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カテゴリー: アメリカ

オッペンハイマー(下)

カテゴリー:アメリカ

著者:カイ・バード、出版社:PHP研究所
 日本に原爆が落ちたことを知ったアメリカ人は、ゴミ入れのふたなどを叩き鳴らしながら練り歩き、喜びをあらわした。そうなんですか・・・。ジャップは、黄色い猿であって、人間ではない。そう考えていたようです。映画『猿の惑星』に出てくる猿も、日本人がモデルだというのです。ご存知でしたか?日本人って、そう見られていたのです・・・。
 その一方、原爆開発にたずさわった科学者たちは、日がたつにつれて自己嫌悪感が高まり、戦争終結が爆弾の使用を正当化すると信じていた人たちにさえ、きわめて個人的な後ろめたさを経験させた。
 オッペンハイマーは、良心の呵責から不安と疲労を抱えた。
 原子兵器の使用を防止する適切で効果的な、いかなる軍事的対抗策も見つからない。それを可能にするのは、ただ一つ、将来の戦争を不可能にすることしかない。
 トルーマン大統領は、そんなことを言うオッペンハイマーについて、「原子力を発見したために手が血だらけ、とぬかした泣き虫科学者」と叫んだ。
 アメリカに外国からテロリストが核兵器を持ちこむのを見つけることができるか、と問われたオッペンハイマーの答えは?
 それにはネジ回しがいる。すべてのスーツケースを開けるための。
 つまり、核テロリズムへの対抗策はなかったし、今後も絶対にないということ。
 ふむふむ、なるほど、そうなんですよね。ましてや自爆攻撃するテロリストをくいとめる手だては何もないと私も思います。
 オッペンハイマーはFBIによって危険人物と見なされ、その電話は盗聴された。
 私の電話を盗聴するためにアメリカ政府がつかったお金は、ロスアラモスで私に支払った給料より多かった。そうなんですよね。いつの時代でも盗聴というのは、まったく割のあわない行為だと思います。
 オッペンハイマーの家庭生活は、この世の地獄のように思えた。最悪なのは、2人の子どもも必然的に苦しまなければならなかったことだ。
 なるほど、そうなんでしょうね。天才の子どもというのは辛いものがあると思います。
 1949年8月29日、ソ連がカザフスタンでひそかに原爆の実験をしたとき、アメリカ政府は誰もそれを信じたくなかった。
 トルーマン大統領は、ソ連に対する核優位を保つため、10年内に300の核弾頭から1万8000の核兵器をもつようになった。次の50年間に、アメリカは7万個の核兵器を生産し、核兵器プログラムに投入される予算は5兆5千億ドルになった。核生産競争の悪循環に陥ったのです。
 オッペンハイマーに対する聴聞委員会は1954年4月12日に開かれた。その容疑は、オッペンハイマーがアメリカ共産党の多くの前線(フロント)組織に加わったこと、共産主義者(共産党員)と判明している数多くの人々と新しい関係ないし交際したこと、原爆プロジェクト共産党員を雇ったこと、サンフランシスコで月150ドルを共産党に寄付したこと、だった。
 ええーっ、こんなことが罪になるのですか・・・。
 「自由」の国、アメリカの怖い、暗い本質がよくあらわれています。
 オッペンハイマーの妻(キティ)も証人席に座らされ、質問を受けた。共産党員としての過去があることを認めて、堂々と反論しました。
 5月23日、2対1の評決によってオッペンハイマーを忠実なアメリカ市民ではあるが、保安上の危険人物 であると見なされました。
 ところが、皮肉なことに、この裁判と評決の報道は、オッペンハイマーの名声を国の内外で高めた。かつては「原爆の父」とだけ知られていたが、今度は、もっと魅惑的な「ガリレオのように迫害された科学者」のイメージが加わった。ドレフェス事件のような扱いだ。
 オッペンハイマーの敗北は、アメリカ自由主義の敗北でもあった。オッペンハイマーが少しでも秘密を漏らしたという証拠はなかった。ルーズベルトのニューディール支持者の多くのように、オッペンハイマーはかつて広い意味での左翼であり、人民戦線運動を支持し、多くの共産党員とつきあいがあった。しかし、オッペンハイマー自身は、自分を反体制派とは考えていなかった。この評決のあと、オッペンハイマーは所長の座を維持できたが、以前のような機知と活気が失われた。オッペンハイマーは、1967年2月、62歳で病気(ガン)により死亡した。
 天才科学者を取り巻くアメリカの狂気を知ることができました。
(2007年8月刊。1900円+税)

反米大陸

カテゴリー:アメリカ

著者:伊藤千尋、出版社:集英社新書
 9.11と言えばアメリカ人も日本人も、2001年のテロ事件を思います。ところが、南米チリの人は、1973年の9月11日を思い出すというのです。そういわれると私も思い出します。チリのアジェンデ大統領が軍部クーデターのために殺された日です。そうです。あのピノチェトです。ピノチェトは後に大統領になりましたが、最近、殺害責任を追及されました。今の大統領は、軍部から迫害を受けた体験者です。
 中南米でアメリカの介入を受けなかった国はない。アメリカは中南米を「アメリカの裏庭」として、自国の勢力圏とみなしてきた。これらの国は、「天国からはあまりに遠く、アメリカにはあまりに近い」といわれる悲劇に泣かされてきた。うむむ、そういう表現があるのですね。日本も同じようなものですよね。
 「南米のABC」と呼ばれる主要3か国のアルゼンチン、ブラジル、チリをふくむ、南米12ヶ国のうち9ヶ国が左派政権となった。今や南米で明確な親米右派政権はコロンビアだけ。コロンビアは旧ソ連派ゲリラとの内戦が続き、アメリカから膨大な軍事援助を受けている。
 ベネズエラ、エクアドル、ボリビアと、キューバ革命が南に輸出されている。
 南米に反米政権が次々に生まれたのは、アメリカの圧力によって、中南米の各国で1990年代にすすめられた新自由主義の経済政策によるものだ。
 ボリビアでは、高地に住む先住民にとって、コカは高山病の症状をいやす薬である。高山病を防ぐためコカ茶を飲む。コカは化学精製して初めて麻薬になる。化学精製しなければ、まっとうな作物である。
 キューバにはアメリカのグアンタナモ基地が今もある。今から100年以上も前、キューバが独立するとき、アメリカが力づくで奪ったもの。アメリカの借り賃は年間4000ドルにすぎない。キューバ政府は、グアンタナモ基地の即時返還を要求し、小切手の現金化を拒否している。キューバ人は、はじめアメリカを解放者と思ったが、実は、支配者がスペインからアメリカに変わっただけだった。
 アメリカはパナマ運河の利権を維持するため、パナマの完全支配を目ざした。国家の経済政策に介入し、中央銀行の設立を許さなかった。そのため、パナマには、今でも通貨を管理する中央銀行がない。独立国として当然の独自の通貨をもたない。紙幣は米ドルがそのまま流通している。
 アメリカは、1946年に米軍アメリカ学校を設立した。年に1000万ドルにのぼる学校経費は、アメリカの国防費から出ている。米軍アメリカ学校は、年間1000人の中南米エリート軍人を集めて教育している。主眼は、国内の反政府派の鎮圧と弾圧である。心理作戦や尋問方法という科目があり、拷問法を教える。拷問の実際のビデオを上映しながら、アメリカ人医師が人間の神経系統の図を示し、身体のどこを、どう責めたら効き目があるのか教える。
 うひゃあ、ひどーい。むごい教育です。いえ、こんなのは教育とは言わないでしょう。
 アメリカがあとで捕まえたパナマのノリエガ将軍も、この学校の卒業生です。ペルーのフジモリ大統領とともに秘密警察の親玉として弾圧した張本人のモンテシノスも卒業生でした。この学校の卒業生は6万人にのぼります。「民主主義」を標榜するアメリカっていう国は、反民主主義を実践する国家だっていうことを、日本人の私たちも忘れてはいけませんよね。
 日曜日はポカポカ陽気でした。庭仕事の楽しい春となりました。庭のあちこちに土筆(つくし)が顔を出しています。アネモネがあでやかな紅、紫、白、ピンクの花を咲かせています。チューリップもぐんぐん伸びて、あと10日もしたら咲き出すことでしょう。アジサイを植えかえてやりました。増えすぎた水仙を泣く思いで掘り上げてコンポストに放りこみました。増えすぎても困るのです。これからジャーマンアイリスの移しかえ、梅の木の剪定などが待っています。
 庭仕事をして、しっかり汗をかいたところで早々と風呂に入って汗を流しました。湯船につかりながら、庭仕事をしているとき、一度もくしゃみをせず、目も痒くならなかったことに思いあたりました。あれっ、花粉症じゃなかったのかな・・・、と。でも、夜にはやはり鼻で息ができずに口を開けて苦しい思いをしました。
(2007年12月刊。700円+税)

グーグルとの闘い

カテゴリー:アメリカ

著者:ジャン・ノエル・ジャンヌネー、出版社:岩波書店
 アメリカのグーグル社が、6年間で、1500万冊、45億ページをデジタル化すると発表した。2004年12月14日のこと。
 英語(アメリカ語)が他のヨーロッパ言語のほとんどすべてを犠牲にして、いっそう優勢になる。果たして、それでいいのか。著者は鋭い警鐘を鳴らします。
 グーグルは検索者と広告主のニーズを的確にとらえた。グーグルの検索エンジンに占める広告のウェイトは大きい。これまで、本は広告を含まない唯一の情報媒体だった。これは大切なこと。
 グーグルは羽振りの良さの陰にもろさを隠している。もし、グーグルが破産したら、そこでデジタル化された遺産は誰のものになるのか。グーグルの計画の弱点の一つは、長期的な保管・保護について明らかに無関心なこと。これは、商業的な計画に隠された短期性による。投資は何があろうと早々に回収されなければならないからだ。
 英語は多くの国でつかわれているものの、アメリカの影響力が強い。情報ソースがアメリカに集中する可能性が強い。情報ソースの集中は、知らず知らずのうつにアメリカ的な発想へと誘導する。しかし、文化には多様性が不可欠である。
 フランス国立図書館は、1300万冊を収容し、8万点をデジタル作品を所蔵している。フランス文化省によると、国内30の図書館がデジタル化に乗り出している。
 インターネットによって、本の効用がなくなることはない。本は必ず生き残る。インターネット利用者も、結局は、古典的な本の文化に戻る。ウェブは、確実に、書架の奥に埋もれていた作品に光を当てるようになる。
 アメリカが世界を支配しようとしているとき、アメリカはどんな国なのか。改めて確認しておく必要がある。死刑制度が存続する。200万人もの刑務所人口がいる。選挙では、お金が決める。京都議定書を拒否する。人道に対する罪を裁く国際刑事裁判所を拒否する。アメリカ軍はイラク戦争でバクダッドに進駐すると、文化施設ではなく、石油省を保護した。
 アメリカ(ライス長官)は、自由こそがすべての幸福そして平和を保証する手段だという考えを振りかざした。しかし、フランスでは、昔から、自由にも代償があると理解されてきた。
 あのグーグルの言いなりになったら世界の文化の多様性が失われてしまう、そんな危機感をひしひしと感じました。さすがはフランス人です。私もフランス語を勉強し続けて良かったと思いました。
(2007年11月刊。1600円+税)

エコノミック・ヒットマン

カテゴリー:アメリカ

著者:ジョン・パーキンス、出版社:東洋経済新報社
 この本の序文に、次のように書かれています。エコノミック・ヒットマン(EHM)とは、世界中の国々を騙して莫大なお金をかすめとる、きわめて高収入の職業だ。EHMは、世界銀行やアメリカ国際開発庁(USAID)などの国際援助組織の資金を、巨大企業の金庫や、天然資源の利権を牛耳っている富裕な一族のふところへと注ぎこむ。その道具につかわれるのは、不正な財務収支報告書や、選挙の裏工作、賄賂、脅し、女、そして殺人だ。EHMは、帝国の成立とともに古代から暗躍していたが、グローバル化のすすむ現代では、質量ともに驚くほど進化している。
 EHMは、いったん仲間入りしたら、一生抜けられない。EHMは、汚い仕事をする特別な存在。どんな仕事をしているのか、誰に話してはいけない。妻に対しても・・・。
 EHMの仕事は、世界各国の指導者たちを、アメリカの商業利益を促進する巨大なネットワークにとりこむこと。EHMは、マフィアのヒットマンと同じく、まずは恩恵を施す。それは、発電プラントや高速道路、港湾施設、空港、工業団地などのインフラ設備を建設するための融資という形をとる。融資の条件は、プロジェクトの建設をアメリカ企業に請け負わせること。要するに、資金の大半はアメリカから流出しない。ワシントンの銀行から、ニューヨークやサンフランシスコなどの企業へ送金されるだけ。しかし、融資を受けた国は、元金だけでなく、利息まで返済を求められる。EHMの働きが成功したら、融資額は莫大で、数年たったら債務国は返済不能になる。そのとき、マフィアと同じように、厳しい代償を求める。たとえば、アメリカ軍の基地の設置など。もちろん、それで借金が帳消しになるわけではない。
 エクアドルは、EHMが政治的経済的にトリコ(虜)にした国の典型だ。エクアドルの産出する原油100ドルあたり、石油会社のとり分は75ドル。残り25ドルのうち4分の3は、対外債務の返済にあてられる。その大半は軍備などに充てられ、公衆衛生や貧しい人々への援助や教育に充てられるのは、2.5ドルほどでしかない。
 ウガンダ(アフリカ)の悪名高い独裁者だったアミン元大統領は、1979年に失脚し、サウジアラビアに亡命した。反体制派の国民を10〜30万人も虐殺したという暴君が、サウジアラビアの王族から保護され、車や召使いを与えられ、豪華な生活を過ごした。アメリカも、反対はしなかった。アミンは2003年、80歳で病死した。
 EHMは、エクアドルを破産に追いこんだ。何十億ドルもの貸付をして、アメリカのエンジニアリング会社に工事を依頼させ、もっとも裕福な人々の利益になるプロジェクトをつくった。その結果、この30年間で、生活困窮者の割合を示す公式な貧困線は50から70%へ、不完全失業者と失業者の割合は15%から70%へと大きく増えた。国家の負債は2億4000万ドルから160億ドルへと増加した。その一方、最貧層のために配分される国家予算の比率は、20%から6%へと減少した。
 今日、エクアドルは借金の支払いのためだけに、国家予算のほぼ半分をつかわなければならない。
 アメリカの実情を再認識させられました。サブ・プライムローン破綻で世界中をゆり動かしましたが、今のままでいくとアメリカの経済繁栄はいずれなくなってしまいますよね。でも、そのとき日本がどうなっているか、お互いにますます心配です。
 庭にミカンを半分に切っておくと、すぐにメジロが二羽飛んできて、ついばみはじめます。可愛らしいですよ。そこへヒヨドリが飛んできてメジロを追い払います。ジョウビタキもやって来ますが、ミカンは食べません。ジョウビタキは茶色で、尻尾が少しだけ長いスズメくらいの大きさの小鳥です。人の見えるところまで近づいてきて、鳴きながら尻尾をチョンチョンと下げて挨拶してくれるのが愛敬です。それよりもうひとまわり大きいツグミのような茶色の小鳥も庭にやって来るようになりました。図鑑をみて調べるのですが、アカハラに似て、それほど赤味はありません。もちろん、常連のキジバト、そしてわが家にすみついているスズメたちも庭中をかっ歩しています。ようやく春になりました。チューリップの咲くのも、もうすぐです。待ち遠しくて、しかたありません。
(2007年12月刊。1800円+税)

戦争格差社会アメリカ

カテゴリー:アメリカ

著者:田城 明、出版社:岩波書店
 テロとの戦争のもとで、アメリカに今なにが起こっているのか、ヒロシマ記者が歩く。そんなタイトルのついた本です。いやあ、ホントに、日本がアメリカのような国になったら大変だと、つくづく思わせる本です。
 2001年9月11日のテロ事件から5年たったアメリカにおいて、現場で救助活動にあたった人のなかに、その後遺症に悩む人々がいかに多いか。マイケル・ムーア監督の映画『シッコ』にあるとおりです。
 9.11テロの直後、被災者の救援活動にあたった人々の大半に呼吸器疾患がみられる。ぜん息、のどや胸部の痛み、頭痛、全身の倦怠感。PTSDも見逃せない。
 現在、WTC崩壊現場で働いた人たちによる、障害者年金や労働補償を求める訴訟が 8000件にのぼる。
 アメリカから危険人物と一方的に認定されて国外追放された人は、2005年だけでも10万人にのぼる。
 アメリカの退役軍人省は、全米で20万人のホームレスがいると推定している。男性のホームレスの3人に1人は、退役軍人だ。年間では、40万人の退役軍人が1日以上ホームレスの状態を体験している。退役軍人のホームレスのうち、ベトナム戦争関係が45%ともっとも多く、湾岸戦争、イラク・アフガニスタン戦争の関係者も10%はいる。
 イラクへの派遣を拒否して軍法会議にかけられた兵士が10人いて、うち2人は服役中。イラク派遣を避けてカナダに移った兵士が200人。イラク戦争が始まって、無許可の隊離脱者は6400人。
 アメリカでの軍隊勧誘は、貧困層の若者をターゲットにしている。
 アメリカでは、ベトナム戦争中の1973年に徴兵制が廃止された。志願制になったが、その勧誘の標的は圧倒的に貧困層だ。軍人を勧誘する年間のリクルート予算は40億ドル(4800億円)。
 メディアとして、イラク戦争に加担したことへの反省も、ニューヨーク・タイムズなどを除いて、ほとんどない。
 新聞もテレビも寡占化がすすみ、多様な意見が反映しにくくなっている。利益優先主義がジャーナリズムの質を低下させている。
 イラク戦争にアメリカは3780億ドル(45兆3600億円)をつかっている。追加予算が承認されたら、4560億ドル(54兆7200億円)に達する。これはアメリカの納税者1人あたり1500ドル(18万円)になる。1時間あたり1150ドル(13億8000万円)、1日だと2億7500万ドル(330億円)の出費となる。
 気狂いじみたアメリカのイラク戦争遂行状況がよく分かる本です。こんな国に追随するなんて、日本をますます不幸にしてしまうだけですよね。
(2007年11月刊。1900円+税)

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