上げられた、口径2.4メートルの望遠鏡である。
 地上から天体観測すると、大気の揺らぎの影響が避けられない。それは、川底から空を眺めるようなもの。ところが宇宙へ飛び出したハッブル宇宙望遠鏡は、大気の揺らぎから解放された、初めての望遠鏡である。
 ともかく素晴らしいのです。カラー写真で、この宇宙のさまざまな銀河、星団そして大小さまざまな星がとらえられています。ちっぽけな自分という存在を、しばし忘れさせてくれるのがこの宇宙の星々です。すごいですよね。だって、120~130億光年のかなたの光をとらえたとか言うんです。これって、宇宙の創世記のころの話です。
宇宙に始まりはあるのか、また、終末はあるのか……。考えさせられます。無から有が生じたのか。それとも、ふくらんだりしぼんだりして際限のない世界のなかで生命は翻弄されているのか。いやあ、知りたいものです。
 人間の一生はせいぜい100年。ところが、万年単位ではなく、億年単位で物事を考えようとする人がいるのです。いやはや、無限の宇宙には脱帽です。
 
(2009年7月刊。1429円+税)

すごい空の見つけかた

カテゴリー:宇宙

著者 武田 康男、 出版 草思社
 年齢(とし)をとったせいでしょうか、空に雲がながれていくのを飽きることなく見ていることがあります。とりわけ、近くの小山にのぼって、頂上で上半身裸になって汗をふき、下着をとりかえたあと、ひなたぼっこしながら、はるか上空を漂い、流れていく雲をじっと眺めていると、地球と一体になった気がして、心に安らぎを覚えます。
 この本は、空と雲を取り続けてきたプロ写真家の解説つきの写真集です。空のこと、そして、写真のとりかたの双方を深く知ることができます。
 わたしのカメラは、まだ基本的にフィルム・カメラです。ブログ用にデジカメもつかいますが、長年愛着のあるフィルム・カメラをポイ捨てする気にはなれません。でも、そのうち、フィルム・カメラはきっと使わなくなるでしょうね。だって、フィルムがいつまで売られていることでしょうか……。カセットテープがなくなり、8ミリビデオがなくなったので、全部、CDやDVDに変換してしまいました。
 日の出を見るなら、50分ほど前から空を見ること。空の色は、虹と同じような色の変化が、上から下に連なる。低い空ほど、太陽光があたる大気が濃くなり、赤っぽい色の光しか通り抜けられなくなるからだ。
 空が青いのは、空気分子による散乱のため。青っぽい光は散乱されやすいので、空に散らばり、とくに太陽から90度の方向からは、散乱された光のうち、青い光ばかりが目に飛び込んでくるので、濃い青色になる。
 夕陽が赤いのは、厚い大気を通り抜けるあいだに青っぽい光が散らばってなくなってしまい、赤っぽい光だけになってしまうから。太陽だけでなく、まわりの空も赤いのは、空気の中の雲やチリなどに赤い光が当たるため。
 夕陽が消える瞬間に緑色の光点が印象的に残ることがある。これをグリーンフラッシュという。ふむふむ、そういうものがあるのですね。でも、私は、残念ながらまだ見たことがありません。
 雲が美しく虹色に染まる現象を、彩雲という。すごく綺麗な雲の色です。ええーーっ、こんな雲って見たことないよー…、と叫んでしまいました。
 大気は、朝方より夕方のほうが温度が高く、水蒸気量や浮遊物質も多い傾向にある。だから、朝日は橙色でまぶしく、夕日は赤みが強くて輝きが弱い。
 朝焼け雲は澄んだ色合いで雲の輝きが強く、夕焼け雲は赤みが強くて雲がやや暗い。青い空に美しく色づいた朝焼け雲は、空気の澄んだ朝ならではの光景だ。
 いやあ、空をもう一度よく見てみましょう。そして、その色の移りかわりを体感することにします。澄み切った青空に高くのぼりつめた白い雲を見ると、学生時代、奥那須の山奥で見た入道雲を思い出します。セツルメント活動に夢中だったころのことです。夏合宿の思い出は今なお強烈です。夜にはきゃん分ファイヤーをしました。火を囲んで肩を組んでうたう歌声が心を揺さぶりました。恋い焦がれる思いで異性と話し込み、夜を徹して語り明かしたものです。青空を見るたびに40年前に戻りたい衝動に駆られます。
 
(2009年4月刊。1600円+税)

国際宇宙ステーションとはなにか

カテゴリー:宇宙

著者 若田 光一、 出版 講談社ブルーブックス
 国際宇宙ステーションに初めての日本人宇宙飛行士として搭乗した著者の体験をまじえた解説書です。宇宙ステーションというので、地球からはるか彼方にあるのかと思っていましたが、なんていうことはありません。地球のすぐ近くをぐるぐる回っているのですね。
 近すぎて丸い地球の全貌もみることはできないそうです。なーんだ、と思わずつぶやいてしまいましたが、それでも、この本を読むと、宇宙飛行士って大変な仕事なんだなと思いました。なにしろ、狭い狭いスペースで、下手をすると何か月も生活するのですからね。
 トイレも大変です。そして、運動不足解消のために身体を動かしても、好きにシャワーを浴びるなんてことはできません。水は宇宙ではとても貴重品なのです。
 国際宇宙ステーション(ISS)は、1998年11月に建設が始まり、2000年10月末から宇宙飛行士が2~3人ずつ交代で数ヶ月ずつ暮らしている。
 ISSは、地球の周りを90分で一周し、日の出と日の入りが45分ごとに訪れる。
 ISSの中では、毎日、レントゲン写真を数回取られるほどの放射線を被曝する。
 ロシアは、ソ連時代から抜本的なコンセプトの変更はせず、職人芸的な地道な細かい改良を加えていくことで、信頼性の高い確立された宇宙往還システムを作り上げた。
 ロシアの宇宙船ソユーズは3人乗りである。その利点は、システムがシンプルで、信頼性が高く、6か月以上もISSに係留することが可能なため、緊急帰還にも対応できることにある。これに対して、アメリカのスペースシャトルは7人乗りだし、20人の貨物も運べる。
ソユーズ宇宙船は、1回1回が使い捨て。スペースシャトルは再利用される部分が多い。ところが、使い捨ての方がロスが大きいかというと、必ずしもそうとは言えない。事業として長く続くためには、製品を新しく作り替えながら量産していくという形が望ましいのと同じである。
 ソユーズは、宇宙飛行士の立場から言うと、運用性に関して、非常に洗練されている。自働が多く、何より、安全第一となっている。それもあって、ロシア語の習得は宇宙飛行士には必須となっている。宇宙飛行士の基礎訓練1500時間のうち、英語とロシア語に200時間ずつ割いている。4分の1が語学訓練である。語学は、宇宙飛行士にとってそれほど重要視されている。
 宇宙にいると、地上の骨粗しょう症の10倍の速さで骨量が血中に溶け出す。宇宙では毎日、2時間の運動をしていても、2割は筋肉が衰えてしまう。
 ISSのなかの酸素は、水を電気分解して作りだす。水素の方は機外に出してしまう。
 ISSに必要な水の大半は、地上からプログレス補給船で運んでいる。年間6800キログラムになる。運搬費に換算すると、コップ1杯の水が30~40万円になる。うへーっ、こりゃあ高い水ですね。
 そこで、尿を蒸留して水に変え、空気中の湿度を除湿した水や使用済みの水と一緒にろ過・浄化処理して飲料水として再使用するシステムがすすめられている。うむむ、気にしなければいいのですかね……。昔はやった健康法に、朝一番の自分の尿をコップ一杯飲むというのがありました。さすがに私にはできませんでした。
 ISSのトイレはロシア製。アメリカは1900万ドル出して、ロシア製トイレシステムを購入した。コストや信頼性を運用実績に照らして検討した結果のこと。
 宇宙飛行士は、アメリカ100人、ロシア40人、日本8人、ヨーロッパ10人、カナダ6人となっている。
 宇宙飛行士は、こわがりのほうが良い。怖さを知らない人は逆に危険だ。
 宇宙飛行の訓練は、その多くが不具合対策である。
 操縦・航法・交信という作業の優先度を常に意識し、全体像を把握しながら先を読み、的確に運用作業をこなす。これがすべての基本だ。
 宇宙飛行士って、大変な仕事だとつくづく思いました。
 庭にシャガの白い花が咲いています。緑にフリルのついた、すがすがしさを感じさせる純白の花です。日比谷公園にもたくさん見かけます。どんどんはびこっていく生命力旺盛な花です。
 ハナズオウの花も咲いています。赤味の濃いピンクの米粒が枝にびっしりまとわりついたような可愛らしい花です。チューリップは200本になりました。4割ほどが咲いています。
(2009年2月刊。940円+税)

最新・月の科学

カテゴリー:宇宙

著者:渡部 潤一、 発行:NHKブックス
 アポロ計画で持ち帰られた月の岩石を調べたところ、月は地球の年齢と同じくらい古いことが分かった。人類が地球上でもっている月資料のうち、アポロ回収試料は400キログラム。月隕石は100個で34キログラムである。月隕石は南極や砂漠で次々に発見されている。水分子はおろか、鉱物構成要素レベルで水(OH基)もまったくなかった。地球上では生成し得ない岩石・鉱物ばかりが見つかった。月は、非常に高温の過程を経たようだ。
 月は、地球の直径の4分の1、体積の50分の1、質量にして80分の1である。地球よりずっと早く冷え切ってしまい、大気がないので地球のような風化・侵食も起きず、大昔の情報をそのまま保持している、化石のような天体だ。ところが実は、月にも希薄な大気がある。といっても、大気圧が地球の10京分の1(10の17乗分の1)、1立方センチ当たりナトリウム原子が70個、カリウム原子が17個、という希薄さである。これは、超高真空環境に相当する。
 月は地球に表だけを見せながら公転している。月の自転周期が地球を周回する公転周期と一致しているためである。月の表側は裏側に比べて、やや重くなっている。月は、そのお尻を地球に向けて、安定した状態になった末に、そのまま止まってしまったのだ。
 昔の地球は、今よりずっと早く回っていて、月も地球にずっと近いところを回っていた。だから、数億年前の古代史には、地球の1年は365日ではなく、400日前後だった。
 月は、火星級の原始惑星が原始地球をこするように衝突したことで、両者の一部が飛び散って月になったもの。これをジャイアント・インパクト説と呼び、現在の有力説だ。ただし、検証できないという弱点をもつ。
 月の表面は、我が家のベランダから望遠鏡で見ることができます。いかにも静かな砂漠地帯を見ている気になります。そんな月にも、もちろん生成の歴史があったわけですし、地球とのかかわりも面白いものです。
 私たちの身近な天体である月について、少しだけ認識を深めることができました。 
(2008年6月刊。1070円+税)

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