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カテゴリー: アメリカ

最後の授業

カテゴリー:アメリカ

著者:ランディ・パウシュ、 発行:ランダムハウス講談社
 ドーデーの『最後の授業』ではありません。46歳の教授がすい臓がんで余命いくばくもないと宣告され、カーネギーメロン大学で最後の授業を行ったのです。
 いやあ、すごいですよ。自分の生命があとわずかだと告知されたとき、あなたなら、何をしますか?
私も父を癌で亡くしましたので、癌という病気についてはすごく関心があります。そして、癌の告知については、してほしい反面、怖さに耐えられるだろうかという不安があります。
それにしても、あなたの生命はあとわずか数ヶ月だと宣告されたら、どうするでしょうか。
 最近、私の大学時代のセツルメント仲間から、亡きご主人の追悼集(『一途に進む私の道』)が贈られてきました。私も近くに住んだことのある神奈川県川崎市の法政二高の英語の教師だった人(故橋本保氏)についての追悼集です。それによると、2月に「夏まで」と家族は告知されたそうです。癌が再発・転移したわけですが、本人はそのこと自体は知っていても、どうやら「あと何ヶ月」というのは知らされなかったようです。知ったところで、既に入院中の身であれば自由に行動できるわけでもありませんので、どうしようもなかったのでしょう……。緩和ケアー病棟での生活をご本人が報告しているのを読むと、大変に意思の強い人だと感嘆してしまいました。私なんか、いったいどうするだろうと思いながら、追悼集を読み進めました。
 さて、この本に戻りますが、最終講義は無事に終了し、これがインターネットでも配信され、のべ600万ものアクセスがあったそうです。私は戦争好きのアメリカなんて大嫌いなのですが、こんなアメリカは大好きです。アメリカの草の根民主主義は今の日本国憲法にも生きていると思っています。アクセスした「600万人」は、そんな草の根民主主義を体現していると勝手に思い込んでいるのです。
 大切なのは完璧な答えではない。限られた中で最善の努力をすることだ。
 うーん、これって、なかなかいい言葉ですよね。
 今回の講義がなぜ大切なのか考え直した。生きていると自分も確認したいし、みんなにも分かってほしいから? まだ講義をする元気があることを証明するため? 自分の最期を見てほしいという目立ちたがり屋の精神? この答えは、すべてイエスだ。傷を負ったライオンはまだ吼えられるかどうかを確かめたいものだ。これは威厳と自尊心の問題だ。虚栄心とは少しだけ違うんだ。だから、僕の講義は死ぬことについてではなく、生きることについてでなくてはならなかった。な、なーるほど、ですね。最後の最後まで、自分の存在というのを世の中に認めてほしいものです。
 子供はなによりも、自分が親に愛されていることを知っていなくてはならない。
 ホント、そうなんですよね。
 幼い子供たちと、やがて悲しい別れがやってくる。そして、彼らには父親の記憶が残らない。これほどつらいことがあるでしょうか・・・。ここを読んでいるうちに、ついつい涙してしまいました。 著者はお元気のようです。ぜひ、これからもお元気にお過ごしください。
 世界遺産に登録された白川・五箇山のうち、五箇山のほうへ行ってきました。気持ちよく晴れ上がった秋の日の朝のことです。大きな萱葺きの家がよく保存されていました。そこで生活する人にとってはかなり不便を多いことでしょうが、やはり、こういう風景はぜひ攻勢まで伝えたいと思ったことでした。稲穂が重く垂れたそばで、コスモスが咲いていました。チューリップのような淡いピンクの花が珍しかったのですが、名前が分かりませんでした。あとで、ぺシニアという花だと教えられました。大きな村上邸では、火の起きている囲炉裏のそばでお年寄りが語り部として故事来歴を語ってくれ、また、ササラを演じて見事なコキリコ節を聞かせてくれました。
 川向こうに流刑小屋が唯一つ残っているというので、見学してきました。独房です。これでは冬の寒さに耐えられません。富山は加賀百万石の一部になっていたそうです。
(2008年6月刊。1500円+税)

サブプライムを売った男の告白

カテゴリー:アメリカ

著者:リチャード・ビトナー、 発行:ダイヤモンド社
 アメリカのサブプライムローンをめぐる破綻が全世界の経済を大きく揺り動かしています。この本は、サブプライムローンの実体が、いかにインチキであったか、体験を通して暴露しています。
 アメリカでは、夫婦の一方が病気になれば、たちまち経済的に破綻してしまう。国民皆保険制度がなく、営利企業である保険会社に加入できなければ、高額の自費負担を余儀なくされるからだ。
 サブプライムローンの借り手の大半、少なくとも80%の人々は期日通りに返済している。滞納件数がかなり多いのは明らかだが、5人のうち4人は返済している。
 サブプライムローンの借り手は、伝統的な住宅ローンなどを借りる資格のない人々である。信用度は良くない。前にローン返済が延滞したり、不履行になったりした事実がある。だから、借り手はリスクの増加と相殺するため、より高い利息やローン手数料を支払わされる。
 クレジットスコアというのがある。300点から850点までの範囲がある。
 2000年までに、アメリカでは、25万人以上のモーゲージブローカーが活動していた。モーゲージブローカーにライセンスを要求する州は少なかったので、業界への参入障壁は低かった。
 住宅ローンで不正行為が横行した。本来なら住宅ローンを借りる資格のない借り手が融資を受けた。たとえば、居住物件のはずが、投資物件であった。借り手が友人や親類の会社で勤めているとして職歴をデッチ上げる。ローンに関わる重要情報を隠してしまう。
 信用度の高い人が、第三者に自分の借入の実績を使わせ、その都度、手数料をもらうということもあった。このような「信用強化」は人を欺くものである。
 不動産鑑定士が価値以上の評価を出すこともある。あらゆる数字をぎりぎりまで操作して評価額の数字を導き出す。借り手は望みのものを手に入れ、レンダーとブローカーは手数料を稼ぎ、投資家は優良債権を受け取ることになる。
 しかし、こんなことは長続きはしない。いずれは破綻する。
 アメリカの非金融企業で、最上級のトリプルAに値するのは、ほんの一握りの企業にすぎない。それなのに、格付けされた債務担保証券の90%がトリプルAというタイトルを授けられている。
 これから数年のうちに、200万人もの人々が差し押さえによって住居を失う危険がある。
 抵当流れのピークは2009年だと予測されている。総件数は200万件に達する。そして、ラスベガスやマイアミという住宅に最高額が付けられてきた町でも、今後の数年のうちに住宅価値は40〜50%も下がるという推測がある。 
 今、アメリカ発の世界恐慌が起きるのではないかと、みんなが心配しています。アフガニスタンやイラクへ戦争を仕掛けたアメリカの国内経済がガタガタになっているのです。それなのに、大企業の救済・優遇措置だけはしっかりとろうとしています。アメリカの国民が猛反発したため、一度は国会で否決されました。ことは日本にも大きく響いて来る問題です。対岸の火事だといってすまされないことだと思います。
(2008年7月刊。1600円+税)

ドット・コム・ラヴァーズ

カテゴリー:アメリカ

著者:吉原 真里、 発行:中公新書
 いやあ、団塊世代であり、インターネットと日頃とんと無縁な私にとっては、とてもショッキングな本でした。
 この本のサブタイトルは、ネットで出会うアメリカの女と男です。オビに書かれているフレーズは、「インターネットは愛の救世主か?!」です。もっというと、アメリカ男たちとオンライン・デーティング。大手サイトに登録した著者は、ニューヨーク、そしてハワイで、さまざまなアメリカ男たちと「デート」する。メールのやりとり、対面。交際、そして別れの中から、人間臭いアメリカが見えてくる――。
 40歳の東大卒で、ハワイ大学教授の独身女性が良き伴侶を求めるうえで、ハードルが高いことは、それなりに想像できます。この本は、そんな経歴の著者が活路をインターネットに求めて格闘した人生の日々を、かなり赤裸々に語りつづったものです。
 うむむ、知りませんでしたね。アメリカでこれほどインターネットが出会いの場として活用されているとは。日本でも出会い系サイトで知り合ったという弁護士を知っていましたが・・・。
 オンライン・デーティングというのは、要するにインターネット上のサイトを使ってデートの相手を探すこと。2006年度の業界の総売上は6億4900万ドル。現在、有料で合法なインターネット・サービスの中で最高の収益をあげている。アメリカでは、オンライン・デーティングはすっかりメインストリームになっている。主流として定着している。ええーっ、そ、そうなんですか…。
 登録料は、月に20ドル(2000円ほど)。あるサイトは、ここを介して出会った男女1万組が結婚している実績を誇っている。
 ストレートの女性がゲイの男性に惹かれる理由はいくつかある。さまざまな困難の中で、あえて自分に正直に生きる選択をしているゲイの男性は、人間関係において非常に真面目であることが多い。友達を大切にし、まめに連絡をとり、よく話をするし、こまめに気をつかう。一般的に言うと、ゲイの男性は平均的なストレートの男性に比べて、人間関係に意識的な努力を払う人が多い。そして、話を良く聞いてくれる。ゲイの男性は、おしゃれや身だしなみ、インテリアにこだわる人が多い。
 ところが、ゲイの世界のインターネットの勧誘サイトでは、あまりに性的露出度が高い。つまり、ペニスのアップ写真などがこれでもかとばかりに載っている。ひえーっ、これって信じられませんね。
 オンライン・デーティングでは、多くの人は同時進行的に複数の相手とデートを重ねており、そのこと自体に腹を立てる筋合いはない。ううむ、そういうことなんですね。
 著者の相手になった男性には、ユダヤ系の人が多かったのですが、それは、会話や議論が好きで、感情表現が豊かであり、濃厚に人間臭いやりとりができるからでした。
 アジア人女性(もちろん日本人女性も含みます)は、アメリカ人女性よりも性的に奔放である、というのは嘘ではないようだ、とも書かれています。うーん、そうなんでしょうか。
 著者は、この本によると、10人以上もの男性との出会いをそれなりに「楽しんだ」ようです。そして、月20ドルの料金は十分に元が取れた、と考えています。
 オンライン・デーティングでは、安全のために、本人同士が連絡を取り合って相手に知らせない限り、本名やメールアドレスは分からないようになっている。なーるほど、ですよね。むやみに変な人に知れたら、面倒ですからね。
 ベッドの中での行動やセックスについての態度には、その人の人間性がよく現れるから、相手のことを良く知るためには性的関係を持つのが大事だとも思う。むむむ、このセリフは、なかなか簡単にはいえませんよね。
 いやあ、世の中はこうなっているんだな、と改めて認識を新たにしたところです。こんな本を書くと、ますます男性の多くは引けてしまうと思います。でも、子供好きだということですから、ぜひ良き伴侶を見つけて子供をもうけてくださいね。 
(2008年6月刊。780円+税)

世界を不幸にするアメリカの戦争経済

カテゴリー:アメリカ

著者:ジョセフ・E・スティグリッツ、出版社:徳間書店
 ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者です。クリントン政権では、大統領経済諮問委員会の委員長であり、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストもつとめています。現在はコロンビア大学教授です。そのような保守本流の経済学者のズバリ直言ですから、重みがあります。
 今となっては、アメリカのイラク侵攻が恐ろしい過ちだったことは明らかだ。4000人のアメリカ兵が死亡し、5万8000人が重軽傷ないし深刻な病いを負った。10万人のアメリカ兵が深刻な精神障害になって帰還しており、慢性的な症状に苦しめられるだろう。
 サダム・フセインの統治はお粗末だったが、今のイラク国民の生活はその頃よりも悪化している。イラクに侵攻して中東に民主主義をもたらすというアメリカの大義名分は、今ではむなしい夢に思える。
イラク開戦の決断は、数々の間違った前提にもとづいていた。
イラク侵攻して5ヶ月の2008年の運用費は、イラクだけで月に125億ドルを超える。
2003年に比べて44億ドルも増えた。アフガニスタンと合わせると月160億ドルになる。
この160億ドルという金額は、国連の年間予算、またアメリカの13州分の年間予算と同じ。しかも、この金額には国防総省が通常の支出として一年間に支出した5000億ドルを含んでいない。
 イラク侵攻は、民間の軍事警備会社に新たな機会を与えた。国務省が支出した金額だけでも、2007年には40億ドルになる。3年前は10億ドルだった。
 2007年にブラックウォーターやダインコープなどの戦争請負会社で働く警備員は1日にして1222ドル、年間44万5000ドルを稼いだ。それに対して、陸軍軍曹は1日に140〜190ドル、年間で5万〜7万ドルだった。このように請負兵は軍人より費用がかかるうえに、軍の規律や指揮の下に置くことが出来ない。
 このような民間業者との契約が増えて、今では10万人以上がイラクで活動している。
 今や、アメリカは兵士と将校の補充・確保に苦労している。それは戦争反対の声の高まりと、死傷者数の多さによる。入隊年齢の上限を35歳から42歳に引き上げた。また、重罰犯の元受刑者も兵隊として受け入れるようになった。そして、経験豊かな兵士が軍を離れて民間の戦争請負会社に移らないように、再入隊ボーナスとして最高15万ドルを支払っている。
 2007年末までにイラクとアフガニスタンで重軽傷・病気になったアメリカ兵は6万7000人。少なくとも4万500人が戦争に直接起因しているとみられている。
 多くの退役軍人がM-1戦車とA-10攻撃機から発射された対戦車砲弾に含まれる劣化ウランにさらされた。退役軍人の障害手当は3000億ドル前後になると見込まれている。
 イラクとアフガニスタンで任務につく兵士の大多数は、その危険性を十分に理解していなかった。その3分の1は州兵軍や予備軍から召集された者であった。彼らは自分が長期間にわたって国外に配置されるなど想像もしていなかった。
 イラクとアフガニスタンからの帰還兵の健康問題の最大のものは精神障害だ。自殺率は10万人につき19.9人にまで高まっている。その自殺者の4分の1がイラクやアフガニスタンでの軍務中に起きている。
 アメリカは、アフガニスタンとイラクに戦争を仕掛けたため、2008年度末には9000億ドルの負債を抱えることになるだろう。今のアメリカは、滅亡直前のローマ帝国である。
 アメリカはイラクを長期占領すべく巨大な軍事基地をイラク国内にいくつも築き上げた。
 バラド基地は、縦7キロ横5キロの広さがあり、2万2500人の兵士を収容する。アサド基地には1万7000人の兵士のほか、民間の戦争請負業者が入っている。
 バグダッドにあるアメリカ大使館は、ニューヨークの国連本部の6倍以上の規模だ。
 アメリカによるイラク戦争が間違っていたこと、そしてそれがアメリカ国民にも不幸をもたらしつつあり、アメリカ国家経済を危機に導いていることがよく分かる本です。
 庭の酔芙蓉の花が咲いています。朝のうちは見事な純白の花なのに、お昼過ぎると昼食をとった時に軽く一杯やってほろ酔い加減になったように朱がさし始め、夕方になる頃にはすっかり出来上がって赫味の強い花になってしまいます。酔芙蓉とは、よくぞ名づけたものです。
(2008年5月刊・1700円+税)

NGOの選択

カテゴリー:アメリカ

著者:日本国際ボランティアセンター、 発行:めこん
 日本国際ボランティアセンター(JVC)が発足したのは、1980年のこと。インドシナ難民の支援に始まり、カンボジア、アフガニスタン、イラクなど、さまざまな紛争地で活動してきた。JVCの特徴のひとつは、紛争状態にある地域での人道的支援活動と併せて、長期的な開発協力をもうひとつの柱としている。
 アメリカ軍はアフガニスタンで、PRTと呼ばれる軍による人道的支援活動を展開している。アメリカ軍によるPRTは、対テロ軍事作戦と一体となっている。そのため、PRTが活動する地域では、NGOが軍事衝突に巻き込まれやすい。危険な地域だからアメリカ軍が人道支援をするのではなく、アメリカ軍が人道支援をするためにNGOが危険にさらされている。
 テロリストから攻撃される危険のあるところで、丸腰のNGOは活動できない。だから、武装した軍が復興支援を担うしかないというのがPRTの論理だ。しかし、アメリカ軍は、アメリカ軍自身による援助が必要だとされる治安の悪化を自ら作り出しているのが現実の姿である。そして、PRTの援助自体が復興開発支援で不可欠の住民参加、公平性と持続性という原則からかけ離れているために、一時的に住民の歓心を買うことができても、長期的に住民の自立を促すことには繋がらない。
先日、JVC代表理事の谷山博史氏の講演を聞く機会がありました。ペシャワール会の伊藤さんがアフガニスタンで殺害された直後でしたので、その点にも触れた講演でした。以下、谷山氏の講演要旨を紹介します。
 第一に、アフガニスタンの情勢は最近になって急に悪くなったのではない。
 第二に、地元の人に信頼されてペシャワール会は守られてきた。それでも今度のような事件が起きた。地元の長老が犯人と交渉中だという報道があったので、地元の論理で解決されるものと期待した。ところが、警察が犯人を追い詰め、アメリカ軍がヘリコプターで追跡している報道があったので、これは危ないと思った。
 第三に、日本のメディアの動きを注目していたが、先の「自己責任論」大合唱のようなバッシングは幸いにも起きなかった。それでも、アメリカ軍が支援をやめたらタリバン以前に後戻りしてしまうという論法が一部で声高に出ている。しかし、これは国際社会への不信を駆り立てるものでしかない。
軍隊による人道支援というのは、とても危険なもの。NGOの活動と軍事行動との境界があいまいになってしまう。軍隊を派遣していないからこそ、日本の援助はアフガニスタンの人々から高く評価されてきた。日本は、軍事的な支援に固執することなく、周辺国を含む紛争当事者の包括的な和平に向けた協議を主導して進めてほしい。
 これらの指摘に、私はまったく同感でした。 
(2008年5月刊。740円+税)

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