法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: 中国

中国経済講義

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 梶谷 懐 、 出版  中公新書
観光地に大勢の中国人観光客を見かけ、その爆買いで日本経済が支えられているというのに、日本人のなかに反中国感情が根強く、しかも広がっていることを私は大変心配しています。
今にも中国が日本(の島)に攻めてくるように錯覚している日本人が少なくないという報道に接するたびに、私は呆れ、かつ恐れます。
現実には、中国側から見たら、日本の軍国主義復活こそ危惧していると思います。日本が航空母艦をつくったり、アメリカのF35戦闘機(1機100億円もします)を100機も購入するというので、トランプ大統領が安倍首相を称賛したり、もはや専守防衛ではなく、海外へ戦争しに出かけようとする日本の自衛隊、そして軍事予算が5兆円を突破してとどまることを知らないという状況では、中国側の心配こそ根拠があります。
この本は、中国経済が今にも破綻しそうだというトンデモ本を冷静に論破しています。
久しく中国に行っていませんが、いま上海には4万人の日本人が住んでいるとのこと。上海に行くと、ここが「共産圏」の国だとは絶対に思えません。日本以上に資本主義礼賛の国としか思えません。
中国経済は表の顔だけでなく、裏の顔までふくめてトータルとして評価し分析する必要があると痛感しました。
現在の中国の政治経済体制は、権力が定めたルールの「裏」を積極的にかく、民間企業の自由闊達さを許容するだけでなく、それがもたらす「多様性」をむしろ体制維持に有用なものとして積極的に利用してきた。
中国のように確固たる「法の支配」が不在な社会で、民間企業主導のイノベーションが生まれてくるのは、権威主義的な政府と非民主的な社会と自由闊達な民間経済とが、ある種の共犯関係にあるからだ。
「一帯一路」といっても、そこに何かのルールや、全体を統括する組織などの実体が存在するわけではない。一帯一路とは、そもそも成り立ちからして捉えどころがないもの。一帯一路が中国を中心とする経済圏としてアメリカや日本に脅威を及ぼす存在になっていくという見方に、それほどの説得力があるわけでもない。
中国で生産する日系企業の売上高の増加にともなって、日本からの中間財の輸出が明らかな増加傾向にある。WTOに中国が加盟した(2001年)あと、中国が日本をはじめ韓国、アセアン諸国から中間材を輸入し、最終製品をアメリカやEUに輸出するという東アジア域内での貿易・分業パターンが次第に強固になってきている。
中国は液晶パネルや半導体、電池といった電子部品や特殊な樹脂や鋼材などの供給は、その多くを日本製品に頼っている。つまり、製造業とりわけ中間材の製造において、技術・品質面において、日本企業が優位性を保っている分野が、まだかなりの部分を占めている。今までのところ、日本と中国との経済関係は、多くの産業において、競合的というよりも、むしろ補完的な関係にある。
現在の中国では、テクノロジーの進歩によって、ある部分では、日本よりもずっと進んだ、これまで誰も経験していない情景が広がっている。「まだらな発展」ともいうべき状況が、社会の矛盾とともに、独特のダイナミズムも生んでいる。
アリババの画期性は、信用取引が未発達な社会で、取引遂行をもって初めて現金の授受がなされるという独自の決済システム(アリペイ)を提供し、信用取引の困難性というハードルを乗り越えた点にある。
矛盾にみちみちた国でありながら、その矛盾をダイナミックな発展につなげているという分析・評価は私にとって新鮮で、とても面白い本でした。
(2018年9月刊。880円+税)

文字講話、甲骨文・金文編

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 白川 静 、 出版  平凡社
2004年から2005年にかけての著者の講話が文字になっています。
甲骨文というのが写真で説明されていますが、よくぞ、今の漢字にあてはめたものだと驚嘆します。よほど漢字の成りたちを知らなければ解説できないと思いますが、さすが大先達は、軽々と文章を読み解いていきます。
日本の古代王朝では、あまりにも近親婚が多い。天智天皇の皇女4人が天智天皇の弟の天武天皇の妃になっている。兄の娘を弟が4人とも嫁にもらうというのは、明らかに異常な状況だ。
しかし、殷(いん)の皇位継承も似ていて、系統法には、これら二つのクラスに分けられる。要するに、相互に交替しながら継承するという形式をとっている。
第一に、殷王朝は、わが国と非常に親縁の関係にあった。
第二として、殷王朝は子安貝を非常に貴重な宝として用いた。子安貝は、生産力の象徴だった。
入墨の風習があったのは、中国では沿海民族だけだった。
戦争のときには、女シャーマンが前線に3千人ほど、ずらりと並び、呪力のかけあいをする。
目は非常な呪力をもっているので、目の威力で敵を感服させる。
文字は、古代においては、まことに神聖なものだった。
よく分からないなりに、漢字の源流を眺めました。それにしても、シャンポリオンがヒエログリフを解説したほどのものではないのかもしれませんが、大した偉業です。
(2018年2月刊。1300円+税)

日本人は知らない中国セレブ消費

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 袁 静 、 出版  日経プレミアムシリーズ
日本人と中国人の生活習慣の違いを知っておくのは必要ですよね。
たとえば、日本人にとって、レストランに入って、氷の入った水をコップでウェイトレスが持って来るのは当然のサービスです。ところが、中国人は熱いお茶を飲むのを習慣としているため、氷水なんて飲みたくない。
日本人はホテルや旅館で角部屋にあたると大喜びする(見晴らしがいい)が、中国人は、鬼(幽霊)がいるのを心配して嫌う。
日本人は白いお米のご飯がないと物足りなく感じるが、中国人は、ご飯は外食で食べるものではないと考える。なので旅館が夕食前に小腹の足しにおにぎりを出しても中国人は喜ばない。
日本人は今でも店で現金支払いを好む人が多い。中国人はスマホ決済一辺倒。
中国人はウィーチャットを偏愛している。中国人はウィーチャットで自分を高く売りつけるように努める。日本人の多くはそんなことはしないし、したくない。
中国人は、子どもを学校に上げると、競ってPTAの役員になりたがる。子どもが学校でいい扱いを受けるために親は必死になる。日本ではPTA役員の希望者が少なく、いつだって押しつけあいで決まる。
知っておいて損のない話だとおもいます。みんな違って、みんないい。金子みすずの世界です。
(2018年2月刊。850円+税)

13・67

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 陳 浩基 、 出版  文芸春秋
妙ちきりんなタイトルの本です。13とは2013年のこと。香港の雨傘革命前夜です。67は1967年、香港で反中ではなく反英暴動が勃発した年です。関係ないけど、私が大学に入った年でもあります。
いわゆる警察小説です。腐敗した警察官を内部にかかえる香港警察のなかにいて、事件の犯人を推理していくところは本格派の推理小説です。したがって、グリコのように一粒が二度おいしい本になっています。
どんな悪事でも、賄賂さえ払えば、警察官は片目をつぶった。非合法の賭場や売春、薬物販売などを警察が捜査・摘発したときも、それは悪を一掃するためではなく、マフィアから金を得るためだった。警察にお金を払えば、期限付き許可証を買ったも同然で、しばらくは警察が邪魔することはないという仕掛けだ。
犯罪者は、買収した捜査員が上司に顔向けできるように刑務所に行ってもよいという仲間を定期的に差し出し、身代わりにする。こうやって暴かれる麻薬取引や賭博行為が実際に行われているものの氷山の一角なのは言うまでもない。
最前線の取締りが出来レースなのだから、警察上層部はまったく目隠しされた状態で治安が悪化しているなど、つゆ知らず、むしろ部下たちががんばって犯人をひとり挙げたと喜ぶ始末だ。警察に入れば、その一員となる、すると、どんな真正直な人間でも、まっすぐ胸をはって生きていくことはできない。
どんなに自分の力を買いかぶった自信家であろうと、いったん「船」を押しとどめようとすると、あっという間にいびられ、爪はじきにされ、警察組織で孤立無援となって、その先に出世のチャンスはない。
あまりに面白くて、車中で夢中になって読みふけってしまいました。
(2017年9月刊。1850円+税)

1967、中国文化大革命

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 荒牧 万佐行 、 出版  集広舎
私が東京で大学生になった年(1967年)の2月、中国各地の状況を活写した貴重な写真集です。2月ですから、私は大学受験の直前ということになります。中国で大変なことが起きているという報道はありましたが、その実態は紹介されませんでしたし、解説記事もほとんどありませんでした。なにしろ竹のカーテンのなかで何が起きているのか、情報が伝わってこなかったのです。
この本で紹介されている写真を眺めると、北京でも上海でも、どこでも中国の各地で大勢の人々が路上にあふれ出てきていて、口々に何かを叫んでいます。
今では、文化大革命とは、文化革命なる美名をかりた毛沢東による権力転覆策動、独裁者としての自らの復権運動を本質とする権力闘争であることが歴史的にはっきりしています。しかし、この文化大革命のなかで三角帽子をかぶらされて街頭をひきずりまわされた多くの人々が無惨な死に追い込まれてしまいました。文化大革命終結後になんとか復権できた人は少ないし、きわめて幸運だったのです。
それにしても、街頭の壁一面に貼り出された壁新聞のボリュームには圧倒されてしまいます。人々が必死に手書きで壁新聞(大字報)を書いて貼り出したのです。そして、人々はそこに何が書かれているのかを読んで時勢(時流)を感じとっていました。
毛沢東語録をかかげながら、ふたてに分かれて激しく武力抗争するという事態が中国全土で進行していきました。やがて、それは毛沢東支配そのものをも脅かすほどになり、毛沢東自身がブレーキをかけ始めたのです。
このころ、日本にも文化大革命を礼賛する人が多数うまれました。毛沢東主義者と呼ばれる人たちです。その人たちは日本でも暴力を賛美して、社会を混乱させました。
やっぱり暴力からは、決して、まともな文化は生まれません。つくづく私はそう思います。貴重な写真集の頁をめくりながら改めて中国の文化大革命の悲惨さを実感しました。
(2017年11月刊。2500円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.