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カテゴリー: アメリカ

シャドウ・ダイバー(上)

カテゴリー:アメリカ

著者:ロバート・カーソン、 発行:ハヤカワ・ノンフィクション文庫
 水深が20メートルより深くなると、判断力と運動能力が低下する。これは、窒素酔いとよばれている状態だ。深く潜れば、窒素の作用はいっそう顕著になってくる。沈没船のある水深30メートル以上になると、条件は著しく不利になる。
 もし、何かが起きても、ただちに海面へ泳いであがることはできない。深い海で一定の時間を過ごしたダイバーは、水圧に身体を慣らしながら、あらかじめ決められた時間をおいて、徐々に上昇していかなければならない。空気が足りずに窒息することが分かっていても、そうしなければならない。パニックに陥って、「太陽とカモメ」を目ざして一目散に浮上するダイバーは、ベンズとも呼ばれる減圧症を発症する危険がある。重症のベンズでは、身体に障害が一生残ったり、麻痺したり、死に至ることもある。重症のベンズの苦痛にもだえ苦しみ、悲鳴を上げる患者を目にしたことのあるダイバーは、長時間のディープ・ダイビングのあとで減圧せずに浮上するよりは、いっそ海底で窒息して死ぬ方がましだと口をそろえて言う。
 水深40メートルでは5気圧となり、ほとんどのダイバーの頭は正常には働かない。手先がぎこちなくなり、紐を結ぶといった簡単な作業にも苦労する。知っていることでも、苦労して思い出さなくてはいけない。
 さらに、50〜55メートルに降りると、幻覚を見ることもある。
 水深60メートル以上になると、窒素酔いによって、恐怖、喜び、悲しみ、興奮、失望などの感情を、いつものようにうまく処理できない。
 急速に浮上すると、気圧は急激に下がる。それによって、組織に蓄積した窒素ガスは、ソーダのボトルのふたをポンと開けたときのように、大量の大きな泡となる。この窒素の大きな泡が、ディープ・ダイバーの憎き敵である。血流の外側で大きな泡が生まれれば、それが組織を圧迫して、血液循環を妨げる。関節内部や神経のそばなら激痛を引き起こし、痛みは数週間、悪くすれば終生つづく。脊髄や脳で発生した泡は、身体の麻痺や致命的な発作の原因となりかねない。大量の大きな泡が肺に流れ込むと、肺機能が停止してチョークスと呼ばれる障害が起き、呼吸が停止する恐れがある。大量の大きな泡が動脈系に入り込むと、空気塞栓症という肺気圧障害を陽子お越し、卒中、失明、意識不明もしくは死に至ることもある。
 水深60メートルに25分間もぐったダイバーは、1時間かけて海面へ浮上する。まず水深12メートルで5分間停止し、ゆっくり9メートルまで上がって、そこで10分間待ち、そのあと6メートルで14分、3メートルで25分を費やす。減圧のための時間は、もぐった深さと時間で決まる。時間が長くなるほど、水深が深くなるほど、減圧停止の時間は長くなる。2時間もぐったとすると、なんと9時間もの減圧が必要になる。
 うひゃーっ、す、すごーいですね。ダイビングってこんなに危険な行為なのですね。そういえばスキューバダイビングを趣味とする私の姪っ子が沖縄に飛行機で行ったら、その日は海中に潜れないって言ってました。
沈没船を見つけて、そこに入り込んだダイバーは、死の危険と隣りあわせだ。出口を見つけられなかったら溺れて死ぬ。出口を見つけても、それまでに空気を使い果たしたら、適切な減圧をするための空気がもはやないことになる。
大西洋の沖の海底でドイツ軍のUボートを発見したダイバーの話です。ダイビングって、こんなに死の危険と隣り合わせのものだということを知って、大変驚いてしまいました。
 
(2008年7月刊。700円+税)

イラク米軍脱走兵、真実の告発

カテゴリー:アメリカ

著者:ジョシュア・キー、 発行:合同出版
 陸軍に入るとき、海外に送られることはないと徴兵担当者は固く約束した。きみはアメリカ本土で橋を建設し、夜は毎日、家族と一緒に過ごせる、と。ところが、実際に軍隊に入って練兵担当軍曹から言われた言葉は、次のようなものだった。
 お前らがサインした契約書に書いてあったことは、みんな大嘘だ。そんな約束は、すべて破られるだろう。
 うん、うん、そうなんです。軍隊って、どこの国でも大嘘つきなんですよね。
 アメリカ陸軍の将校と兵士にとって、イラク人は決して人ではなかった。イスラム教徒は決して市民ではなかった。ぼろ頭であり、砂漠のニガーであり、軽蔑すべき奴らだった。人権があるなんて、誰も微塵も考えなかった。
イラクでは、家宅捜索へ行くと、ほしいと思ったものは何でも盗んだ。だって、我々はアメリカの軍隊なのだから、何でも好きなことが出来るのだ。家宅捜索の後は、いつもアドレナリンのせいで興奮し、2時間以上続けて眠ることは決してできず、常にぼんやりと麻痺したような状態だった。
 ファルージャに派遣され、その2週間で10数人の市民を殺した銃撃音を聞いた。分隊が2人の市民を殺すのを見た。もう十分だと思えるほどの血と死を見た。このような暴虐を市民に対してふるうのは間違っていると考えた。それでもまだ、イラクにアメリカ軍がいるのは正しいと考えた。テロを根絶するために、イラクにいるのだと信じていた。
 イラクでもっとも恐ろしい任務は、小隊で行う徒歩のパトロールだ。パトロール中、まったく無防備で、敵にさらされていると感じていた。アメリカ兵に笑いかける人はなく、多くの人は憎悪を隠そうともしなかった。
 それは奇妙な戦争だった。アメリカ兵を狙って銃撃する者の姿も、迫撃砲も、アメリカ兵を目がけてロケット弾を飛ばす者の影も、まったく見えない。いつまでも敵が姿を現さないことで、アメリカ兵の恐怖といらだちは頂点に達した。そして、そのいらだちは、いつでも一般市民に向けることができた。
 戦場を知らない人には奇妙に思えるだろうか、イラクでは手榴弾はごく普通の日用品である。これというはっきりした敵がいないので、アメリカ兵は無力で抵抗できない市民に攻撃の矛先を向けた。自分たちの行為に対して責任を持たなくていいことは知っていた。恐怖でいっぱいで、眠りを奪われていて、カフェインやアドレナリンやテストステロンで興奮していた。上官は、いつも兵士に、イラク人は全員が敵だ。民間人もだと言っていた。
 2時間以上のまとまった睡眠をとれたためしはほとんどなかった。
 アメリカ兵自身がテロリストなんだということに、初めて気がついた。アメリカ兵はイラク人に対してテロ行為を働いている。脅かしている。殴っている。家を破壊している。アメリカ人は、イラクで、テロリストになってしまっている。もはや戦場に戻ることは良心の呵責に耐えかねる。そこで、著者は法務担当者に電話し、問いかけた。担当官は次のように答えた。
 君に出来ることは、次の2つのどれかしかない。一つは、予定されている飛行機に乗ってイラクへ戻ること。二つ目は、刑務所に入ること。このどちらかだ。
 この言葉を聞いて、著者はアメリカ軍に戻らないと決め、アメリカ国内で家族とともに潜伏生活を過ごし、インターネットで見つけたカナダの脱走兵支援事務所の援助を受けてカナダに入国したのです。すごい行動力です。
 この本を読んだあと、いま上映中の映画『リダクテッド』を見ました。イラクに派遣され、サマラの町の警備を命じられた兵士たちの日常生活が紹介されています。そして、イラクの人々を人間と思わず、ストレスもあって、15歳の少女をレイプしたうえで一家皆殺しにした実際に起きた事件を想像をまじえて再現しています。もちろん、許されない犯罪であることは言うまでもありませんが、そのような状況を作り出しているアメリカ政府の責任を厳しく弾劾しないことには、末端兵士を厳罰に処しても問題は何も解決しないと思わされたことでした。今のイラク戦争がいかに間違ったものなのか、すさまじい映像に圧倒されました。背筋の凍る映画というのは、こういうものを言うのでしょうね。でも、現実を直視するために、ぜひ多くの人に見てほしいものだと思いました。「リダクテッド」というのは、編集済みの、という意味だそうです。マスコミが報道するニュースは、すべて当局、つまり政府の都合のいいように編集されているということです。日本も、アメリカとまったく変わりません。イラク戦争の実情なんて、ちっとも放映されませんよね。 
(2008年9月刊。1600円+税)

格差は作られた

カテゴリー:アメリカ

著者:ポール・クルーグマン、 発行:早川書房
 今度、ノーベル賞(経済学)を受けた学者の本です。たまたま読みました。ブッシュ政権を強い口調で批判しています。はっきり言って反政府系の硬骨漢です。こんな学者によくぞノーベル賞が授与されるものです。いえ、批判(非難)しているのではなく、ノーベル賞選考委員会をほめているのです。
第2次大戦後のアメリカでは、富裕層は少数で、中産階級と比べるときわめて裕福というわけではなかった。貧困層は富裕層より多かったが、それでもまだ相対的には少数だった。アメリカ経済には驚くほどの均質性があり、ほとんどのアメリカ人は似たような生活を送り、物質的にも非常に恵まれていた。
 経済が平等であったことに加えて、政治も穏便だった。民主党と共和党の間に外交や国内政策で広いコンセンサスがあった。
 ところが、1990年代に入ると、アメリカは政治的に中道で中産階級が支配的な国へと成長していくのではないことが徐々に明らかになっていった。小数のアメリカ人が急激に裕福になっていく一方、ほとんどの人々が経済的には、まったくか、ほんの少ししか向上していなかった。政治が両極に分裂し始めていた。
 今日、所得格差は1920年代と同等の高い水準にあり、政治的な分裂はかつてないほど進んでいる。共和党は右傾化し、所得の不平等が広がるのと同時に、今日の厳しい党派主義が生まれている。
 急進的な右派が力を得たことで、ビジネス界は労働運動にたいして攻撃を仕掛けることができるようになり、労働者の交渉力は劇的に減退した。経営陣の給与に対する政治的社会的抑制力は消えうせ、考慮特赦に対する税金は劇的に軽減され、そのほか実に様々な手段によって不平等と格差は助長されてきた。
 すべて諸悪の根源は、アメリカの人種差別問題にある。今でも残る奴隷制度の悪しき遺産、それはアメリカの原罪であり、それこそが国民に対して医療保険制度を提供していない理由である。
 うむむ、な、なーるほど、そういうことだったのですか。アメリカに国民皆保険制度が今なお存在しておらず、民間の営利会社である保険会社が保険制度を担っている本当の理由がやっと分かりました。
 先進諸国の大政党のなかで、アメリカだけが福祉制度を逆行させようとしているのは、公民権運動に対する白人の反発があるからなのだ。
 第二次大戦前のニューディール政策が始まると、富裕層は、所得税率が今35%なのに対して、63%から79%へと大幅に上昇した。最高時は91%にまでなった。法人税も14%だったのが、45%以上にまで上昇した。これによって富の集中が弱まった。
 ニューディール政策は、金持ちの資産の多くを税金でもっていった。ルーズベルト大統領は、その階級からは「裏切り者」だと見られていた。逆に、ニューディール政策の下で組合員の数と影響力は増大した。
 アメリカで起きたベトナム反戦運動は、1960年代そして1970年代初めのアメリカ社会に重くのしかかっていた。1973年に徴兵制度が終わり、ベトナムからアメリカ軍が撤退したあと、驚くほどのスピードで消滅した。反戦運動家はほかの事に関心を移し、過激な左派主義は重要な政治勢力として根付くことは無かった。
 レーガンは、共産主義の脅威に対する大衆の被害妄想をくすぐることに成功した。
 アメリカ人は自国を危うくするものは非常に簡単に運動力によって排除できると思い込んでいる。自制を唱えるものは、よくて弱腰、悪くて国家への反逆。
 保守派は、一般大衆の感情にアピールするための二つのことを発見した。その一は、白人の黒人解放運動に対する反発と、共産主義に対する被害妄想であった。
 1970年に平均的な労働者の給料の30倍だったCEOの所得は、今日では300倍以上にも跳ね上がっている。1970年代、大企業のCEOは平均120万ドルの給与を得ていた。ところが、2000年に入ると、その報酬は年900万ドルを平均とするまでに上がった。これにより、今や平均して307倍になっている。
 アメリカの経営者には羞恥心というものがないのでしょうか。まさに自分さえ良ければということです。これでは、他人からも馬鹿にされてしまいます。ところが、今、日本の経営者もアメリカの経営者にならおうとしています。あの御手洗日本経団連会長(キャノン)も、自分のことしか考えていません。いやですね。口先では偉そうなことを言うのですからね。
 一人当たりの医療保険額で一番低いのはイギリスで、アメリカはその2.5倍。カナダ、フランス、ドイツと比べて2倍も高い。
 アメリカ国民全員に健康保険を与えるとしたら、当然のことながら、黒人、ヒスパニック、アジア系などの非白人を含むことになる。それを税金によって一番多く負担するのは、アメリカの富裕層である。そのほとんどは白人だ。一般の白人にとってはそれはとうてい受け入れられない。一部の白人は、黒人と同じ病院を使用することに猛反対した。
 今日でも、白人と黒人とが同化した教会はアメリカ全土で10%に満たない。え、えーっ、そうなんですか。博愛精神って、フェアプレイの精神と同じく今も生きる名言だと思いますけどね・・・・・・。 
(2008年6月刊。1900円+税)

最後の授業

カテゴリー:アメリカ

著者:ランディ・パウシュ、 発行:ランダムハウス講談社
 ドーデーの『最後の授業』ではありません。46歳の教授がすい臓がんで余命いくばくもないと宣告され、カーネギーメロン大学で最後の授業を行ったのです。
 いやあ、すごいですよ。自分の生命があとわずかだと告知されたとき、あなたなら、何をしますか?
私も父を癌で亡くしましたので、癌という病気についてはすごく関心があります。そして、癌の告知については、してほしい反面、怖さに耐えられるだろうかという不安があります。
それにしても、あなたの生命はあとわずか数ヶ月だと宣告されたら、どうするでしょうか。
 最近、私の大学時代のセツルメント仲間から、亡きご主人の追悼集(『一途に進む私の道』)が贈られてきました。私も近くに住んだことのある神奈川県川崎市の法政二高の英語の教師だった人(故橋本保氏)についての追悼集です。それによると、2月に「夏まで」と家族は告知されたそうです。癌が再発・転移したわけですが、本人はそのこと自体は知っていても、どうやら「あと何ヶ月」というのは知らされなかったようです。知ったところで、既に入院中の身であれば自由に行動できるわけでもありませんので、どうしようもなかったのでしょう……。緩和ケアー病棟での生活をご本人が報告しているのを読むと、大変に意思の強い人だと感嘆してしまいました。私なんか、いったいどうするだろうと思いながら、追悼集を読み進めました。
 さて、この本に戻りますが、最終講義は無事に終了し、これがインターネットでも配信され、のべ600万ものアクセスがあったそうです。私は戦争好きのアメリカなんて大嫌いなのですが、こんなアメリカは大好きです。アメリカの草の根民主主義は今の日本国憲法にも生きていると思っています。アクセスした「600万人」は、そんな草の根民主主義を体現していると勝手に思い込んでいるのです。
 大切なのは完璧な答えではない。限られた中で最善の努力をすることだ。
 うーん、これって、なかなかいい言葉ですよね。
 今回の講義がなぜ大切なのか考え直した。生きていると自分も確認したいし、みんなにも分かってほしいから? まだ講義をする元気があることを証明するため? 自分の最期を見てほしいという目立ちたがり屋の精神? この答えは、すべてイエスだ。傷を負ったライオンはまだ吼えられるかどうかを確かめたいものだ。これは威厳と自尊心の問題だ。虚栄心とは少しだけ違うんだ。だから、僕の講義は死ぬことについてではなく、生きることについてでなくてはならなかった。な、なーるほど、ですね。最後の最後まで、自分の存在というのを世の中に認めてほしいものです。
 子供はなによりも、自分が親に愛されていることを知っていなくてはならない。
 ホント、そうなんですよね。
 幼い子供たちと、やがて悲しい別れがやってくる。そして、彼らには父親の記憶が残らない。これほどつらいことがあるでしょうか・・・。ここを読んでいるうちに、ついつい涙してしまいました。 著者はお元気のようです。ぜひ、これからもお元気にお過ごしください。
 世界遺産に登録された白川・五箇山のうち、五箇山のほうへ行ってきました。気持ちよく晴れ上がった秋の日の朝のことです。大きな萱葺きの家がよく保存されていました。そこで生活する人にとってはかなり不便を多いことでしょうが、やはり、こういう風景はぜひ攻勢まで伝えたいと思ったことでした。稲穂が重く垂れたそばで、コスモスが咲いていました。チューリップのような淡いピンクの花が珍しかったのですが、名前が分かりませんでした。あとで、ぺシニアという花だと教えられました。大きな村上邸では、火の起きている囲炉裏のそばでお年寄りが語り部として故事来歴を語ってくれ、また、ササラを演じて見事なコキリコ節を聞かせてくれました。
 川向こうに流刑小屋が唯一つ残っているというので、見学してきました。独房です。これでは冬の寒さに耐えられません。富山は加賀百万石の一部になっていたそうです。
(2008年6月刊。1500円+税)

サブプライムを売った男の告白

カテゴリー:アメリカ

著者:リチャード・ビトナー、 発行:ダイヤモンド社
 アメリカのサブプライムローンをめぐる破綻が全世界の経済を大きく揺り動かしています。この本は、サブプライムローンの実体が、いかにインチキであったか、体験を通して暴露しています。
 アメリカでは、夫婦の一方が病気になれば、たちまち経済的に破綻してしまう。国民皆保険制度がなく、営利企業である保険会社に加入できなければ、高額の自費負担を余儀なくされるからだ。
 サブプライムローンの借り手の大半、少なくとも80%の人々は期日通りに返済している。滞納件数がかなり多いのは明らかだが、5人のうち4人は返済している。
 サブプライムローンの借り手は、伝統的な住宅ローンなどを借りる資格のない人々である。信用度は良くない。前にローン返済が延滞したり、不履行になったりした事実がある。だから、借り手はリスクの増加と相殺するため、より高い利息やローン手数料を支払わされる。
 クレジットスコアというのがある。300点から850点までの範囲がある。
 2000年までに、アメリカでは、25万人以上のモーゲージブローカーが活動していた。モーゲージブローカーにライセンスを要求する州は少なかったので、業界への参入障壁は低かった。
 住宅ローンで不正行為が横行した。本来なら住宅ローンを借りる資格のない借り手が融資を受けた。たとえば、居住物件のはずが、投資物件であった。借り手が友人や親類の会社で勤めているとして職歴をデッチ上げる。ローンに関わる重要情報を隠してしまう。
 信用度の高い人が、第三者に自分の借入の実績を使わせ、その都度、手数料をもらうということもあった。このような「信用強化」は人を欺くものである。
 不動産鑑定士が価値以上の評価を出すこともある。あらゆる数字をぎりぎりまで操作して評価額の数字を導き出す。借り手は望みのものを手に入れ、レンダーとブローカーは手数料を稼ぎ、投資家は優良債権を受け取ることになる。
 しかし、こんなことは長続きはしない。いずれは破綻する。
 アメリカの非金融企業で、最上級のトリプルAに値するのは、ほんの一握りの企業にすぎない。それなのに、格付けされた債務担保証券の90%がトリプルAというタイトルを授けられている。
 これから数年のうちに、200万人もの人々が差し押さえによって住居を失う危険がある。
 抵当流れのピークは2009年だと予測されている。総件数は200万件に達する。そして、ラスベガスやマイアミという住宅に最高額が付けられてきた町でも、今後の数年のうちに住宅価値は40〜50%も下がるという推測がある。 
 今、アメリカ発の世界恐慌が起きるのではないかと、みんなが心配しています。アフガニスタンやイラクへ戦争を仕掛けたアメリカの国内経済がガタガタになっているのです。それなのに、大企業の救済・優遇措置だけはしっかりとろうとしています。アメリカの国民が猛反発したため、一度は国会で否決されました。ことは日本にも大きく響いて来る問題です。対岸の火事だといってすまされないことだと思います。
(2008年7月刊。1600円+税)

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