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カテゴリー: 司法

議論に絶対負けない法

カテゴリー:司法

著者  ゲーリー・スペンス 、 出版  三笠書房
アメリカのナンバーワン弁護士が議論に絶対負けない方法を教えてくれるというので、買って読んでみました。
 なーんだ、と思いました。決して突飛なことは書いてありません。むしろ、なるほどそうだよね、と同感するようなことばかりが書いてありました。
 これなら、明日から私だって実践できそうです。さあ、やってみましょう。
ありのままの自分こそ、最高の自己主張である。大げさに騒ぎ立てる人が議論の勝つことはまずない。
 まずは相手の言うことをよく聴くという技術が必要である。相手を一度は自分のなかに受け入れること、相手と一体になる技術が必要である。
自分を自由に解放するためのカギは、自分自身に扉を開ける許可を与えること。
 勝利とは、相手に降伏の白旗をあげさせることだと思っているとしたら、それは大間違いだ。最高の議論は、沈黙がもつ絶対的な力と忍耐とを持ち合わせることだ。
 妨げになっているのは、拒否されるかもしれないという恐怖だ。
 怒って復讐に燃える相手には、議論をふっかけても意味はない。
勝利をおさめるひとは、他人の話をよく聴いている人である。
 書くことが大切なのは、自分の心を探索するためだ。
 議論を人間味のある言葉で思い描くことによって、無味乾燥な抽象的概念を避けることができる。動作を大切にし、抽象的概念は避けること、これが鉄則だ。
ストーリーに力があるのは、ストーリーは動作をつくり出し、抽象的概念を避けることができるからだ。言葉が跡形もなく耳を通りすぎてしまう、そんな話し方をしてはいけない。
笑顔を、感情を隠すために使ってはいけない。ほほ笑みたいと感じるときに、ほほ笑むべきだ。相手に対して喜びや親しみを感じたときにほほ笑むべきだ。愉快に感じたときにほほ笑むべきだ。相手の心を開かせるためにほほ笑むのはやめよう。
まずは自分自身の感情を完全に意識し、理解することができなくては、相手の感情を感じることはできない。すべては自分自身から、自分の感情から始まる。
 内容を伝えるのは、言葉だけではない。言葉は、それほど重要ではない。音、リズム、身体、ジェスチャー、目、つまりはその人全体なのだ。
 力は心の底から生まれる。書いた議論をいかに上手に読んだとしても、絶対に聞き手の心を動かすことはできないし、陪審員を心変わりさせることもできない。魔術的な議論は常に心の底から生まれ、心の底の言語をつかって、相手の心の底に語りかける。常に相手の感情に語りかけることが大切だ。
 迷ったときには、主導権を握り、攻撃を開始する。それが最良の戦略だ。
 相手を侮辱する言語は慎むこと。相手に敬意を払うことによって、私たちは高い次元に上がることができる。相手を軽蔑する人は低い次元にとどまるだけ。敬意とは、相互に働くもの。
子どもらしい見方を絶対に失わない。喜怒哀楽を感じる子どもの部分を絶対に捨てない。子どもの素晴らしい自発性、魔法のような創造性、純真な心を投げ捨てないこと。
いい言葉が山盛りの本です。ぜひ、あなたも一読してください。
(2012年3月刊。1400円+税)

更生に資する弁護

カテゴリー:司法

著者  奈良弁護士会 、 出版  現代人文社
私は面識ありませんが、刑事弁護で有名な故高野嘉雄弁護士の追悼集です。読んで大変勉強になりました。情状弁護に力を注いだ弁護士です。
無実の人を無罪にするのは当たり前で、情状弁護に刑事弁護の真髄がある。
 被告人が刑務所から出所するとき、高野弁護士は作業服と小遣いもって迎えに行った。すぐ働けるところ、社員寮もあるところを探して用意して。ところが、その人は一日で逃げてしまった。そのとき高野弁護士は、こう言った。
 「これでもええねん。おれに済まんことをしたなと思うだけでも、こいつええねん」
 これは、なかなか言えないセリフですよね。刑務所に13年間入って出所してきた人を迎えに行ったこともあるもあるそうです。私にはとても考えられません。
 100人に1人でもうまく更生してくれたらいいんだ。期待はし過ぎない。自分はやりたくてやっているんだから、それでがっかりもしない。
 結局、弁護士は自分の感性しか拠るべきものはない。建前の議論ではなくて、人間としてのコアに忠実に従わないと、弁護士として納得できる事件処理というのはできない。
 人間は多面的な存在だから、自分でも気づいていない多面性の一角を照らしてあげることによってかわっていくことができるという信念をもっている。
 弁護人は最後の情状証人だというのが持論である。
捜査弁護においては、被告人が自分の嫌疑を晴らそうと焦ってしまって、不利益な証拠についてウソだと分かるような供述をする、あるいは結果的に誤った供述をするのをいかに防止するかが大切だ。
 摂食障害を基礎疾患としているクレプトマニア(窃盗癖患者)は、20代、30代の女性が圧倒的に多く、摂食障害患者の44%が万引している。
 高野弁護士は万引をして捕まった女性を1年間も入院させて治療し、その結果、3度目の執行猶予を得たというのです。信じられない話でした。
 そして、高野弁護士とその被告人との間に往復した手紙が、弁号証として、裁判に有利な情状証拠として提出されました。そのとき、高野弁護士も手紙のなかで自分のことを赤裸々に語っていて、読ませます。心をうつ内容になっています。
 人間が反社会的行動に走るのは、その人が自分にとってかけがえのない存在というものを有していないからだ。自分にとってかけがえのない人々を有しているとき、その人を苦しませ、泣かせ、また絶望のどん底に陥らせ、あるいは経済的、社会的な苦境に陥らせるようなことは絶対にしない。
 これは、1970年代の厳しい社会状況の下で学生運動や党派活動のはざまの中で体験させられたり、あるいは20年間の弁護士生活の中で、いわゆる過激派の事件や一般の刑事事件を多数経験するなかで実感した結論である。
 弱い社会的立場にいるということが犯罪を犯した人々の劣等感、あるいは心情的歪み(社会に対する敵意等)をもたらしているというのが現実である。被告人らが有しているその劣等感、歪みを克服しなければ更生への意欲を形成できない。そういった立場の中で苦しみ、人間らしく生きてきた人々の生の声を聞くなかで、初めてこのような劣等感は消え、人間としての誇りを取り戻し、あるいは父母たちに対する否定的感情を克服できる。
 したがって、在日朝鮮人や被差別部落の出身者に対しては、そのようななかで苦しんできた父母の生きざま、苦しみ、嘆き、そして、そのなかで誕生した我が子に対する思いというものを法廷のなかでさらけ出せ、あるいは手紙等という形でさらけ出す必要がある。
 とても鋭い指摘だと感嘆しました。奈良弁護士会の皆さん、ありがとうございました。
(2012年10月刊。2700円+税)

おかげさま老人ホーム選びの掟

カテゴリー:司法

著者  外岡 潤 、 出版  ぱる出版
介護弁護士を自称する著者は介護マンガ『ヘルプマン』を読んで発奮したということです。私も『ヘルプマン』は、ついに21巻全部を読み通しました。とても教えられました。
 私の依頼者、相談者に介護施設で働く人はたくさんいますので、共通の話題づくりにも役立ちました。
 それにしても、東大を出て一流の法律事務所に勤めていたのに、いきなり独立開業し、しかも専門分野が介護というのですから勇気があります。
 そのうえ、奇術が出来て、日本舞踊まで演じるというのですから、多芸・異能の若手弁護士ですね。
 介護マンガ『ヘルプマン』こそ、著者の人生を大きく変えた。よし、それなら、介護現場で起きるトラブル解決に特化した弁護士になろうと決意した。
 今の日本の介護現場はトラブルの温床であり、当初の想像以上に事態は深刻である。
 介護業界は現場のスタッフの待遇が賃金面で絶望的に悪すぎる。仕事内容もいわゆる3Kで、あたりまえかもしれないが、職場には若々しい活気などなく、新卒にも人気がない。だから、健全な競争が起きず、優秀な人材がなかなか来ない。来ても定着して育つのはまれで、慢性的に人手が足りない。その悪循環のなかで、カバーしきれない事故が続出している。
老人ホームを選ぶときには、その施設の現場全体の雰囲気、ありように着目すべきだ。
 施設が、すみずみまで清潔にしていること。それは職場の雰囲気、職員の意識の高さの反映でもある。
有料老人ホームとの契約では契約を結んでから90日以内なら一時金の返還を求められることが多い。
 3年前に出張型介護、福祉系専門法律事務所「おかげさま」を開業してがんばっているとのこと。うれしいですよね、こんな若手弁護士がいるなんて。
 引き続き、ぜひがんばってください。
(2011年10月刊。1400円+税)
 明けましておめでとうございます。本年もどうぞご愛読ください。
 おせちもほどほどに食べ、ガーデニングに励んだり、静かに正月休みを過ごしました。嵐の前の静けさ、といった気分でした。

法廷弁護士・3

カテゴリー:司法

著者  徙木 信 、 出版  日本評論社
法廷弁護士シリーズ、第3弾です。これまた大変勉強になりました。
 第一話は、労働審判申立に至った事件です。定年退職後、嘱託で勤めていたところ、退職金の請求権が5年で時効消滅したと会社が主張した。まさか、そんな主張を会社がするなんて・・・。と思っていると、なんと、それは顧問弁護士の入れ知恵だった。
ひどい弁護士がいるものですね。たしかに、自分の利益しか考えないような弁護士が実際にいるのは、残念ながら現実です。
 裁判で書く書面の宛先は裁判所だ。だから、裁判所が読んでも不快に感じないような書面でなければならない。不快な書面は誰しも読む気が失せてしまう。
 私は、交渉段階で出す書面も、あとで裁判所が読むものと思って起案するようにしています。
 書面は、依頼者の話をそのまま鵜呑みにしないで、必ず裏を取るべきだ。
これは、実際には難しいものです。事実をもっとも知るのは依頼者ですから・・・。
 第二話は万引き事件です。万引きは摂食障害の症状の一つとみなすことができる。
初めて知りました・・・。
 彼らは手のかからない良い子として育ってきた人が多く、その過剰反応の故にパーソナリティに分裂がみられる。独自の超自我が形成されており内的空虚感を埋めるため、統制感の喪失あるいは放棄として万引きがおこなわれる。そのため、治療においては、この万引きの背景にある内的空虚感や依存について患者自身が自己理解を深めることが必要であり、家族や治療社自身も、患者自身がこの内的空虚感を解消して自己統制感を回復し育てていける見守る態度が必要となる。
万引きのみに着目して犯罪者や非行少年として対処すれば、家族や治療者に支えられながら内的空虚感や依存についての自己理解を深める作業を行っている患者の治療過程が中断されてしまい、治療効果に重大な悪影響を及ぼすことになる。
 再養育療法とは、主として摂食障害の患者のために開発された治療法。母親が一生懸命にまるで赤ん坊を育てるように患者を大切にしているケースは治りが早く、かつきれいに治っている。
摂食障害の患者の7割が万引きする。一番万引きの危険が高いのは、体重が減っているとき。食べ物をとってしまう。
 摂食障害の患者の多くは慢性の低血糖状態にあるので、食べ物をどうしても発作的に盗ってしまう。
摂食障害は心の病気である。母親以上の治療者はいないというのが現実である。
 とても実務的に勉強になりました。ただ、同じ弁護士として気がかりなのは、答弁書を見せながら打ち合わせした(44頁)という点です。これは、私だったら事前に送付しておいて、そのうえで打合せをすすめます。私の読み違いかもしれませんが・・・。
 同じように、第2巻に初回の相談日を1週間以上先に指定するというのも、私はしていません。初回だったら、今日、明日、少なくとも3,4日内には無理してでも入れるようにしています。上得意の客(依頼者)になるかもしれない機会を逃さないためです。
 いずれにしても、この本の贈呈、ありがとうございました。引き続きのご健闘を祈念します。
(2012年11月刊。1300円+税)

無罪

カテゴリー:アメリカ / 司法

著者  スコット・トゥロー 、 出版  文芸春秋
うまいですね、読ませますね。こんな小説を私も一度は書いてみたいものです。
 『推定無罪』の続編の名に恥じないとオビ裏に書かれていますが、まさしく、そのとおりです。そのストーリー展開に圧倒され、無言のまますばやく頁をめくっていきます。次の展開がどうなるのか知りたくてたまりませんから・・・・。
 推理小説ですし、ネタバレしてしまうのは、これからの読み手の楽しみを奪いますので、内容(ストーリー)は書きません。
 一般的に言うと、被告人は証言するほうがいい。無罪判決の70%は被告人が証言席に着いて自分を弁護したときに出ている。
 アメリカの刑事裁判では、被告人の本人尋問の機会がとても少ないような印象を受けます。日本では、被告人本人の尋問をしないなんて、まず考えられないところです。
 この本では、アメリカの裁判官が国会議員と同じように選挙で選ばれること、そして、選挙民の評判を落とさないため、自分が離婚したことが知られないようにすることが前提になっています。
 主人公は、妻と離婚したどころか、「妻殺し」として起訴されてしまうのですが、時間的にズレがあって、州の最高裁判事には当選するのです。
 しかし、かねてから主人公を面白く思っていない検察官たちは、「妻殺し」を立証できる証拠集め、ついに起訴に持ち込むのでした。つまり、検察官が裁判官を殺人罪で起訴するのです。
 しかも、この裁判官は20年前にも殺人罪で起訴され、無罪となったのです(『推定無罪』)。ですから、検察官の汚名を挽回すべくなされたのが今回の起訴だったのです。
 話は裁判官の情況証拠がきわめて疑わしいところで推移していきます。
 この裁判官は、実は不倫していた。その相手は部下だった。そして。そのことを「殺された妻」も知っていたのでは・・・。とてもよく出来た推理小説でした。
(2012年9月刊。2200円+税)

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