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カテゴリー: 人間

きょう、ゴリラをうえたよ

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 水野 太貴(文) 、 吉本ユータヌキ(絵) 、 出版 KADOKAWA
 いやあ面白い、子どもって、ホント、天才です。
 私が一番気に入ったのは次のコトバ。お葬式で、お坊さんがお経をあげているのを見て…。
 「あのおハゲ、なんでわけわからないことを言ってるの?」
 「お坊さん」というコトバを知らない。でも、失礼のないように「お」をつけた。思わず笑ってしまいますよね、悪気のないことがアリアリですから…。
この質問に対して、「魂が天国に行けるようにしてるんだよ」と笑えると、「魂には足が何本ついてるの?」と子どもはさらに尋ねたとのこと。いやあ、鋭い質問ですよね。
 さて、この本のタイトル。何を植えたかというと…。パンジーです。なんでパンジーがゴリラになったのか。パンジーがチンパンジーになり、それを思い出せなかったので、サルに近いゴリラになったというわけ。連想ゲームもここまで来ると、たいしたものです。
 子どものころ、トウモロコシを「とうもころし」というのはよくある間違い。私の子どもは「ヘリコプター」を「へーくりっぱ」と言っていました。まあ、なんとか分かりますよね。
 「ひいばあちゃん、しんぱくないー!」
寒いの否定は寒くない。眠いの否定は眠くない。だったら、心配の否定は「しんぱくない」。「心拍ない」ではありません。
 「みず、いりたいです」
これは、水がほしいということ。「水がいる」と言ったので、ちゃんとお願いしなさいと言われて、「いる」に「~したい」がくっついて、「いりたい」になりました。なるほど、そうきたか…。
 「セミが鳴いているね」「セミさん痛いの?」
 鳴いているを泣いてると受けとめたのですね。
 「パパ、いらなかったよ!」
 これは家の中でかくれんぼをしていたとき、なかなかお父さんが見つからないので言ったコトバ。「いる」の否定なら、「いらない」。
 「また、よごれたラーメン、食べにこようね」
 このラーメンは、ドロドロしたこってり系のスープです。それを「汚れた」と表現しただけで、なんの悪気もありません。
子どもの言いまちがいには、コトバの本質が詰まっている。記憶のメカニズムのような認知能力も映し出している。
 思わず吹き出しながら一気に読んでしまいました。おかげで、ほっこりした気分に浸ったひとときになりました。おすすめの本です。
 
(2024年10月刊。1650円)

体内時計の科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 ラッセル・フォスター 、 出版 青土社
 私たちの身体は、しかるべき時間と場所において、適量の最適な資源を確保する必要がある。体内時計は、このニーズを予期することができる。体内時計は、単に時間を知らせるだけでなく、時間の予測や、少なくとも環境内の規則的な出来事の予測を可能にする。
 睡眠中に記憶のほとんどが確立され、問題が解決され、情動が処理される。さらに、日中の活動で蓄積された有害物質が除去され、代謝経路が再構築されてエネルギー貯蔵庫のバランスがとられる。逆に、十分な睡眠がとられなければ、脳の機能、情動、身体の健康はすべて、すぐに混乱をきたす。
 異常な睡眠は、心臓疾患、2型糖尿病、感染症、がんを引き起こしやすくする。
 睡眠は、目覚めているときの生活能力を規定し、睡眠不足や睡眠における概日リズムの混乱は、健康全般に甚大な悪影響を及ぼす。
 平均的な人間の脳には、86億本のニューロンがある。そのうちの5万本のみが、24時間周期の概日リズムを調整する「マスター生物時計」として、連携しあいながら機能している。
 この「マスター時計」は、視交叉上核(SCN)」と呼ばれる脳の部位に存在する。SCNには5万本のニューロンが含まれており、注目すべきことに、それらのおのおのが独自の時計を備えている。SCNは哺乳類における「マスター時計」ではあるが、唯一の時計ではない。おそらくあらゆる身体器官や身体組織の内部に時計が存在している。
 人間はノンレム睡眠中も、レム睡眠中のどちらにも夢を見る。しかし、レム睡眠中の夢は鮮明で、長く続き、複雑怪奇である。目が覚めても、しばらくは最後の夢を覚えていることがある。
 人間は、全人生の36%を睡眠に費やしている。睡眠とは、個体がうまく適応できていない環境内で活動することを避ける、身体的な不活動の時期を指す。この時期に、活動期に最適な結果が得られるようにする一連の基本的な生物学的活動が実行される。
 人間を含むほとんどの動植物において自己の概日リズムを昼夜のサイクルにあわせる、つまり「引き込む」ときのもっとも重要なシグナルは、光、とりわけ日の出時と日没時の光である。
 時差ボケは、睡眠と概日リズムの混乱をSCRDという。SCRDは、コルチゾールが関与する、さまざまな健康リスクを高める。
 不適切な睡眠はSCRDの重要な特徴である。交替勤務の年数、交替の頻度、1週間あたりの夜間勤務時間が増えれば増えるほど、がん発症のリスクは高まる。夜勤とがんの相関関係は非常に強い。
 年長者はコルチゾールのレベルが高く、そのためSCRDの影響を受けやすい。そして、それがストレスの増大、認知能力の低下、さらには記憶を司(つかさど)る脳領域の縮小につながっていく。
 天才として高名なアインシュタインは、夜の睡眠時間は10時間、そして日中は規則正しい生活を送っていました。天才の脳を動かすのには、夜の10時間の睡眠が必要だったというんですが、とてもマネできません。私は、7時間の睡眠と、ちょっとした「昼寝」を大切にしています。睡眠はとても大切にしています。ともかく睡眠不足では頭がまわらなくなるからです。
でも、アインシュタインのように10時間を確保しようとは考えていません。もちろん、天才ではありませんし…。
(2024年8月刊。2800円+税)

私たちは電気でできている

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 サリー・エイディ 、 出版 青土社
 人間が体内で電気を起こして(発電している)と聞いたとき、そんなバカな…と思ったことでした。でも、どうやら本当のようです。誰が、いったい、何のために体内で発電しているというのでしょうか…。
骨、皮膚、神経、筋肉など、人間の身体のすべての細胞は、さながら小さな電池のように電圧をもっている。この生態電気があるからこそ、脳は体全体に信号を送ることができる。
電気は、心と身体の病気を治療するため、いろいろな方法で利用されている。
 たとえば、パーキンソン病を治療するため脳深部刺激療法は、乾燥スパゲッティほどのサイズと形をした2本の電極を脳の深部に滑りこませて、病気の破壊的症状を鎮める。
 電気薬学は、米粒大の電気インプラントを体内の神経周辺に固定することにより、糖尿病やぜん息の回復につながる可能性がある。ラットやブタの実験では実証されている。
 人間の身体には発電所がある。体内の40兆個の細胞ひとつ一つが、それ自身の小さな電圧をもつ、小さな電池だ。
細胞が休んでいるとき、細胞の内側は、外側の細胞外液よりも平均して70ミリボルトほどマイナスに帯電している。
 生体電気は脳だけでなく、体内のあらゆる細胞に役立てられている。カエルを実験に使ったのは、カエルの神経は場所が特定しやすく、筋肉の収縮が見やすいから。カエルを解体してからも、最大44時間は、収縮が持続する。
 カエルが実験に大量に使用されるようになって、ヨーロッパではカエルが不足するようになった。
神経系は細胞から出来ているが、このことはなかなか気づかれなかった。ニューロンは、標準的な細胞のようには見えないから。
 イオンはプラスまたはマイナスの電荷をもつ原子。「細胞外液」に溶けているイオンは、海水の成分と非常によく似ていて、主にナトリウムとカリウム、このほかカルシウム、マグネシウム、塩化物が少しずつ含まれている。これらの物質の濃度が、電気信号の通過を許可するかどうかの主要な決定要因となる。
 ひとつの穴があいていると、カリウムイオンとナトリウムイオンが1ミリ秒につき、1万個から10万個の範囲でひとつの細胞に出たり入ったりする。
 ナトリウムチャンネルとは何なのか、突きとめると、つまりはタンパク質だった。
 イオンチャンネルは、ひとつのグループとしては30億歳くらい。植物も菌類も動物も、私たち人間の体内に既にあるものは…?
 膜を隔てたイオンを分離し、移動させることは、すべての生き物にとっての基本である。
 ペースメーカーを使用している人は、50万人に近い。ペースメーカーのもっとも一般的な用途は、遅い心拍数の速度を上げる。
 脳も電気を発している。このことは実験で確認された。
イオンチャンネル薬は、がん治療を前進させるもっとも妥当な方法である。
 生体電気的特性を使って、がん細胞を健康な細胞と区別できることが分かった。
 人間の生体の電気の働きについて、いろいろ役に立つことを教えてくれる本です。不思議だらけの本でもあります。
(2024年7月刊。2800円+税)

「よく見る人」と「よく聴く人」

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 広瀬 浩二郎 ・ 相良 啓子 、 出版 岩波ジュニア新書
 著者の二人は、全盲の視覚障害者(男性)と聴力障害者(女性)です。
 伝音声難聴は補聴器で音を大きくできるが、もう一つの感音性難聴だと補聴器をつけてもことばは理解できず、役に立たない。私も難聴に困っています。
 「一目ぼれ」はありえないが、「一耳ぼれ」は頻繁にある。しゃべり方や声の質に魅かれる。目による読書は客観的に外から、耳による読書は主観的に内から作品世界に触れる。
 中学1年生の終わりに完全に失明した。原因は眼底出血。
パソコンの音声読み上げ機能を使って原稿を書く。点字で書いて音声で確かめる。点字は表音文字。点字の根底には、豊かな音の世界が広がっている。
全盲で京都大学文学部に入学した(1987年)。京大で初めての全盲の学生。そして京大居合道部に入る。視覚障害者なので、視覚情報に惑わされず、より深く自己の心と対話し、仮想敵に立ち向かうことができる。目に見えない敵を媒介として、己の精神を錬磨する。大切なのは闘魂。
その後も武道のいろいろに挑戦した。太極拳、テコンドー、ヨガ、合気道そして今は少林寺拳法。いやはや、すごいものですね…。
武道の稽古においてもっとも重視するのは音。道場に入ると、音の反響で自分の位置、壁までの距離を推測する。音の響きは道場の広さ、人数、天気などによって異なるので、気を四方八方に配って気配を感じとる。この心地よい緊張感が耳から全身に広がる。
 手話言語にも方言がある。手話も音声言語と同じく各地で自然発生的に表出される言語なので、世界共通どころか、国内共通でもない。うひゃあ、そ、そうだったんですか…、知りませんでした。
全盲でもテレビを「みる」。画面は見ずに(見えないから)、音声や雰囲気でイメージを広げて「全身でみている」。
 難聴者は「字幕メガネ」をかけて映画を楽しめる。動画で手話している様子を送る。これで、リアルタイプに使えるようになった。
世間では、障害者を十把一絡(から)げでとらえている。しかし、それは皮相的。
 「障害」を出発点として、共感力、コミュニケーション力を考えた新書です。大変興味深く読み通しました。
(2023年9月刊。940円+税)

思い出せない脳

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 澤田 誠 、 出版 講談社現代新書
 私は名前を思い出せないということが多いです。これは。年齢(とし)とったからというのではなく、若いころからそうです。
 小学校の先生(教員)は、新学期の前に、顔写真と氏名を見比べながら、必死で覚えておき、初めての生徒たちを名前で呼んで安心させるという話を聞いたことがあります。
 年齢(とし)をとって衰えるのは、新しいことを「覚える力」ではなく、「引き出す力」だ。
 加齢によって脳の細胞は減っていく。とくに「海馬」の細胞は、他より減りやすい。その海馬は記憶の「引き出し」にも関係している。海馬の神経細胞は、記憶に関して重要な役割を担っているにもかかわらず、酸素不足やストレスに弱い。
 海馬の一部の場所では新たな細胞が生まれている。神経細胞は入れ替わらなくても、神経細胞を構成している成分は入れ替わっている。
数に限りのある神経細胞でも、組み合わせ次第でほぼ無限に記憶を保管できる。
 神経細胞が加齢で死ぬ主な原因は血流不足。糖尿病にならないように注意するのが重要。糖尿病は認知症のリスクも1.5倍高い。糖は血管を傷つける。
 感情は情動と気分が合わさったもの。名前だけが思い出せないのは、名前が意味記憶で、意味記憶が生存に必須ではない記憶だから、情動が働かず、脳にとって思い出しにくいということ。
 記憶に残るか残らないかは、情動の動きに関係している。睡眠不足は、思い出せない脳をつくる。睡眠は、脳の機能を回復させる、脳の老廃物を排出させる、記憶の整理・編集・定着が行われる。
 起きているときよりも、睡眠時に活動が上がる脳の部位がある。大脳辺縁系。これは情動を司る脳部位。長期記憶を形成するために、睡眠はとても重要。新しい技能をマスターするためには、よく眠ることが重要。睡眠薬では、自然な睡眠周期は現れないため、記憶の形成の面ではデメリットも生じる。
 人の名前がどうしても思い出せないときにどうしたらよいか…。それは、思い出そうとするのをやめること。周辺抑制が働いているので、それを解放したらいい。脳は非情ともいえるほど合理的だ。
 脳の話は、いつ読んでも面白いですね。
(2023年5月刊。980円+税)

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