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カテゴリー: アメリカ

NGOの選択

カテゴリー:アメリカ

著者:日本国際ボランティアセンター、 発行:めこん
 日本国際ボランティアセンター(JVC)が発足したのは、1980年のこと。インドシナ難民の支援に始まり、カンボジア、アフガニスタン、イラクなど、さまざまな紛争地で活動してきた。JVCの特徴のひとつは、紛争状態にある地域での人道的支援活動と併せて、長期的な開発協力をもうひとつの柱としている。
 アメリカ軍はアフガニスタンで、PRTと呼ばれる軍による人道的支援活動を展開している。アメリカ軍によるPRTは、対テロ軍事作戦と一体となっている。そのため、PRTが活動する地域では、NGOが軍事衝突に巻き込まれやすい。危険な地域だからアメリカ軍が人道支援をするのではなく、アメリカ軍が人道支援をするためにNGOが危険にさらされている。
 テロリストから攻撃される危険のあるところで、丸腰のNGOは活動できない。だから、武装した軍が復興支援を担うしかないというのがPRTの論理だ。しかし、アメリカ軍は、アメリカ軍自身による援助が必要だとされる治安の悪化を自ら作り出しているのが現実の姿である。そして、PRTの援助自体が復興開発支援で不可欠の住民参加、公平性と持続性という原則からかけ離れているために、一時的に住民の歓心を買うことができても、長期的に住民の自立を促すことには繋がらない。
先日、JVC代表理事の谷山博史氏の講演を聞く機会がありました。ペシャワール会の伊藤さんがアフガニスタンで殺害された直後でしたので、その点にも触れた講演でした。以下、谷山氏の講演要旨を紹介します。
 第一に、アフガニスタンの情勢は最近になって急に悪くなったのではない。
 第二に、地元の人に信頼されてペシャワール会は守られてきた。それでも今度のような事件が起きた。地元の長老が犯人と交渉中だという報道があったので、地元の論理で解決されるものと期待した。ところが、警察が犯人を追い詰め、アメリカ軍がヘリコプターで追跡している報道があったので、これは危ないと思った。
 第三に、日本のメディアの動きを注目していたが、先の「自己責任論」大合唱のようなバッシングは幸いにも起きなかった。それでも、アメリカ軍が支援をやめたらタリバン以前に後戻りしてしまうという論法が一部で声高に出ている。しかし、これは国際社会への不信を駆り立てるものでしかない。
軍隊による人道支援というのは、とても危険なもの。NGOの活動と軍事行動との境界があいまいになってしまう。軍隊を派遣していないからこそ、日本の援助はアフガニスタンの人々から高く評価されてきた。日本は、軍事的な支援に固執することなく、周辺国を含む紛争当事者の包括的な和平に向けた協議を主導して進めてほしい。
 これらの指摘に、私はまったく同感でした。 
(2008年5月刊。740円+税)

マネーロンダリング

カテゴリー:アメリカ

著者:平尾武史、出版社:講談社
 ヤミ金の五菱会がスイスに51億円も預金していたと報道されたとき、あっと驚きました。ヤミ金が儲かる商売だとは知っていましたが、それほどだとは思っていなかったからです。この本は、そのスイスの銀行に51億円もの預金があることが発覚した経緯と、その後の顛末を追跡しています。
 プライベートバンクとは、個人資産を専門に管理したり運用したりする銀行のこと。ここでは1億円以上の預金ができるような富裕層のみがお客であって、それ以下の庶民はゴミ以下の存在に過ぎません。
 東京芝公園近くの超高層マンションは、私も上京して浜松町から霞ヶ関にある日弁連会館に向かうタクシーの中からよく眺めます。マンションの23階から35階は賃貸マンションとなっていて、家賃は月85万円。うひゃあ、誰がこんな高い家賃を支払えるのでしょう。なんと、そこにヤミ金の帝王たちが住んでいたのです。
 五菱会グループのトップに君臨していた梶山進は34階に家賃92万円の一室を借りていた。梶山は工業高校を中退した後、塗装工などをしていたが、新宿でヤクザとなり、ダイレクトメールや電話で勧誘するヤミ金を始めて大当たりした。そして、梶山は稲川会系から山口組へと転身した。
 ヤミ金でボロもうけしたお金の一部は、ラスベガスのカジノで遊ぶための保証金として日本国内の銀行の貸金庫に預けることが出来る。梶山は200万ドル(2億円)も預けていた。梶山はカジノでVIP待遇を受けていた。そのなかでも最上級の「鯨」クラスである。
 カジノでは上客用の特別個室を利用していた。ディーラーをこの部屋に呼び込み、一回の掛け金は通常で100万〜200万円。多いときは1時間7000万円ももうけた。
 梶山は香港在住で、クレディ・スイスのプロパーを通じて、スイス銀行に51億円預けることが出来た。
 組織犯罪処罰法で問題となる犯罪収益の中には脱税が入っていない。そして東京地裁は、ヤミ金グループ幹部に対して、クレディ・スイス香港に不正送金されたお金について追徴(国による没収)を認めなかった。追徴しないと、被告人の手に戻ってしまう可能性もある。そこで、法律を改正して、このようなときには国が没収して被害者へ分配することが出来るように改正された。
 今、その被害者への分配が進行中です。ところが、ヤミ金グループがあまりにも多くいるため、どのヤミ金が五菱会に該当するのか、資料不足もあって多くのヤミ金被害者が届け出しにくい実情があります。
 それにしても、こんな違法な犯罪収益を暴力団から確実に取り戻し、吐き出させるのは、税務署当局の今すぐなすべきことではないでしょうか。 シカゴのギャング王であったアル・カポネを逮捕して下獄させたのは、エリオット・ネスの脱税取り締まり班でした。日本にも「アンタッチャブル」が欲しいように思います。
 フランスで久しぶりにトラベラーズ・チェックを使いました。パリのホテルで50ユーロ使ったのですが、おつりをくれません。今やトラベラーズチェックなんて、時代遅れで、嫌がられるだけの存在のようです。
 エクサンプロヴァンスのホテルのフロントで両替を頼んだところ、銀行でしてくれと断られてしまいました。土曜日なのにどうしましょう。そこで、カードで現金を引き出せるか試してみることにしました。すると、暗証番号を入力したらユーロのお金が出てきたのです。日本のカードをフランスで使ってユーロ札が出てくるなんて、不思議な気がしました。街角にある両替所より、きっと手数料は安いと思います。カードさえあれば、現金をあまり持ち歩かずにすむというわけです。帰国して一週間もしたら、口座から引き落としましたという報告書が届きました。早いものです。ホント、便利になりました。この便利さって、正直言って、ちょっと怖いです。
(2006年9月刊・1700円+税)

アンディとマルワ

カテゴリー:アメリカ

ユルゲン・トーデンヘーファー 岩波書店
  イラク戦争で、アメリカ兵が既に4000人も亡くなりました。イラクの人々はその何十倍も殺されています。こんな数字の裏に、一人ひとりにかけがえのない人生があったこと、それがある日突然に奪われてしまったことに、私たちはなかなか思いが行きません。この本は、アメリカとイラクの二人の子どもを通じて、アメリカによるイラク侵略戦争の悲惨な実態を浮き彫りにしています。
 そのとき、誰がこの本を書いたのか、それはどういう立場の人物なのかが問題になるでしょう。著者は、なんとドイツの保守的政治家だった人物です。ドイツ最大の保守政党CDU(キリスト教民主同盟)の議員であり、親米と反米主義を唱える右派議員として名高い人物でした。今は政界を引退していますが、ソ連によるアフガニスタン侵略にも抗議する勇気ある行動を起こしています。そのような経歴のドイツ人の語る言葉に耳を傾けるのも悪いことではありません。
 不正には不正で、テロにはテロで抵抗すべきではない。その国が民主的な法治国家であるかどうかは、敵をどのように扱ったかによって分かる。テロリストと同じ土俵に乗ってはならない。
 戦争は人間の卑しい本能を呼び起こす。アブグレイグ刑務所の捕虜虐待事件は事故ではない。イラクに対する横暴な戦争の当然の結果なのだ。残酷さや人間に対する軽蔑は伝染する。フェアな殺人や強姦がないように、フェアな侵略戦争もあり得ない。
 侵略戦争はまた、政治学や戦略家たちによる前線の若い兵士たちに対する裏切りでもある。兵士たちはいつも、侵略ではなく、防衛だと思わされている。そして、政治家たちは、自分やこどもたちが戦争へ送られる心配なしに、書斎や居間でのうのうと戦略を練っている。
 アメリカ海兵隊員(予備兵)として、18歳でイラクにおいて戦死したアンディはヒスパニック系で、フロリダ州立大学で経営学を学ぶつもりだった。ある日、アンディは海兵隊の広告を読んだ。資料を請求した人には、もれなく重量挙げ用のグローブをタダでくれるという。アンディはそのグローブが欲しかった。資料を請求すると、格好いい徴募係がやってきて、熱心に海兵隊入りをすすめた。予備兵として登録するだけなら・・・。アンディはいつのまにかイラクの戦場へ送られ、戦場で砲撃に当たって即死してしまった。
 イラクの少女マルワは12歳。イラク戦争が始まり、妹を殺され、自分も右足切断の大ケガをした。父親は戦争前に病死していた。著者は、マルワをドイツに招いて治療を受けさせた。そして、マルワの医師になりたいという夢を叶えてやるべく奨学金を送り続けている。
 個人の善意には明らかに限界があります。でも、こうやってイラク戦争で殺され、傷ついていった人々の詳しい実情を知らされると、この間違った戦争は一刻も早く止めなければいけない。そのために、日本と世界は何をしなければならないのか考えさせられます。
 
(2008年3月刊。1700円+税)

戦争熱中症候群

カテゴリー:アメリカ

著者:薄井雅子、出版社:新日本出版社
 アメリカの元海兵隊少将が次のように言った言葉は有名です。この言葉は何回引用しても、そのとおりだと、ついつい首が上下に動いてしまいます。
 戦争は、やくざな金もうけだ。いつもそうだった。たぶん、これはもっとも古くからあり、苦もなく最大の利益を得る、もっともあこぎな商売であるのは確かだ。世界をまたにかけて稼ぎ、利益はドルで勘定するが、損失は生命で勘定する。自分は33年間、海兵隊で過ごした。その間、大企業やウォール・ストリート、銀行家のための高級な殺し屋として。資本主義のために働くヤクザだった。
 スメドラー・バトラーという元少将が1933年、1935年に語った言葉です。
 イラク、アフガニスタンに派兵された15万5000人の女性兵士のうち、1割をこす1万6000人がシングル・マザーである。兵士になるしか収入がないというシングル・マザーは多い。
 軍隊に入ると、初任給の月給は1250ドル(14万円)。つまらない田舎から出て独立し、違う世界を見たいという若者にとって魅力このうえない条件だ。
 CNNテレビの社長は、戦争報道ではバランスをとれ、アフガニスタン民衆の被害にばかり焦点をあてるのではなく、なぜアメリカが攻撃しているのか、その理由を視聴者に思い起こさせるようにと社内に指示した。この「バランス報道」の結果、アメリカの攻撃にさらされた現地の人々の被害はアメリカではほとんど放映されない。少しでも被害の生々しさが伝わると、怒りの電話やメールが殺到する。兵士を出している家族からすると、命がけで戦っている夫や父を悪者にするのか、という怒りがわくからだ。
 大規模な反戦運動のニュースが一面トップに来ることもない。
 これって、日本でも同じことですよね。被害の実情はおろか、サマワ(イラク)の自衛隊基地の実情すらほとんと紹介されることがありませんでした。政府が報道を禁止したからです。日本のマスコミは政府の言いなりでした。日本人のまじめな若者が人質になったときには「自己責任」を大々的に喧伝するばかりで、本当にガッカリさせられました。
 そして、日本のささやかな反戦集会やデモ行進が記事になることはめったにありません。無力感をマスコミが植えつけ、広めています。
 先日、福岡県弁護士会が福岡市内でペシャワール会現地代表の中村哲医師を招いて講演会を開いても、テレビ局はどこも取材に来ませんでした。テレビは、ひたすら、面白おかしくという路線をとり、シリアス番組はどんどん少なくなっています。
 イラクでアメリカの民間軍事会社の一つであるブラックウォーター会社がイラク人を殺しても訴追されないことになっている。ひえーっ、これって重大な主権侵害ですよね。
 アメリカの連邦予算の半分を軍事費が占めている。アメリカには軍事にお金をつぎこみ、巨大な軍隊組織と軍需産業をつくれば、豊かな経済を維持できるという神話がある。
 軍事中心の政治・経済が長く続いてきた結果、アメリカ国内の産業は直接・間接に軍需産業への依存を強めている。ミネソタ州にあるアライント・テクニステムズは、劣化ウラン弾やクラスター爆弾を清算しているが、従業員が全米に1万6000人いる。その反対に自動車をつくるフォードの工場はかつて1万人いた労働者が今や数千人に減り、やがて閉鎖されることが決まっている。
 アメリカの帰還兵が2005年に6256人も自殺した。20〜24歳の帰還兵の自殺率は、同年代のそれの4倍。
 2005年、ホームレスの退役軍人が20万人近くいる。推定74万人をこえるホームレス人口の4分の1を占めている。
 イラク開戦以来のアメリカ兵の死者は4000人をこえました。もちろん、イラク人の死者は、ケタが2つも違います。それでも、これはアメリカ社会に大きなマイナスをもたらすに違いありません。戦場の狂気を社会にもちこむことになるからです。アメリカって、本当に厭な国です。そんなアメリカにいつもいつも犬のように尻尾をふり続けている日本って、ホント馬鹿みたいな国ですね。
(2008年3月刊。1600円+税)

嘘発見器よ、永遠なれ

カテゴリー:アメリカ

著者:ケン・オールダー、出版社:早川書房
 嘘発見器は、今日もなお、容疑者の尋問や不正の摘発や核兵器の機密保持、テロとの戦いにつかわれている。しかし、アメリカ以外に、この方法を積極的に取り入れている国はない。
 そのアメリカでも、嘘発見器は、刑事法廷から門前払いを受け続けているし、アメリカ科学アカデミーなどの一流科学者団体からも不信の目で見られている。いやあ、そうだったんですか・・・。日本でも、昔は刑事裁判手続のなかで嘘発見器の結果が出てきたことがあります。今では、とんとお目にかかりません。
 嘘発見器が被験者の罪悪感を探知できた率には、大きなばらつきがある。成功率は55〜100%があって、どうみてもまちまちである。勘であてるのと大差がない。
 にもかかわらず、アメリカではいぜんとして大々的に使われ続けている。なぜか?
 法が頼りにならないとき、アメリカの伝統的な解決策には2つあった。1920年代のロサンゼルスでは、その2つともおこなわれていた。一つは群衆によるリンチ。人々は当然の報いを受けさせるために集まり、みずからの正義に酔いしれながら犠牲者を殺害した。もうひとつは、第三度(サード・ディグリー)。これは、警察官によるもので、リンチの代替手段として、警察署内でおこなわれていた。
 1920年代のシカゴは、犯罪にひかれる者にとって、おあつらえ向きの町だった。世界一の殺人多発都市であり、ギャングや酒類密造者の新興都市であり、犯罪組織とその構成員のすみかだった。
 警察は腐敗し、怠慢で、誰もが賄賂を要求した。警官は残忍で、検事は不誠実で、判事や看守は買収されていた。政治家は堕落し、犯罪組織のボスの意にかなう人物を判事や看守につけていた。うひゃあ、これぞまさしく、アル・カポネの『アン・タッチャブル』の世界ですね。
 嘘発見器が容疑者の尋問や従業員の審査につかわれた。それはアメリカだけのこと。外国では、アメリカのいつもの怪しげな機械だとして相手にされなかった。
 政治の舞台で嘘発見器が強力な武器になりうることを初めて見いだしたのは、リチャード・ニクソンである。ニクソンは嘘発見器の検査を実際におこなおうとおこなうまいと、新聞の大見出しになることに気づいた。な、なーるほど、そういうことだったのですか。
 ラベンダーの恐怖。同性愛者への攻撃は、共産主義者を攻撃するときと、よく似た恐怖心を利用していた。すなわち、ラベンダーの恐怖というのは、赤の恐怖より多くの人々の生活を破壊し、アメリカの国内政治と外交政策を強硬右派のものへと変えるとき同じくらいの大きな役割を果たした。外交政策を決めるエリートたちが躍起になって男らしさを示そうとするあまり、アメリカをベトナム戦争へ導いたのである。
 嘘発見器は科学から生まれたものではない。だから、科学では抹殺できない。嘘発見器のすみかは研究室でもなければ法廷でもなく、新聞印刷用紙であり、映画であり、テレビであり、大衆誌やコミックやSFである。嘘発見器は需要に主導されている。
 政治の舞台では、嘘発見器はずっと出番を与えられている。2003年、アメリカ科学アカデミーは数十年にわたる嘘発見器の研究結果を分析し、これを職員の審査につかっても効果はなく、むしろ保守体制への過信を生んで国家の安全保障を損なうと警告した。
 いまも昔も、ポリグラフの罠にかかるのは無実の人間であり、悪人は動揺しないことが多い。FBIはテロリストの疑いがある者を何人も嘘発見器にかけているが、必ずしも成果は出せていない。
 ポリグラフは医療技術を利用した平凡な機械にすぎない。つかわれている生理学機器は、どの先進国でも1世紀前から入手できるもの。にもかかわらず、それに尋問という新たな目的を与えた国はアメリカ以外にない。
 いやあ、この本を読んでも、アメリカっていう国は、つくづくいい加減な、野蛮な国だと思いました。そんな国に、いつもいいなりになる日本って、ホント、もっといい加減ですね。いやになってしまいます。
 真夏の夜の楽しみは、ベランダに出て望遠鏡で月面をながめることです。真夏でも、さすがに夜は涼しいので身体のほてりを冷ますこともできます。遠い月世界のデコボコした地表面をみていると、いさかいにかこまれた毎日の生活が嘘のように思え、心のほうも静まります。
(2008年4月刊。2500円+税)

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