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カテゴリー: 人間

孤島の冒険

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 N.ヴヌーコフ 、 出版 童心社
 千島列島の沖合で、たまたま船の甲板に出ていたところ、突如として押し寄せてきた大波にさらわれ、ようやく島にたどり着いた。しかし、そこは無人島。14歳の少年が、どうやって1人、島で生きていくのか…。
 今から30年も前の、まだソ連だったころの話です。47日間、たった1人で生き抜いた実話が物語になっています。
 小さな無人島ですが、幸いなことに泉が湧き出していて、小さな池になっていましたので、飲み水には困りませんでした。そして、食べ物です。まず、山でゆり(百合)を見つけ、その根(ゆり根)を食べました。少年は、ゆり根を食べられることを知っていました。学者のお父さんと一緒に山に入って、ゆり根を見つけて食べられることを教えてもらっていたのです。そして、野生のネギ(マングイル)も見つけました。お父さんから、シベリアの山を一緒に歩いたとき、いろんな食べられる草を教えてもらっていました。食べられるときは食べてみたので、はっきり覚えていたのでした。
次の課題は、火です。マッチがないなかで、火をつけるというのは難しいと思います。土台になる石に少しへこみをつくり、弓のつるを棒のまわりにまきつけて、弓を早くまわす。周囲には乾いた苔(こけ)と木っぱを置いておく。すると、火がついた…。
実は、写真がないので、本当のところは、弓のつるをどうやって早く動かしたら、乾いた苔が燃え出すのか、私には分かりません。それでも、ともかくこの少年は火を起こすことができたのです。一度、火を起こせば、次からは簡単です。タネ火を保存しておいたら、火をおこすのは自由自在になります。
 ニューギニアの密林に日本敗戦後も10年間も潜んでいた元日本兵たちは、メガネのレンズを2枚組みあわせて火を起こしていました。やはり、生き延びるためには、知恵と工夫が必要なのですよね。
 魚釣りをしようとしましたが、うまくいきませんでした。適当なエサが見つからず、返しのある釣り針がつくれなかったのです。魚のかわりをしたのが、イガイという小さな貝です。岩に付着しているイガイを焼いて食べるとおいしいのでした。
 島に流れ着いてからの8日間で、人間にとって一番大切なことは困難を恐れないこと、気を落とさないことだと知った。こんなことは何でもないこと。もっと嫌なことだってあるんだ。自分に、そう言い聞かせる。そうすれば、絶体絶命だと思うような状態からでも、抜け出す道は、きっと見つかるのだ。
 島に来てから、少年は、なんて自分は物知らずなんだろうと何度も悔(く)やんだ。もっと、大人たちから、いろんなことを教えてもらっておけばよかったと反省した。
 もうひとつ気がついたことがある。それは、どんな立場に立っても、決してあせるなということ。あせり出すと、もう手違いばかり。自分で自分を疲れさせるばかりだ。
少年は無人島で風邪もひいた。それでも、お湯をわかして、のばらのお茶を10杯も飲むと、4日で治った。やはり生命力が旺盛なのです。
かもめを弓矢で撃ち落として食べようとしたが、かもめに充てることは出来なかった。そして、かもめのひなは可愛くて、可哀想で殺して食べることはできなった。
 お父さんが言ったことを少年は思い出した。
 「運命が、きみを悪夢の中でさえ見たこともないような所に追いやるかもしれない。生き抜くためには、そこでも普段のままの自分でいること。物事をよく見きわめ、チャンスをとらえ、行動するのだ。いつも、どの仕事も、どんなに嫌な仕事も、最後までやり抜く。ひとつ所を、穴があくまで叩(たた)く。そのとき、愚か者が叩くような叩き方はしないこと。そうしたら、何でもやり遂げることができる」
 いやあ、実にすばらしい父親です。きちんとコトバで、こんな大切なことを息子に伝えられるなんて…、感動します。
 少年は大波で打ち上げられた無人の船に入りこみ、そこで火を起こして船の煙突から煙を出しているうちに眠ってしまった。そこをソ連の国境警備隊に発見されました。いやあ、すごい知恵と勇気のある少年の冒険談です。
(1989年4月刊。1340円)

無一文「人力」世界一周の旅

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 岩崎 圭一 、 出版 幻冬舎
 著者は28歳のとき、こう思った。「このままでは人生があっという間に終わってしまう。働いてお金を稼ぐより、自分のやりたいことを優先したい」
 その夢は、世界中を自分の目で見て回ること。著者のすごいところは、あえて「無一文」になって旅を続けたというところです。その無謀さと勇気に思わず息を吞みました。
 著者が出発したのは2001年4月のこと。まずは東京の新宿で1ヶ月半、ホームレス生活をした。その後、9ヶ月間かけて全国47都道府県をヒッチハイクでまわった。無一文なので沖縄に渡るときは、貨物船に乗り込み、何でも下働きの仕事をするから乗せてほしいとという条件を申し出た。
 ヒッチハイクしているときは、不潔感を漂わせないようにヒゲをそり、水道で体を洗えるところでは体を洗った。そうなんです。何ヶ月も風呂に入らず、シャワーも浴びないホームレス生活の人からは、なんともいえない異臭があり、同室はとても耐えられません。
 2002年3月、韓国へ渡った。知人のくれた船のチケットで釜山に行く。そして、コトバも通じないのに、韓国でもヒッチハイク。そして、次は中国は渡る。いやはや、なんという度胸でしょうか。
 中国で安い自転車を買い求め、自転車で南下していきます。3ヶ月以上かけてベトナムに到着。よほど身体が頑強なのでしょうね・・・。
 タイでママチャリ(自転車)の2台目を購入。そしてシンガポールへ。次は、チベットに入る。朝食はビスケットにたっぷりの蜂蜜を塗ったものを食べる。ここで、日本人の同行者が出来る。
 インドに入ったのは2003年11月のこと。ネパールに入ってから、著者は路上で手品の芸を演じ、もらった投げ銭を収入とするようになった。この手品ができるという一芸は著者の旅を大いに助けたようです。それも、最後には、なんとイギリスの人気オーディション番組(テレビ)「ブリテンズ・ゴット・タレント」で日本人初めてのゴールデンブザーを獲得したのです。2022年1月のこと。著者は29歳で日本を出発して20年たち、50歳になろうとしていました。途中の大事な話が抜けていました。2005年5月にはエベレストの登頂を達成しているのです。これまたすごいことです。
 エベレストに登るには300万円ほどの料金を支払わなければいけません。そのうえ、もちろん装備もきちんとしておく必要があります。友人が日本でカンパを集めてくれたとのことです。
 前から気になっていたのですが、こんな高山で、しかも冷凍庫なみに寒い中、トイレはどうしているのか・・・。床のない小さなテントの下に樽を置き、そこに用を足す。この樽が一杯になると、それを担いで下まで運ぶ人がいる。恐らく、極寒ですから、それほど悪臭はしないのでしょうが、これって大変なことですよね。
 エベレストの頂上は8848メートル、そこで写真を撮って15分ほどで下山を開始。よほど運も良かったのでしょう。
今や著者は51歳、日本を離れて21年間、一度も日本に戻っていないとのこと。まさに国際人ですね。元気の出てくる旅行記でした。
(2023年6月刊。1800円+税)

ロンドン・デイズ

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 鴻上 尚史 、 出版 小学館
 大学生のころから演劇界に入り、俳優そして演出家として活躍していた著者が40歳になる前、イギリスはロンドンにある演劇学校に入り、勉強しようと一念発起してからの1年間の、涙ながらの苦労話です。
 文化庁の「芸術家在外研究員派遣制度」の適用を受け、1日1万円、350万円がもらえる。ただし、1年間、仕事をして収入を得てはいけない。授業料は1年間で170万円。ロンドンは家賃が高くて、週に1回、芝居なんか見てたら、アシが出る。
 ロンドンでは、まずは英語学校に入る。英語は読めるし、英作文もそこそこ出来る。でも、肝心な聞き取りがまるでできない。
 ところが、1ヶ月したら演劇学校の授業に参加する。周囲の生徒はみな若い。20歳くらい。そして、聞き取れない。演劇の稽古場で、いくら見学しても、肝心なことは分からない。
人は、見学している人間に心を開かない。一緒に汗を流し、苦しみ、喜んだ人間にだけ、本当のことを語る。
 難しいことや複雑なことを話すときは、みなゆっくり話す。しかし、簡単なこと、慣用的な言葉を話すときのスピードは上がる。だから、聞き取れない。
演出家を長く続けると、その中に没入するのでなく、常に全体を見る視点を持ってしまう。こういう男と付き合った女性は、不幸だ。
やがて辞書を教室に持ち込むことをあきらめた。辞書を引いていたら、話についていけない。
俳優を志望する人には必ず新聞を読むようすすめる。新聞も読まないような人間とは一緒に仕事したくない。
「英語の戦場」にいた。戦場では、心底、気を抜くことができない。つまり、いつ襲われるかもしれないと緊張している。
欧米社会では、人間の名前を覚えることを大切にしている。
英語の勉強は、7割が聞くこと。あとの2割がしゃべることで、残る1割は読むこと。書くことは無視していい。
 私は長くフランス語を勉強していますが、やはり聞くことは大切だと思います。相手が何と言っているのか聞き取れなかったら、会話は成り立ちません。それで、聞き取り、書き取りを毎朝しています。
 自分の体と声を使って、自分を表現する楽しみを知ることができるのが、演劇の時間なのだ。
ロンドンの演劇は、中流から上流階級に向けてのもの。
 イギリスでは、労働者階級に生まれたら、一生、労働者階級。上流階級に生まれたら、何もしなくても一生、上流階級だ。
 イギリスは、徹底した階級社会。話す言葉を少し聞いただけで、その人がどの階級に属しているかが分かる。映画「マイ・フェア・レディ」の世界が今も生きているのですね…。
 イギリスで標準英語(RP)を話すのは全人口の1割以下。日本のように標準語が全国あまねく話されているのとは勝手が違うようです。
今から20年以上も前に刊行された本ですが、ずっとずっとフランス語を勉強している割には、今なおまともにフランス語が話せない私ですので、「そうそう、分かる…」と思いながら読み進めました。ひとつでも外国語ができると、世界が広がるのです…。
(2000年3月刊。1600円+税)

本の夢、本のちから

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 椎名 誠 、 出版 新日本出版社
 著者は世界中を駆け巡っていることがよく分かる本です。体力に自信がなく、しかもコトバの通じないところには本能的に拒否感をもつ私は、行った人の体験記を読んで追体験したつもりになって、それで良しとしています。そりゃあ、私だって、ピラミッドを見てみたいし、マチュピチュにのぼってみたいし、イースター島やガラパゴス島にも出かけてみたいという気持ちは、気持ちだけはもっています。でも、そこに至るまでの道中の苦難を考えたら、写真を手にとって眺め、苦労話をエアコンの利いたところで、熱いお茶を飲みながらじっくり味わってすますことで満足します。
 日本人は、世界でも相当に旅行好きな国民と言われている。私も、たしかにそうだと思います。江戸時代にも日本人はどんどん旅行に出かけています。しかも、無銭旅行も大流行していました。その典型が伊勢参りです。そして、戦前までの日本は旅人を止めてくれる家が日本全国至るところに余りました。
 ところが、今や、寺の境内の隅にキャンプを張ろうとしても寺は拒否するは、近所の人が文句を言いに来るわで、泊まるのも容易ではないそうです。すっかり寛容さが失われてしまったようで、悲しい限りですね。
 世界を自転車で一周しているスイス人は、日本人を皮肉って、こう言った。
 「日本はアウトドアライフの盛んな国だと聞いていたけれど、キャンプできる場所は限られていて、テントが張れる森や野原がない。しかも、海岸はゴミだらけで、川の水はどこも飲めない。ところが、不思議なことに、アウトドア用品を売る店は全国どこにもある。それを買った人は、いったい、どこで、何をしているのか。もしかすると、アウトドアが盛んだというのは間違いで、本当は日本はアウトドア用品を買うのが盛んな国ではないのか・・・」
いやあ痛烈な皮肉ですが、半分あたっている気がしますよね・・・。
 相手と話すとき、もっとも相手の目を見ない、見ないようにするのは日本人。その反対に、もっとも強烈に、終始、相手の目をにらみつけるように話すのはアラブ系の人々。たしかに、そうなんですよね。弁護士の仕事として相談に乗っているとき、相手の人の目を見るのは、ときどきだけです。じっとじっと見ているなんてことはありません。むしろ、書類を指し示したりしながら話すほうが多いです。でも、ここ一番、ここは説得の切所、ヤマだと思うときは、じじっと、目を見つめながら、声を低めて話しかけることにしています。
 それにしても、コロナ禍のせいで、マスクをしている人への対応は困りました。顔色、表情が読みとれないのです。目だけでは困るのです。口元そして全体の表情も大事なんです。
 この本で紹介されている旅行記を早速、10冊、ネットで注文して読むことにしました。
(2018年10月刊。1800円+税)

読み聞かせのすごい力

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐藤 亮子 、 出版 致知出版社
 私自身は親から本の読み聞かせをしてもらったという記憶はありません。私が小学1年生のときから、親は小売酒屋を始めて、年中無休で働いていましたし、なにより5人姉兄の末っ子でしたから、私に本を読んで聞かせるヒマはとれなかったと思います。それでも、私は幼いころから「活字大好き人間」で、小学校も中学校も図書館からよく本を借りて読んでいました。小学生のころは偉人伝を読みふけり、中学生のときは山岡荘八の『徳川家康』に感嘆したことを今でもはっきり記憶しています。高校生になってからは図書室で古典文学体系を読んでいましたので、試験科目としての古文はバッチリでした。やはり、原典にあたっておくと、断片ではなく、全体像がつかめますので、視野が格段に広がり、思いが深まるのです。
 そして、子どもたちには絵本をたくさん読んで聞かせました。この本に全然登場してこなくて残念だったのはかこさとしの絵本です。「カラスのパン屋さん」とか「ドロボー学校」などは、子どもたちに大うけでした。そして、科学的な解説絵本も勉強になりました。
 また、滝平次郎の「八郎」や「花咲き山」も、スケールの大きな絵本で、読んでいる私のほうが毎回、じーんと来ていました。
 AI時代で、弁護士も不要になるのでは…、なんて憶測も流れていますが、そんなことは絶対に考えられません。フェイス・トゥ・フェイス。相手の顔、その目つきや表情を見て心を通わせながら解決策をもっていく。それが弁護士の仕事です。それをAIができるはずがありません。コミュニケーションというのは、習得するのに難しい技術で、一朝一夕(いっちょういっせき)で身につけることはできません。
 若手の弁護士に対して、相談に来た人に対してきちんと挨拶し、帰りには笑顔で帰ってもらうようにする秘訣をなんとかして伝授しようと思ってがんばっているところです。
思考力のもとは、言葉の塊(かたまり)。子どもは、その言葉を操(あやつ)りながら思考力を高めていく。世の中は激変したように思われているが、人間そのものは何も変わらないので、育て方は今までとほとんど変わらない。なので、子どもの身体の中に、たくさんの言葉を入れて育てることから始める。それには難しい言葉からではなく、子どもが楽しいと思う言葉から始めるべき。
 いやあ、私は、この提言にまったく同感です。さすが子育てのプロと称するだけのことはあります。
良い絵本とは、お話が優しくて、終わり方がなんとなくほんわかしている。
 大切なことは、親が自分の声で絵本を読むこと。親の声だから、絵本の内容が子どもの耳の底に染み込む。
 子どもがオモチャで遊び、本棚から絵本を取り出したあと、著者は子どもに「片付けなくていい」と言っていた。いやあ、これには驚きました。片付けるのは親の仕事だと割り切ってしまうというのです。発想の転換ですね。子どもたちが伸びのびと遊ぶこと、本を好きに読むことを最優先とするというのです。それを下手に親は邪魔しないほうがよいというのです。この発想には、まいりました。子どもはオモチャ箱をひっくり返して遊ぶのが楽しい。その楽しみを親は防げないようにすべきだというのです。なーるほど、ですね…。
 小中高の12年間の大変なデスクワークの時間のなかで、しっかりした基礎学力となる読み書き計算をしっかり身につけるためには、その能力の育成に役に立つのは、絵本の読み聞かせだ。
子どもたちには、大好きなものを徹底的に追求するという気持ちを味わわせるのが、人生で大切だ。子どもが楽しいことに過集中することが、あとで、集中力、やる気、モチベーションそして自己肯定感につながっていく。それは、親が望んでいるものである必要はなく、子どもの興味にまかせる。子どもの興味は果てしなく、次々の興味の対象が広がっていくので、少し離れて、温かく見守る余裕をもてばよい。子どもにとって、一つのことに集中した体験は、必ず成長の糧(かて)になるだろう。
 子どもに1万冊の絵本を読んで聞かせたという著者ですが、かといって毎日、いちどに長時間かけていたというのでもありません。一度に読み聞かせするのは30分が上限。子どもは、飽きっぽいからです。この30分のあいだに、5冊か6冊を立て続けに読むのです。本の内容を変えて、スピード感をもたせて次々に読んでいくのです。そして、子どもに感想は訊きません。
 子育ては出たとこ勝負でいく。下手なルールはつくらない。ルールを破るのが子ども。
3人の男の子と末っ子の娘さんの4人全員が、超々難関の東大理Ⅲ(医学部)に現役合格したことで有名な佐藤ママの最新作です。早くも、4人全員が社会人となり、医師として働きはじめたとのこと。自宅に置いてあった絵本がダンボール箱20箱あったのを厳選して4箱にしたそうです。残りはお世話になった幼稚園に寄贈したとのこと。やはり、子育てのプロの言葉には味わい深いものがありますね…。著者の配偶者より今回もいただきました。ありがとうございます。
(2023年7月刊。1600円+税)

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