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カテゴリー: 司法

40年のあゆみ

カテゴリー:司法

きづかわ共同法律事務所
 大判の絵本スタイルです。表紙の絵は下町の人情味たっぷりの風情をよく描いていて親しみを持たせます。それほど厚くはない(160頁)し、手に取ったら、中をちょっとのぞいてみようかな、という気にさせます。
 そうなんです。本は、表紙、タイトル、それがとても大事なんです。この本はそこでまず優れています。
 さあ、ページを開いてみました。見開き2頁に一つのテーマが基本です。いわば読み切りスタイルです。しかも、写真があり、親しめる大きなマンガカットがあったり、事件関係者の一口コメントがあったり、いろんな工夫がされていて、とても読みやすくなっています。
 おっと、形式ばかりほめていてはお粗末な内容をカバーしているのかという、あらぬ誤解を招きかねません。いえいえ、決してそんなことはありません。読み切りの内容がまた素晴らしいのです。ともかく、弁護士たちの活動分野が実にバラエティーに富んでいるのです。感嘆してしまいました。
 今から20年も前に、少年事件の取り調べに弁護士たちが交代で立ち会ったというのには驚いてしまいました。そんなこと聞いたこともありませんでした(20年前に聞いたのかもしれませんが、すっかり忘れていました)。なりたての弁護士7人が毎日、午前と午後、交替で少年2人の取り調べに立ち会ったというのです。すごいですね。
 労働事件で、解雇通告を受けた労働者が相談に行ったときに弁護士から言われた言葉は……。
「私たちに何をしてほしいのですか。骨を拾えというのではあれば拾います」
 うひゃあ、す、すごいですね。この言葉を聞いて、その労働者は「えらいことに足を踏み入れた」と腹を固めたそうです。
 大阪事件で「肥後もっこす」という言葉が出てくるとは思いませんでした。集団就職で熊本から大阪に出て行って、整理解雇された組合員10人が、解雇無効・地位保全を求めて裁判を起こしたのです。正義感が強く、一度決めたらテコでも動かない。そんな熊本県民気質を反映して、地道な活動を展開していったといいます。お隣の県民がほめられると、私までなんだかいい気分になります。
 大阪の法律事務所なのに、なぜか東京地裁を舞台とした裁判にも果敢に取り組み、大きな成果をあげているそうです。たとえば、株主の信頼を裏切った西武鉄道に対して、株主としての損害賠償請求事件です。アメリカ航路の船長の過労死事件も、東京地裁、高裁の事件です。そして、株主オンブズマン訴訟にも取り組んでいます。すごいですね。
 この法律事務所は、正森成二代議士の出身母体でもありました。田中角栄と国会で堂々と論戦する共産党の正森代議士の歯切れ良い大阪弁の追及は、胸のすく思いがしたものです。540回も国会で質問したとのことですが、本当に惜しい人を亡くしてしまったものです。大変勉強になる冊子でした。
(2008年11月刊。非売品)

人が壊れてゆく職場

カテゴリー:司法

著者:笹山 尚人、 発行:光文社新書
若者に安定した雇用を保障しないでおいて、「今時の若者には我慢が足らない」なんて言う資格はありません。とりわけ、日本経団連の御手洗会長なんて、まったくもって許し難い存在です。自己保身と自分の取り巻き、そして大株主の利益を守っていたらいいなんていう発想の人物に、日本の将来を語る資格なんてあろうはずがありません。トヨタや日産、そしてイスズなどの自動車産業もそうですよね。
 たしかに、アメリカの金融危機に発した深刻な不況のなかで自動車産業がピンチになっているのは理解できます。それでも、若者の首切りをする前にやるべき企業努力というのがあるのではありませんか。なにより、これまでの貯め込み資産を吐き出し、雇用存続を前提としての知恵と工夫を働かすべきではないでしょうか。
 この本は、若手の労働弁護士の手になる奮闘記ですが、大変、今の若者に役立つ、実践的な内容となっています。
 「管理監督者」とは、経営者に近い立場の実体を有する労働者を指すのであって、「科長」とか「マネージャー」という名前で決まるものではない。「管理職」に祭り上げることによって残業代を払わなくてもよいという会社の取り扱いは、実のところ、残業代を払わないための偽装にすぎない。就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
 要するに、就業規則の水準に満たない合意は無効なのである。
 裁判は生き物であるから、当初は想定しなかった事情が出現して成り行きが変わっていくことも当然ある。だから、労働者から「不当に解雇されました」と訴えられても、「そうですね。不当ですね」とはうっかり口にすることはできない。慎重に回答せざるを得ない。
 この点は、本当にそうなんです。思わぬ反論が出てくることがあるのが裁判です。
 労働審判は、弁護士にとっても大変使い勝手が良い。
 7割の事件は、申立から3ヶ月以内に話し合い(調停)で事件全体が解決している。
 この本には、労働審判でうまく決着のついた事件が紹介されていて、参考になります。
 録音テープが有効なのか、とくに隠し撮りテープは証拠として使えるか、ということにも触れられています。私も、この本にあるとおり、たとえ相手方の同意のない録音であっても、内容がよれば基本的に証拠としてつかうべきだし、裁判所も採用する(させるべきもの)と考えています。
 著者は、若者たちの非正規雇用をめぐる事件で、弁護士費用がいくらかかるのか、それをどうしたのかについても触れています。たとえば、着手金は実費程度とし、報酬は上げた成果の1割とする、という具合です。
 本当に助けを必要としている労働者を、弁護士の側で拒否することがあってはならない。まったく同感です。
非正規雇用に関わる弁護士の仕事は、実に気持ちがいい。本当に助けを必要としている人の役に立てたという実感があるからだ。そこに非正規雇用の権利問題に取り組む醍醐味がある。
 いやあ、実にそのとおりです。著者には引き続き、大いにがんばってほしいと思います。といっても、先日の相談のとき、まずは自分でやれることをやってから来て下さい、と言ってお引き取り願ったことはありました。なんでも弁護士に任せてしまえば安心だという姿勢でも困るのです。弁護士と一緒になって取り組み、なんとかいい方向で解決を図りたい。そんな若者であれば、私も協力を惜しみません。
 先週、日比谷公園を歩きました。大きな銀杏の木が黄色く輝いていて、つい見とれてしまいました。ところが、あいにくの強風で、黄金の葉が舞い上がります。桐一葉、落ちて天下の秋を知る。ではありませんが、銀杏の木の葉が風で舞うのを見て、秋の終わりを実感しました。銀杏の木のなかに一本だけ緑の濃い葉をつけたものがあり、銀杏でも種類が違うのかなと友人と話したことでした。絵を描いている友人は銀杏の黄色をカンバスに描き出すのはとても難しいという話をしてくれました。それでも、静かに絵を描く時間を持つと、とても心が休まるだろうと思いました。
 翌朝、福岡に帰ると雪が降っていました。いよいよ冬突入です。
(2008年9月刊。760円+税)

なぜ弁護士はウラを即座に見抜けるのか?

カテゴリー:司法

著者:佐伯 照道、 発行:経済界アステ新書
 とても刺激的なタイトルのついた本です。大阪の佐伯弁護士は、柔和な見かけによらず、かなりの豪傑です。なにしろ、事務所に押しかけて来た2人組がフトコロにピストルを隠し持っているのに気がついても、ひるまず柔らかい会話を30分間し続けて、2人組の戦意を喪失させ、早々と退散させてしまいました。帰る途中で、2人組はピストルを試射して前を行く通行人をケガさせ、たまたま目の前にあった警察署によって現行犯逮捕されたというのです。これは並みの弁護士には、とても真似のできない話です。
 佐伯弁護士は、妥当な解決、あるべき姿、望ましい結果とは何かを考え、そこから「では、どうするか」を発想する。観念上の理想は追わないが、現実的な理想は希求するのだ。
 相手が大声で威嚇するときに、自分も負けじと声を荒げたりするのは得策ではない。挑発するような言葉や態度は慎む。怒らせないように、暴れさせないように、静かに、ぼそぼそと、言うべきことを言い、主張する。それで十分なのだ。うむむ、なーるほど、ですね。
 暴力団の事務所へも佐伯弁護士は一人で出かけました。私も、30年も前のことになりますが、地元の暴力団組長宅に行ったことがあります。怖いものですから、先輩弁護士に頼んで同行してもらうことにして、二人で行きました。玄関には虎の剥製が置いてあり、見るからにヤクザという若者が応対してくれました。お茶を運んできた女性は、いかにもアネゴ肌で、いやあヤクザ映画そのままなんだと感心してしまったことでした。その人は今やれっきとした市会議員で、公共事業を裏で取り仕切っていて、影の土木部長と呼ばれています。
 脅そうとして、まったく通用しなかった佐伯弁護士に対して、暴力団の組員は内心は強い敗北感を持っていた。夜、自宅前で二人組の男が嫌がらせのために張り番をしている。そこに帰って来ると、佐伯弁護士は「御苦労さん」と声をかけたというのです。
 ぼそぼそと言う。決して挑発するようなことは言わない。絶対に大きな声は出さない。帰ってくれ、とも言わない。何をしてくれ、とも言わない。ともかく淡々と、「お互いの不利益になることはしないようにしよう」と呼びかける。
破産管財人となって在庫一掃セールをやったとき、2億2000万円もの現金を紙袋に入れ、両手にぶらさげて帰って来た。22キロの重さだった。うひょう、私も一度は持ってみたいものです。
 弁護士のスキル・アップに大変役に立つ、しかも面白い本です。ありがとうございました。ぜひ、引き続きご活躍いただき、ご指導いただきますよう、お願いします。
(2008年12月刊。800円+税)

気骨の判決

カテゴリー:司法

著者:清永 聡、 発行:新潮新書
 いやあ、恥ずかしながら、ちっとも知りませんでした。年間500冊の単行本を読んで、それなりに物識りを自負している私ですが、私のまったく知らないことを私より2回りも若い著者に発掘されてしまうと、なんとしたうぬぼれを抱いていたことかと、耳の先まで赤く恥ずかしくなってしまいます。
 東条英機の恫喝にもめげず、大政翼賛会一色に塗りつぶそうとした選挙の無効を宣言する判決を大審院が下していたのです。すごいことですよね。軍部や右翼の暴力と圧力を跳ね返して鹿児島での現地審理を実現し、200人近い証人を調べ、直後に警視総監となった県知事まで証人喚問して追及したというのです。よほどの信念ある裁判官でなければできませんよね。しかも、選挙無効にする条文は、極めて形式的条項しかなかったのに、その趣旨に照らして無効としたのですからね。偉いものです。
 昭和17年4月に衆議院の総選挙が実施された。立候補者1079人は普通選挙が始まって以来、もっとも多かった。大政翼賛会の推薦する候補者が、そのうち466人。残る6割613人は非推薦だった。非推薦の政治家には、片山哲、鳩山一郎、芦田均、三木武夫という4人の戦後の総理(首相)が含まれている。ほかにも、尾崎行雄、中野正剛、赤尾敏、笹川良一、一松定吉、西尾末広、犬養健など多士済々だ。特定のイデオロギーを持つ人物ということではなく、政府に反発し、議会を活性化しかねない人間が排除された。
 そして、推薦候補には、国庫(臨時軍事費)から1人あたり5000円の選挙費用が支給された。非推薦候補者は、対立候補と戦うというより、政府によって組織された妨害を受けて困難な選挙戦をすすめざるをえなかった。露骨な演説会の妨害、投票妨害があった。投票率は83%で、前回より10%増。推薦候補の当選率は8割。非推薦候補も85人が当選した。多くの非推薦候補が落選させられた。
 そこで、鹿児島2区から立候補して落選した冨吉栄二は東京の弁護士を代理人に立てて大審院に対して選挙無効の裁判を起こした。事件は大審院の第3民事部に係属した。部長は当時57歳だった吉田久判事。苦労して中央大学を卒業して判事になった経歴を持つ。
吉田部長は部下である4人の裁判官を引き連れて鹿児島まで出向いて、出張尋問を実施した。このとき、吉田判事は、わたしは、死んでもいいという覚悟を決め、遺書まで書いていた。鹿児島で証人200人を調べたなかには官選知事であった鹿児島県知事もふくまれている。
このころ東条英機首相は、首相官邸で全国の裁判官を前に恫喝する大演説をぶった。
 戦争勝利なくて司法権の独立もあり得ない。戦争遂行上に大きな支障を与えるようなことがあれば、緊急措置を講じざるを得ない。
 大審院長も同じような考えであった。そんななかで、昭和20年3月1日、吉田久裁判長は、選挙無効の判決を下した。いやあ、これってすごいですよね。終戦の年の3月ですよ。最近になって、アメリカ軍の空襲のために焼失したと思われていた判決原本が今も現存することが判明したとのことです。このような気骨ある裁判官がいたことを知ると、日本の司法もまだまだ捨てたものじゃないと思わされます。
 いい本でした。著者はNHK記者とのことですが、今後の活躍を大いに期待します。
(2008年8月刊。680円+税)

少年院のかたち

カテゴリー:司法

著者:毛利 甚八、 発行:現代人文社
 マンガ『家栽の人』は本当によくできています。これが裁判官を取材せずに、まったく想像でつくられた本だなんて、驚きの一語に尽きます。
 僕は小説を書くために雑誌の世界に入った。大学(日大芸術学部文芸科)時代に数編の小説を書いた経緯から、取材する力がなければ職業として数多くの小説を書くことはできないと考えた。
 『家栽の人』は、『家裁少年審判部』(全司法労働組合。大月書店)と少年法を頼りに、前15巻のうちの最初の3巻は、まったく想像によって書いた。僕は主人公の桑田判事に「家族が大切」「子どもの気持ちが大事」という、ひどく古臭いメッセージを、さまざまな言葉に変奏して語らせ続けた。いま振り返ってみると、裁判所を何も知らない人間が描いたにしては、意外によくできていると思う。そして、現実の裁判官などに会って話を聞くと、自分が描いているような裁判官など、どこにも存在しないことがわかった。
 いやあ、そうでもないんじゃないでしょうか・・・。そして、著者は大分の少年院の篤志面接委員になったのです。ウクレレを教えたりしているそうです。すごいですね。
 少年院にいる子どもは、総じて成功体験が少ない。挑戦して失敗するところを他人(ひと)に見られるのが恐ろしい。少年院に来る子どもは隠し事をしてきた。こっそり悪いことをしているので、嘘をつくことから始まる。そこで、この業界の人間は、その点の嗅覚は発達している。
子どもたちは、もともと甘えたいという気持ちが蓄積されている。誰に対しても甘えが出てくる子どもがいる。
 この本の後半は、小説『法務教官・深瀬幸介の件』というものです。財団法人・矯正協会の『刑政』に連載されたそうですが、なかなか良くできています。法務教官の悩み、失敗、そして生き甲斐が語られ、ホロリとし、また考えさせられます。
亡くなった義父は久里浜少年院につとめていました。特別少年院だったので、大変だったようです。事務畑ですが、とても真面目な人でした。そんなこともあって、私は、法務教官とか矯正現場の人たちの日頃の大変な労苦に思わず親近感を覚えます。
 なんでも処罰してしまえばいいという風潮が日本で強まっていますが、本当に困ったことです。もっと社会が温かい心をもって犯罪に走った人に接しないと、日本はますますギスギスした国になってしまいます。
 先日、見知らぬ男性とたまたま路上で論争する機会がありました。その男性は、今の子どもたちはなっとらん。道徳教育が必要だと盛んに息巻いていました。これに対して、私は、子どもは大人社会の反映なんです。もっと大人がゆとりを持って、ゆっくり子どもと接することができるようにならないとダメでしょう。年寄りを差別したり、若者に不安定雇用を押しつけて人生の展望を奪っておきながら、子どもばかりに道徳教育なんかしたって意味はないと反論しました。その男性は、まず大人を変えないといけないということですか……と絶句し、なるほど、そうかもしれないと言って、首をかしげながら帰って行きました。はじめは会話が成り立つか不安でしたが、なんとか成り立ちました。路上といえども、やっぱり話し込むのは大切なんだと実感したことでした。
(2008年7月刊。1700円+税)

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