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カテゴリー: 司法

伊藤真が問う日本国憲法の真意

カテゴリー:司法

                                (霧山昴)
著者  伊藤真、浦部法穂、水島朝穂ほか 、 出版  日本評論社
 大変分かりやすく、知的刺激にみちた憲法論が展開されている本です。
 はじめに伊藤真弁護士が問題提起をして、それに3人の憲法学者がこたえて自説を述べていくという形式です。それぞれ議論が発展していくのが面白い趣向です。
 かつての日本(戦前の日本)は、立憲政友会とか立憲民政党など、立憲主義を標榜する政党があった。ところが、いま、「立憲主義」の思想、視点が日本社会に欠けている。
 立憲主義は多数派に歯止めをかけること。戦前の日本やヒトラー・ドイツを見たら、多数派が正しいとは限らないことは明らか。人間は、ムード、情報操作、目先の利益に騙されるという不完全性がある。韓国・台湾の憲法にも、日本と同じく、国民の憲法遵守・尊重を求める規定はない。
 8月15日を「終戦」記念日とするのは問題があると指摘されています。目が開かれる思いでした。8月15日は、天皇ヒロヒトが臣民に向かって放送で敗戦を伝えただけのこと。日本政府が連合国側と戦艦ミズーリの甲板上で降伏文書に調印したのは9月2日。したがって、米・英などの国々は9月2日を「対日戦勝記念日」としている。
 昨年7月1日の閣議決定は、現行憲法の下で集団的自衛権の行使は認められないとしてきた歴代政権の憲法解釈を変更した。これに対して、最近の歴代内閣法制局長官は反対している。
この閣議決定のもとで、日本の軍需産業は色めき立っている。日本の「死の商人」が動き出したのです。怖いです。恐ろしいことです。いよいよ日本もテロのターゲットになります。防衛省は、防衛装備庁という1800人からなる外局を設置した。国を挙げて「死の商人」を応援しようというのです。
 安倍内閣は、金もうけのために武器の生産・輸出、原発の再稼働・輸出、そしてカジノを国内でやろうとしています。本当に許せません。国民生活の安定・平和なんて、まるで考えていません。金もうけが全ての世の中をつくり出したいようです。品性があまりに下劣です。
 安倍首相がアメリカの連邦議会で演説した何日か後に、アメリカから17機ものオスプレイを日本が買うことになったと報道されました。3600億円も支払われます。社会保障をほぼ同額(3900億円)削減したうえでのことです。本当に許せません。そのうえ、この欠陥機オスプレイを東京の横田基地に10機も配備するそうです。日本人を馬鹿にしています。
 日本は戦前、ずっとずっと戦争してきました。「大東亜共栄圏」と称して侵略戦争を展開し、多くの罪なき人々を殺傷し、逆に日本人も多くが殺傷されてしまいました。ところで、戦前というのは明治元年から71年間です。戦後も既に70年となりました。今では、ジャパン・ブランドは戦争しない国・ニッポンなのです。ところが、安倍政権は、この貴重な、実績ある平和ブランドを戦争する国・ニッポンに塗り変えようとしています。許せません。
 安倍首相の言う「積極的平和主義」というのは、「武力行使に積極的」というものです。戦前の日本も、「平和を守る」ために戦争を仕掛けていったのです。安倍首相の嘘にだまされてはいけません。
 ホルムズ海洋の機雷掃海に自衛隊を出すというのは、イランに攻めこむということと同義である。親日国・イランが当惑してしまうようなことを安倍首相は国会で高言している。
 安倍首相の言動こそアジアの安全を脅かしている最大の脅威である。
まことにそのとおりだと思います。法学館憲法研究所の積極果敢な憲法シシリーズに対して、心より敬意を表します。
(2015年4月刊。1500円+税)

10代の憲法な毎日

カテゴリー:司法

                               (霧山昴)
著者  伊藤 真 、 出版  岩波ジュニア新書
 憲法改正のための国民投票は18歳からできるようになります。
 これは当然のことでもあります。なぜなら、徴兵制になるかどうかはともかくとして、日本人が戦場へ駆り出されるとき、その主力の兵士は20歳以上ではなく、18歳以上であることは間違いありません。
 アフリカの戦場では10代の兵士が珍しくなく、14歳にして部隊の司令官だ人間がいるというのです。恐ろしい現実です。
ということは、10代に憲法とは何なのかを知ってもらう必要があります。この本は、そんな思いで書かれていますので、とても分かりやすい内容になっています。さすが、だと感嘆しました。10代ですから、はじまりは学校生活の不満を問題とします。
集団や社会のために個人が犠牲になる社会であってはならない。
 高校生の疑問に対して著者が答えていくのですが、実に明快な答えです。
 人権というのは、元々は、人間として正しいということ、だから、権利を主張するときには、なぜその権利は正しいのかについて、みんなに分かってもらうことが大切になる。
 住民投票とか、直接民主主義には、変な誘導がなされたり、世論操作の危険性がある。
ドイツでは、ヒトラーが演説の巧みさなどから国民の圧倒的な支持を集め、圧倒的な支持を集め、ナチ党の独裁を許し、ユダヤ人の大量虐殺などの暴走につながった。だから、何でも住民投票で決められたらいいということにはならない。
 今こそ、大いに憲法について語りましょうと伊藤弁護士は若い人に呼びかけています。私も、まったく同感です。憲法は古い、死んだものではありません。きわめて新しい内容をもっているのです。ぜひ10代のあなたに読んでほしい新書です。
(2014年11月刊。840円+税)

弁護士倫理の勘所

カテゴリー:司法

                                 (霧山昴)
著者  官澤 里美 、 出版  第一法規
 著者は男性弁護士です。名前から女性と間違われそうですが、中年の男性弁護士です。
 幼いころの顔写真が本書に紹介されていますが、いまや立派な壮年弁護士です。
 私より一まわり若い、現役バリバリの弁護士でもあります。
 著書第二弾は、弁護士倫理について、実践的に解説していて、とても役に立つ内容となっています。私自身も綱紀委員会での議論に参加するようになり、弁護士倫理を実践的に勉強していますので、初心を学ぶうえでも勉強になりました。
「ちょっと一言」コラムによる解説があり、また、「イソ弁」が悩むような状況での対話もあって、とても身近に考えさせられる仕組みの本になっています。
 著者は、農家として12代目ということなのですが、本当でしょうか・・・。日本人のルーツは単純な「百姓」だと、12代もさかのぼることは不可能だと思うのですが・・・。
 会社の社長が死に際に、長年の不倫を告白したという話が紹介されています。墓場までもっていってほしい秘密もあるのですよね・・・。
 相談を受ける前に「利益相反チェック」がますます必要になっています。そのためには、住所そして氏名をフルネームで言ってもらう必要もあります。案外、それに抵抗する人もいるので困りますが・・・。
事件解決の依頼を受ける前に難しいのは、見通しについて何と言うか、です。
 甘い見通しを言うのは禁物。それは悪い結果が出たときに責められることになる。しかし、厳しすぎる見通しを言うのも考えもの。あまりに厳しく言うと、それなら、もうやめておこうということになりがちです。そうすると、もらえるはずの着手金・報酬もいただけません。
 弁護士生活30年以上、そして弁護士倫理を10年以上、ロースクールで教えてきた体験に基づいた本ですので、大変わかりやすく、しかも実践的な本です。
 若手弁護士には、ぜひとも読んでほしいと思います。
(2015年4月刊。2500円+税)

刑務所改革

カテゴリー:司法

著者  沢登 文治 、 出版  集英社新書
 受刑者の更生を重視することで社会の負担は軽くなる。そのための方策が提案されています。弁護士生活40年をこえる私は大賛成です。1000円ほどの万引き犯を常習だからといって1年も刑務所に入れていていいはずがありません。もっと税金の賢いつかい方があるはずです。
 日本の刑務所の実情を知ったあと、著者はアメリカに出かけます。自己責任論の強いアメリカは、悪いことをする奴は刑務所へ入れてしまえという法律が出来ています。刑罰がとんでもなく重罰化しているのです。
 カリフォルニア州には囚人が10万人以上もいる。そして刑務所は過剰収容となった。それは、犯罪に対する刑罰化が原因だ。「三振法」。軽微な罪でも、3回くり返したら懲役25年から終身刑となる。
 その結果、2008年にはカリフォルニア州内の刑務所の収容定員は8万人なのに、17万人以上の受刑者をかかえてしまった。そのため、裁判所は、「刑務所があくまで自宅待機」という指示を出すことになった。2005年には23万人以上が、刑務所に入らないことになった。まさかの逆転現象ですね。
 それで、どうしたのか。あのシュワルツネッガー知事は、刑務所改革にのり出した。そして、犯罪傾向を除去するのを基本原則として。犯罪者は刑務所に収容すればそれでよいという短絡的な発想を修正し、収容は受刑者への矯正教育を行い、更生する社会復帰を目ざす前提であり、単なる懲らしめや罰としてではない、とした。矯正教育の一環として高校の卒業資格を取得できる教科指導を実施する。また、大学の講義を受講できるようにする。
 そして、出所後に入れる「リエントリー施設」を設けた。
そして、日本の松山刑務所大井造船作業場の実践が紹介されています。
 日本でも、やればできるんだということです。恥ずかしながら、私は、こんな作業場があるのをまったく知りませんでした。
作業員(囚人)33人が刑務官13人と同じ建物で寝泊まりしている。ここには、塀もなければ鉄格子もない。一般工員と一緒に造船所で働いている。脱走しようと思えば簡単。でも、過去50年間に脱走を図ったのは19人だけ。出所後の再犯率は15%(今はゼロ)。
 何回も刑務所に閉じ込めたからといって、より深く反省し、再犯しないということにはならない。再犯率は50%をこえる。
 日本の刑務所の過剰収容は現在、かなり改善された。刑事施設の収容者は6万7千人ほど、収容率は既決施設で82%、裁判中(未決)で40%。定員内におさまっている。
 日本の受刑者と職員の比率は、諸外国に比べて、きわめて高い。1人の職員が4.5人の受刑者を相手にする。3交代制なので、実際には、1人で13.4人の収容者をみている。
 職員のストレスは想像以上にきびしい。
 名古屋刑務所の事件の実際が、この本の冒頭で報告されています。もちろん、あってはいけない犯罪行為なのですが、それに至る職員側の苦労も理解できました。
 私も刑事弁護人として何回となく苦労させられました。人格障害の被告人にあたると、我が身の安全まで心配しないといけないのです。
 とても実践的な刑務所改革についての問題提起の本です。弁護士として必読文献だと思いました。
(2015年3月刊。760円+税)

「検証・司法の危機」

カテゴリー:司法

著者  鷲野 忠雄 、 出版  日本評論社
 1969年から72年にかけての司法をとりまく動きを紹介しコメントした本です。ということは、私が司法試験に合格し、司法修習生になった年のことです。つまり私たち司法修習26期というのは司法反動攻勢の直接に司法研修所に入ったことになります。
 東大闘争(紛争)をはじめとする全国の学園闘争(紛争)の体験者が本格的に大量に司法研修所に入ってきました。その直前には司法研修所の卒業式がなくなり、阪口徳雄修習生が罷免されたりもしました。
 私たちの期でも、司法研修所当局と「団交」しました。出てきたのは、後に最高裁長官になる草葉良八事務局長でした。のらりくらりとした官僚答弁をしていたことだけは、今も記憶があります。
 著者は、この当時、青年法律家協会(青法協)の本部事務局長をしていた弁護士です。
 青法協は、現行憲法が公布・施行されてからわずか7年後の1954年4月、再軍備と憲法改悪に向けた「逆コース」の動きが具体化するなかで、これに反対し、学徒動員の体験を有する若く学者・弁護士らが中心となって、平和と民主主義を守ることを目的に創立された。
 ところが、日本安保条約下の日米同盟の変容にともない、憲法の空洞化と改憲抗争の具体化が進行する過程で、憲法を敵視し、改憲を目ざす勢力から、青法協に対して、「アカ攻撃」が加えられた。その目的や活動を一定の政治的色彩にそめあげ、青法協に加入する裁判官に対して「偏向」宣伝をあびせ、反憲法的な攻撃の標的にした。
 1967年10月、雑誌『全貌』が「裁判所の共産党員」と題する特集を組んだ。最高裁事務総局(寺田治郞局長)は、資料整備費をつかって170冊も購入し、全国の裁判所に配布した。1969年(昭和44年)、佐藤栄作首相は、石田和外を最高裁判長官に任命した。石田和外は戦後の憲法下で、裁判をした経験をもたなかった。
 1969年3月、西郷吉之助法務大臣は東京地裁の無罪判決に憤慨して、次のように述べた。
 「あそこ(裁判所)だけは手を出せないが、何らかの歯止めが必要だ。裁判官が条例を無視する世の中だからね。国会では面倒をみているんだから、たまにはお返しがあっていいんじゃないか・・・」
 法務大臣の発言とは思えない内容です。あまりにも三権分立を無視しています。
 そのころまで、裁判官になる司法修習生のうち20名以上は青法協の会員だった。全国の裁判官2000名のうち、1割以上の300名が青法協の会員だった。
 青法協攻撃が激しくなったなかで、のちの最高裁長官(町田顕)や検事総長(原田明夫)が青法協を脱会していったのでした。その結果、モノを言う勇気のなくなった裁判官ばかりになってしまったのです。
 福井地裁の原発操業差止判決は、久しぶりに、本当に大変久しぶりに、裁判所にも勇気のある裁判官がいることを証明してくれました。
 いま、私は、1972年4月からの26期司法修習生の青法協活動について、読みものとして再現しようとしているところです。
 公選法の権威としても名高い著者です。ますますのご活躍を心より期待しています。
(2015年3月刊。2200円+税)
 毎朝、雨戸を開けるのが楽しみです。とてもカラフルな光景を見ると、心が浮き浮きしてきます。今日も一日、いいことありそうだなと思います。赤、黄、橙、ピンクと色とりどりのチューリップの花です。雨にうたれて少し散りかかりました。近くには、濃い赤紫色のクリスマスローズの花も競っています。
 早くもアイリスの白と黄の花が、すくっと伸びて咲いています。ハナズオンの紫色の小粒の花も・・・。
 アスパラガスが伸びてきました。電子レンジでチンをして、春の香りをいただきます。
 ウグイスなど、たくさんの小鳥が元気に鳴きかわし、春本番です。

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