法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: ヨーロッパ

イスラエルがすごい

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 熊谷 徹 、 出版  新潮新書
イスラエルがシリコンバレーに匹敵するIT先進国だというのを初めて知りました。
私にとって、イスラエルというのはアラブ諸国と絶えず戦争をしていて、ときにはテロで狙われる物騒な国というイメージです。ところが、この本によると、意外に平和な雰囲気の国のようです。
今日、イスラエルは、アメリカのシリコンバレーに次いで、世界で2番目に重要なイノベーション拠点だ。
2017年3月、アメリカの巨大IT企業インテルがイスラエルの自動車関連ハイテク企業モービルアイを買収した。この買収金額は、何と153億ドル、日本円で1兆6830億円といいますから、とてつもない巨額な買い物です。
インテルは年間売上高は594億ドル(6兆5040億円)、従業員は10万6千人。モービルアイは3億5800万ドル(394億円)の売上で、従業員は750人しかいない。しかし、モービルアイは車の自動運転に不可欠のテクノロジーについて世界的リーダーの地位を占めている。モービルアイのカメラとセンサーは、自動運転の目だ。モービルアイの技術なしには、衝突防止や自動運転車の研究・開発は進まない。モービルアイの技術は、すでに世界中の1500万台の車につかわれている。
サイバー・セキュリティはイスラエルの得意分野の一つだ。「ファイアーウォール」の技術はイスラエルで生まれた。
イスラエルのテルアビブは、不動産ブームによって家賃が高騰している。
イスラエルの出生率は3,1(2015年)で、日本やドイツ、EUの2倍だ。
ヨーロッパに住む人の出張先としてイスラエルは人気がある。その理由の一つは、温暖な気候。また、豊かな食生活とグルメの集まるレストランがたくさんあること。
日本よりもテロや戦争の危険は高い国だが・・・。そして、イスラエル人は起業家精神が旺盛だ。
ナスダックに上場しているイスラエル企業は97社。中国の159社に次いで多い。日本はわずか12社でしかなく、ドイツだって10社だ。
イスラエル国防軍にはいって兵役に就いているときに学んだ技術を民間経済のために活かしている人がとても多い。軍隊がベンチャー企業家の「養成校」となっている。軍隊の8200部隊は、イスラエル国防軍きっての超エリート部隊だ。
テロリストがヒトを殺すため、車をハッキングして事故を起こす危険がある。つまり、交通事故と見せかけた殺人が可能になる。ノートブック型コンピューターから自動車のシステムに入りこみ、走行中の車に急ブレーキをかけたり、窓を開けしめするので、事故発生を操作することができる。
ええっ、車が殺人マシーンに化すのですか・・・、恐ろしいことです。
ノーベル賞を受賞したイスラエル人は人口比で多い。科学関連で8人もいる。ドイツ91人、日本5人、・・・。
イスラエルは、中国との関係を緊密化しつつある。イスラエルは中国による一帯一路にも参加している。
中国の資金とイスラエルのイノベーション力、ドイツのテクノロジーが結合すると、世界にとって手ごわい相手となるだろう。日本はイスラエル進出の点で、明らかに出遅れている。
イスラエルの違った一面を知ることができる本です。
(2018年11月刊。780円+税

シリア拘束40か月

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 安田 純平 、 出版  ハーバー・ビジネス・オンライン
シリアに40ヶ月も拘束されていたジャーナリストの体験報告記です。
著者を「自己責任」と称してバッシングする人がいることを私はとても理解できません。著者のような勇気あるジャーナリストのおかげで、私たちはシリアの実際の状況を居ながらにして知ることができるわけです。危険だから行ってはいけないという安倍政権の統制にみんなが従順にしたがっていたら、私たちは知るべき必要な情報を何も入手できず、嘘つき政権の思うままに操られてしまうばかりではないでしょうか・・・。
著者は、シリア情勢を見ることは、現在の世界とこれからの世界を見るうえで参考になると言いますが、まったく同感です。
著者を40ヶ月も拘束していたのは、イスラム系ではなく世俗の組織ではないかということです。この組織は、最後まで名前を明らかにしていません。したがって、著者を殺害しても何の意味もないのです。
この組織は、イスラム法廷から受刑者を受け入れるビジネスをしていたと思われる。
著者は拘束されているあいだに、イスラム教の聖典クルアーン(コーラン)と預言者ムハンマド(モハメッド)の伝記を何度も読み返してイスラム教について学び、拘束していた組織のメンバーと話していたとのこと。
イスラム教は、平和的な面を非常にもっている宗教である。よく勉強しないと誤解してしまうところがある。
著者が解放されるについて、日本政府をふくめて誰かが身代金を支払ったのではないかという点について、著者はそれを否定しています。ただし、日本政府が3年4ヶ月間、可能な限りの努力をしてくれたと著者は謝意を表明しています。
要するに、日本人が外国で何者かに拘束されたとき、その日本人がどういう人物であるか、つまり日本政府にとって好ましいかどうかにかかわらず、救出すべきは日本政府としての当然の責務だということです。
邦人保護は必ずする。身代金を支払うことは絶対にしない。
この2つが大原則だと著者は強調しています。2番目は難しいけれど、そのとおりだと私も思います。
3年あまりも狭いところに閉じ込められていたのに、まともな精神状態で語れるというのは素晴らしいことだと思います。身体のあちこちにガタが来たりして大変なようですが、再び元気を回復して、ジャーナリストとして活躍されんことをこころから期待します。
わずか100頁あまりのブックレットですので、ぜひ手にとって読んでみてください。
(2018年11月刊。800円+税)

私を最後にするために

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ナディア・ムラド 、 出版  東洋館出版社
読みすすめるのが辛い本です。よくぞ勇気をもって真実を告発したものです。心より敬意を表します。著者は2018年のノーベル平和賞を受賞した女性です。
イラク北部に住んでいたヤズィディ教徒たちがISIS(イスラム国)に襲われました。著者はISISによって連れ去られ、フェイスブック上に開設された市場で、ときにわずか20ドルで性奴隷として売買された数千人のヤズィディ教徒女性の一人だった。その母親は、他の80人の高齢女性たちとともに処刑され、目印ひとつない墓穴に埋められた。また、兄たちは、数百人の男性とともに一日のうちに殺された。
ISISのパンフレットは次のように書いている。
Q,女の人質を売ることは許されるか?
A,女の人質と奴隷は、単なる所有物であるから、売る、買う、または贈り物にすることも許される。
Q,思春期に達していない女の奴隷との性交は許されることか?
A,相手は性交に適しているなら、思春期に達していない女の奴隷と性交渉をもつことは許される。
信じがたい問いと答えです。これが宗教の名でなされているのですから、その宗教とは一体なんなのか、疑わざるをえません。ヒトラー・ナチスがユダヤ人を人間と扱わなかったのとまったく同じです。
ISISは、略奪してきたヤズィディ教徒の女性をサビーヤと呼び、性奴隷として売買した。
ヤズィディ教徒の女性は不信心者であり、その戦闘員によるコーランの解釈によると、奴隷をレイプするのは罪ではないとされる。
新たな戦闘員を勧誘し、忠誠と適切な職務遂行のほうびとしてサビーヤが手渡される。
ISISが著者を連れ去り、奴隷にし、レイプし、虐待し、そして一日のうちに家族7人を殺したとき、著者を黙らせることができると考えたことだろう。しかし、著者は沈黙しなかった。孤児、性暴力の被害者、奴隷、難民、このように呼ばれることに抵抗し続けた。そして、新しい呼ばれ方を自ら示した。生還者(サバイバー)、ヤズディ教徒たちのリーダー、女性の権利擁護者、そしてノーベル平和賞受賞者、国連親善大使。
ヤズィディ教は、古代からある一神教。物語を託された聖人によって、口承で伝えられてきた宗教だ。
ヤズィディ教徒は世界中に100万人ほどしかいない。
ヤズィディ教徒に対する攻撃は「ファルマン」と呼ぶ。オスマン帝国の言葉で、ジェノサイトと同義。
ヤズィディ教徒は異教徒とは結婚しないし、異教徒がヤズィディ教に改宗することも認めていない。信徒を増やすためには、大家族をたもつのが一番確実。そして、子どもの人数が多いと、農作業の人手に困らない。
ヤズィディ教徒では、神は人間をつくる前に7つの聖なる存在、天使を神の化身として想像した。その一つがクジャク天使。イスラム教徒は、クジャク天使の話を聞いて、悪魔崇拝者と呼ぶ。
ヤズィディ教徒は12月には、贖罪のため3日間の断食をする。
ヤズィディ教徒は、1日3回お祈りをする。
ヤズィディ教徒では、あの世とは、要求の多いところで、死者は、この世の人と同じく苦しみを味わうことがある、とされる。
ヤズィディ教徒の聖職者たちは声明を出した。元サビーヤは、コミュニティに戻ることを歓迎され、その身に起こったことで批判されることはない。改宗は無理やりされたことなので、ムスリムとはみなされない。レイプされたのだから、被害者であり、汚れた女ではない。
サビーヤにされた女性たちを、両手を広げてあたたかくコミュニティに迎え入れるべきだ。この声明に接して、少しだけ心が落ちつきますが、しかし、なかなか容易なことではありませんよね・・・。
人には語らねばいけないときがある。そう思わせる、ぐぐっと重たい本でした。まっ黒な背景に寂しい目でまっすぐに前を見つめている著者の顔に意思の強さを感じまる。
あまりの重たさに、ためらいつつも広く読まれるべき本だと確信します。
(2018年11月刊。1800円+税)

あちらこちら文学散歩

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 井本 元義 、 出版  同人誌『海』抜刷
アルチュール・ランボーの足跡をたどった詩人による探訪記であり、随想集です。
19世紀末のフランスで活躍したランボーは、若き詩人として数々の傑作を発表したあと、突如として文壇から姿を消し、アフリカでは武器商人として行動します。そして、37歳で亡くなるのでした。
著者はランボ―に関する本を数十冊読み、フランスでランボーの生まれ育ち、活動した地を訪ね歩きました。ロッシュ村にあるランボーの墓石は何度も撫でたということです。
なぜ、ランボーは詩を書くのを止めたのか。書くことに何の意味も感じなくなったのか。書けなくなったのか。絶望したのか、それともふてぶてしく生きていたのか・・・。
パリのムフタール通りには、「バー・バトーイーヴル」がある。「酔いどれ小船」と訳される詩はランボーの最高傑作の一つ。このとき、ランボーは、まだ16歳だった。
著者は、会社経営を引退すると、年に3ヶ月ずつ、3年間をパンテオンの近くのアパルトマンに居を構えてパリをさまよい歩いたといいます。すばらしいことです。とても真似できません。
ランボーは、ヴェルレーヌと同世代、そして二人ともパリ・コンミューニのころに生きていました。
ランボーは彗星のように出現し、スキャンダルとともに消え去り、その後は居場所も分からない謎の詩人として名声を博しました。もちろん、本人はそんなことは知りません。
フランスを去ってアフリカで武器商人としてもうけようとしてランボーは失敗してしまいます。
著者は私のフランス語仲間です。2015年にはフランス政府観光局主催の「フランス語で俳句」というコンクールに応募して優勝し、フランス旅行に招待されました。すごいです。
著者のあくなき探究心と文筆活動に大いに刺激を受けています。
(2019年1月刊。非売品)

わたしの町は戦場になった

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ミリアム・ラウィック 、 出版  東京創元社
シリア内戦下を生きた少女の4年間。これがサブタイトルです。オビには、「一人の少女が内戦下の日々を曇りなき目でつづった21世紀版『アンネの日記』」とあります。
少女はシリアのアレッポに生まれ育ち、今もアレッポで両親と妹とともに暮らしているアルメニア系のクリスチャンです。今は15歳になっていますが、この日記では7歳から13歳までの6年間の生活が紹介されています。
戦争が身近にあり、死と隣あわせの生活を過ごしたため、ものすごいスピードで成長した。
銃や大砲の音を聞き分けられるし、爆弾の種類も知っている。避難するタイミングと方法も身についている。なにより、死がどんなものであるかを知っている。大切な人を失った悲しみ、死ぬかもしれないという恐怖、そういったものを経験した。
戦争という泥沼にはまっていた。子どもからすると、チンプンカンプンの、ろくでもない戦争。なんでそんなことになってしまうのか、まるで理解できない。
戦争とは、恐怖、悲しみ、不安以外の何ものでもない。もう二度と戻ることない以前の生活に思いをめぐらせること。それが戦争だ。
ミリアムの日記は、2011年6月、7歳のときから始まる。そして最後は2017年3月。13歳だ。
戦争になる前のアレッポで豊かな色やにおいや味があふれている、天国みたいなところで暮らしていた。アレッポの太陽を浴びて日焼けしていた。夏には、街歩きの最後に、広場のユーカリの木の下で、ピスタチオをトッピングしたアイスクリームを食べるのがおきまりだった。
自宅を出て、避難することになった。みんなにまじって、私たちの家族も歩きだした。まわりの人を見ていると、思わず『ひつじのショーン』に登場するヒツジたちが頭に浮かんだ。だれもが無口になっていた。話をしている人は一人もいなかった。
4歳のときから、ずっとフランス語を習っている。でも、フランスがシリアに戦争をしかけようとしているなんて聞いたら、もうフランス語の授業を受ける気にはならない。
戦争のさなかにも学校があり、少女は皆勤賞をもらうのです。
2014年9月1日。きょうから学校が始まる。5年生になった。私たち姉妹は、一度も授業を欠席したことがない。それがパパとママの自慢だ。
学校の中庭で小さな女の子が一人で遊んでいる。5歳のイバちゃんだ。イバちゃんは、ときどき、ふと遊ぶのをやめ、声をはりあげて「アスマ、おいで、アスマ。一緒に遊ぼう」と言う。アスマはイバちゃんの妹。イバちゃんの目の前で殺された。イバちゃんは、妹が死んでいることが分からなくて、ずっとそばにいて話しかけていた。そのときから、イバちゃんの目には、いつも妹が見えているらしい。
シリアの内戦は、日本では報道されなくなってしまいました。アサド政権がひどいという話もありましたが、反政府軍との武力衝突が早くおさまって、平和のうちに話し合いで解決してほしいと思います。戦争が小さな子どもたちの夢を無惨におしつぶしているのを知ると、耐えられない思いです。
(2018年10月刊。1800円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.