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カテゴリー: ヨーロッパ

レストラン「ドイツ亭」

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 アネッテ・ヘス 、 出版 河出書房新社
ドイツ・フランクフルトで1963年にアウシュヴィッツ裁判が始まったことを舞台とした小説です。主人公は通訳として裁判の渦中にいるのですが、検事長は、かのフリッツ・バウアー。
戦後十数年たって、ドイツでは「古傷には触れるな」という風潮が根強かった。それを乗りこえてナチスの犯罪を裁く裁判がすすめられていったわけですが、通訳となった24歳の独身女性は自分が戦争中に何が起きたのか何も知らなかったこと、そして、実は自分の家族も強制収容所生活に何かしら関わっていたのではないか…と疑いはじめるのです。
法廷で、辛じて生きのびた元収容所が証言しても、収容所の副所長以下は、「そんなことはいっさいしていない」、「人違いだろう」、「無実です」などと、白ばっくれるばかり。勇気を奮って証言した証人は、絶望のあまり裁判所からの帰りに自動車に衝突して死亡する。
「どうして何もしなかったの?すべてのナチス将校の食事に毒を入れてやれば良かったのに…」
「そんなことをしたら、殺されていたわ」
「そんなことをしても、きっと無意味だった。かわりに新しい誰かが来て、それでおしまいだ。ナチスのやつらがどれだけたくさんいたか、信じられないだろう。ほんとうに、そこらじゅうにいたんだ…」
「人を殺してはいないかもしれないけど、それを許したんでしょ。どちらがひどいことなの、ねえ、教えて、どちらがひどいことなの?」
ドイツは、ゲーテやベートーヴェンを生んだ国だし、奇跡的な経済復興をなし遂げたことを誇りにしている。ところが、ドイツは、もういっぽうで、ヒトラーやアイヒマンや、彼らの多数の共犯者や追随者を生んだ国でもある。
「一日に昼と夜があるように、いかなる民族の歴史にも光と影の部分がある。ドイツの若い世代は、親たちが克服しがたいと感じたすべての歴史と真実を知る準備があると信じている」
これはフリッツ・バウアー検事長の言葉です。今の日本ではなかなか聞けないセリフになっているのが残念です。
著者は1967年生まれの女性脚本家です。この本はベストセラー小説になって、世界22ヶ国で翻訳されたとのこと。
アウシュヴィッツ絶滅収容所で実際に何が起きていたのか…。ガス室での大量虐殺、ナチス親衛隊員による拷問や虐待が法廷で語られ、ドイツの人々は初めて具体的かつ詳細な真実を知らされた。それまでは、収容所で人体を焼却する臭いと煙は体感して知っていたものの、それ以上ではなかった…。
日本軍が中国大陸で731部隊や南京大虐殺のとき何をしたのかが日本国内で具体的に身近な人たちに語られることがなかったことから、「南京虐殺の幻(まぼろし)」などの「トンデモ歴史本」を生み出し、今でも皇軍(日本軍)は中国人を助けていたと思い込んでいる日本人が少なくないのが残念でなりません。これは、東京裁判がアメリカの思惑から中途半端に終わったことも、今に尾を引いているのだと思います。
ナチス・ドイツの家庭に育った子どもたちが戦後にたどった道としても読める小説でもあります。ずっしり重たい、380頁近い本でした。
(2021年1月刊。税込3190円)

デカメロン2020

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 イタリアの若者たち 、 出版 方丈社
2020年3月、イタリアに全土封鎖が発令された。イタリアでは、毎日、1000人もの人々がコロナ禍のため死んでいった。大勢の若者が自宅に足留めをくらった。
この本は、イタリアの若者たちが、そのとき何をしていたのか、何を考えていたのかを教えてくれます。
壁に囲まれていた生活もしばらくすると、部屋の片付けや勉強、絵を描き、歌をうたったり本を読んだりを、ひととおりやり尽くしてしまう。ありあまる時間におぼれそうになる。そこでみんなが一斉に始めたのは料理だった。手軽なレトルトや冷凍食品には頼らず、生地からつくるパスタやピッツァ、お菓子。外出禁止になってから、小麦粉は前年度比で2倍の売り上げ。こもりきりの単調な生活で、三度の食事は重要なイベントになった。
バリカンで自分の髪をカットしてくれる高校生の姉に、小学生の弟は、「失敗しても気にしないで。髪は、また生えてくるから」と礼を言う。
みんながバルコニーに出て歌った。それは単にイタリア人が陽気だからではない。独りにさせない。隣人を気づかい、安否を確認しあう。泣かないために笑うから、なのだ。
「生きていたら、経済のどん底からも必ず立ち直れる。物事の重要さの順位を肝に銘じ、弱い人を守り、他人(ひと)への責任を果たしましょう」
これがイタリアの大統領と首相の言葉です。日本のスガ首相は何を言ったでしょうか。自粛、自立、自助。これだけ。政府は何もしない。PCR検査も、ワクチンの確保も、まるで他人事(ひとごと)。そんなスガ首相をかばう日本人がいるのが私には信じられません。誰がやったって同じ。彼なりにがんばっている…。とんでもありません。軍事予算は増やす一方、GOTOトラベルのための1兆円のお金は確保したまま、オリンピック中止を宣言しない。ここまで来ると、スガ首相による人災と言うべきです。
死ぬべき人は死ね。そんな冷たい日本の政治に怒らない日本人は、ホントにお人好しすぎます。もっと怒りを。いま私が叫びたい言葉です。
イタリア万才の本ではありません。もちろん、日本万才なんていうこともありません。みんなが、やるべきことをやらないと、いのちも国も守れません。軍事予算を増やし、最新鋭の武器を確保しても、守るべき人間がいなくてどうしますか…。
(2020年12月刊。税込2750円)

パパの電話を待ちながら

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(霧山昴)
著者 ジャンニ・ロダーリ 、 出版 講談社文庫
イタリアの宮沢賢治と言われているロダーリの物語世界です。こんな作家がイタリアにいただなんて、ちっとも知りませんでした。オビの言葉がイメージを伝えてくれます。
おてんばな小指サイズの女の子、バター人に宇宙ヒヨコ。虹をつくる機械、そして壊すために作られた建物。びっくりキャラクターや場所がいくつも登場。シュールな展開に吹き出し、平和の尊さに涙する。珠玉のショートショート。
そうなんです。SF作家の星新一のショートショートを思わず連想してしまいます。
父親はイタリア中を動きまわって薬を売るセールスマン。月曜の朝に自宅を出て、日曜日に戻ります。家には幼い娘がいます。そこで毎晩9時になると、自宅に電話をかけて、娘にひとつ話を聞かせるのです。そんな父親が娘に語った話が紹介されている本なのです。
クリスタルのジャコモの話を紹介します。あるとき透明な男の子が生まれた。男の子が嘘をつくと、頭に火の玉のようなものが現れた。正直に本当のことを言うと、火の玉は消えた。それから男の子は決して嘘をつかなかった。男の子が大人になってもそれは変わらなかった。冷酷な独裁者が国を治めるようになった。ジャコモはどうにもガマンできなかった。独裁者はジャコモを一番暗い牢獄に放り込むよう命じた。
ところが、ジャコモの入れられた独房の壁が透明に変わった。それどころか、刑務所全体が透けて見えるようになり、ジャコモが椅子に座っているのが人々から見えた。夜になると、刑務所からは光がこうこうと放たれた。独裁者は明かりをさえぎろうとしてカーテンを全部閉めた。それでも明るすぎて、眠れなかった。ジャコモは、鎖でつながれても、考えることをやめなかった。真実は何より強い。昼間の光よりも明るいのだ。
イタリアの学校の図書室には、ロダーリの本が必ずあるとのこと。子どもが初めて自力で一冊読破する本。
腕まくりして、一生懸命に働く。
戦争は、ひどく愚劣なこと。未来をたとえば宇宙を見つめよう。
間違いや、人と違うということをとがめない。
奇想天外なショート・ストーリーの連続です。
私も息子が保育園児のころ、「長靴をはいたネコ」をアレンジして適当な物語をデッチ上げて毎晩かたり聞かせていました。「それから、それから」とせがまれるので必死で、ない頭をしぼりました。そんな子育ての楽しさを思いださせてくれるショート・ショートです。
(2020年3月刊。税込880円)

フランス人の私が日本のアニメで育ったらこうなった

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(霧山昴)
著者 エルザ・ブランツ 、 出版 Du Books
久しくフランに行っていませんが、10年前までは、毎年夏になるとフランスに1~2週間は行っていました。最大40日間(40代初め)、そして還暦前祝いで2週間、南仏めぐりをしました。そのとき驚いたのは、パリではなく地方の都市にマンガ本専門の店があることです。マンガ本というのは、まさしく日本のマンガ本です。もちろんセリフはフランス語です。ワインのうんちくを傾けた有名なマンガ本(名前をド忘れしてしまいました)は、私にとってフランス語の勉強になりますので、すぐに購入しました。
最近、NHKラジオのフランス語教室(応用編)でドロテという女性が日本のマンガ、アニメを紹介していると放送していましたが、この本にもドロテが登場するのです。
この本の著者はフランス人女性のマンガ家です。なるほど絵はまったく日本のマンガそのもので、何の違和感もありません。著者の夫もマンガ家だそうです。とてもカッコ良く描かれています(もちろん、本人も…)。
好きなマンガ家は高橋留美子だとのことです。フランスで人気ナンバーワンといいますが、私は読んだ覚えがありません。
著者は、まったく日本のマンガに毒されてしまった、夢見る乙女だったようです。13歳のとき、すでに将来はマンガ家になると親に宣言したというのです。それを実現したのですから、すごいです。
フランスのコミック市場は、2018年に600億円。日本は4414億円。フランスの年間総売上部数4400万部のうち1700万部は日本マンガ。フランスで売られるコミックの4割近くは日本のマンガ。
いまフランスで人気があるのは、「ワンピース」や「進撃の巨人」など。少年向けのコミックが人気。そして著者のように、フランスで日本流のマンガを描く人も数多く出ている。
著者は池田理代子の「ベルサイユのバラ」にもはまったようです。そして、この「ベルバラ」は、なんと実写映画化されているんですね…。知りませんでした。
著者の娘12歳も息子9歳も、マンガやゲームに夢中のようです。
「こねこのチー」(こなみかなた)がフランスの子どもに大人気なんだそうです。これまた、知りませんでした。どんなストーリー展開なのでしょうか…。フランスって、日本に次いでアニメ・マンガ大好きな国なんですね。たしかに日本のマンガの質が高いことは認めます。
「家裁の人」や「ナニワ金融道」などは弁護士にとっても必読文献だと、私は本気で真面目に考え、若い人にすすめています。
フランスを知ることにもなる面白いマンガ本でもあります。
(2019年12月刊。税込1320円)

フランスの小さな村を旅してみよう

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 木蓮 、 出版 東海教育研究所
フランスに久しく行っていません。本当は、この夏にドイツからフランスをめぐる予定でした。娘がドイツに住んでいるので、娘に会うついでにフランスまで足をのばすつもりでした。コロナ禍のおかげで、早々に断念してしまいました。
毎日フランス語を勉強していますので、その割にはちっとも上達しませんが、旅行するのはなんとかなります。よそに行って困るのは、今どきスマホをもたないことくらいです。
この本はフランスに住む、日本人女性がフランス中を旅してまわっているなかで、55の小さな村を写真つきで紹介しています。
フランスでは「美しい村」として159村が認定されています。私もそのうちのいくつかを訪問したことがあります。不思議なことに、住民はいるものの、日本だったらどこにでもある野外広告の看板などを見かけませんでした。もちろん自動販売機があちこちにあるなんてことはまったくありません。
なので、昔ながらの村の風景がそのまま残っている感じなのです。とてもいい感じです。もっとも、旅行者にはいいのですが、住んでいる村人にとってはどうなのでしょうか…。
この本のなかに、たった一つだけ行ったことのある村が紹介されています。私が行ったのは、映画『ショコラ』の撮影地にもなったフラヴィニー・シュル・オズランです。ここは、アニス・キャンディーが名物です。交通の便はとても悪くて、列車でどこかの駅でおりてからタクシーに乗っていったと思います。
そうなんです。小さな村とか美しい村というのは、たいていとんでもなく不便な土地にあるのです。まあ、それだけの苦労して行くだけの甲斐はあるわけですが…。
日本と違って、フランスでは、昔の建物はなるべく外観はそのまま残すのが当然だという国民感情があるようです。日本だと、辺ぴな山奥に行ってもツーバイフォーで建てた近代的な家があっても驚くことではありませんよね…。
コロナ禍が早くおさまって、フランスにまた行ってみたいと思っていますが、今のところは、こうやって写真集を眺めるだけでガマンガマンです。
(2020年10月刊。2300円+税)

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