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カテゴリー: 人間

患者も医療者も幸せになる医療をめざして

カテゴリー:人間

出版  患者の権利法を作る会 
昨年11月のシンポジウムが冊子になっています。つまみ喰い的に、いくつか内容を紹介します。
 アメリカの州の中にはアイムソーリー法というのを定めている州がある。そうです。そう言えば、アメリカでは交通事故にあったとき、決して日本の「すみません」という感覚で「アイムソーリー」と言ってはいけないそうだと聞いたことがあります。「アイムソーリー」と言うと、自分に非があることを認めたことになって、あとで不利になるというのです。でも、共感を表明するのと過失を認めるのでは違いますよね、ですから、アメリカでも、アイムソーリーと言ったからといって過失を認めたことにはならない。そのことを州法で定めたというのです。そんな法律がなければ、アイムソーリーとは簡単に言えないということでもあります。悪い結果に対して、素直に残念だ、申し訳ないと言えるようにしようという動きです。いいことです。
 患者や遺族が病院・医師を相手として訴訟を起こす理由は三つある。ひとつは、病状の急激な変化、また死亡に至る経緯が不自然であり、その不信感を払拭する説明がなかったとき。二つ目は、病状説明が二転三転するとき。三つめは、事故後の対応があまりにも不誠実または閉鎖的なとき。そうなんですよね。まったくそのとおりだと思います。
 患者・遺族側は、事故が起きたら、隠蔽することなく全てを正直に公開してほしい。この点も、まったく同感です。
最後に、患者の権利法を定めようというとき、そこには患者の権利だけが書かれていると誤解されていることが多いと指摘されています。もちろん、患者の権利だけでなく責務についても触れられていますし、それ以外に「共に」「関係者みんなで」とあるのです。
 お互いにまだまだ知るべきことが多いように改めて思いました。
(2013年3月刊。非売品)

僕の死に方

カテゴリー:人間

著者  金子 哲雄 、 出版  小学館
私はテレビを見ませんので、流通ジャーナリストとしてテレビによく出ていたらしい著者を見たことはありません。
 41歳で肺がん(肺カルチノイド)でなくなった著者が死の間際まで書き続けた本です。壮絶な、しかし、さわやかに明るい読後感のある本になっています。
 バリバリ仕事をしていた著者が長くせきに悩まされ、顔にむくみが出て、病院で検査してもらったところ、「末期の肺がんです」と宣告されたのでした。
 肺カルチノイドは、治療法のないタイプ。肺だけではなくすでに肝臓や骨などにも転移していた。肺の中に9センチ大の腫瘍があり、気管を圧迫している。いつ死んでもおかしくない。肺を全摘出することになったら、生きていくことはできない。
女性週刊誌の中吊りをよく見ると、役に立つ。中吊りの見出しは、編集部の知恵を結集させた、言うなれば「言葉のエリート」のもつ、数もスペースも限られた中で、どんな言葉で読者をひきつけるか、中吊りの見出しは、だからこそ時代をあらわす最大公約数といえる。
 朝や昼のテレビワイドショーは、女性視点でつくられている。午前8時前そして午後10時以降のニュースは、男性視点から番組がつくられている。
 牛肉の値段の高い安いが、その地域の商圏の経済力を端にあらわしている。その地域の経済力が高ければ当然、高い肉が売れる。田園調布なら100グラム800円。庶民の町では、100グラム298円。100グラム800円の牛肉を食べる人は、マンションも3LDK、8000万円くらいに住む。スーパーのお刺身が3点盛り398円には意味がある。
 週刊誌350円のなかに、芸能、事件ニュース、生活実用の3点をバランスよく盛り込む。すると、お得に感じてもらえる。そうでないと、350万円では高いという反応が返ってくる。
 このところ、タイムセールの1パック98円の卵を買うために、10時開店のスーパーに朝8時から行列ができる。その多くは年金生活者。これは景気の悪い証拠。景気のいいときは、行列ができても、開店30分前。
この10年、治療費を支払えない患者が急増している。
 著者は、自分の葬儀を全部、自分で準備したのです。信じられません。
葬儀の準備を自分でするなんて、あまりにも淡々と自分の死を受けとめているように思えるかもしれないが、がん宣告のあとは動揺が続いた。ここまでの気持ちになるまでには、ずいぶん時間がかかった。高野山大学大学院に入学したのも、そのせいだ。
 生きるか死ぬかについて真剣に学びたかった。正しい死に方を勉強したかった。
 がん宣告後の1週間は、ひたすら泣いた。
 死の恐怖から救い出してくれたのは、仕事だった。
 そうやって著者は、最後までテレビやラジオ、そして全国をかけまわっていたのでした。
 最後に、通夜・告別式の会葬礼状を著者本人が書いています。ここまで用意していたのです。
 今回、41歳で人生における早期リタイア制度を利用させていただくことに対し、感謝申し上げる。
 とあります。ユーモアも忘れないところがすばらしいですね。死の前日の日付になっています。とても読みごたえのある本でした。
(2013年1月刊。1300円+税)
 朝、雨戸を開けると、水仙の白い花(真ん中に黄色)が庭のあちこちに咲いているのが目に飛び込んできます。そして、白梅が花盛りです。なぜか紅梅は見劣りしています。
 チューリップの芽がぐんぐん伸びています。春に近さを実感します。
 そんな春ですが、花粉症には日夜、悩まされています。目はかゆいし、鼻は詰まるし、ティッシュ・ペーパーが手放せません。
 今年1月からヨーグルト(BB536入り)を250グラムずつ食べていて、花粉症予防になると思ってがんばったのですが、今年も発症してしまいました。
 めげずに仕事を続けています。

笑いは病を防ぐ特効薬

カテゴリー:人間

著者  松本 光正 、 出版  芽ばえ社
私の事務所の自慢の一つは笑い声が絶えないことです。深刻な相談を受けることが多く、ともすれば暗くなりがちですが、そこを明るい笑いによって吹き飛ばし、ストレスを溜めないように心がけています。
 人生、何事も前向きにとらえて生きていけば、きっと道は開ける、いいことがあるというのが、私の信条です。まっとうな努力が必ずしも報われるとは限りません。それでも、前を向いて、明けない夜はないという確信のもとに一歩一歩あゆみを進めていくことにしています。
 この本では、私より5歳も年長の医師が、どんなサプリメントよりも笑いが優ることを長年の医師体験にもとづいてやさしく語り明かしています。
 笑いは、どんな病にも効く万能薬だ。万能のサプリメント、総合ビタミン剤だ。そして、連効性があり、おまけに無料。副作用は決してなく、あるのは「福の作用」のみ。
 下手に健康診断を受けて、その結果の数値に心配するほうが、ずっと身体に悪い。
 マイナス思考が心筋梗塞を起こす。脳梗塞も、マイナス思考が要因となることがある。
 がんもストレスで説明できる。心が病めば、がんが生まれる。心が病めば、がんは進行する。
 毎日、だれでも1万個のがん細胞が生まれている。そのがん細胞を殺してくれるのがNK細胞。このNK細胞の活性度を高めるのが笑いだ。このことは実証されている。
 マイナス思考が、がんを発生させる。笑いこそが、がん予防であり、治療である。がんとたたかう武器は「笑い」だ。
病気は、「病」を気にするところから始まる。病を気に病むと、なかなか治らない。治らないのは、病だけでなく、病気だから。こんな病なんて、すぐに治るさ、大丈夫だと思う気持ちが大切だ。
 笑いって、毎日の生活で欠かせないものですよね。
(2012年12月刊。1000円+税)

チンパンジーは、なぜヒトにならなかったのか

カテゴリー:人間

著者  ジョン・コーエン 、 出版  講談社
人間とチンパンジーは、どれだけ違い、また、似ているのかを探った本です。
 チンパンジーは泳げないそうです。だから、深い池にはまってしまうと、おぼれ死んでしまうといいます。犬かきみたいなこともできないのですかね・・・。
 そして、チンパンジーは人間の好むマラソンのような長く走ることもできないそうです。
 チンパンジーは、肝炎にかからない。
母親になったばかりのチンパンジーは、1時間に22回も赤ん坊の目をのぞき込むことが分かった。
人間の赤ん坊は夜泣きする。しかし、チンパンジーの赤ん坊は絶対に泣かない。なぜなら、母親が常に一緒にいるから。
 チンパンジーの雌は、授乳するときしか胸(乳房)はふくらまない。
 ヒトの男子の精液1ミリリットル中の精子は6600万個。ところが、チンパンジーは、25億個にもなる。
人間の女性は排卵の時期と受精のピーク時を隠すように進化してきた。父親をあいまいにすることで、女性とその子どもたちが守られるようにしたいということ。
野生のチンパンジーの平均寿命は13年。飼育下では42歳くらいまで生きる。チンパンジーは、30歳になるころには、狩猟採集生活者よりはるかに死亡率が高くなっている。
チンパンジーは、大人まで成長したら、最後に子どもを産んでから数年ほど生き続ける確率は1%でしかない。
人間は閉経後のおばちゃんが子育てに関わっていることが特徴です。
 チンパンジーは、今や絶滅の危機にある。野生のチンパンジーは多くて23万頭、少なくて16万頭ほどになった。人間が木を伐採し、土地を耕すことで生息地を破壊し、分散させてしまい、その結果、近親交配が増えていることによる。
 ニホンザルが減ったという印象はありませんが、アフリカのチンパンジーは劇的に減っているようです。心配です。
チンパンジーと人間の異同は、もっともっと知りたいところですよね。だって、人間とは何者なのかを知りたいものですから。
(2012年9月刊。2800円+税)

日本鍼灸へのまなざし

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著者  松田 博公 、 出版  ヒューマンワード
息子が東京・西国分寺で鍼灸師として働いていますので、少しその世界をのぞいてみようと思って読んだ本です。どの世界も職業の奥は深いわけですが、この鍼灸の世界も歴史と底深さがありますね。私も、ときどき自宅で娘から灸をすえてもらっています。温かくて、ときに熱さも感じますが、とても気持ちのいいもので、心地よい眠りに入れます。
 韓国のテレビの「チャングムの近い」は見ていませんが、それにも鍼灸が出てくるそうですね。同じく「ホジュン」の方は、本だけは読みました。素晴らしい本でした。ぐいぐいと作中の世界に引きずり込まれていきます。
 この本を書いた著者は、私より年長の、元ジャーナリストです。岩波新書『鍼灸の挑戦』も書いているそうですが、そちらはまだ読んでいません。日本と中国、そして韓国の鍼灸治療の現場を比較しているところもあって、大変面白く読み通しました。
 『病家須知』という江戸時代(1832年)の本がある。そのころ、病者の療養や出産、老人介護は、すべて家族の暮らしの一部だった。武士にも「介護休暇」や「産休」が与えられていた。自分と家族の身体と心の健康は自分で守るのが当然で、専門家の支援を仰ぐのは、その後だという自立ケア社会が成立していた。
 うひゃひゃ、江戸時代って、今より進んでいるところもあったんですね・・・。
むやみに薬を使用するな。祈祷を僧侶や修験者に頼むのは、ほとんど無益なことだ。心から祈れば、神仏にも伝わり、感応がある。
 食欲・睡眠欲・色欲の三欲を管理する。
鍼も灸も、生体にとっては極くささやかな刺激、微細な情報である。それ自体が強引に治すというより、不断に働いている体のおのずからなる治癒作用を応援している。つまり、生体に活力があるかないかが、鍼灸の効果を作用する。
 病気を治す自然の力の働きは、心地よい肯定的な過程をとるとは限らない。むしろ逆。病気になると、からだは熱を発し、汗を流し、下痢、腹痛、嘔吐などを繰り返す。この苦しくて悩ましい症状は、第一義的には、細菌やウィルス、有害物質を排除し、無毒化しようとする身体の防御反応、治癒反応である。こんな症状があるからこそ治癒するとヒポクラテスはこう考えた。
 なーるほど、そういうことだったのですね。だから、熱発や下痢があったとき、それを無理して止めるのは身体にかえって良くないわけなんですね・・・。
 1991年にスイス・アルプスの山中で発見された5200年前の「アイスマン」には、右膝などに入れずみがあり、それは鍼治療のあとだと考えられている。シベリアのアルタイ山中の男性ミイラにも、背中と足首に入れずみがある。これも鍼灸のせい・・・。
脳が絶対的な支配者として人体に君臨しているという、脳は至高の帝王であるという身体観は、現代科学と医学のイデオロギーであり、思いこみである可能性がある。
 中国医学の五臓、肝・心・脾・肺・腎は、心の神気のコントロールを受けつつ、それぞれ独自に精神性と機能を分けもち、五行の相生相克の論理に従って、半自立的に他の臓器と関係しながら、全体として統合されている。
 境界たる皮膚のほうが、生命維持機能のみを考えた場合、脳より上位にあることも可能である。
日本鍼灸の蘇生が熱っぽく語られる本でもありました。
(2010年6月刊。3300円+税)

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