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カテゴリー: ヨーロッパ

ナポレオン戦争

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 マイク・ラポート 、 出版 白水社
皇帝ナポレオンの偉大さを究明するというより、ナポレオンの戦争遂行の実際を科学的に実証しようとした本です。なるほど、そういうことだったのかと、何度もうなってしまいました。著者はイギリスの歴史家(グラスゴー大学の准教授)です。
ナポレオンは横暴な両親による粗野な教育や兄弟たちとの激しい競争の下で育った。
ナポレオンは、怨恨と不満の塊でもあり、それがサディズムのような暴力への衝動につながった。
ナポレオンは、コルシカに育ち、氏族主義を抱き、生涯を通じて自分の家族の利益を増進させた。ただし、ナポレオンは王朝を望んだのではなく、むしろ権力の充足を目ざした。だから、家族であっても逆らったり、期待にそえなかったら、その人物は排除された。
フランス革命のナショナリズムは、正統な政府はフランス国民からのみ生じるという考えにもとづいている。だからこそ、ナポレオンは、「フランスの皇帝」ではなく、「フランス人の皇帝」として自分を戴冠した。
ナポレオンは、すべての兵士が将校へ昇給できるようにし、実際にも、在任中、それを実施した。すなわち、老練な兵士が下士官から将校できるようにした。たとえば、フランス軍の将軍2248人のうち、67%が貴族以外の出身だった。1804年のナポレオンの元帥18人のうち貴族出身と自称できたのは5人だけだった。ナポレオンは、フランスの軍隊に対して、垂範、プロパガンダ、顕彰、懲罰を用いて兵士に意欲を起こさせた。
ナポレオンの他国の領土支配の目的は、兵卒、資金、物的資源を戦争戦術に供出させることにあった。
ナポレオンのもとに、フランスの全人口の7%(これは適格者の36%)が徴兵された。この当時のフランスの人口は3000万人、ロシア4000万人、そしてイギリスは1500万人だった。
ナポレオン軍はロシア(モスクワ)までに全軍兵士の3分の1を脱走で、また、性病、チフスという病気によって失った。
(2020年7月刊。2300円+税)

モーツァルトは「アマデウス」ではない

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 石井 宏 、 出版 集英社新書
生前のモーツァルトの名前はアマデウスであったことはないし、アマデウスと呼ばれたこともない。モーツァルトが自らをアマデウスと名乗ったことは一度もない。
アマデウスとは神の愛を意味する。
晩年のモーツァルトは、故郷もなく(ザルツブルグを嫌い、また嫌われていた)、ウィーンを脱出することもかなわず、父には敵対視され、最愛だった姉にも嫌われ、妻にも背かれて、帰るねぐらがなかった。
モーツァルトの栄光は、アマデーオという名前と共にあった。モーツァルトは、「ぼくは、もうあまり長く生きられない感じがしている。まちがいなく、ぼくは毒を盛られたのだ」と手紙に書いた。
そして、例のサリエリは、その32年後、精神病院に入っていて自殺を図り、自分がモーツァルトを毒殺したと「告白」した。しかし、モーツァルトの死のとき、サリエリはすでに宮廷楽長に昇進しており、この地位は終身職だったから、その身は安泰であり、今さらモーツァルトに焼きもちを焼いたり、狙ったりする必要はなかった。
モーツァルトは、まだ字も読めないうちに音譜を読み、単音はもとより和音も正確に聴き分ける絶対的音感をいつのまにか身につけ、さらにどんな音楽も簡単に覚えてしまう超絶的な記憶力を生まれもっていた。また、すらすらと自在に作曲する天賦の才能まで備えていることを父親は発見した。
モーツァルトは文字どおり生まれつきの天才音楽家だったのですね…。
モーツァルトの短い一生でどんなことが起きていたのかを知ることのできる新書です。
(2020年2月刊。880円+税)

ドイツ人の村、シラー兄弟の日記

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ブアレム・サンサール 、 出版 水声社
ドイツ人の村というから、ドイツの話かと思うと、フランス人作家によるフランス、アルジェリア、ドイツなどを舞台にした小説です。
アルジェリアの半砂漠地帯には、元ナチス将校たちが生活する「ドイツ人の村」が現実に存在しているとのこと。
この本では、父親がアルジェリアの小さな村で生活しているところを、イスラム過激派が襲いかかって、残虐な皆殺しを遂げたという展開から始まります。
ですから、両親を殺されたシラー兄弟は被害者なのですが、実は父はナチス親衛隊の将校として、アウシュヴィッツなどの絶滅収容所と関わりをもっていたのです。そのことを証明するような資料を入れたカバンを兄が発見したことから話は展開します。
兄は、その内容に衝撃を受け、父の生前の挙動を探りにドイツなどを歴訪し、次第にナチス将校としての亡父の犯した行為を自らの責任であるかのようにとらえ、苦しみはじめた。そして、ついに兄は自死を選択し、決意して実行する。
父は人間一人を殺したのではない。二人殺し、それから百人、次に数千人、さらに数万人を殺した。父は憎しみと隷属に浸り切っていて、父の頭に穿たれた穴は底なしだった。そして、終局を迎えたとき、父は自分の犠牲者たちに背を向けて逃げることを選んだ。それは、犠牲者たちを、もう一度殺すことに等しかった。これから、父と父の犠牲者たちの分の支払いを、私が間違いなく履行することにする。しごく当然のことにすぎない。父の犠牲者たちが、どうか私たちを赦してくださいますようにと願う。これこそ、私にとって一番大事なことなのだ。とはいえ、私の死は、何かの取り返しをつけるものではない。ささやかな愛のしぐさだ。
兄は日記にこのように書き、自死を実行した。
兄は銃を撃ちこむとか、橋から飛び降りるとか、電車に飛び込むといったスピーディーな方法を選ばずに、じわじわと死んでいった。自殺自体が目的ではなかった。兄が望んでいたのは罪を償うことで、だから、父の犠牲者たちと同じようにガスで死にたいと願った。自分が死んでいく過程をじっくり見つめた。それが父に代わって支払いたいと望んだ代価だった。絶滅収容所で亡くなった犠牲者たちに償いをし、父の子どもとして背負っている負債の重荷から弟を解放するために…。だから、自殺という言葉は、ふさわしくない。
アルジェリアに生まれた、日本の団塊世代と同じ世代の著者は、フランスでは著名の作家だそうです。この本を読んでいる最中に、NHKの特集番組でアウシュヴィッツ収容所の地中から発見されたゾンダーコマンドたちの通信文が紹介されていました。3人の氏名が判明し、その顔写真が紹介されていたのですが、なんとその一人は戦後まで生きのび、54歳でギリシャで亡くなったとのこと。その娘さんに対しては何も語らなかったそうです。いやはや、大変な経験をした(させられた)ゾンダーコマンドの人が生きのびていたとは驚きました。
(2020年4月刊。3000円+税)

彼女たちの部屋

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 レティシア・コロンバニ 、 出版 早川書房
主人公は40歳の女性弁護士、ソレーヌ。富裕層の住むパリ郊外で生まれた。両親は、ともに法学者で、子どものころから頭が良くて感受性豊かで、真面目。学業では挫折を知らず、22歳で弁護士資格を取得し、パリの有名法律事務所に就職した。すべてが順調。
母になることを夢見ることもなく、山積みの仕事のため、週末もバカンスも放り出し、睡眠不足で、走り出したらとまらない特急列車のような日々を送っている。
ある日、依頼者(クライアント)が脱税の罪で裁判となり、判決の日、検察側の求刑どおり懲役(実刑)と数百万ユーロの賠償を命じられた。依頼者は、判決を聞いた直後、裁判所の建物の巨大な吹き抜けに身を投じて自殺してしまった。
ソレーヌのショックは大きく、路上でガス欠したように立ち往生した。入院先の病室で、カーテンを閉めきったまま何日も起きあがれない。光に耐えられない。そのうえ、交際していた彼との予期しない破局がやってきた。その墜落の衝撃はすさまじかった。もう元の法律事務所には戻れない。裁判所に入ることを考えただけで吐き気がする。
よい弁護士とは、心理カウンセラーであり、信頼できる相談相手である。ソレーヌは、身を引いて相手に意中を吐露させる術を身につけていた。ソレーヌはパリにある「女性会館」で代書の仕事をすることにした。ボランティアの仕事で、あくまでリハビリのつもりだ。
スーパーで買ったヨーグルトが2ユーロだけ高く払わされた。手紙を出して取り戻したいという依頼を受ける。冗談かと思うと真剣な顔つき。手紙を代書した。翌週、2ユーロが戻ってきたと、お礼を言われた。胸が熱くなった。法律事務所では莫大な金額の争いを担当し、もらった弁護料も途方もない金額だった。しかし、どれも心底からの喜びは感じていなかった。しかし、この2ユーロを取り戻したことを聞いて、ソレーヌはなすべきことをした実感、いるべきときに、いるべき場所にいるという実感をおぼえた。これまで飲んだ高価なシャンパンにまさるとも劣らない、おいしいお茶を味わった。
ソレーヌは、パソコンを使うのをやめて、紙とエンピツで書くようにした。そして、手紙を代書する。そのなかで言葉を取り戻した。人の役に立っているという実感は何ものにも代えがたいものがある。
ヴァージニア・ウルフは、書くためには、すこしの空間とお金がいる。それと時間だという。ソレーヌには、三つともある。では、なぜ、書かないのか…。
「女性会館」に来て、代書のボランティアをするうちに、言葉たちが戻ってきてくれた。もしかして、これがセラピーの意義なのかもしれない。人生の流れに、抜け出した地点から入りなおす。勇気がいる。だが、いまのセレーヌには勇気がある。
「女性会館」に入る前、その女性は15年間も路上生活を送った。外では何もかも盗られる。金も身分証も電話も下着も。歯のかぶせ者すら盗まれた。レイプもされた。54回。その女性は数えていた。襲われないため、髪を切って女に見えないようにした。女と分かれば、路上では生き残れにない。
言葉だけでは足りないときもある。言葉が無力なときは、行動に出なければ…。
パリに実在する「女性会館」が創立するまでの苦労話をはさんで、現代に悩みながら生きる女性弁護士ソレーヌの自分らしさを取り戻す話が進行していくのですが、ともかく読ませます。すばらしいです。
フランスの小説は、えてして抽象的で難解なストーリーが多いように思いますが、これはもちろん深みはありますが、言わんとすることはきわめて明快です。ぐいぐいと1920年代のパリと現代のパリの両方の話に思わずひきずり込まれてしまいました。
(2020年6月刊。1600円+税)

ルポ・つながりの経済を創る

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 工藤 律子 、 出版 岩波書店
いま日経新聞は「太陽の門」というスペイン内乱を扱った小説を連載中です。あとで政権を握ったフランコ軍は初めのうちは反乱軍でした。作者の赤神諒はペンネームで、弁護士です(もう弁護士の仕事はしていないのかも…)。
スペイン政府派のほうは国際義勇軍が支援していましたし、そのなかにヘミングウェーもいたのでした。フランコ独裁政権が樹立すると、知識人をはじめとする多くの反ファシズムの人々があるいは銃殺され、あるいはフランスなど国外に逃亡していきます。
そんな知識しかないスペインでは、いま市民運動が大きく盛り上がっているようです。
「もういい加減、真の民主主義を!」
今の日本にも必要なスローガンです。モリ・カケ、桜…。すべてをあいまい、うやむやにして「アベ政治」を継承する。とんでもないことです。もう、いい加減にしてよ。そう絶叫したい気分です。
スペインでは2011年5月15日の市民デモは空前の盛り上がりを見せた。そして、これが市民運動「M15」(5月15日運動)の始まりだった。
15Mの精神を受け継ぐ市民政党「ポデモス(私たちはできる)」は、2015年12月の総選挙で第三党(69議席)になり、同年5月の地方議会選挙でマドリード、バルセロナ、サラゴサ、バレンシアなどの市政を担当することになった。そして、2018年6月のPSOE新政権では、閣僚20人のうち女性が11人を占めた。
すごいですね。日本にも女性大臣はいますが、森雅子って人は弁護士とは思えませんし、稲田朋美とか片山さつき、高市早苗って、女性そして弱い者の権利を守るという視点がまったく欠落していますので、何も期待することができませんよね…。
ポデモスが市政を担当して、何が、どう変わったのか…。
マドリード市は、市民による社会活動に助成金を出している。すごいですね。
「時間銀行」とは、人々が銀行、つまりグループをつくり、そこに自分がメンバーに提供できるサービスを登録し、お金ではなく「時間」を単位に、必要なサービスをメンバー間で提供しあう仕組みだ。スペインには280あまりの時間銀行があり、そのうちの100行ほどがとりわけ積極的に活動している。日本にも時間銀行の支店がある。日本では、「世代間のつながり」が時間銀行を利用する目的の一つとなっている。
最近ふえている中東やアフリカからの難民を積極的かつ具体的な形で巻き込んでいる時間銀行もある。たとえば、難民にとって必要なスペイン語の習得を時間銀行によるボランティアが活躍している。
マドリードには「モラ」という地域通貨がある。生ゴミや使用ずみの食用油のリサイクルを推進している。生ゴミや使用ずみ食用油をもっていくと、いくらかの「モラ」をもらえる。これは、「モラ」利用者が開くバザーで使える。
スペインでは、いま労働者協同組合が活発に活動を展開していて、拡大中だ。全国に2万の組合が存在し、組合員数は25万人をこえる。
たとえば、ある協同組合には50人の労働者がいて、そのうち20人が障がい者だ。そして、ワインとオイルをつくっている。保育園から、小・中・高そして大学まで擁する労働者協同組合もある。ここでは、教科書をつかわず、教員が自由に教えている。そして、協同組合を支える法律事務所まである。
スペインではすでに市民相互の連帯で変えていく新しい試みがいろいろと進行中のようです。日本だって負けてはおれませんよね。
自助、自立、そして共助。なんでも自己責任だというのなら政治は必要ありませんし、税金だって納めるのがバカバカしい限りです。自助できない状況になったら、とりあえず共助、公的援助を当然のように受けられる。そんな世の中の仕組みにしなければ、あまりに息苦しく、辛い社会(世の中)になってしまいます。
7年も続いたアベ政治の致命的欠陥は、友だち優先の露骨な政治をすすめたため、真に相互援助して助けあうという温かい関係がすっかり台なしにされてしまったことだと思います。なんでも自己責任と片付けられ、すぐに自粛警察が登場してくるようでは、この世の中、息が詰まるばかりです。
(2020年4月刊。2000円+税)

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