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カテゴリー: ヨーロッパ

私のおっぱい戦争

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 リリ・ソン 、 出版 花伝社
フランスの若い(29歳)女性が自分の乳がんのためのおっぱいを半分切除した体験をマンガで描いたものです。
著者はフランス生まれのフランス人女性。カナダのケベック州(フランス語が公用語の一つ)でテレビゲームのグラフィック・デザイナーとして活躍していた。29歳で乳がんの診断を受け、その3日後から、友人などへ漫画ブログを開設した。このブログが評判となり、開設して6ヶ月でコミック本となった。
全3巻のうちの1冊目の本書では、乳首に異変を感じたあと、検査と診断を受けてから、左胸を乳首ごと切除した。
がんという事実をなかなか受けいれられなかった自分の心の動き、周囲の反応、そして同棲中の恋人の支え、手術後の自分の身体などが、かなり正直にユーモラスな絵と文章で紹介されています。
フランスでは本になって1万部も売れたとのこと。なるほど、身近な人ががんになったら、どう接したらよいのかをふくめて、いろんなことを学べ、考えさせられます。
乳房をとったら女性ではなくなるのか、片方の乳房をとったら半分だけ女性ということになるのか、などユーモラスな問いかけもあり、考えさせられます。
巻末の解説によると、著者は治療を終えてフランスに帰国し、今はマルセイユに恋人と1歳の息子と一緒に元気に住んでいるとのことで、ほっと安心しました。
著者は、がんに「ギュンター」というドイツ風の名前で呼ぶことにしたそうです。要するに、ギュンターとは共存せざるをえなくなったことを受け入れたわけです。
ギュンター退治のことだけを考えるのではなく、毎日、ささやかなことに楽しみを見出すようにしたとか、いろいろな工夫をしたところも大変参考になりました。
気楽にさっと読め、そして大いに考えさせられるマンガ本です。
(2019年10月刊。1800円+税)
 例の10万円が6月5日(金)に入金があり、翌土曜日に手にしました。私が支払っている税金が少し戻ってきたという気分です。大切に使います。
 それにしても、この遅さはどうでしょうか…。スピード感と言えば、アベノマスクをつくった業者に460億円とか、その不良品の検品に8億円。持続化給付金を扱う電通などに700億円以上、さらにコロナ後の観光対策事業を扱う業者の手数に3000億円。こちらは、ものすごいスピード感で巨額のお金が惜しみなく使われています。みんな「アベ様のおトモダチ」です。なんで、竹中平蔵のパソナまでがコロナで肥え太るのか、天下の電通って、こんな汚れないお金までむしりとる存在なのか…。悲しくなります。もうアベシンゾーの顔なんか見たくないという人が圧倒的だというのは本当です。もっともっと怒りの声を上げましょう。

マリー・アントワネットの衣裳部屋

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 内村 理奈 、 出版 平凡社
1769年、オーストリアのパプスブルグ家のマリー・アントワネットとフランスのブルボン家の皇太子ルイの婚約が成立した。いわゆる政略結婚であり、このときアントワネットは、まだ13歳の少女だった。
この当時、結婚前に会うことはなく、相手の肖像画が手渡され、それだけを頼りに、結婚のその日を迎えるのが通例だった。すなわち、肖像画を贈りあうことは、結婚を進めていくための大切な第一歩だった。
結婚式の費用は200万リーヴル。およそ200億円。衣裳のために10万リーヴル、10億円が充てられた。
このころ、女性は人生で2度、白い布類を大量に用意しなければならなかった。結婚と出産のとき。当時、真っ白な布は大変高価で貴重なものだった。そして、レースも驚くほど高価なものだった。
アントワネットは、フランス国境に入ったとたん、オーストリアから着てきたすべての衣裳を脱がされて、フランス流の宮廷衣裳、ローブ・ア・ラ・フランセーズに着替えさせられ、髪型もフランス王室髪結い師によってフランス流に整えられ、靴もフランスの華奢な靴に履き替えさせられた。うひゃあ、す、すごいことですね…。
1770年5月30日、結婚祝賀の最終日、婚礼祝賀花火のあと、広場は大混乱状態になり、大勢の死傷者を出す大惨事が出来(しゅったい)した。死者は男性45人、女性87人の計132人にのぼった。広場でパニック状態となり、将棋倒しが起きたのでしょうね…。
朝、1日の始まりは、恭しいシュミーズの儀式から始まった。アントワネットにシュミーズを手渡すのは、その場に居合わせた最も高位の貴婦人がつとめる名誉ある行為だった。他人を寝室に招じ入れながら、着替えを披露することは、特権階級の、まさしく特権だった。
18世紀も大貴族の女性にとって、自分より格下の者たちは、羞恥心を引きおこす必要などまったく感じることのない相手だった。つまり、大貴族の女性からすれば、身分が下の人物は畑のかぼちゃやキャベツと同じようなものだった。
化粧着でゆったりと過ごしながら、衣裳係から差し出された衣裳見本帳を見て、その日の衣裳を決める。これが午前の儀式のクライマックスだった。公式の衣裳、非公式の衣服、儀式用の衣服の3種類があった。
衣裳係と女官は、アントワネットの衣裳をすべて管理していた。そして、彼らは、アントワネットの衣裳を売買して利益を得ていた。
マリー・アントワネットの実像の一端をちらっとだけ垣間みた気のする本でした。
(2019年10月刊。3200円+税)

ベルリン1993(上)

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 クラウス・コルドン 、 出版 岩波少年文庫
ヒトラーが政権を握るまでのベルリンの労働者街の日々が描かれた小説です。主人公は、もうすぐ15歳になる14歳の少年。姉と屋根裏部屋で生活しています。
父親は元共産党員として活動していたが党と意見が合わなくなって脱党。兄は共産党員として活動している。一緒に生活している姉は、なんとナチ党の突撃隊員と婚約し、それを合理化する。怒った父と兄は、もう姉とは絶好だと宣言する。
では、なぜ姉はヒトラーのナチスに惹かれるのか…。
「社会民主党は口先ばかりだし、共産党は世界革命だとか、全人類の幸福だとか、できっこないご託(たく)を並べているばかり。私の望んでいるのは、そんな大きな幸福じゃなくて、個人のささやかな幸福なの…」
「きのう、共産党を選んだ600万人のほうが、ナチ党を選んだ1400万人より賢いって、どうして言えるのよ」
「あたしたちは、馬車に便乗して、すいすい行くことにしたの。乗らなければ、置いてけぼりをくうわ」
ドイツ共産党の党員の多くは知識階級を好まない。労働運動に真剣に取り組むのは労働者だけ、知識階級は偏向しやすいと考えている。
共産党だって世の中の不正に反対している。ただ、やり方を間違えている。ドイツの良心を忘れ、モスクワの言いなりになっている。
姉の婚約者は次のように言う。
「ヒトラーは、経済を立て直す方法を知っているんだ。国会議員は、おしゃべりばかりだ。しゃべるだけでしゃべって、なんの行動もとらない。民主主義なんて、役に立つものが今は強い男が必要なんだ。
おれたちは世の中を変えたいんだ。平和とパンが望み。そして、みんなが仕事をもてること。これを、ヒトラーは約束している。突撃隊のホームに行けば、毎日、スープが飲めるんだ。ここは、ちゃんと話しかけてくれるし、話も聞いてくれる。ヒトラーが政権につきさえすれば、みんな仕事がもらえるんだ…」
主人公はヒトラーの『我が闘争』を読んだ。退屈な本だった。ヒトラーの言葉は、ふやけていて、おおげさだ。読み通すのに苦労した。
ヒトラーは、いざとなればフランスと戦争するつもりだ。そして、ユダヤ人を排斥しようとしている。どちらも信じられないことで、あまりにリスクを伴う…。
この本ではナチ党の脅威を前にして、なぜ共産党と社民党が統一行動をとらなかった、とれなかったかの事情を明らかにしています。
要するに、共産党は社民党について、真っ先に打倒すべきものとしている。社民党は、今の国家体制を維持したがっている。共産党は転覆させたがっている。この両党には、長い歴史がある。政治的対立というのは、ウサギをオオカミに変えてしまうもの。
ナチ党の突撃隊員は主人公の職場にもいて、「ハイル・ヒトラー」の敬礼を唱えないと、ボコボコにされてしまいます。工場内では孤立無援になるかと心配していると、助っ人も登場します。
街頭でも職場でも、むき出しの暴力が横行しています。ナチス突撃隊の集団的暴力に対抗して、共産党の側も暴力で立ち向かうのですが、警察はナチスの側につきますし、共産党の側は不利になるばかりです。
むき出しの暴力に暴力で対抗しても、本質的な解決にはならないことを、私は東大闘争の過程で全共闘の「敵は殺せ」の暴力を目のあたりにして、身をもって考え、体験させられました。
そして、当時のドイツ共産党については、スターリンの狡猾なヒトラー接近策のなかで踊らされてしまったという側面は大きかったと思います。
「少年文庫」ではなく、大人向けレベルの本です。
(2020年4月刊。1200円+税)

物語カタルーニャの歴史

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 田澤 耕 、 出版 中公新書
カタルーニャというのは、スペインの地中海岸の北東部、フランスと国境を接する地方のこと。広範な自治権を有する自治州であり、その州都はバルセロナ。カタルーニャの人口は700万人。デンマークを上回る。
交通の要衝として、古代から栄えてきた。現代では、その地の利と、勤勉な国民性をいかし、スペイン随一の先進工業・商業地域として、スペイン経済の牽引車の役割を果たしている。
カタルーニャは中世(711年)イスラム教徒に支配された。フランク王国が取り戻したのは759年のこと。中世においては、イスラム教圏こそが先進文明圏であり、キリスト教圏は、戦いに明け暮れる未開の蛮族と貧弱な農法に頼る貧しい農民たちの地にすぎなかった。すなわち、ギリシャ・ローマの文明は、イスラム教圏で保持され、磨かれていたのだった。
修道院は、当時の学術・文化の中心であり、すぐれた修道院をもつことは、すぐれた政治顧問国を持つことにも等しかった。
アルモガバルスという傭兵部隊が存在した。アラビア語起源で、「突然、侵入してきて荒らしまわる者たち」という意味のことばだ。14世紀、地中海の国際情勢が安定してくると、アルモガバルスはやっかい者となり、危機を迎えた。
1939年1月、バルセロナが陥落し、フランコはカタルーニャ自治憲章を廃止し、カタルーニャ語を使用禁止とした。フランコ政権による厳しい報復を恐れてピレネー山脈をこえてフランスに亡命した人は50万人にのぼる。
フランコ独裁政権は「強い統一スペイン」を標榜して、徹底的な反カタルーニャ主義政策をとった。カタルーニャ語を公の場で使うことも禁止した。
1975年、独裁者フランコが82歳で病死した。
1978年に、スペインの原稿憲法が制定され、カタルーニャ州に自治を認め、自治憲章の制定を認めた。
2014年9月、バルセロナで180万人が参加する大規模なデモがあり、スペインからの独立を求めた。バルセロナの人口は160万人であることから、180万人というすごさが分かる。
カタルーニャ自治州は、人口ではスペインの16%だが、GDPでは20%を占める。工業、農業、漁業、そして観光業まで、スペイン産業界をリードする豊かな地域なのだ。
2014年11月の住民投票では、230万人が投票し、8割以上の人がカタルーニャの独立を支持した。しかし、投票率は有権者の3割でしかない。
2017年10月の住民投票では、投票率44%で、独立賛成が90%をこえた。
なかなか住民意思の実現が難しいのは、どこも同じなんですね…。
スペインの北部、カタルーニャの興味深い歴史と現在を知ることができました。
(2019年12月刊。920円+税)

南仏プロヴァンスの25年

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ピーター・メイル 、 出版 河出書房新社
コロナ・ウィルスによる深刻な被害で世界中が大変なことになっている今、旅行どころではありませんが、旅行に出かけるとしたら、南仏プロヴァンスは絶対におすすめです。
だって、年間300日は麗らかに晴れて、夏だと夜10時ころまで明るいのですから、観光にはもってこいです。そのうえ、食べるものが美味しく、ワインも高価でなくても最高の味わいなんです。
夕食をとろうと、夜6時にレストランに入ろうとしても早すぎます。早くても夜7時から。夜といっても、午後の7時や8時はまだ真昼間なんです。店内ではなくて、道路に面したテラスにテーブルがセットされていて、道を行きかう人々を眺め、眺められながら、2時間かけて、ゆっくり美味しい料理とワインを楽しむことができます。そんな夢のような生活を過ごした著者が描き出した『南仏プロヴァンスの12か月』は世界的な大ヒットとなり、空前のプロヴァンス・ブームを生んだのでした。
私が初めてそんなプロヴァンスの一つ、エクサン・プロヴァンスに4週間ほど滞在したのはまだ30歳代のことでした。外国人向けのフランス語夏期集中講座に参加したのです。学生寮に泊まってフランスでの独身生活を謳歌しました。
プロヴァンスの人々は、地球上のどこよりも特典に恵まれた環境に生きていると信じきっていて、他所へ移る意思はない。
プロヴァンスの人々は、時間にせかされる今様のせせこましい風潮を嫌い、当然のことながら政府を信用することなく、「パリの出来そこない」と言って見下している。
フランス人が会話を彩る仕種(しぐさ)は、ほれぼれするほどだ。指、掌、腕、眉毛の自在な動きと声の抑揚によって論点を強調し、発言の内容を敷衍(ふえん)する話術が絶妙だ。
プロヴァンスではロゼが圧倒的な人気だ。見た目がいいし、料理は相手を選ばない。
プロヴァンスでは昼の食事がことさら重んじられている。商店はどこも、正午から午後2時まで休みをとる。週末の昼食は常にもまして大切とされ、とりわけ日曜は平日なら2時間の昼休みが3時間をこすのもざら。
ワイン・フェスティバルのとき市場(マルシェ)の屋台を冷かして食べ歩く。火を通さないソーセージ、ピザを一かけら、山羊のチーズを一口、さらにリンゴのタルトの甘い香りが鼻をくすぐる。そして、パスティス(食前酒)。フランス人は、1日にグラス2千万杯、年間に1億3千万リットルのパスティスを飲む。パスティスの滑らかな喉越しは、憂いを払ってくれる。
ああ、またまた南仏プロヴァンスの陽光を浴びながら、歩道のテラスでパスティスそしてキール・ロワイヤルを飲みながら、美味しいフランス郷土料理を味わいたくなりました。困った本です。でも手放せません…。
(2019年11月刊。1700円+税)

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